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3休戦にはならないかな?


数真はぴったり9時に帰ってきたらしい。

なぜ、らしい、なのかというと2階の自室に篭っていた私はヤツと顔を合わせていない…数真の部屋のドアが閉まる微かな音をその頃聞いただけだからだ。


あれだけヤッといて剣道しに道場行くってどんだけ体力余ってるんだ。


こっちは全身ダルくて仕方ないっていうのに、ヘンタイめ…いや、エロガキめ…

「和音ちゃん?」


シャワーを済ませた数真が部屋をノックしてきた。


「寝てる?入るよ」


丸まって布団に潜っている私の側へ、数真は座った。

ギシリ、とベッドが軋む。私は、思わずビクリと身体を震わせてしまった。


それをどうとったのか、数真の声は少し…微かに悲しそうに聞こえてきた。


「ゴメン」


数真も疲れてはいるのだろうか。顔が見えないからわからない…今は見たくないから別にいいけど。


黙ってじっとしていると。

「まさか初めてとは思わなかったから…ゴメン」


数真はぽつぽつと話しかけてくる。


「俺、ずっと和音ちゃんが好きだ。


決めてたんだ。


和音ちゃんは姉だけど、俺はそんなの構わない。


和音は俺のモノだから」


私はブルブル震えてきた。

「和音ちゃん」


「アンタにとってはただのエッチなんだろうけど!私はアンタのモノじゃないから!」


とうとう我慢しきれず私は布団を跳ね上げ数真に向き合った。


「怒ってるの?」


「当たり前でしょ!?」


何処に弟にヤラれて喜ぶ姉がいるか。少なくとも私は違う。


私は、数真に屈しない。


「俺のこと…嫌い?」


「そんな切なそうなフリしても無駄。アンタの本性は知ってるんだから」


「へえ…面白いね」


数真はサッと表情を変えてきた。


今までの優等生ヅラは消え代わりに底の知れない妖しい微笑を浮かべている。


「俺の何を知ってるって?」

楽しげに言ってくる。


私は、思わず着ていたパジャマの胸元を握りしめた。

ごくり、と唾を呑む。


まさかこんなタイミングで全面対決するとはおもわなかったけど仕方ない。


「聞くよ。言いなよ」


「あ…アンタは」


私は思いつくままにあげつらった。


「真面目なフリしていい人ぶってるけど、本当は他人なんかどうでもよくて、めんどくさいと思ってる。


でも人からの評判の良い自分が好きだから、仕方なく周りに親切にしてる。

勉強も、真面目にやればトップを取れるくせに他人に嫉まれたくないからそこそこでセーブ。


大好きなのは自分だけ。

他人なんてどうでもいい。

私のことも姉なのにアンタは馬鹿にしてるんだ」


なんかむちゃくちゃ。

コドモっぽい…


後半なぜか上手く声がでなかったし。


数真は呆れた表情で私のアタマにポン、と触れてきた。

「よく知ってるじゃん。さすが姉」


「そ…その姉にあんなやらしいことしてアンタはっ…」


「だから泣きながらそんなコト言うなよ」


「え…」


フワリと抱きしめられる、数真に。羽のように。


また何かが、跳ねた。


心臓の音?


いや…気のせいだ。

ドキドキする場面じゃない。対決してる、んだから。

数真は甘く優しい表情で私を捉えてくる。


わかってる。これはヤツの試み。

私を懐柔し手なずけようとする作戦…なんだ。


私は泣いてなんかいない。これは、興奮状態でつい出ちゃった汁だから別に意味のある涙じゃない。


私は冷静だ。

おかしいのは数真だ。


弟のクセに私を優しく抱きしめてどうなるんだ。


ただヤリたかったからと嘲えばいい。ちょうど側に転がっていたからヤッただけだ、と。


そうしたら私は…


「アンタなんか…」


キライ。


そう言えればいいのに。


でも。


私は数真を見上げた。

まるで愛しい者を見つめるかのような眼差しとぶつかる。


なんで?


私は心を背けた。

眼差しに縫い取められた私の瞳は数真から外せない。

見つめあう。

私の胸の奥に、熱いものが満たされてゆく。


これは何?

数真の想い?


私のじゃない。

私は、


私は。



………私、は?



「和音」



甘く囁くな、数真。



「だいすきだ」


優しく触れるな。弟のクセに。そんな目で見るな。




―――重なり合う、唇と唇。


息遣いが、遠い。


何も考えられない。


ここは何処でもない世界だ。


キスしているのは知らない男。会ったこともない男だ。


気持ちいい。

ただただ気持ちいい。


深い眠りにつく前に訪れるまどろみ。


淡い感触に温もりが全身に纏いつく。


突き放せないのは数真の匂いに酔っているから?数真の熱が心地よいから?求められて嬉しかったから?


―――違う。


私はそっと目を背けた。





何かが、暗闇のなかをはらはらと落ちてゆく…




堕ちてゆく。




綺麗な白い輝きを私はぼんやりと眺めていただけだった。


止めはしなかったんだから共犯、なんだろうか?



――――いや。



今だけの現象なんだ。

すぐ終わる。

すぐ目が醒める。



数真は弟。



大事な、憎らしいけど愛しい弟だ。



――休戦も停戦も出来ない。結局。どこかで自分の溜息が聞こえたけどもう後の祭り。


この日また…今度は自然に私と数真は身体の関係を持ったのだった。


明日からいったいどうなるんだろ?


考えたくない…。

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