閑話 夏だ! 1
夏に書く閑話的なSSです。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
夏……満喫してますか?
クリスマスの時と同じく衝動的に書いています。
時系列、細かい設定等無視で暴走しておりますので、御了承ください。
季節は夏……なのかどうかはわからないが、日の光は爛々と輝いて暑苦しくて鬱陶しい気候が続くある日のこと。
たまたま隼人達と真達が二組ともアインズヘイルに来るということなので、双方を誘って広くなった家に招きそのまましばらく連泊してもらうことになった。
リビングでお茶を飲んでいたり、庭で合同鍛錬を行う者、臨時チームを組んでクエストに行くなどそれぞれが自由に過ごしていた。
そんな中、俺たちは電気を消した真っ暗な地下室で一本の蝋燭を真ん中に立て、顔を突き合わせていた。
「それで……計画はどうだ?」
「はっ! 問題なく進行中です」
「そうか……良くやった。我等の威光をすべからく世界に!」
「はっ! 我等の威光をすべからく世界に!」
シュバっと、両手を胸に一度当て、ぐるんと回してポーズを決める真と俺。
「……あの、なんですかそれ」
「なんだよノリが悪いなあ。見てなかったのか? 『戦略のズズ』」
「ああ、アニメですか? 名前は聞いたことがありますが……確か部活で時間が合わず見たことはないです」
なんと……あの傑作アニメを見てなかったのか。
確かに平日の夕方だったが、俺は友人に薦められてはまりそれからは録画予約を欠かさなかったぞ。
「まあ知らないなら仕方ないさ。それで、実際どうなんだ?」
「順調ですよ。見てください」
そう言って隼人が取り出し机の上に置いたのは一枚の布……いや、皮であった。
「ほう。これが……例の」
「まだ続けるんですか……それ。ええ。水竜蜥蜴の皮です。竜もどきでしたが、水場で苦労はしましたけどね……。彼が全く協力しようとしないので」
「何言ってんだよ! お前が俺の邪魔ばかりしてたんだろうが!」
「適材適所ですよ。初撃を止めてくれればすぐに終わったのに……」
「待て待て争うな。ここにいる俺等は同志。同じ志を胸に抱く者だろう。それに、無事にブツは手に入ったんだ。喧嘩は無しでいこうじゃないか」
それにしてもこれが噂のシードランの皮か……。
分厚すぎず、肌触りも悪くない。
水はけもよさそうだし、普通の生地としても上物だな。
「それで、兄貴こそ準備は大丈夫ッスか?」
「当たり前だ。何の為に裁縫スキルを取ったと思ってるんだ」
服屋になるつもりもなく、ウェンディが裁縫スキルを持っているのに俺がわざわざとる必要は本来ならば無い。
だが、俺たちの元いた世界の代物を作るならば、専門の仕立て屋に拘りを伝えるよりもより拘れる衣装が作れると踏んだからだ。
「本当ッスか? 俺相当無理して調べてきたんスからね? なあ、隼人」
「え、僕は普通に聞いたら教えてくれましたけど……」
「っ……これだから、イケメンは! 兄貴も苦労したッスよね!?」
「俺はまあ……大体サイズは見ればわかるし……」
「なんッスかその能力羨ましい! え、もともとチート持ちなんすか!?」
「いや誤差はあるけどな。でも、聞いたら大体合ってたけど……。あーでも、ソルテとウェンディから聞き出すのは大変だったがな……」
ウェンディは普段から胴回りを気にする事が多かったので、そんな事はないと何とか拝み倒してお願いし、ソルテは添い寝しつつ耳元で褒め殺しにしたら顔を真っ赤にさせてほにゃほにゃ伝えてくれた。
「くそー……俺は美沙姉に土下座までして美香の分まで聞いたのに……。でかい借りが出来ちまった……怖いよぅ」
あー……確かに美沙ちゃんに借りは少し怖いなあ。
でも、結果的に真が得をするようなけしからん事が起きそうな気がする。
……真は気づかないかもしれないが。
「まあまあ。ほら型紙とデザインは出来てるからそれを見てテンション上げろよ。お前たちの要望どおりにはなってると思うぞ」
俺は魔法空間から数枚の型紙とデザイン画を取り出して二人に渡す。
