13やっと帰還しましたが〜4
―――――――――――――――――――――――――『かーずねーちゃん』
人は。
幼児の頃において誰しも自分は特別であるという思いを抱いて生きている、という。
いわゆる、万能感、というヤツだ。
たいして可愛くもないのに本気でアイドルになれるなりたいと思ったり。
将来はドラマでみたカッコイイ医者や刑事になりたいと言ってみたり。
それは自分の潜在能力やなるために必要な努力、なれなかった時のフォローなんておかまいなしに見事なくらいの…
自己肯定感。
足りないものは、誰かがなんとかしてくれる。
幼児ならば生活は親に庇護されるのは当然。
その延長線上に、輝かしい未来がある。
だから未来が輝いてみえている。
でも、大人になってゆくとわかってしまうんだ。
自分でなんとかしなくてはいけない。
なりたいものがあれば。
そうなれるように、努力しなくてはいけない。
魔法なんてないから。
ビックリする頭のよさもそれだけで世間に認められるほどの運動能力も、地道な努力があってこそ。
なにもしなければなににもなれない。
なんの能力もないのなら人よりさらに努力しなくてはならない。
いつからそんなことを考えるようになったんだろう。
幼稚園のころ。
少なくともアイドルになりたいと七夕の短冊には書かなかったが。
…ケーキやさん?
将来の夢というより食い気だな。子供のころから私は何を考えていたんだろう。
自由になりたい。
もう比べられたくない。
つまらない存在でいることを許して欲しい。
期待しないで。
多分裏切るから。
いいひとなんかじゃない。
怒らないのは優しいのは。臆病なだけだから。
数真がうらやましい。
二重人格のくせに、みんなわかってないよね。
あんな腹黒なのに。
なんでわからないの。
臆病な私を嘲笑う数真。
劣った姉を見下す周りのみんなと数真との違いはどこにあるというんだろう。
私は数真が怖い。
自分が絶対であるといまも信じているかのような、自信に溢れた数真。稀にみる優れた非の打ち所のない容姿と能力、如才のなさ。人望の厚さ。
少年向けスポーツマンガに出てきそうな、熱血とは程遠い器用なタイプだ。
主人公の親友その1タイプか?それにしては出来過ぎか。
数真は夏の強すぎる陽射しみたいだ。
私はヒマワリじゃない。
ましてや薔薇でもカスミソウでもない。
いま、私の上で自分の欲望を私に打ち付けるのに夢中なこの美しい男は、いったいなんなのだろうか。
触れられるたびに、淫らな嬌声を漏らすこの女は、私だなんて。
いやだな。
何度もなんども交わって。
別に誰とでもヤれるんじゃないこのふたり。
なんで実の姉弟でそんなコトしてるんだ?
妊娠、したらどうするつもりなんだ。ここは古代エジプトでもなければ飛鳥時代でもないんだぞ。ああでも日本では両親とも同じだとやっぱタブーだったかな。
『かずねちゃんー』
うるさいな。さっきからうるさい。
『かずねちゃんといっしょがいい』
うっとおしいなー。
あっちいってよ。
『かずまとはいっしょにいかないから』
『なんで?ぼくはいやだよかずねちゃんとがいい』
『かずまなんてきらい』
みんながかずまをとるなっていうんだから。
わたしはそんなつもりないのに。
『あっちいってよ』
かずねちゃんはかずまくんにめいれい、してる、って。
『かずねちゃん…』
ないたってしらない。
『わたしはひとりがいいの』
みんながみてる。
かずまくんかわいそうっていいながらみんなうれしそうだ。
…よかった。
これでまたあそんでもらえるよね?
かずまはみんなにあげるから。
またはなしかけてもこんどはおへんじしてくれるよね……
……
……?
『もう――立っているのもツライみたいだね…
そういえばさ。
佐々木サンとずいぶん仲いいんだね、和音ちゃん』
背中から入り込んだ指に、乱されて、そして。
床の固い感触。
また、強引に服を剥ぎ取られたんだった。
裸の私を見る数真は。大切なモノを愛でるかのように穏やかに微笑している。
『でもさ…実の弟の前でこんな足を広げてるなんて知ったら、佐々木サンどうだろうな。恋も醒めるか』
『…そんなん、じゃ…』
『ないって…?そう』
ふっと瞳を細め、数真は愛しげに唇を這わせる。
まるで年下の恋人にでもするかのような繊細な優しい感触。
妖しい手つきで、見られたくないところをまさぐられ、吸い取られる。
『……!!』
嬌声が、溢れる。
カラダが勝手に走り出して止まってくれない。
数真は…とても満足げだ。私のカラダはヤツの愛撫に従順すぎる。
『和音ちゃん、は誰のモノか教え込まないとダメだな。
もっともっと、カラダで…、ね』
――『かずねちゃん』
なんども髪を指先で撫でられる。
降ってくるのは甘いキス。触れるような優しい、でも…
自分自身の味がする淫らなキス。
『愛してる。和音』
数真は。
――『かずねちゃん、だいすきだよ』
まるで本当に私が好きみたいな優しいカオをしている。
小さな子供だったころみたいに。




