変態日本海軍事情―新型戦艦建造編―
『あと3年で条約明けだ。そろそろ新型戦艦の検討をするべきだろう』
『金剛も艦齢20年に迫っています。代替艦の建造は急務です』
『サウスダコタ級に確実に勝つためにも新型艦は絶対に必要だ』
1931年になると帝国海軍内部では新型戦艦建造の機運が盛り上がっていた。
金剛の旧式化やハワイに配備されたサウスダコタ級への警戒感、その他諸々な理由で新型戦艦が待望されていたのである。
『ロンドン海軍軍縮条約を更新するつもりはない』
非公式な場ではあったが、英国宰相ロイド・ジョージはロンドン海軍軍縮会議について明言していた。その意は駐日大使テッド・ハーグリーヴスから平成会、そして海軍に伝わっていたのである。条約明けを見越して、今のうちに設計だけでも進めておこうというのは当然の動きであろう。
「それでは藤本主任。説明を頼む」
1931年3月某日。
艦政本部造船部では、新型戦艦の設計に関する詰めの会議が進行中であった。
「こちらが現在計画中の新型戦艦の概念設計になります。従来艦に比して、バイタルパートの延長とダメージコントロールの充実に重きを置いています」
藤本喜久雄造船大佐が、テーブルに青写真を広げる。
史実と同じく艦政本部第四部基本設計主任として新型戦艦の設計を進めていたのである。
ちなみに、史実では1935年に脳溢血で急逝した藤本はこの世界では生き永らえることになる。自宅で倒れたその日、偶然通りかかった医療チームの迅速な手当で一命を取り留めたのである。もちろん、才能の喪失を惜しんだ平成会の仕込みであったことは言うまでもない。
「図面を一見した感じでは金剛代艦の影響が強いな」
「後部に主砲塔を1基追加して艦尾を延長しような感じだな」
「両舷にケースメイト砲塔が無いからすっきりして見えるな」
藤本の設計は、かつて計画されていた高速戦艦『金剛』の代艦として設計が進められていた図面を流用したものであった。ロンドン海軍軍縮会議によって計画が中止されたものをリサイクルしたのである。
「弾火薬庫はともかく、機関部の装甲が薄くないか?」
「弾火薬庫を抜かれれば間違いなく轟沈します。しかし、機関室ならば行動力を失っても浮いていることはできるし、砲撃を続けることも出来ます。どちらを優先するべきかは自明の理でありましょう」
「むむっ、確かに。実戦を考えると妥当な判断ではあるな……」
藤本の設計の特徴は重要防御区画の延長であった。
史実の帝国海軍の戦艦は被弾面積縮小と装甲厚確保の観点からバイタルパートを短縮する傾向があったのに対し、藤本の設計した新型戦艦は真逆を行っていたのである。
「もちろん、無対策というわけではありません。被弾時の応急処置や復旧能力を強化して継戦能力を確保します」
史実の藤本はダメージコントロールの充実に熱心であった。
この新型戦艦にもダメコンの概念が積極的に取り入れられており、専門の応急班を組織するつもりであった。他部署から必要に応じて人員を借りていた従来艦と比べれば格段の進歩と言えた。
「機関部の防御に関しては、シフト配置も導入します。被弾時の全滅を避けるのに効果がありますし、ダメコンと組み合わせればさらなる抗堪性が期待出来ます」
新型戦艦にはシフト配置が導入されていた。
シフト配置は前後に機関を分散配置するため、1発の被弾で機関が全滅するリスクを減少させる効果が期待出来たのである。
防御的にはメリットが大きいシフト配置であるが、デメリットも存在した。
機関部そのものが長くなるために防御装甲も長くなってしまい、最終的に船体も長大化してしまう。さらには、建造にも手間がかかってしまうのである。
しかし、上述のデメリットは従来の方式で艦を設計した場合である。
全てを同一のバイタルパート内に収めようとするから無理があるのであって、藤本式の独立したバイタルパートで構成すればさほど問題にはならない。それでも艦の長大化と建造の手間は避けられないのであるが……。
「シフト配置のメリットは分かった。しかし、肝心の機関は何を搭載するつもりかね?」
「可能ならばディーゼルを搭載したいのですが……」
口を濁す藤本。
彼としてはディーゼルを搭載するつもりであった。
史実の大和型戦艦へディーゼル機関の搭載が検討されたのは当時の日本の燃料事情故であったが、この世界の日本は産油国であるため燃料には事欠かない。それでもなお、藤本がディーゼル搭載に拘ったのは燃費以外にメリットを見出していたからである。
大出力であっても大型で嵩張る蒸気タービンをシフト配置すると艦の長大化は避けられない。史実アイオワは大出力蒸気タービンで高速性能と燃費を両立させることに成功したが、機関の全長は艦の半分をも超えていたのである。
その点、出力に劣っても比較的小型な艦船用ディーゼルならばシフト配置しやすい。シフト配置でなくても、分散配置すれば被弾時のリスク軽減につながるのである。
「ディーゼルか……しかし、適当なエンジンがあるか?」
「現状だと潜水艦用のエンジンくらいしか思いつかないな」
「あれを100基積んだって30ノット発揮は無理だぞ? とてもじゃないが馬力が足りん」
「そういえば、英国の戦艦がディーゼルを搭載したという話を聞いたな。参考にならないか?」
搭載する機関については後日再検討をするとされた。
オールタービンのシフト配置で設計を進める一方で、ディーゼル機関の開発を促進する方針となったのである。
「副砲は艦中央部両舷に3基ずつか」
「副砲は妙高の主砲をそのまま搭載します。口径こそ15.5サンチですが、20サンチ並みの威力と射程を期待出来ます」
「砲門数ではではケースメイトよりも劣るが、手数と指向範囲の広さでカバー出来そうだな」
副砲は妙高型巡洋艦の主砲を6基搭載する予定であった。
艦の中央部に片舷3基ずつピラミッド状に配置されたのである。
『20サンチよりも15.5サンチのほうが良いに決まってるだろJK』
『どう考えても史実の主砲換装は悪手だよなぁ』
『早い段階で15.5サンチ砲を開発して巡洋艦の主砲のスタンダードにしてしまおうぜ!』
なお、この世界の日本の巡洋艦の主砲は15.5サンチがデファクトスタンダードであった。その性能に惚れ込んだ海軍の平成会派が暗躍した結果、60口径15.5cm3連装砲が早期に実用化されていたのである。
この世界では重巡の保有トン数の制限もカテゴリ分けもされていなかった。
軽巡と重巡という概念も存在しないわけで、日本海軍では15.5サンチ砲搭載の『巡洋艦』が続々と進水していたのである。
「大まかな設計方針はこれで良いと思う。細部の設計を進めてくれたまえ」
「ありがとうございます!」
いくつかの問題はあったものの、艦政本部第四部での戦艦設計は順調であった。