事前に聞き取りをし、それぞれにあったデザインを相談しつつ考えた物だ。
隼人はワンピースやパレオ付き、胸周りにフリフリなど彼女たちに合うようなデザインを考え、真は露出重視……最初は布面積が阿呆かと言えるほど小さかったが、俺等も居る事、女性が着ないだろうという事を考慮し、なんとかビキニで作ることになった。
「おおー。これ、イツキさんが作ったんですか!? 要望どおりですね……、わ、これ可愛い。レティに似合うだろうなあ……」
「兄貴! 布が! 布の量が前より増えてる! なんで!? どうして!?」
「当たり前だ。お前あの子達が着なかったらどうするんだよ……」
「いやでも、これも可愛いじゃないですか」
「そりゃあ……俺が美香や美沙姉のイメージに合わせたわけだし……。うん、これを着た二人を見たいなあ……」
ふふ、よし。問題は無さそうだな。
そして俺はこれからが修羅場だ。
なんせ数十枚もの水着を作らねばならないのだ。
本来ならばウェンディやクリスにも手伝って欲しいところだが……これはサプライズだからな。
勢いに任せないと、下着と変わらないように見える水着は着てもらえないだろうという考えの下、秘密裏に進められていた計画なのだ。
失敗は許されない。
ゆえに、隼人達にもまだ動いてもらう。
「次はスライムの皮膜が足りないから、二人はユートポーラ付近でスライムを狩ってきてくれ。特に、稀に現れるというミラースライムは必ず狩るように。それも、一匹じゃ困るぞ」
「「はい!」」
これでビーチボールや浮き輪は出来るな。
後は……パラソルなんかも欲しいところか。
それと日焼け止めも必須だろう。
ミラースライムから日焼け止めは作れるそうだが……普通のスライムローションと合わせれば……んふ。
「兄貴!? 顔がいやらしいです!」
「馬鹿お前。いやらしいことを考えてるんだから当たり前だろうが」
「兄貴! 素直すぎます!」
「まあ、イツキさんですから……」
隼人が呆れた声を出しているが、お前も同じ穴の狢だからな?
女性陣の水着姿が見たいと集まった同志だぞ。
正直、最初は真と二人で計画を進めようと思ったんだが、一応声をかけたらまさかこんなにも乗り気になるとは思わなかったんだからな。
だが、クリスの着やせする体に、エミリーのエルフらしい均整の取れた肢体、レティの慎ましい体に、ミィの健康的な肉体は確かに魅力的だろう。
うんうん。自分の欲求に素直になる事は良いことだ。
おじさ……お兄さんは隼人が成長してくれて嬉しいよ。
真は言うまでもないだろう。
こいつも変態だ。耐性は低そうだが……。
だからわかる。あの二人が水着になればエロイ。
それに、なんだかんだ黒髪が好きなのは日本人の性だよなあ。
こっちの世界の子とは毛色は違うが、元の世界では間違いなく美人な二人だ。
お互い様だが、俺も眼福にあずかろう。
「なあ兄貴……、大丈夫かな? この計画成功するかな?」
「なーに俺に任せておけ。俺だって見たいんだ。ぬかるかよ」
「兄貴……こういうときの兄貴の頼もしさはなんだろう。格好いいッス!」
「ですね。本当……生き生きしてます」
当たり前だろう。
あのな……元の世界で学生のお前達は夏休みがあるから良いけど、俺は社会人なんだよ。
知ってるか? 社会人は夏だろうと休みは短いんだよ。
激務の後の夏の連休なんて、田舎に帰って墓参りか本当に体を休ませるかのどっちかだったんだ。
そりゃあ海やプールに行けば水着は見れただろうけど……そんな元気もないんだよ……。
でもここ異世界だから。
激務も夏休みも関係ない異世界だからね。
水着がないなら作れば良いのさ!
さあ、やるぞ。
俺達の夏がこれから始まるのだ!
本来ならばクリスマス同様連投予定でしたが、多忙につき最終更新日から日が経ち過ぎてしまったので1だけお先に投稿しました。
続きは順次出来上がりと確認が済み次第投稿しますので、本編もですがもう少々お待ちください。
尚、このコメントは閑話 夏~の投稿終了後に削除します。




