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17夏休みになりました〜3

ミヤには10歳離れたお兄さんがいる。

雅也さんはその一人だ。


で、貴也さんは雅也さんの双子の弟。

確か東京の病院でお医者さんをしてるらしい。


「タカ兄は、ずっと東京でこっちには帰ってこないみたい。夏休みも仕事なのかもね…」


「忙しいんだね」


ミヤは、どうだかねー?と首を竦めている。


「和音には言うけどさ。タカ兄、今度結婚するんだよ」


ええ!?


「え!あっそうなの!?あ…おめでとう」


改めて聞くと驚く。


貴也さんとはあまり話したことはない。

小学生の頃。ミヤと遊んでいたら高校から帰ってきた貴也さんと挨拶したくらいだ。

黒髪で、背中が真っ直ぐで痩せて脚が長いのが子供心に印象的だった。

余計なものが一切ない、端正な無表情。笑ったところを見た記憶は、ない。


貴也さんって厳しくてなんだか怖いイメージだったから…女嫌いだってミヤは言ってたし。結婚ってしなさそうだったけど。


むしろ雅也さんのほうがなんで結婚しないのか不思議なくらいだけど。


「多分、式はしないで、そのかわり新婚旅行に行くからその休み貰うために今は仕事一色なんだよねー。

ま。ふたりもアニキが来たら暑苦しいから別にいいけどさ。マサ兄はこの夏は仕事ないみたいだしね」



食後のお茶を飲みながら、またミヤの部屋で勉強している。今度はミヤとふたりだ。


「…和音?」


私は慌ててケータイをカバンに入れた。


「気になるの?」


「…う」


「連絡したんでしょ?」


数真にはメールを入れた。電話する勇気はなく、ただミヤんちに泊まりますとだけのメッセージだ。


まだ部活なのか返事は来ない。

いつもならすぐに返信があるのに…夕食前にメールをしたのに連絡がない。


「そんなカオしちゃって」

「え?」


「今、和音すごい切なそうなカオだった。まるで恋する乙女、だよ」


「…ミヤ。からかわないでよ」


「妬けるね。みんなラブラブでけっこうなことだよ。…なかよきことはうつくしきことかな、だよね」


何か一人で納得して勉強に戻ろうとするミヤ。


「ちょっと!私は数真なんて好きとかそういうのじゃないからね」


「ふふっ。じゃどういうのかって聞いていい?」



「姉弟愛って限りなくヤバイ香りだからね?」


言わなくてよかった…。


「く、腐れ縁?」


「それ兄弟姉妹間には使わない」


…そうなの?1番ピッタリくるんだが…んー。


「あたしさ、あんたと佐々木がふたりで喋ってるとこを見たことあるんだ」


ミヤは私を真っ直ぐに見た。

「あんたたち、仲いい感じで話してたよ。」


ミヤは数真をみたのだと言った。私と佐々木くんがいるところを見ていた数真。


「すごい目付きだった。オスの目っていうの?俺のオンナに近付くんじゃねぇ、って感じ。眼で人を殺すってあんなのかな?」どんな目付きなんだか…


「優等生のシスコン君のあんなカオ、久しぶりだったからなんか萌えたわ」


「え…久しぶりって?」


「知らなかったのやっぱり」

何が?


ミヤは形のいい眉をぴくりと反らせて、ため息を大袈裟についた。


「うーん…和音のそういうニブいとこは天然だからある意味残酷だよね…シスコン君に同情しちゃうかも。逆にシスコン君がああなったのは和音の天然さのせいかもね。粘着対天然の相乗効果?はー…萌え萌えするね…」


「どういう意味よ」


大人っぽい微笑で、ミヤは『さあね』と今度はあっさりとノートに向かってしまった。


なんなの。

人を天然とかニブいとか…


私は思い出した。


『ニブい』


…このフレーズは。

最近聞かされた気がする。どこでだ?

思い出せない。


…ああもう。

数真から離れてホッとしてるはずなのに、なにやってんだろ、私。


さっきまで雅也さんの態度が気になってた、のに。


ちょっと数真から連絡がないからって…


雅也さんは大人だから。

私にわからないいろんな事情があるんだよ。


数真はまだ子供だから。だからこんなに落ち着かないんだ。



その夜。

何回ケータイをみても数真からの返信は無かった。

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