条約明けと同時の新型戦艦起工を誰もが信じていたのである。
「……米国がサウスダコタ級を新たに4隻配備したというのは本当なのか?」
「情報の出どころは英国だ。確かな情報だろう」
「最悪の場合、サウスダコタ級10隻を同時に相手にすることになるのか……」
1932年8月某日。
水交社が経営する喫茶店の片隅で、佐官クラスの軍人たちが密談の最中であった。
彼らは海軍砲術学校出身者であった。
砲術のスペシャリストとして砲術長や副砲長として乗り組み、やがては艦長や海兵団長、戦隊司令官や艦隊司令官へ出世する海軍の花形。史実では鉄砲屋(砲術関係者)と言われた軍人たちであり、この世界においても戦艦派として根強い勢力を保っていたのである。
「現状では我が方の40サンチ砲搭載艦は6隻、対する米国は10隻だ。いかに速力で優位とはいえ苦戦は免れまい」
「砲門数で比べるともっと悲惨だぞ? 我が方は60門に対して米国は倍の120門だ」
「距離2万での命中率は我が方が3倍ということを考慮しても、厳しい戦力差だな……」
彼らは戦艦のポテンシャルを最大限に引き出せると自負していたが、同時に限界も知悉していた。対米戦に対して最も危惧を抱いている一派であり、大西洋に極秘裏に配備されたサウスダコタ級戦艦は無視出来ない存在だったのである。
「だからこそ条約明けに建造される新型戦艦が重要なのだ」
「しかし、新型は2隻しか建造されないという噂だぞ?」
「それでも数の差は2隻に縮まる。あとは彼我の速力差と命中率でなんとかなるだろう」
新型戦艦は金剛級を置き換えることが目的だったので、4隻の建造が予定されていた。しかし、建造費がバカ高い戦艦を4隻も建造することに水雷屋やドン亀乗り、さらには空母マフィアたちが猛反発した。不必要に他列強を刺激したくない外交配慮も加わって、建造は2隻に減らされてしまったのである。
「米国が何もしなければ、それで問題は無いだろうな」
「……何が言いたい?」
「米国の工業力をもってすれば、戦艦なんぞ簡単に建造出来るということだ。あの国が本気になれば、差は広がりこそすれ縮むことは無い」
「「「……」」」
敢えて考えないようにしていたことを指摘されて男たちは沈黙してしまう。
サウスダコタ級6隻を同時に建造しただけでなく、それでも足りぬとばかりに追加で4隻建造してしまう圧倒的な工業力に対抗出来るのは英国だけであろう。
「数で対抗するのは愚策か。分かってはいたが……」
「質で対抗するとなれば、46サンチ砲を搭載するべきだろう」
「しかし、砲の開発が出来るのか?」
「46サンチ砲の試射は成功している。問題無い」
数的優位を維持出来ないのであれば、質的優位を確保しようと男たちは考えた。
史実の帝国海軍においては個艦優秀主義が流行ったが、この世界でも同様の流れを辿ろうとしていたのである。
「そもそも10年ぶりに建造される戦艦で、しかも艦隊旗艦が予定されている船が従来艦と同じ武装では示しがつかんだろう」
「元より新型戦艦が40サンチ砲を搭載しているのは納得いかなかったのだ。46サンチなら文句は無い」
「嗚呼、米艦隊をアウトレンジで一方的に殴る姿が思い浮かぶ……」
史実長門の40サンチ砲弾と大和の46サンチ砲弾を比較すると、運動エネルギーは1.58倍以上、貫通力は1.2倍、爆発力に至っては2.3倍近い差がある。彼らが46サンチ砲(18インチ)に拘る理由であり、新型戦艦が46サンチ砲を積むことは既定事項になりつつあったのであるが……。
「ちょっと待った。確かに46サンチの威力は戦術的には申し分ない。しかし、ここは戦略的な意義に則って敢えて51サンチ砲の搭載を提案したい」
しかし、これに異を唱える男がいた。
あくまでも戦術レベルでの優位を確保しようとする大多数の意見に対して、彼は戦略的な観点で51サンチ砲の搭載を主張したのである。
「……現在の航空機の発展は脅威だ。いずれ戦艦を脅かす存在になるだろう。駆逐艦や潜水艦でも同じことが言える。今後も戦艦が戦艦足り得るためには、戦艦にしか出来ないことを今のうちに見出す必要がある」
「言わんとしていることが分かるが。具体的にはどうするつもりだ?」
この時代において戦艦は核兵器に等しい扱いであったが、昨今の兵器の発展はめざましいものがあった。戦艦がやれる事を別の兵器で安価に実現出来るようになれば、バカ高くて使いにくい戦艦はお払い箱にされかねないのである。
「鍵はハワイにある。対米戦の最初の障害となるであろうハワイを初手で無効化出来れば、太平洋の制海権奪取に有利となるだろう」
「そうか! ハワイの砲台を無力化する手があったか!」
「51サンチ砲ならばオアフ島要塞を一方的にアウトレンジが可能だ。あとは陸戦隊を送り込むだけで済む」
ハワイのオアフ島要塞に据え付けられた16インチ砲は全周囲への砲撃が可能であり、射程と命中率で戦艦の41サンチ砲よりも優位であった。しかし、51サンチ砲の威力と射程ならば一方的に破壊することが可能になるのである。
「艦砲射撃ならば悪天候でも実行可能だ。確実にオアフ島要塞を破壊することが出来るだろう」
「この点、悪天候ですぐ飛べなくなる飛行機に比べて優位だ。まさに戦艦にしか出来ないことであるな」
「素晴らしい! 新型戦艦は51サンチ砲搭載で決まりだなっ!」
51サンチ砲搭載案は満場一致で支持されることになった。
しかし、まだ問題が残っていた。唯一にして最大の問題を解決する必要があったのである。
「艦政本部での設計は着々と進んでいる。資材手配の都合上、来年の初頭辺りにはこちらも設計を完了する必要があるぞ」
「その点については心当たりがある。今は中央から追われているし、後輩への意趣返しが出来るとあらば二つ返事で引き受けるだろう」
「そういうことならば貴様に任せよう。よろしく頼むぞ」
艦政本部で設計が進められている新型戦艦への対抗馬が誕生した瞬間であった。
しかし、彼らは知らなかった。新型戦艦に不満を抱いているのは自分たちだけでは無かったのである。
「お、お呼びでしょうか所長? まだ何もやらかしてないんですけど?」
「コミケで売った模型は端材で作ったやづだからセーフですよね!?」
「なんでもいいからお説教は勘弁してください!?」
帝都中央区築地に所在する海軍技術研究所。
その所長室には哀れな子羊たちが集められていた。
「君たちは儂を何だと思っているのかね?」
険しい表情で所員(じつは平成会のモブ)を睨みつけるのは所長であった。
海軍技術研究所所長――平賀譲は、とある目的のために彼らを呼びつけていたのである。
ちなみに、この世界の平賀は海軍造船少将として未だに現役であった。
海軍上層部の不興を買って欧州視察の名目で海外に飛ばされたあげく、海軍技術研究所に左遷されたのは同様であったが。
