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ただ幸せになりたかっただけと、あなたたちは言うけれど  作者: gacchi(がっち)


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19.しつこいシュゼット様

楽しいお茶会はあっという間に時間が過ぎて、

昼休憩になるのに気がついて慌てて教室に戻る。


その教室では、私を迎えにきたはずの兄様が、

なぜかうるんだ目をしたシュゼット様に腕に抱き着かれていた。


……は?これはいったいどういうことなの?

どうしてシュゼット様が兄様に抱き着いているの?


怒りのまま叫びそうになったのを止めたのは、

今まで聞いたことがないほど低い兄様の声だった。


「いいから早く離してくれ」


「いやよ、あなたのお名前を教えてくれるまで離さないわ」


「シュゼット様!まずいです!手を離してください!」


どうやら初めて会った兄様をシュゼット様が気に入ったらしい。

……こうなりそうな気がしたから、会わせたくなかったのに。


令嬢の腕をつかんで無理やり離すことはできないのか、

兄様は何度もシュゼット様に離れるように言っている。


だが、まったく兄様の話が聞こえていないのか、

シュゼット様は甘えた声で兄様に迫っている。


それをシュゼット様の周りの令息が慌てて止めていた。

兄様が本気で怒っているのがわかっているからか、顔が真っ青だ。


「お前ら、この女をなんとかしろ」


「申し訳ありません!俺たちも無理に離すわけには……」


「ああ、もうここで魔術を使ってもいいんだな?

 俺は警告したぞ?」


「兄様!!」


さすがにこんなところで魔術を使われても困る。

しかも、相手は魔力なしのシュゼット様。

どれだけ被害がでるかわからない。


私が呼んだからか、兄様は顔だけこちらを向いてくれた。

だけど、まだ表情は怒ったままだ。


「ジュリアンヌ、少しだけ待っていろ。

 この訳の分からない女をなんとかする」


「まぁ、それはもしかして私のことなの?」


「これだけ離せと言っているのに聞かないのだから、

 言葉が理解できないのか、立場を理解できないのかのどちらかだろう。

 どちらにしても二度と関わりたくない」


「あら、顔はいいのに口は悪いのね。

 私はあなたが気に入ったから名前を聞きたいだけなのに。

 夜会のパートナーにしてあげてもいいのよ。

 それで、名前は?」


「お前なんかのパートナーになるわけないだろう!」


少しもこりていないシュゼット様に兄様が完全に怒ってしまった。

こうなったら仕方ない。


後ろにいた四人を振り返ると、気持ちは通じていたのかうなずかれる。


「兄様、少しだけ我慢していてね」


シュゼット様の後ろに駆け寄り、五人で無理やり引き離す。


「あなたたち、何をするのよ!私を離しなさい!」


「こんなところではしたない真似をするからでしょう?」


「私がはしたないと言うの?」


その言葉に兄様と私たちは力強くうなずく。

あれがはしたなくないと思っているのだろうか。


令息たちも否定できずにシュゼット様から目をそらしている。


自分の常識が違うことにやっと気がついたのか、

シュゼット様は顔を赤くして叫んだ。


「あなたたちには関係ないでしょう。

 私はこの人と話しているのよ!」


またシュゼット様が兄様に突撃しようとしたが、

兄様はさらりと躱して私の元へと来た。


「もう二度とふれさせてたまるか」


「大丈夫?兄様」


「ああ、ジュリアンヌを迎えに来たら、

 あの女が後ろから腕に抱き着いてきた。

 なんなんだ、いったい」


「まぁ……」


よほど嫌だったのか、兄様は抱き着かれていた腕の服をたたいている。

まるで汚れたものがついたような嫌がり方だ。


「あら、ジュリアンヌ様。その方はあなたの知り合いなの?

 同じ教室の私にも紹介してくれるわよね?」


「しなくていい」


「だそうなので、紹介しないわ」


「なんて失礼なの!?私は公爵令嬢なのよ!」


ああ、兄様に向かってそんなことを言うなんて。

公爵家次期当主として認められている兄様よりも身分が上なのは、

王族と現公爵の二人だけだ。


「公爵家の養女だからと威張っているようだが、

 世の中にはお前よりも身分の高いものは何人もいる。

 おい、そこのお前ら、さっさとこいつをなんとかしろ。

 イフリア公爵家だけじゃなく、お前らの家にも抗議するぞ」


「は!はい!」


「申し訳ございません!!」


「シュゼット様、さぁ、昼食に参りましょう!

 第二王子がお待ちですよ!」


「なによ、もうサミュエルなんてどうでもいいわ。

 あ、ちょっと邪魔しないでよ!」


シュゼット様の身体にはふれないようにして、

令息三人は身体で進路をふさいで教室から外に連れ出していった。


「はぁぁ……」


「兄様、もう教室には来ないほうがいいわ」


「だが、迎えに来ないと危ないだろう」


「あの!私たちがカフェテリアに移動する時に、

 ジュリアンヌ様を控室まで送り届けますわ!」


「ええ!ジュリアンヌ様は私たちがお守りします!」


「君たちが?……頼んでもいいだろうか」


「もちろんです!」


迎えにこれない兄様の代わりに、四人が控室まで送ってくれるという。

面倒をかけてしまうけれど、兄様をシュゼット様と会わせるわけにもいかない。


「ごめんなさい、みんな。頼んでもいいかしら」


「ええ、ちょっとだけ寄り道するだけです。

 たいした手間ではありませんもの、気にしないでください」


「あんなのを見てしまったら、こうするしかありませんわ。

 シュゼット様があきらめるまで頑張りましょう!」


「ありがとう」


口々になぐさめてくれる四人に明日からは甘えることにして、

兄様と控室に向かうことにする。


このままここにいたらシュゼット様が戻って来てしまうかもしれない。

あの令息三人では勢いを止められるとは思えない。


幸い、控室に行くまでには会うことなく、

午後の授業で戻ってきた時ににらまれたけれど、

兄様のことを聞かれることはなかった。


おそらく令息三人に兄様のことは聞いたと思う。

夜会のパートナーになってほしいと言っていたけれど、

シュゼット様は本気な気がする。


……それを聞いたお父様はどう思うのかしら。




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