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異世界でスローライフを(願望)  作者: シゲ
5章 王都一武術大会
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5-26 (仮) 王都一武術大会個人戦 - 騎士団長VS隊長 -

遅くなりまして申し訳ない!

座席へと戻るとアイリスは既に食べ終えていて、ウェンディは食べずに待っていたらしい。

アイリスは食後のアイスをご所望なのが見ただけでもわかったので、出してあげると嬉々として満足そうに受け取った。

ふと、アイリスの下、足元を見れば小さな女の子達がもふもふと食べている。


「えっと……」

「ありがたくいただいておりましゅ」

「ああ、うんそれはいいんだけど……」

「おいしいでしゅ」

「うまうまー」


小さな彼女達はもしかしてもしかすると他のシノビの方々なのだろうか……?

それにしたって年齢が幼すぎだろう。

でも良く見るとどの子も獣耳が生えてるって事はソルテの様に見た目どおりの年齢という事ではないのだろうか。

だがそんな些細な事はどうでもいい。

先ほどの光景の後だからからこそ癒される。


「アヤメしゃまも食べましょう! 美味しいでしゅよ!」

「はいはい。ほら、ほっぺにソースがついていますよ」


慈愛に満ちたアヤメさんのレアな表情もゲットした事だし、俺らも食べ始めますかね。

その前に……。


「はぁはぁ……もふもふ……もふもっふ……」


獣娘は、尻尾も耳も、もふもふなので……。


「あの、私の可愛い娘達に卑猥な顔を見せないでくれますか?」

「卑猥な顔ってどんな顔だよ!」

「今の貴方の顔そのものです。正直、引きます」


いやだって! 今まさにそこにもふもふパラダイスが展開されているんだよ?

抱えて抱きしめて顔を埋めてすりすりはぐはぐもふもふしたいと思うのは世界の心理のはずだ。


「主、シロならいいよ?」

「んんー! シロのもシロのでいいの! でもね! 今はもふもふに……囲まれたいっ!!」


心からの叫びだ。

この中にエロさなどなく、純粋にもふりたいのだ。


「私にも尻尾があれば……」

「ウェンディはそのままでいいんだ! ウェンディにはウェンディでお願いすることがあるから!」


こっちはエロス的な方向ですけどもね。

まあそれぞれタイプがあるからね。仕方ないよね。


「触らせませんよ? 触るなら一人につき100万ノール支払っ――」

「良し来た。全員でいくらだ!!」

「……いえ、やはりやめておきます」

「何でだよ!」

「もふもふー?」

「尻尾もふもふ」


ああ……可愛らしい……。

小さな獣娘がそれぞれの尻尾で遊んでる……。

そこの狸耳っぽい子のぽわっとした大き目の尻尾とか、熊耳っぽい子の丸みを帯びた尻尾とか……あああ、堪らぬ!


「ほら、食べ終えたのならおててを合わせてご馳走様しなさい」

「「「「ごちそうさまでしたー!」」」」

「ああ……俺の楽園が……」


小さなシノビの子達はそれぞれ手を合わせてぱらぱらといなくなってしまう。

そしていつの間にか姿を消して、周囲を見回してもわからなくなってしまった。

小さくても流石シノビ、気配を感じないんだが。


「そういえば娘って言ってなかったか?」

「お母さんのような役割をしているだけですよ」


まあおぼこって言ってたしそうだよね。

びっくりしたわけじゃないけど、あまりにナチュラルだったから確認しないとね。


「ああ見えて皆優秀なシノビですから。油断しているとスパーンっと首を刎ねられますよ?」


おおおう……あの可愛い子達が仕事中は冷酷な目になるのかと思うとやっぱりシノビ怖いな。


「主、シロもご飯」

「ああ、うん……シロ、もふっていい?」

「ん。主はシロのでもふればいい」


浮気してゴメンよー!

シロのもふもふが一番だよ!


シロ用のお弁当ご飯を次々にテーブルへと並べるとシロを膝の上に乗せて尻尾をもふる。

シロは気にせずにご飯を食べ始めたので、遠慮なくもふらせてもらうのだがやはりボリューム感が……いや、俺にはこれが一番だ!

ソルテとレンゲは……今はいないんだったな……。


「それにしても良いタイミングじゃったな。もうそろそろ始まりそうじゃぞ」


リングを見れば副隊長が何故か準備運動を始めているし、『らーらー……』と発声練習まで行なっていた。


「見ながら食べるしかないか……」

「そういえば遅かったのう。何かあったか?」

「あー……シロが騎士団長に絡まれてて、その結果死ぬかと思った……あの爺さんちょっとおかしくないか?」

「む。最近様子がおかしいとは感じておったが、そこまでか……」

「飢えた獣みたいだったぞ。やっぱりシロは棄権させようかなって」

「んー……」

「シロさん?」

「ちょっと、まだ待って欲しい」


そういうとシロは何かを考えるようにリングを一直線に見つめ始めた。

いやいや、流石に危険だと思うんだが……。

あんな事があったのに、即断即決で棄権しないのか?