「まぁ良い。今回君たちを呼んだのは、先日見せてもらった模型のことだ」
「あのネルソン……じゃなかった、イギリスで検討されていたやつを再現した模型のことですか?」
「うむ。あの模型はじつに良く出来ていた。わたしが依頼された新型戦艦の設計に参考になるので、詳細について聞きたいのだ。で、あの戦艦はどのようなコンセプトなのかね?」
モブたちは海軍技術研究所で艦船模型作りのサークルを起ち上げていた。
各種技術実験で余った端材を用いてフルスクラッチで模型を製作していたのである。
『こんな時間に何をやってる貴様ら!?』
『『『げぇっ!? 所長!?』』』
しかし、退勤時間後にひっそりと悦に浸っていたのが運の尽きであった。
暗くなった研究所内で唯一明かりがついていれば、平賀の目に留まってしまうのは必然だったのである。
「……えーと、イギリスの造船所で計画されてたヤツです。確かロンドン海軍軍縮会議で戦艦の基準排水量が3万5千トンに抑えられる可能性を考慮して、最大限の火力と装甲を追求した艦形だと聞いています」
即興で考えたガバ設定で誤魔化すモブ。
史実のネルソン級を再現しましたなどと言えるわけもないのである。
モブたちが知る由も無かったが、ロンドン海軍軍縮会議でも戦艦の基準排水量に制限を加える意見はあった。しかし、そんなことをすれば建造中の戦艦に設計変更を強要することになるので他の列強から恨まれかねない。当時の英国は建艦競争を止められれば良しとしていたので、基準排水量の制限は撤廃されていたのである。
「わたしが受けている依頼は51サンチ砲を搭載しつつ、30ノット発揮可能な戦艦だ。それを実現するには君たちが作った艦形がベストだと考えているのだよ」
幸いというべきか、モブはそれ以上追求されることはなかった。
良くも悪くも平賀は仕事人間だったのである。
「51サンチ砲を前部に集中させることでバイタルパートを圧縮するわけですね」
「その通り。よく勉強しているじゃないか」
平賀はモブの発言に目を細める。
役職付きならともかく、顔も知らないヒラ所員が自分の設計を理解したことに感心していたのである。
「しかし、前部に集中させると斉射したときの爆風対策が必須になると思いますが?」
「そこは艦橋の構造物を強化することで対策する」
「長門には発砲遅延装置が採用されていたはずです。この戦艦にも採用するべきかと」
「確かにその通りだ。いや、本当によく勉強しているな」
モブたちの意見具申にますますもって感心する平賀。
それもそのはずで、生前の彼らは某サイトの掲示板で架空艦を発表するほどの艦オタたちだったのである。
21世紀ならばネットでいくらでも情報収集が可能であるし、詳細な書籍も多数出版されている。モブたちの戦艦に対する見識は、そんじょそこらの帝大出のエリート造船技官など足元に及ばないレベルに達していたのである。
「気に入ったぞ貴様ら! この図面を見てもらおうか」
そう言って平賀は図面を取り出す。
デスクに広げられたのは、主砲を艦首に集中配備した戦艦の図面であった。
「姿あるものは必ず滅す。軍艦は必ず沈む。しかしこの戦艦には不死身を与えよう……儂はそう思っている」
図面を見ながら、しみじみと語る平賀。
しかし、その目には狂気とも思える光が宿っていた。
『船作りは上手いが軍艦作りの能力の無い造船官』
――というのが、史実の平賀譲に対する海軍関係者の評価である。
史実の平賀は自説を曲げず、時には用兵側に逆らうことすら平気でやってのけた。用兵側の意見を最大限取り入れて、その結果生じる無理は新技術で克服しようとした藤本喜久雄とは対照的と言える。
身も蓋もない言い方をすれば、現場の意見を取り入れないカタログスペック至上主義とも言えなくも無い。実際、史実でも性能を追求するあまり現場を混乱させているのである。
しかし、それは戦争を知らない戦後世代なモブたちも同様であった。
意気投合した平賀とモブたちは、新機軸を積極的に取り入れていったのである。
以下、取り入れられた新要素である。
・艦体後部に配置された副砲を艦体中央の両舷へ移設してバイタルパートを短縮
・主機をディーゼルにしたうえで多段配置にしてバイタルパートをさらに短縮
・バルバスバウの採用で艦の全長を短縮
・バイタルパートは箱状にして必要なモノを全て収納して集中防御を徹底化
・発砲遅延装置を採用して斉射時の爆風被害の軽減
・艦体後部は航空甲板を設置して弾着観測機と防空直掩機の運用が可能に
これらの要素が取り入れられた結果、バイタルパートは全長に対して50%以下となった。これは史実の大和型戦艦よりも短いものであり、その分装甲を分厚くすることが可能になった。これは箱状に構成された装甲板のモノコックとでも言うべきものであって、過去に例が無いほど強固なものであった。
その他にも徹底的な水槽試験による抵抗の少ない艦体形状の追求や、艦首部へのバルバスバウの採用による全長の短縮。航空戦艦としても運用可能な艦体後部の充実した航空艤装などなど、極限まで効率を追い求めた艦形となっていた。
平賀とモブたちの合作と言える新型戦艦は、艦政本部が設計している新型戦艦に対抗馬としてぶつけられることになる。艦隊派としてはもちろん勝って欲しいが、最悪でも計画を御破算に出来れば良しと考えていたのである。
しかし、艦隊派は知らなかった。
自分たち以外にも艦政本部の新型戦艦に不満を持つ者たちがいたということを……。
「……なぁ、艦政本部が構想している新型艦についてどう思う?」
「兵站上の問題で16インチを積むのは致し方ない。しかし、なんというか華が無いな」
「やっぱりそう思うか? なんか武骨過ぎて歓迎出来ないんだよな。機能美と言ってしまえばそれまでなのかもしれないが」
今日も今日とて、笑顔が絶えない素敵な職場である内閣調査部。
その片隅でランチを摂る『戦艦大和愛好会』のモブは不満たらたらであった。
必要と認めた場合、内閣調査部は陸軍と海軍の重要会議に参加出来る特権があった。彼らが海軍の機密事項である新型戦艦について知り得ているのは、艦政本部の会議に出席していたからである。
3年前に起きた陸軍の青年将校の暴走は日本の軍部全体を震撼させた。
英国との外交問題待ったなしという状況で、テッドとの関係を取り持ったのが内閣調査部だったのである。
内閣調査部が動かなければ、英国との断交の可能性すらあった。
この一件以来、陸軍も海軍も内閣調査部に頭が上がらなくなったのである。
軍部が重要な会議に内閣調査部のモブを招待するのは二心がないことを表明するためと言える。とはいえ、強制参加というわけではない。これまでは必要に応じて参加する程度であった。
閑話休題。
とにもかくにも、戦艦大和愛好会のメンバーは艦政本部の新型戦艦に大いに不満であった。ならばどうするか?
