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20ダブルデートって初めてですが

そんな訳で。


とは言え、どんな訳でこうなったのかよくわからない…です。


わかりたくないというのが正直なところだがしかし、待ち合わせの駅前に到着した時、とっくに時計は10時を過ぎていた。それはさすがにマズイだろう。


私は数真を探そうとした。

「きゃっ」


「危ない和音ちゃん」


「あ、雅也さんすみません」


ふらふらと人混みへ歩み出した私を雅也さんが引き寄せてくれた。

待ち合わせの時計台のモニュメントから離れるとそこは行き交う人々で溢れている。

歩き慣れないサンダルでは上手く人波に乗れないみたいで転ぶところだった。


「ここにいたら来るでしょ」


「そうでしょうけど…」



「なんだかさっきから落ち着かないみたいだね。どうかしたの?」



気遣ってくれる雅也さんはというと、ブランドっぽい黒のシャツに細身のカジュアルな麻のズボン…スラックス?

とにかく大人の男性の色気がハンパない。

長めの前髪は相変わらずサラサラで、一般人の域を越えている。

これでもいつもの出勤スタイルらしい。


はは…オシャレしているハズの私だけども、完璧に雅也さんの被保護者にしか見えない。これでダブルデートとか、我ながら笑えるな。


…まあそれはべつに、ね。


私は雅也さんに曖昧に笑ってみせた。


「昨日勉強し過ぎたのかも」

「それだけならいいけど…体調悪いならいいなさい?ちょっと顔色が良くないよ」


「はい」


ミヤはさっきから携帯で何か話している。


また視線を余所へ向けた雅也さんに気付かれないように、私はこっそり溜め息をついた。


私…そんなにヘンかな。


どうかした…してはいない。いやむしろ気持ちはいたってクリアだ。


ミヤからデートの話を聞いた時。


今までの数真のとった不可解な行動を、危うく私への愛か何かかもしれないと勘違いをしかけていたのかも、しれない。


そんな自分に気がついた。

数真の支配欲、征服欲。


それを錯覚しそうになっていたんだ。

本当に愛されてるかもしれない…なんて。


触れられれば嫌でも快楽へ引きずり込まれ、愛を囁かれれば恐れおののく。


快楽と背徳は…紙一重。



戻れない恐怖。

戻れなくともいいとのまれてゆく恐怖。


怖いんだ、私は。


数真が怖い。



それ以上に、自分自身が。


…私。いったいどうしたんだ。

落ち着かない。気持ちは冴えているし、静かだ。悲しんだり落ち込んだりもしていない。


だけど、なんでこんなに…


唇をいつの間にか強く噛んでいた。


血の味がする。

自分の…


考えるな、もう。


私は絶対に数真を好きにならない…異性として。

ヤツの遊びに本気になんてなっていない。


でも。


この胸を占める空虚な感情は。

いったいなんだろう?


ああもう考えるな!


私がぼんやりしている間に数真は現れ、集まった三人が私を呼んでいる。



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