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異世界でスローライフを(願望)  作者: シゲ
6章 温泉といえば
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6-8 温泉街ユートポーラ お守り作成

ダーウィンの家を後にした俺達は、市場へと向かい夕食や今後の食材を買い込んで帰宅した。


「さてと……ウェンディ、悪いんだけど今日の夕食は頼んでいいか?」

「構いませんけど……、どうしたんですか?」

「いや、ちょっと仕事……ではないんだけど、やらなきゃいけないことがあってさ」


いけないってことはないけど、俺がやるべきことだから。

三人が出て行ってしまう前にやらねばならない事なのだ。


「終わったら行くから、先に夕食をとっていてかまわないからな。あと、風呂も入ってしまっていいし、あんまり遅いようなら先に寝ててもいいから」

「……かしこまりました。伝達しておきます」

「それじゃよろしく」


ソルテ達への打開策や解決策はまだしっかりと具体的な形にはなっていない。

だからもし、なにも出来なかった場合に備えて、今出来る事はしておこうと思うのだ。


錬金室に入り、俺は仕事用の椅子に腰をかける。

魔法空間から錬金用の素材を取り出して、作業を始めた。

イメージは、三人を護ってくれるような首から提げることの出来るお守りを意識して作ろうと思う。


ただお守り……お守りねえ。

元の世界での一般的なお守りと言えば、神社で貰う布製のものなんだよな。

外国だと木を彫ったものなどもあるか。


でも俺に扱えるのは金属や鉱石だからな……。

錬金でアクセサリーを作る場合はイメージが大切だし、デザイン的にはやはり金属らしく盾を思い浮かべる。

三人は盾を持って戦わないので、出来ればこれが代わりの効果を持ってくれればと、願いを込めた意味もある。


一先ず、装飾部はまだ決まっていないが盾のペンダントトップを作るべく、原型を自分なりの考えで作ってみるとしよう。


まず材料だが、隼人に貰った素材の中でも一番硬い素材の、オリハルコン鉱石を使おうと思う。

頑丈な上に鉱石としてのレベルも高く、よりよい効果を持った仕上がりになりやすいだろうしな。


手形成(ハンディング)を発動させると、あの触っただけで硬いと分かるオリハルコン鉱石が、普段扱っていた金属と大差ないように加工が出来るようになるのは何度体験しても不思議な感覚だ。

更に取り出したのは彫刻セットだ。

今回はじっくり行うつもりなので、彫りも必要だろうからな。


メインはオリハルコンで形作る盾。

薄く延ばしたオリハルコンを切り出し刀で盾の形に何枚も切り出していく。

それと同様に薄く延ばしたミスリルも同じように切り出していき、それらを重ね合わせてミルフィーユのように厚くし、まずは角ばった盾の原型を作る。


次に、裏側になる方を両の親指で押し出しつつ変形させ、表側が膨らむようにして微調整を加えていく。


ミスリルを混ぜると、所詮銀であるので強度は弱まるが、銀には昔から魔を払う効果があると聞くので、織り交ぜたのだ。


一先ず、これで原型の盾のアクセサリーは完成である。


さて……ここからが問題だ。

いかんせんいくら技術力が上がろうとも、想像力がなければデザインは出来ない。

いままでどおりのありきたりな物でよいのだろうか……。


魔法空間をあさり、いくつかの鉱石、そして宝石類を取り出して、誰に何を使おうかと思案するが、そもそも盾のデザインをどう加工するべきか……。


ふと、一つの宝石に目がとまった。

それは、ダイヤモンド。

金剛石とも呼ばれる宝石。

まさしく元の世界で天然で最も硬い物質であると言われているのは一般的な事だ。

鉱石や宝石の知識なんて持ち合わせていないが、この宝石ならば今回の俺が作りたい『護る』にもあてはまるはずだ。


カット方法は以前試したブリリアントカットを今回はクラウンの部分だけではなく、パビリオンにも挑戦してみようと思う。

要は光の入射角と反射角を計算し、上方に向かうようにすればいいのだろう。


……口では簡単だが、これバランスが絶妙すぎないか……?