「やはり我々がこの世界に戦艦大和をもたらすべきだろうな」
「もちろん史実そのままでは芸が無い。改良も加える必要があるだろう」
「俺らの考えた最強の大和ですね。分かります」
「よし。図面を作成して殴り込みだ! メンバー全員を招集しろっ!」
「「「応っ!」」」
戦艦派に続く第三勢力が誕生した瞬間であった。
史実の大和をこの世界に顕現させたい一心で、彼らは総力を結集し始めたのである。
「……何は無くても速力を改善する必要があるな」
「史実だと鈍足って言われまくりましたからねぇ」
「つーか、史実のサウスダコタとキング・ジョージ5世も27ノットじゃないか。鈍足呼ばわりされる理由は無いぞ」
大和が好き過ぎるモブたちが最初に着手したのは速力の改善であった。
大和型が批判される要素の一つが速力だからであるが、実際の速度は列強の新型戦艦と大差は無い。
「全くもってアイオワは許せんよなぁ……!」
「あれだって完全にカタログスペックで、まともに砲戦出来るもんじゃないだろうに」
それにもかかわらず鈍足呼ばわりされるのは、アイオワ級が原因である。
過負荷限界35ノットという数値は、大和(と同時代の戦艦)を完全にぶっちぎっていたのである。
「大和に30ノット発揮させことは不可能じゃない。ただ……」
「あの美しいラインを損ねるのは論外ですよ? それをやったら、ここにいる全員が敵に回ることを覚悟してもらわないと」
「無論だ。あの大和坂の景観を損ねることだけは絶対に避けねばならない」
他国の戦艦とは一線を画す美しいラインが史実大和が愛される理由と言える。
それ故に、艦全体のラインを崩すような改変はNGだったのである。
「まずは機関出力の強化だな」
「史実だと旧式駆逐艦のパワーユニットをさらにデチューンしてましたからね。最新のヤツに変えるだけでもだいぶ違ってくるはずですよ」
「今は特型のバッチ3だったか? あれを積めば20万馬力近く出るだろう」
「でも、あれってタービンがオリジナルより嵩張りますからそのまま流用は無理ですよ」
「そこらへんは配置を弄る必要があるか。まぁ、スペースに余剰はあるから問題無い」
モブたちが最初に着手したのは機関の強化であった。
史実では初春型の艦本式高低圧タービンとボイラーを長期信頼性向上のために定格下げして15万馬力を発揮していたが、この世界では現在建造中の特型改3型(史実陽炎型相当)を流用することになった。その結果、19万馬力以上の出力を確保することが出来たのである。
「あとはバルバスバウか。これを高速発揮向けに改良すればいけるか?」
「この時代にシュミレーターは無いからな。徹底的な水槽試験が必要になるぞ」
「傘下の造船所でそういった設備があるところを探さないと……」
馬力とバルバスバウの改良で30ノット発揮を目論んだモブたちであったが、最終的に10mの艦首延長を余儀なくされた。全体のラインを壊さないようにモブたちが死に物狂いで艦のラインを整えたのは言うまでもないことである。
「魚雷攻撃を考えると中央の隔壁は要らない子だな」
「撤去して浮いた分を他に回したほうが良いでしょうね」
「両舷に均等に浸水するから被雷時の注排水を減らせる。防水区画が減って施工しやすくなるから良い事尽くめだな」
史実大和は過剰なくらいに防御に気を使った艦であったが、唯一の例外が艦体中央に配置された水密縦隔壁である。この隔壁は艦体の強度を増すだけでなく砲撃の被害を局限化出来たが、魚雷攻撃に対する被害を増大させてしまう欠点があった。モブたちによる設計改変は、縦隔壁を撤去したうえで横隔壁を強化して魚雷攻撃の被害を軽減化することを目指していた。
「あとは電気溶接の積極的採用かな」
「ドーセット公のおかげで、最新の溶接技術と非破壊検査技術が手に入った。艦体をオール溶接にしても問題無い!」
「いや、さすがにそれは熟練工が足りなくなるから無理じゃないか?」
史実の大和型はリベット接合が多用されていた。
強度に影響が出ない部分には溶接が採用されていたが、その分重量が増加してしまったのは否めない。この世界では溶接を積極的に採用することで軽量化を図ることになったのである。
「ふ、ふふふ……出来た!」
「これが俺らの考えた最強の大和だ!」
「くっくっく。艦政本部の奴らが慌てふためくのが目に浮かぶわ!」
史実大和を愛するモブたちが作った『俺らの考えた最強の大和』は膨大な手間と予算的な意味で関係者をの心胆を寒からしめることになる。現場を知らないモブたちは、造船所の設備やキャパを一切合切考慮しないオンリーワンな戦艦を一から建造すればどうなるのかを考慮出来なかったのである。
「日本が新型戦艦の建造を考えているだと!?」
モスクワのクレムリンの執務室。
側近からもたらされた情報に部屋の主は声を荒げていた。
(いや、条約明けも近いのだから普通は戦艦の建造を考えるだろ)
そんなことを考えていた側近であるが、おくびにも出さない。
好き好んでシベリア行きの切符を欲しがる人間はいないのである。
「……国内の造船所で戦艦建造は可能か?」
スターリンは探るような目付きで側近に質問する。
ここで返答をしくじれば確実にシベリア行きであろう。
「不可能ではありませんが時間がかかります。建造費用も高騰することになるでしょう」
「やむを得ん。アメリカに依頼しろ。資源と労働力のバーターであれば嫌とは言うまい」
この世界のソ連は過去にアメリカに戦艦の建造を依頼した実績があった。
メイドインUSAな戦艦は現在のソ連海軍で問題無く運用されており、今回も問題無いはずだったのである。
「建造出来ないだと!? どういうことだ!?」
「は、はい。アメリカの造船所はどこも手一杯で注文を受ける余裕が無いとのことです」
しかし、この頃のアメリカはヴィンソン計画による海軍再建プロジェクトの真っ只中であった。戦艦が建造出来る造船所は真っ先に押さえられており、ソ連の注文に応えられる状況では無かったのである。
「同志スターリン。イタリアに建造を依頼しましょう」
シベリア行きが確定寸前であったが、側近は名案を思い付いた。
それは天啓というべきものであった。
「イタリアだと?」
「はい。あの国の造船所には比較的余裕があります。戦艦の建造にも嫌とは言わないはずです」
「……良いだろう。イタリアに頼むことにしよう」
アメリカに戦艦建造を依頼出来なくなったソ連はイタリアを頼った。
ソ連の新型艦は、イタリアの新型戦艦の姉妹艦とでも言うべき仕上がりになるのである。
「カエル喰いの奴ら正気か?」
「あいつらの考えることは分からんな。ジャガイモ野郎も迷走してるっぽいし」
「おかげでこっちは助かるんだがな」
列強の一角であるイタリア王国であるが、他国とは違い条約明けの戦艦建造を考慮していなかった。史実ではダンケルク級やリシュリュー級への対抗として戦艦を建造したのであるが、この世界の新生フランス共和国はそれどころでは無かったのである。
「我が海軍には守護神と決戦兵器のミニャッタがある。地中海の覇者の座は譲れん」
「たとえフランスやドイツが新型戦艦を持ってきたとしても我らの勝利は揺るがんよ」
イタリア海軍が強気なのは、フランチェスコ・カラッチョロ級戦艦4隻と決戦兵器ミニャッタの存在であった。地中海に存在する小島にはミニャッタを運用する基地が整備され、戦艦をエサにしてミニャッタで必殺の一撃を叩きこむ戦術に絶対の自信を持っていたのである。
「……ソ連から戦艦建造の依頼が来たぞ!?」
「ちょうどいい。ソ連の金で戦艦の研究をさせてもらおう」
「悪く無いな」