「ご主人様……一先ずその男の試合のようですし、一度試合を見てからというのはどうですか?」


ウェンディが何時になく真面目な顔で訴えでる。

そして俺の耳元に手を当ててそっと小さな声でひそひそと話してくる。


「……申し訳ございません。少し……シロの今の様子が気になるのです」


確かに気になるのは分かる……。

それにウェンディもどこか不安そうな顔をしつつも進言してきているのだから、ここは様子を見たほうが良さそうか……。

シロが何を考えているのかはちゃんと聞かねばならないが。


「……わかった。じゃあ決めるのは、試合を見てからな。少しでもやばかったら駄目だからな」

「……ん」


わかったのかな……?

今の『ん』は、どっちなのかわからなかったぞ……。


『皆様! そろそろよろしいですか? よろしいですね? お食事は済ませましたね? 準備は問題ありませんね! 次は見物ですからね!』


見物って、あの爺さんだよな。

正直に言えばあの男を見ながら食事とか、食欲減衰間違いなしなんだが……。


『まずはこの方! 王国最強の称号を持つ第一騎士団の騎士団長! 年は取っても衰え知らず! 一体貴方の身体はどうなってるの? 戦い一番、その他は二の次! 戦場の鬼、新人の壁! 悪鬼羅刹のアーノルド様だああああああああ!』


いやいやいや。

褒めてるようでひどいこと言ってるぞ副隊長。


「……悪鬼羅刹か」


当の本人はまったく気にしている素振りは無く、むしろ満足げだ。

いいのか? 騎士団長で王国最強が悪鬼羅刹って……。


『続いては皆様お待ちかねのこの方! シード枠から参戦の見た目は可憐なお嬢さん! だがその筋肉には女神の加護が! 振り回すのは十字の鈍器。横薙に振らばゾンビが吹き飛び、縦に振らばグールを潰す。皆も潰されたいかー! 我らが神官騎士団の隊長! おらああああ! 皆コールはどうしたー! せーの可ー愛ーいーテーレーサ、どぶらはっ!!」

「……黙りやがれです」


おー……見事に吹き飛ばされたな。

審判への攻撃っていいのか?


『はあ、はあ。羨ましいかー!!?』

『『『『『おおおおおおおおおお!!!』』』』』


副隊長……ぶれないなあ……。

そして民衆もノリがいいのはいいが、奥さんと一緒に見ている旦那さんは立ち上がっちゃ駄目だろう。

奥さんの目が酷いことになっているのに早く気がついてほしい。


それにしても相手はテレサなのか。

申し訳ないとは思えども、様子見をするには女神の加護があり頑丈で強いテレサならばぴったりなのだが、それにしても武器があの大聖堂で見た十字の武器と同じなんだがいいのか?

あとあの服……激しく動いたら、色々見えそうだぞ。

おお、肩に巨大な十字架の鈍器を背負い込む姿は格好いい。


「はぁー……」

「そうため息をつくな」

「何が悲しくてこんな爺の相手をしなくちゃいけねーんでやがりますかね。女神様の加護があるのについてない」

「ふむ。シード枠というと初めから仕組まれていたんだろう」

「はぁ。クソッタレでやがりますね……」

「あまり汚い言葉を使うなよ聖女」

「これで神気が薄れるんだったらいくらでも使いやがりますよ」


テレサも相変わらずテレサだな。

十字架を地面に突き刺して寄りかかっているし。

あーあー逆さ十字とか縁起悪い。

それにしても何をしてもテレサの神気って減らないのか?


「さて、どれほど強くなったのか見てやろう」

「はいはい。騎士団長様はお強いお強い。……でもそろそろ潰れた蛙のような姿も見たくなってきやがりましたね」

「はっ! 言いおるわ!」


騎士団長が楽しげに笑い、テレサが真面目な顔つきに変わった。

今のところは普通……だな。

戦闘が楽しみな武人といったところか。

やはりさっきのがおかしかっただけなのだろうか。


『さて気を取り直していきましょうか! 会場の熱気も休憩を挟んだとは思えない程盛り上がっております! テレサたーいちょう! ガンバレー!! あっぶねえ!!』

「っち……。避けやがりましたか」


先ほどまで副隊長の頭があった場所に巨大な十字架を容赦なく振るうテレサだが、間一髪で避ける副隊長もなかなかやる。


『さてさてそれでは開始いたしましょう! お二人とも準備はよろしいですね!』

「はいはい」

「うむ」

『それでは! 試合開始ぃぃぃぃ!!』

『『『『『おお――』』』』』

「潰れろクソ爺!!!」


ドゴーンッ!!