クラウン部分は、かろうじて覚えているように削る事ができたが、下のパビリオンの部分が難しすぎる。

長すぎず、短すぎず……。

少しずつ削っては確認し、輝きを見て微調整を繰り返していき、ようやく一つ目のダイヤが出来上がる。


流石にINTも上がっているので、昔よりは精密に出来ているとは思うが、やはり本物のようにはいかないか。


でも、それなりの出来にはなったと思う。

各方向から見ても、もとのダイヤの原石に比べればずっと輝きは増している。

だが安心するのはまだ早い。

調子に乗るのは、これを3つ作り上げてからだ……。


その後、非常に細かい作業をつづけ同じくらいのサイズのダイヤを3つ作り終えた。

魔法空間から水差しを取り出し、直接口をつけて呷る。


「ふぅー……」


これだけでも十分に達成感を感じてしまうほど、難しい作業であった……。

というか小さすぎて、難しすぎるだろ……。


あー……目が痛い……。

でもまだ作業は残ってるんだよなあ……。


よしっと気合を入れなおし、盾のペンダントトップを手にとって、加工を開始する。

まずは宝石を埋め込む為の穴を開けよう。

元々のサイズが小さいので、備え付けの顕微鏡を使って丸刀で慎重に穴を空け、ダイヤモンドを嵌めては外しサイズを調整していく。

深さなどに気を付けつつ、貫通はさせないよう集中して行わなければいけない。


切り出された何層にも重なったオリハルコンとミスリルを取り除くと、息を吹きかけて小さな屑を吹き飛ばし、次は周囲の模様を彫るために切出し刀へと持ち替える。


まず盾のデザインを強くする為に縁を浮き出させるように彫っていく。

なるべく薄く、だがはっきりと分かる程度に。


細かい作業が続き、目がシパシパとし始めるが、ここで手を止めてしまえば深さが変わってしまうので、ゆっくりと手は動かしつつ作業を進める。


「はぁ…………」


縁取りが終わり、中央に穴の空いた盾のペンダントトップが出来上がる。


ここまでも中々慎重な作業であったが、本番はここからだ。

まず、このペンダントはソルテに贈ろうと思う。

故に、ソルテをイメージしたデザインを彫る事にする。


一番初めに浮かんだのは、以前ソルテに渡した銀翼のブローチ。

あのデザインをいたく気に入っていたようなので、ソルテには翼をモチーフにしたデザインにしようとすぐに決まった。


中央に空けた穴を中心とし、シンメトリーになるように翼を思い浮かべたデザインを彫っていく。

風のように速く、自由の象徴たる翼をイメージしソルテの安全を願い彫り進めていく。


ぴたりと彫刻刀を動かしていた手を止め、ダイヤモンドを中央にはめ込み、落ちてしまわないように止め具をつけると、最後に首から提げる為の下げ輪を取り付けて完成した。


おっと、忘れてはいけない銘を彫らねば。

ついでにローマ字でソルテの名も彫っておこう。


『幻聖銀翼の守護ペンダント 防御力大上昇 魔防御大上昇 耐状態異常大 敏捷大上昇 非劣化 固有所持者【ソルテ】』


能力は6つ……。

6つ……!?

え、凄くない?

今までで最大数だ。

しかも殆ど効果が大だし……。


非劣化って劣化しないってことだよな?

多分ダイヤモンドが関係しているのだとは思うのだが……。


ただ、最後の固有所持者ってなんだ……?

効果を鑑定してみると、


【固有所持者 背後に最初に名前を刻んだ者が装備した場合のみ効果を発動する】


つまりはソルテの専用装備となったわけだ。

……これ同姓同名の場合なんかはどういう扱いなんだろう。

でも、俺はソルテを思い浮かべて作ったのだし、ソルテが使えれば問題は無いか。


と言う事は実質5つの能力だ。

しかも効果はどれも大。

この出来には流石に時間をかけて作っただけの価値があるだろう。


「ん、んんー!!!」


伸びを行って背筋を伸ばし、背中がぽきぽきとなる感覚を感じ、首を手を用いて傾けて解す。

完成したものの出来には満足だ。

ならば、あとはこれと同等の物を二つ作るのみである。


水代わりに魔力回復ポーションを一気のみして魔力と喉の渇きを回復させる。

今回は『贋作(マルチコピー)』も『既知の魔法陣エクスペリエンスサークル』も使う事ができない。

というか、使う気もなかった。


結果は変わらないかもしれないが、それぞれを想いながら作ろうと決めていたのだ。

それに、デザインはそれぞれのイメージを元にして作りたかったのだ。



そして、長い時間をかけて二つのアクセサリーを完成させると、達成感と疲労感に襲われた。


いててて……首が結構凝ってしまったな……。

やはりいらずシリーズは欲しかったな……。

それでも、良いものが出来たといえる筈だ。


『幻聖銀炎の守護ペンダント 防御力大上昇 魔防御大上昇 耐状態異常大 力大上昇 非劣化 固有所持者【アイナ】』


『幻聖銀華の守護ペンダント 防御力大上昇 魔防御大上昇 耐状態異常大 体力大上昇 非劣化 固有所持者【レンゲ】』


アイナには、紅く猛々しい炎をイメージして刻み込んだ炎を象った盾のペンダントを。


レンゲには、明るく、快活な華をイメージして刻み込んだ華を象った盾のペンダントを。


アイナのペンダントはダイヤモンドの位置を少し下にし、そこから炎が立ち昇っているイメージで。


レンゲのペンダントは、逆に上の方に穴を彫り、華の中心にダイヤモンドを嵌めてその輝きが広がるようなイメージで。


それぞれに想った印象を自分なりに表現できたと思う。

効果についても、しっかりと三人を護ってくれると信じている。


「よし……」


さて、どれくらいの時がたったのだろうか。

眠さからして、下手をすると朝になっているかもしれない。

若い頃はオールだなんだとはしゃげていたが、最近は少しきつくなってきたからな……。


腹も減ってはいるが、今日は寝てしまおう。

だが、寝るのならベッドでだ。

今日は魔力回復ポーションを飲みつつ作業をしたので、倒れる心配はないからな。

疲れを癒すのならちゃんとした寝床で寝るべきだ。


3つのアクセサリーを魔法空間へ仕舞い、片づけを終えてから錬金室を後にした。

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― 新着の感想 ―
錬金術師だからお守りにアクセサリーをというのは素敵です。 今から旅や戦闘に行くお守りとして選定した宝石がダイヤモンドというのはちょっと残念かなぁと。 ダイヤモンドの効果として宝石言葉の【不変】から【…
人によっては(依頼する人と製作する人)1億は下らないと思いますよ。そのくらいヤバいアクセサリーですね。まぁ今のところそんな依頼してくるのは領主とアイリス様と隼人ぐらいでしょうね
[一言] そのうち、どっかでアダマンタイトとか採掘してきて、それでアクセサリーを作ったら、物理攻撃無効、魔法攻撃無効とか出来そうですね。一応アレ、ティターン神のクロノスの使っていた鎌の素材となってます…
2021/06/05 17:56 退会済み
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