イタリアがこれまでの方針を撤回して戦艦建造を決意したのは、内密にソ連から戦艦建造の打診を受けたからであった。30ノットを発揮出来たり、副砲をやたらと重防御したり、水雷防御にプリエーゼを採用したりと、新機軸てんこ盛りの戦艦として完成することになるのである。
「新型戦艦には38cm砲を積むべきだ!」
「射程40kmにも満たない普通の砲弾を積んでどうする!? これまで通りペーネミュンデ矢弾を搭載したほうが良いに決まってる!」
「陸上支援ならともかく、対艦戦にあんな砲弾使えるわけないだろ!?」
ドイツ帝国でも条約明けを見越した新型戦艦の構想が持ち上がっていた。
最大の焦点は主砲に通常タイプの砲を積むか、従来のペーネミュンデ矢弾を積むかであった。
過去のクリスマス開戦で絶大な戦果を挙げたペーネミュンデ矢弾であったが、その本質は陸軍の榴弾砲と大差無い。150kmという驚異的な射程を誇るものの、艦砲として見ると散布界が広くて命中率は劣悪であった。命中率をカバーするには砲を多く搭載する必要があり、垂直2連砲はその解決策なのである。
異常な初速と細長い形状により貫通力こそ高いものの、矢弾の炸薬量が小さいために破壊効果に欠けるという欠点もあった。非装甲区画に命中しても貫通して小さな破孔を生じるだけであり、それこそ弾薬庫に直撃でもしないと致命的なダメージを与えるのは難しかったのである。
「いっそ38cm砲をボーリングして41cmペーネミュンデ矢弾にするのはどうだ?」
「その場合、垂直2連に出来るか?砲弾が巨大化するから砲塔もでっかくなっちまうんだが?」
この問題を解決するべく、より大口径なペーネミュンデ矢弾の開発も提案された。しかし、実現した場合の砲弾の長さは3mに迫るものとなり艦砲として扱えるか疑問視されていたのである。
「どっちでも良いから早く決めてくれないかねぇ?」
「仕方がない。艦体の設計から進めておこう」
「とりあえず38cm砲を搭載前提にしとこうぜ。矢弾は軽いからどうにでもなるし」
条約明けまで時間が残されていないため、ドイツ帝国の新型戦艦は見切り発車の形で設計が進められていった。この時点では、条約明けに起工される新型戦艦の砲がどちらになるかは誰も知りようが無かったのである。
「イタリアもドイツ帝国も条約明けを見越した新型戦艦を開発している。我らも後れを取るわけにはいかん!」
フランス共和国でも以下略。
しかし、この国は他の列強とは実情が異なっていた。
「そんな予算がどこにあるんだ? 海軍の予算の大半はプリマージの建造に消えてるんだぞ」
「設計だけでも進めておくべきだろう。条約明けと同時に建造は難しいだろうがな」
「あんなデカブツ何の役に立つってんだよ……」
現在のフランス共和国は、文字通り国を挙げて超巨大飛行船『プリマージ』を建造中であった。必要な予算はありとあらゆる場所から捻出されたのであるが、最も割を食ったのが海軍予算だったのである。
『我が国は全く新しい飛行船を建造する。飛行船の真の価値を世界に知らしめることになるだろう』
フランス・コミューンを打倒し、再統一を果たした新生フランス共和国の前途は多難であった。旧フランス・コミューンとの経済格差、雇用問題、国威発揚、その他諸々の問題を解決するべく、フランス共和国大統領フィリップ・ペタンはプリマージの建造を強行していたのである。
「いや、ちょっと待て。プリマージから爆弾を落として戦艦を沈められないか?」
「その発想は無かった。おまえ天才か!?」
「あのデカブツなら多少デカい爆弾でも問題無いだろう。そうと決まれば、早速設計をせねば!」
海軍にとってプリマージは戦艦整備の予算を奪った憎い存在であったが、戦艦を沈める手段となり得れば話は違ってくる。このことに気付いたフランス海軍の一派は嬉々として開発を進めていったのであるが……。
「……いやでも、これって空軍の管轄じゃね?」
「何を言う!? 海軍の予算の大半を使ってるだぞ!? プリマージは海軍のものに決まってるだろ!」
「てめぇら何勝手に開発を進めてるんだ!? アレはうちのモノに決まってるだろうが!」
「「「げぇっ!? 空軍!?」」」
某H〇I4でぶっちぎりに低い国民団結度は伊達ではない。
お約束の縄張り争いが勃発して迷走していくことになるのである。
列強だけでなく、それ以外の国家でも条約明けを見越した戦艦の設計が進められていた。抑えつけられた10年分の反動が、条約明けで解放されたときに何が起きるのか。そのことを正確に予見し得る人間は何処にもいなかったのである。
「予想はしていたが、なかなかに酷い状況であるな」
「10年分の反動というやつでしょう。ここまでとは思いませんでしたが」
大英帝国の首都ロンドンの首相官邸。
その執務室では宰相ロイド・ジョージと海軍大臣ウィンストン・チャーチルが書類の山を確認中であった。
テーブルには条約明けを睨んだ各国の戦艦建造についての詳細が積み上げられていた。列強だけでなくトルコやギリシャ、アルゼンチンなども戦艦を建造するために動いていたのでレポートの量は膨大であった。
「戦艦建造を封じて陸軍へ予算を回すことで対ソ包囲網を構築する目的は一応達成出来たと言ってもよいな」
「条約が発効する前に比べて欧州全体の陸軍戦力は跳ね上がりましたからね」
ロンドン海軍軍縮会議が発効されたのは、過剰な建艦競争を抑制する狙いがあった。もっとも、建艦競争が起きる原因となったのは英国の要請による日本の扶桑型戦艦の欧州派遣だったりするのであるが。典型的なブリカス仕草というやつである。
「ドイツと二重帝国の陸軍力が突出することになりましたが、全てが対ソ戦に振り向けられれば問題無いかと」
「それに関しては問題あるまい。ドイツのカイザーは雪辱に燃えているし、二重帝国の皇帝は『聖戦』の遂行にご執心だからな」
英国の筋書きは欧州全体が一致団結してソ連と対決することであった。
しかし、現状はドイツ帝国と二重帝国(オーストリア・ハンガリー帝国及び南欧諸国連邦)という2大陸軍国家がソ連と睨み合う構図になっていたのである。
「確実を期するためにも、条約を延長するべきでは? このままでは戦艦建造で再び陸軍の予算が吸い上げられてしまいますぞ」
「延長したいのは山々なのだが、元から条約に加入していないアメリカがどうなるか想像もつかんからな……」
英国がロンドン海軍軍縮会議の更新を断念したのは、アメリカの動きが原因であった。軍縮条約に加入していないことを良いことに、ヴィンソン計画で海軍のリニューアルを急速に進めていたのである。
「アメリカの現状を座視するわけにはいかん。海軍としてはどう対応するつもりかね?」
「老朽化で予備艦に指定したクイーンエリザベス型高速戦艦の初期タイプに大規模近代化改修を適用して復帰させます。1年以内にFRAM適用艦は10隻程度まで増やせるでしょう」
FRAMは艦齢10年以上のQE型戦艦に実施される近代化改修である。
その内容は、機関の換装、艦首の成形とバルバスバウの装備、砲塔換装によるSHSへの対応、箱型艦橋とバイタルパート内へのCICの設置、レーダーの装備、対空火器の増設など多岐にわたる。これらの改装によって、今後30年は運用することが見込まれていた。
改良型を含めれば40隻近く建造されたQE型高速戦艦であるが、現在のロイヤルネイビーが全てを運用しているわけではない。特にユトランド沖海戦の勝利の立役者となった初期タイプは予備艦としてモスボール保管されていた。
戦艦は維持するのに金がかかるが、解体するにも金がかかる。
英国海軍はQE型(初期ロット分)を予備艦にしてモスボール保管することで当面の維持費を抑えつつ、必要に応じてFRAMを施して現役復帰させることで予算の削減を狙っていたのである。
