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19夏休みになりました〜5

ミヤと数真の待ち合わせは10時だとかで、時間はあったはずだった。


な・の・に。


服を貸したげる、と半ば強引にミヤと弥生さんにああでもないこうでもないと着せ替えられ、ようやく決まった頃には予定時刻ギリギリになっていた。今すぐ家を出ないと待ち合わせに完璧に遅れる。そんな時間だ。



私はまだ二人がなぜデートするようなことになったのか知らない。


別に関係ないし。


そりゃあ驚きはしたけど、数真の考えてることなんて昔からよくわからない…わかってなかったんだから。



いきなり私を好きだと言い出した…それが突然始まったように突然気が変わることもあるのかもしれない。

そう私は考えていた。

冷たい考えなのだろうか?

もっと数真を信じていたら裏切られたと嘆いているのだろうか?それともショックを受けている?



でも正直戸惑いはするけど、数真のことを残念に思ったり悲しんだりする気持ちはなかった。


あの重苦しい…私の背中を、躯を這う指先。

肌の毛穴から入り込む何ともいえない感触。

執拗な愛撫。

数真がいくら愛を囁いても甘くキスをしてきても、そこには愛情とは違う感情しかなかった。ように思う。


そう、上手く言えないけど…支配欲、征服欲。


妖しい暗い笑みに閉じ込められた感触に今でも逃げ出したくなる。

まるで乳白色のどろどろの沼に絡めとられまいともがいている。甘い匂いに誘われた蟻の末路みたいに。

甘く囁いて欲しいくせに、その代償は払いたくない。

だからこんなにホッとしている、私は。

ここは、ミヤの家だからこんなに淡々としていられるのだ。それはわかっている。

そして、数真はそんな簡単に、私を自由にはしないだろう。例え数真の気が変わって、彼が私をそれほど好きではなくなったとしても…だ。


私はまた時計を見た。


…いいんだろうか、時間。


ミヤは数真とデート、なんだよね?


待たせるのか?あの数真を…腹黒俺様王子を待たせた日には何かとんでもないことが起こる気がするのは私だけなんだろうか?


私の視線に全く気付かないミヤ。



「お姉ちゃんがくれた服なんだけど、私よか似合ってるよ。清楚な女の子ってかんじだね」


女の子っぽい?

そうかな…?

いつまでも小中学生みたいでガキくさい、の間違いじゃないか…?


女らしいミヤに言われてもあんまり説得力ないけど、淡いダンガリーのシャツワンピに、ざっくりした白のレース編みニット、サンダル。

あの…ミニ丈なんだけど?

しかもノースリーブだし。

ニット着ても腕とか肩とか肌がかなり透けてる…


これでもワードローブの中で一番地味そうなところで勘弁してもらったんだけど…ううむ。



脚が、出てる。

ミニワンピなんて着たことないから…スカートって制服以外ではしないんだよ。

しかも生足だし。



落ち着かないな…


借り物のコーディネートを着た私の周りをぐるりと回ってミヤはにっこりと満足感を浮かべた。


「おお、可愛い」


「何騒いでるんだ…って、おお!?」


雅也さんがフラりと表れ私に驚いている。


思わず真っ赤になってしまう自分を感じた。

頬がカッとなる。

ああやっぱり、似合わないんだよね…脚が綺麗でも細い訳でもないし、生足はアウトでしたか。


しかし意外にも雅也さんは機嫌よく言ってきた。


「…若いなあ。うん、すごく似合ってるよ和音ちゃん」


へ?


にこにこ笑ってる雅也さんこそ、普段着のポロシャツにチノパン姿で大人の男性の余裕たっぷりに見えます。ルーズな格好が似合うなんてどんだけ男前なんだ。

ミヤは女っぽさ全開だし、余計に私だけガキくさくていたたまれません。


私は本心をこぼした。


「そ、そうですかね?

むしろ自分の色気のなさにがっかりなんですけど」



「いやいや。無造作に露出した肌が初々しい色気でまたいいねえ。男はこういう爽やかな色気に運命を感じるもんだよ。二人で出掛けるのかい?」


…運命?


ちょっと大げさな…でも誉めてくれてるんだよね?


「出掛けはしますけど…」


ミヤも怪訝な顔で雅也さんを見上げてボソッと呟く。

「…また始まったオヤジ発言。やらしい目で見ないでよ」


「ミヤ、お前なあ…可愛くないぞ。そんなに自分の兄を早くオヤジにしたいのか」


「やらしい目で和音の脚みてるからよ…ってそうだ!」


と、ミヤの大きな瞳がキラリと光った、ような気がした。


実際はミヤは実に華やかな笑顔を雅也さんと私に向けてきたのだが。


だが。


気のせいか一瞬…その笑顔に数真的な何かを感じたのはなぜだろう?


「アニキ今日も暇だよね?なら決定。よかったいいところにアニキが出てきて」


「は?」

「え?」


にんまり、細めた唇がきょとんとする雅也さんと私に告げてくる。


雅也さんも僅かに眉を潜めてミヤの様子を伺っている。



この流れは雅也さんには気の毒だけど…うん、たぶん…。


ミヤは意気揚々と言ってきた。


「決定。本日のダブルデート、アニキは和音とデートだよ。あたしは数真とデートすんだからアニキしっかりナイト役しなさいよ?」




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