月の名の持ち主と人造能力者達の衝突篇part21 “真実 the truth„
俺の力とオレの力がお互いに譲ることなくぶつかり合う。
その力は共に強大かつ同じ力。凄まじい衝撃がこの大崩壊地区に放たれ、
壊れかけのビルがドミノ倒しのように次々と倒れ始めていく。
...大崩壊地区が更に崩壊していく...っ!?
「フッ...ハハハッ!!コレだッ!コレなのだ...ッ!
フハッ...ッ!フハハハハハハ...ァッ!!」
もう1人のオレはそう、咆哮する。
「貴様...ッ!!これはどういうことだ...ッッッ!!」
咆哮したオレに対し、俺自身は目の前の光景を見て絶叫した。
その見た光景とは...。
「フ...ハハッ!...オレの役目を終わら...した様だ」
そう、奴の月の石で造られた鋭利な触手が先の方から粉々になっていき、
俺の持てる力を込めて凄まじい速度で放った刀が相手の、もう1人のオレに
突き刺さっている光景。
それだけではなく、その突き刺さった月の石の刀から光が溢れ出ており
1回、2回、3回...とまばらに衝撃を放っている。
その衝撃は地面を崩し、地割れを起こす。
その衝撃は突風を起こし、ビルや残骸を吹き飛ばす。
その衝撃は俺の記憶を呼び覚ます。
...この光、衝撃、どこかで見たことが?
「そんな訳がない...ッ!俺はこんな崩壊していく光景を...見たはずが...」
俺は全力で自分にフラッシュバックしてきた謎の記憶を否定する。
「いいや、オマエは見たことがアル。何せ当事者がキサマ...だからナ」
体がズタボロになっている、もう1人の俺がそう告げる。
「そんな...そんな、筈が!?」
「...そうだ。オマエがこの再開発地区と呼ばれる地区を
大崩壊地区という名前に変えた張本人だ...」
俺が...この地区を...崩壊...させた...本人...?
「グッ...ハァッ...」
もう1人のオレが血を吐きながら話を続けてくる。
「オマエのこの力は禁忌である、この造られたオレでさえ搭載されてない、
崩壊...の力。自分の中にある開けてはいけない才能の引き出しを無意識に
開けたんだ。オレという...強力すぎる敵の出現によって...な」
「開けては...いけない?...才能の引き出し...?」
「そう、だ。オマエには才能が満ち溢れている。
その引き出しがありすぎるがゆえ国の...世界バランスを一瞬で壊しかねない」
「俺が...一瞬で世界のバランスを...壊す...だと?」
「アァ。オレ、はこのオマエの力を引き、出す為にここに来た」
...だからコイツはわざと俺にやられたのか...!?
「オレはオマエに勝つ必要はない。オマエがその力を発現させたなら
オレは...オレで...居られる。そうなんだ...よ、な?
......霜凪文月ッ?そこに居るんだろう?」
「いやぁ...お見事お見事。お見事だよ?睦月もどき君?」
俺の後ろからそう聞こえたかと思うと、目の前に居たもう1人のオレが
地面に突っ伏し息絶えた。
「やぁ...?久しぶりだね。...睦月」
...俺はその声の持ち主の居る後ろへと振り返った。
「いやぁ...それにしてもやり過ぎたよねェ、これさ。
もうただえさえデカいクレーターが更にデカくなっちゃったよね」
口調は相変わらず能天気な文月のままだ。
だが、その手には拳銃を持ち合わせていた。
「ねぇ...?睦月何か話せよ?ん?」
「なぁ...文月。俺は一体...何なんだ?」
その事がずっと俺の中で引っかかっていた。
...こんな力を何故俺は持っているのか。
...何故俺が再開発地区を大崩壊地区にした、というのか。