「やむを得ないか。記念艦として押し付けるために塩漬けにしていたのだがな……」
ロイド・ジョージは、予備艦のまま植民地や自治領が独立した際には記念艦として押し付け――もとい、贈呈することを考えていた。その場合はFRAMを適用する必要が無いのでお安く済むわけである。早くもプラン崩壊してしまったのであるが。
「そういえば、テッド君からの要請はどうします?」
「あぁ、ヴィッカースとの技術提携か。以前も潜水艦のエンジンで協力しているし、今回も問題無いだろう」
艦政本部が設計を進めている新型戦艦は主機にディーゼルを採用することが決定していた。しかし、国産の大出力ディーゼルは信頼性がイマイチなために英国に技術支援を願い出ていたのである。
過去に呂号潜水艦の主機の開発で三菱とヴィッカースは技術提携しており、三毘式ディーゼルとして既に実用化されていた。今回の技術提携も成功して艦本式13号ディーゼルとして完成することになるのである。
「ネイピア・アンド・サンに日本から照会があっただと? テッド君、いや、駐日大使館を介さずにか?」
青天の霹靂とでも言うべき報告にロイド・ジョージは眉をひそめる。
平成会からの技術支援の窓口はテッド・ハーグリーヴスであり、それ以外のルートはあり得ない。つまりは、この件は別ルートということである。
「ダインコート卿が仲介したようです。如何しましょう?」
「今回は当事者たちへの警告で済ませておこう」
今回の一件は、ユースタス・テニソン=ダインコート準男爵の仕業であった。
史実同様に個人的な親交があった平賀の頼みで、ネイピア社との仲立ちをしたのである。
「よろしいのですか?」
「高い金をかけた割にエンジンの発注が少なくて不満を持つのも分からなくもない。あそこもだいぶ経営が苦しいと聞くからな」
ロイド・ジョージの温情によって、今回の一件は関係者への警告で済まされた。
ネイピア社に対しては事実上のお咎めなし状態であり、新たにFRAMが適用される10隻分の大型艦船用デルティックの発注と日本海軍との取引も認められたのである。
『外国向けの製品で新技術の実験をするのは我が国の伝統である!』
『大型艦船用デルティックでは生ぬるい! モアパワー! モワパワー! モアモアパワーだっ!』
『魚雷艇用のデルティックをターボコンパウンド化して大出力と燃費を両立。これしかないっ!』
しかし、ロイド・ジョージはネイピア社を甘く見ていた。
史実では高い(変態的)技術で色々とやらかしていたが、この世界でも同様だったのである。
ネイピア社が日本海軍向けに提案したのはターボコンパウンド・デルティックであった。QE型(FRAM適用)の大型艦船用デルティックを提供すれば良いのに、わざわざ新規開発してしまったのである。もっとも、他所様で新技術の実験をするのは英国の伝統とも言える。
そもそも、このエンジンは魚雷艇用のデルティックを素直に大型化した大型艦船用とは完全に別物であった。大型化して出力を確保するのではなく、そのままのサイズにターボコンパウンド機構を組み込んだものであり、わずかに大型化しただけで比類なき出力と燃費の両立に成功していたのである。
史実では試作のみで終わったターボコンパウンド・デルティックであったが、この世界では帝国海軍にライセンスが供与されることになる。その過程のすったもんだで関係者の首が飛んだり、謝罪行脚に追われたのであるがコラテラルダメージというやつであろう。
その一方で、ライセンス供与に成功したネイピア社は日本海軍を上客と判断していた。以前やらかしてロイド・ジョージに怒られたので、正当な手順――テッドを通して売り込みを図ったのである。性能が尖り過ぎたゲテモノエンジンのセールスが成功するかどうかは今のところ未知数であった。
関係者の悲喜こもごもを生み出したこのエンジンは、肝心の海軍での採用例は少なかった。性能は素晴らしいものがあったものの、汎用性と扱いやすさで艦本式ディーゼルに劣っていたからである。武人の蛮用を好む帝国海軍には体質的に受け入れられなかったとも言える。
「……英国の技術協力により、ディーゼルエンジンの実用化に目途が尽きました。当初の計画で進めていこうと思います」
1934年1月某日。
艦政本部での新型戦艦の設計は詰めの段階を迎えようとしていた。
しかし、藤本は気が気でなかった。
自分の先輩で前任者でもある平賀が今回の技術会議に参加していたのである。
「藤本君、君の設計方針については理解はしているつもりだ。だがしかし、君の設計には防御が足らん!」
「ダメージコントロールの充実だと? それが不必要と言うつもりは無いが、回復出来なければ意味は無い!」
「損害を受けた後でなく、損害を受けないように考えるのが戦艦設計の常道なのだ!」
果たして、藤本の心配は現実のものとなった。
我慢が限界を超えてしまったのか、怒涛の勢いで自説を展開し始めたのである。
「……そして見よ! これこそが儂の考える不死身の超戦艦であるっ!」
「「「おぉっ!?」」」
わざわざ藤本の図面の上に被せるようにテーブルに広げられる図面。
そこには、51サンチ連装砲を艦首に集中配備した戦艦が記されていたのである。
「なるほど、51サンチ砲でアウトレンジでするわけですな」
「来るべき対米戦の序盤でハワイ攻略の切り札になりますな」
あまりのことに藤本が呆然としているうちに、部員たちの中にも平賀案に賛同する者が出てくる。彼らは戦艦派なので、内心では平賀案にもろ手を挙げて歓迎していたのである。サクラとも言う。
「ちょっと待った! 異議あり!」
「いきなりなんですか? 貴方たちは見学者で……」
「だまらっしゃい! そんな横紙破りが許されるならば、俺らだって黙ってられないんだっ!」
この状況で声をあげたのは、オブザーバーとして参加していた内閣調査部のメンバー――戦艦大和愛好会の面々であった。
「そんな美しくない戦艦など新型戦艦に相応しくない! 究極の戦艦はこれだぁっ!」
「ぬぅ、何をする小童が!?」
平賀の図面の上から新たな図面を被せてくるモブたち。
そこには、46サンチ3連装砲を前後に3基バランス良く配置した戦艦が記されていたのである。
「46サンチ砲を9門搭載しつつもコンパクトにまとめてある。しかもこの優美なシルエット! 新型戦艦はこれに決まりだっ!」
「貴方たちは内閣調査部の人間で無関係でしょうが!?」
「そこの爺さんも図案出してるじゃねーか!?」
「誰がジジィだ!? 儂は技術研究所の所長特権があるから問題無い!」
ますますもってカオスとなっていく会議室。
常識人な藤本に、この場をなんとかすることなど出来なかった。
「コラ貴様ら!? 予算誤魔化してるんじゃねぇぞ!」
「2隻建造じゃないのか!? いつの間に3隻建造するって話になってんだよ!?」
「そんなに空母を作らせたくないのか!? この外道どもがぁ!」
カオスな空間に水雷屋、ドン亀乗り、空母マフィアが乱入してくる。
彼らが激怒している原因は、建造される予定の新型戦艦が当初の予定の2隻ではなく3隻に増やされていたからであった。当然ながら自分たちの割り当てが減るわけで、新型戦艦の建造を阻止せんと実力行使に出たわけである。
「何をする離せ貴様ら!?」
「戦艦建造反対!」
「戦艦作る予算があったら空母を作らんか!」
もちろん、部外者である彼らは駆け付けた警備員に排除されたのであるが。
ついでに平賀と内閣調査部も排除してくれれば事態は解決したのであろうが、悲しいことに両者とも関係者なのである。
(……この状況をどうしろと?)