開始の速攻、テレサが十字架の長い方についているバーを手にして思いっきり叩きつけた。

威力はリングへ広がるヒビの大きさが物語っているだろう。

というか、え……死?

土煙で見えないが、死んだんじゃないか!?

いやむしろあれで生きてたら人間じゃない。


「ちっ! 老体の癖に素早いでやがりますね。台所に出る黒虫のようでやがります!!」

「人を虫扱いはやめんか」


生きてたー!

あの速さをギリギリで避けてるよ! 化け物だ!!

虫扱いされたくない気持ちは凄く共感できるけど、やっぱり化け物とシロを対峙させるわけにはいかないだろ!!


「ほらどうした。一発で終わりか?」

「なわけないでやがりますよ! ったく、一撃で潰れて欲しいでやがります」

「はっはっは! ほらもっとこおおい!!」


何で笑ってんのあの人。

え、怖いんだけど。

身近に迫る死にあんな楽しそうな笑顔とか最早恐怖なんだけど!

っていうかテレサにあの武器って大会規定的にどうなの?

刃物が付いていなければなんでもありなの?


「脚を広げてぺしゃんこになりやがれですよー!!」

「はぁーはっはっは! やれるもんならやってみろ!!」


リングを見ると全力で十字架を振るい穴ぼこを増やしていくテレサと、その暴威の塊を受けるなり避けるなりしながら笑みを絶やさないアーノルド。

ただし、テレサの攻撃は素人目で見ても単調で、縦に叩きつけるか、横に振りぬくからのどちらかでしかない。


「クッソ面倒でやがりますね!」

「普段腐ったもんばかり相手しておるからそうなるのだ」

「たまに副隊長も潰してるでやがりますよ!」


副隊長……。

いや待てよ、今もぴんぴんしてるって実は副隊長もの凄く強いんじゃないか?

超回復的な女神様の加護を受けてるんじゃないか?


「今度はこちらからも行くぞ」

「返り討ちにしてやりやがります!」


アーノルドの巨腕から剛剣が振るわれると、その逆からテレサが十字架を振るう。

そして中心で弾かれあうとすぐにまた体勢を立て直して振るい、段々と速く、強くなっていくのがわかる。

もう見てると歴戦の騎士が妖怪化した化け物と、それを倒すエクソシストのようにしか見えないが、十字架と剣がぶつかり合う音がどんどん大きくなっていく。


「ほらほら、どうした! ふらついてきておるぞ!」

「十字架が重いだけでやがりますよ!」

「ならそれを捨てて接近戦でもすれば良いではないか!」

「あんたに触れたくないんでやがります!」


そんな状態でも会話を続けられる二人に、素直にこの言葉を送ろう。

一歩間違えたらあれ死ぬぞ。


「ちっ……。このままじゃ……」

「はぁーっはっはっは!」


一度距離を取ろうと下がろうとするテレサを逃がさずに前に出ながら打ち合いをやめないアーノルド。

いいのか騎士団長。今のその姿、騎士団長らしさの欠片も残ってないぞ……。


じりじりと後退させられていくテレサが後ろを確認し後がない事がわかると、ため息を一つつく。


「クソ爺……いつか潰すでやがります」

「……そうだな。楽しみだ」


その言葉と同時に十字架がテレサの手から離れるとアーノルドは剣の腹でテレサを押し出すように……傍目から見れば普通に真っ二つにするんじゃないかといった勢いで横に振りぬく。

少し持ち上げられ、真っ直ぐにリングアウトしテレサは観客席の壁に叩きつけられたのだった。


『しょ、勝者アーノルド様! 隊長! 隊長大丈夫ですか!? お姫様だっこは要りま、あぶねえ!!?』


副隊長がアーノルドの勝ちを宣言し大急ぎでテレサの下に近づこうとすると、まだ晴れぬ土煙の中から砕けた壁が副隊長めがけて剛速球で投げられる。

どうやら無事ではあるようだ。


さて……。

特筆してやばいということはないが、全体的に見てやばいよな?

テレサの力に勝る腕力。

そして老体とは思えないスピード。

……あれ、これだけだと別に普通に強い人だぞ。

最後はわざわざ剣の腹で振りぬいていたし、手加減も出来ているようだし……あれ?

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― 新着の感想 ―
そりゃあまぁテレサの体質はパッシブスキルに依るモンでしょうから女神のからのギフトではあっても自分に備わったモノ。そもそも神気でも女神の加護でも無いでしょうよ。んで無いモノはこれ以上減りようが無いんです…
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