藤本の眼前では、平賀と戦艦派VS戦艦大和愛好会のバトルが繰り広げられていた。天才肌ではあったが、良くも悪くも常識人な彼には止める手立ては無かったのである。
「……土地を祓い給え、工事関係者などに災いが生じないよう守り給え」
1934年4月。
条約明けとなり、日本のみならず世界各国で新型戦艦の建造が始まっていた。
「まさか、あんなことになるとは……」
「完全に予想外だったよなぁ」
平成会のモブが見守っているうちにも、宮司による安全御祈願は進んでいく。
長崎にある三菱造船所では起工式の真っ只中であった。
「今ごろ、呉や横須賀でも起工式やってるのかなぁ?」
「そりゃあ、やっているだろ。この日のために予算と資材を手配したわけだし」
帝国海軍期待の新型戦艦は3隻同時に起工することになった。
他の列強や、それ以外の国でも戦艦の建造が進められていくのである。
以下、今回登場させた兵器のスペックです。
サウスダコタ
排水量:43200t(常備)
全長:208m
全幅:32m
吃水:10.1m
機関:蒸気ターボ電気推進4軸推進
最大出力:60000馬力
最大速力:23ノット
航続距離:12ノット/7000浬
乗員:1120名
兵装:50口径41cm3連装砲4基
53口径15.2cm単装砲16基
50口径7.62cm対空砲8基
53cm水中魚雷発射管単装2基
装甲:水線345mm
甲板64~89mm
主砲塔457mm(前盾) 127mm(天蓋)
司令塔406mm
アメリカ海軍が建造したサウスダコタ級戦艦の1番艦。
同型艦は『インディアナ』『モンタナ』『ノースカロライナ』『アイオワ』『マサチューセッツ』『イリノイ』『ロードアイランド』『ネバダ』『アイダホ』
ヴィンソン計画によって追加で建造されたサウスダコタ級戦艦。
これまでの運用実績により、7番艦『イリノイ』以降は小改良が施されているためサウスダコタ改級と呼称されることもある。
※作者の個人的意見
メラ手形でおかわりが入ったサウスダコタ級です。
10隻で済めば良いんですけどね……(震
新型戦艦(艦政本部案)
排水量:45000t(基準) 49000t(公試)
全長:261.0m
全幅:32.2m
吃水:8.90m
機関:艦本式13号ディーゼル20基4軸推進
最大出力:156000馬力
最大速力:32ノット
航続距離:18ノット/14000浬
兵装:57.7口径41cm3連装砲4基(45口径46cm連装砲4基)
60口径15.5cm3連装砲6基
40口径12.7cm連装高角砲6基
装甲:舷側250mm(最大)
甲板130mm(最大)
主砲塔330mm(前盾)
1931年から艦政本部が設計を進めている新型戦艦。
かつて計画したもののボツとなった金剛代艦の図面を流用したものである。
設計主任である藤本喜久雄造船大佐による新技術が積極的に取り入れられている。
艦の全長に対してバイタルパートが長く取られており、機関部にはシフト配置が採用されている。
蒸気タービンでシフト配置を実現しようとすると艦の半分近い全長になってしまうため、機関にディーゼルを採用している。スクリュー1軸につき5発のディーゼルが接続されており、軸ごとのシフト配置が実現している。
設計段階で3連装41サンチ砲から連装46サンチ砲への換装が考慮されているが、装甲の貼り足しは無いので対応防御の観点からは不満が残る設計である。
副砲はこの世界の日本巡洋艦のデファクトスタンダードである15.5cm3連砲を艦中央付近の両舷部にピラミッド状に3基ずつ搭載している。その付近に連装高角砲が配置されている。
※作者の個人的意見
史実の金剛代艦の流用品です。
ちなみに、金剛代艦は史実ではヒラガーの横やりで流産しています。
元々の金剛代艦(藤本案)は3連装41サンチ砲3基9門の構成だったのですが、艦尾を24mほど伸ばしたうえで主砲塔を1基追加する構想があったのでそちらを使わせてもらいました。
機関にディーゼルを採用したのはシフト配置をしやすくするためと重量軽減のためです。史実の大和型に搭載が検討されていた艦本式13号ディーゼルは8000馬力近い出力を発生しているので、英国からの技術協力を仰げるこの世界の日本ならばなんとかなるでしょう。
新型戦艦(平賀案)
排水量:63000t(基準) 65500t(公試)
全長:279.5m
全幅:37.1m
吃水:10.23m
機関:ターボコンパウンド・デルティック40基4軸推進
最大出力:200000馬力
最大速力:31ノット
航続距離:16ノット/25000浬
兵装:45口径51cm連装砲3基
60口径15.5cm3連装砲6基
40口径12.7cm連装高角砲6基
航空機20機(索敵・弾着観測・上空直掩用)
装甲:舷側400mm(最大)
甲板240mm(最大)
主砲塔660mm(前盾最大厚)
海軍技術研究所で設計が進められている新型戦艦。
艦政本部(藤本案)が設計を進めている新型戦艦に不満を持った海軍の戦艦派が平賀譲に個人的に依頼したものであり、ハワイ攻略のために51サンチという前例のない巨砲を搭載しているのが特徴である。
外観上の特徴は艦首に集中配置された主砲と艦体後部の航空設備である。
長大な艦体後部に設置される航空甲板によって、水上機ではなく本格的な航空機運用が考慮されている。
徹底した集中防御がなされており、バイタルパートは全長の半分以下となっている。主砲と副砲、さらに機関部に至るまで箱状に構成された強固なバイタルパート内部に収納されており、2万ないし3万mからの46サンチ砲弾に耐えうる防御が施されている。
バイタルパートの圧縮と高速を発揮出来るだけの出力を維持しつつ、省スペースという矛盾極まりない要求を満たすために主機にはターボコンパウンド・デルティックが採用されている。これは英国海軍で魚雷艇用に採用されているデルティックをターボコンパウンド化したものであり、極めて小型でありながらも比類なき出力と燃費を両立出来る超高性能ディーゼルであった。
信頼できる技術に拘る平賀はこのエンジンの採用を渋ったのであるが、英国海軍がクイーンエリザベス型高速戦艦の主機にディーゼルを採用していることに加えて、機関のメンテがエンジンの交換で済むので迅速に復帰出来るメリットを力説されて採用に踏み切っている。
※作者の個人的意見
史実の戦艦大和(平賀素案)を46サンチ砲3連装から51サンチ連装に手直ししたものです。ちなみに防御は弄っていません。対応防御という観点なら51サンチ砲防御にするべきでしょうけど、46サンチに耐えられれば十分だと思ったからです。計算がめんどいというのもありますけどw
ちなみに、ターボコンパウンド・デルティックなんてゲテモノ(誉め言葉)を主機に採用したのはQE型高速戦艦に搭載している艦船用デルティックの情報提供を求めたらネイピア社が押し付けて来たからです。新機軸を他所様で実験する英国の悪い癖が出てしまったようですw
でもまぁ、この世界のデルティックは信頼性は充分なほど確保されていますのでそれほど酷いことにはならないでしょう。定格を落として5000馬力で運用すれば5000時間くらいはノーメンテでいけるはず。実際はフル出力での運転なんかそうそうしないのでメンテまでの期間はもっと伸びるでしょう。定期点検でドック入りしたついでにエンジンを交換しちゃえば良いのです。
40基搭載ということは、1軸あたり10基ということになります。
搭載場所に困りそうですが、ターボコンパウンド・デルティック(C18)のスペックは全長3.15m、全幅1.65m、全高1.96mで5t未満という超小型なのでどうとでもなります。効率を突き詰めるなら多段配置してしまうのが正解でしょうね。その場合、出力を統合するギアボックスの設計で苦労することになるかもしれませんけど。
あとこの戦艦が建造されたら運動性は劣悪極まりないと思います。
全長が長いから直線だけなら30ノット出せるでしょうけど、トップヘビーなので史実ネルソンのようにタンカー呼ばわりされることでしょう。
新型戦艦(平成会案)
排水量:67000t(基準) 71200t(公試)
全長:273.4m
全幅:38.9m
吃水:10.4m
機関:艦本式重油専焼水管缶12基+艦本式タービン4基4軸推進
最大出力:192800馬力
最大速力:30ノット
航続距離:17ノット/13000浬
兵装:45口径46cm3連装砲3基
60口径15.5cm3連装砲4基
40口径12.7cm連装高角砲6基
装甲:舷側410mm(最大)
甲板230mm(最大)
主砲塔650mm(前盾最大厚)
平成会内部(戦艦大和愛好会)で独自に設計が進められている新型戦艦。
身も蓋もない言い方をすれば『ぼくが考えた最強の大和』である。
基本的に史実大和の再現なのであるが、鈍足と酷評された速力を改善するべく改変が加えられた。具体的には蒸気圧を上げて史実よりも出力と燃費を改善し、さらに艦首部の延長と高速と巡航で効果を発揮するバルバスバウの設置で30ノット発揮を可能にしている。
艦体中央部を縦断する水密縦隔壁が撤廃されているのも特徴である。
砲撃に対する防御は若干低下したものの、その分横隔壁を強化したため魚雷攻撃に対しての防御力は強化されている。
史実とは違い、溶接も積極的に取り入れられている。
これは英国からの技術提供により溶接技術が満足すべき水準に達していたことが原因である。
なお、溶接の採用で浮いた重量は艦首延長による重量増大を相殺出来なかった。
史実よりも10mほど全長が長くなった結果、排水量が3000tほど増大することになったのである。
※作者の個人的意見
散々に鈍足呼ばわりされる大和への救済策というのは大げさですかね?w
史実大和はオールタービンでも20万馬力が検討されていました。これに加えて艦首部の延長とバルバスバウの相乗効果で普通に30ノットを発揮可能だと思います。史実では弱点だった舵の応答性の悪さも改善されているので、完成すれば日本一、いや世界一運動性に優れた戦艦になるのは確実でしょう。
気が付いたら1934年になってたので、ロンドン海軍軍縮会議が失効したあとの日本の戦艦建造について書いてみました。どれが建造されたのはご想像にお任せしますw
>ロンドン海軍軍縮会議
この世界の英国が主導して発効した軍縮条約。
建艦競争を止めるのが目的だったので、計画段階の戦艦の建造禁止くらいしか縛りが無かったりします。
>藤本喜久雄
早逝した天才造船技官。
この世界では彼の才能を惜しんだ平成会によって一命を取り留めています。きっと画期的なマンモスタンカーとかを造ってくれるに違いないです。
>金剛代艦
史実では平賀の横やりで潰された悲運の艦。
完成していれば使い勝手の良い戦艦になったと思うんですけどねぇ。
>平賀譲
平賀不譲とも揶揄される造船技官で自説を曲げない造船学の権威。
数々の軍艦を手掛けるも、新技術の採用には消極的。重装甲の中速戦艦がお好き。
>バイタルパートは全長に対して50%以下となった。
史実だと長門が全長の63%、大和では52.8%なので、平賀案はそれ以上の重装甲ということになります。
>箱状に構成された装甲板のモノコック
でっかい箱を作って、必要なモノを前部詰め込んでしまうのが集中防御、複数に分散してダメコンと補完するのが全体防御とおいらは理解しています。
>3年前に起きた陸軍の青年将校の暴走
本編第86話『決起と後始末』参照。
この1件で陸軍も海軍も内閣調査部に配慮せざるを得なくなっています。
>アメリカに戦艦建造を依頼出来なくなったソ連はイタリアを頼った。
史実でもソ連はイタリアに建造を依頼しています。
艦これで有名なタシュケントが代表例ですが、地中海仕様(足めっちゃ速い&足短い)の戦艦がどこまで役に立つかは未知数ですねぇ。
>プリエーゼ
正式名称はプリエーゼ式水中防御隔壁。
昔は役立たず扱いされていましたが、最近の資料によると有効に機能していたらしいです。
>「とりあえず38cm砲を搭載前提にしとこうぜ。矢弾は軽いからどうにでもなるし」
ちなみに38cm砲搭載で完成するとビスマルクになります。
史実と違って、この世界では建造技術が断絶していないのであれよりはマシな防御になるでしょうけど。
>超巨大飛行船『プリマージ』
新生フランス共和国で建造中の超巨大飛行船。
元ネタは某飛行隊の羽衣〇なのですが、実際に再現するとなるとヘリウムが確保出来るのか心配になります(;^ω^)
>ユースタス・テニソン=ダインコート
史実ではフッドやネルソンを手掛けた英国造船界の至宝と謳われた造船技官。
でも、この世界だとQE型の改良くらいしか仕事が無い悲運の人。平賀譲と個人的に親交をもっていたりします。
>ネイピア・アンド・サン
変態界隈では知名度が高いエンジン屋。
セイバーやノーマッドやデルティックといった数々の変態エンジンを実用化した実績あり。この世界でも順当にはっちゃけています。
>ターボコンパウンド・デルティック
変態ディーゼルであるデルティックをターボコンパウンド化してさらに変態仕様にしたもの。三角形の隙間にターボコンパウンド機構を捻じ込んだ結果、ほとんどサイズが変わっていないのにエンジン強度の限界を超えた出力を叩き出しています。




