11やっと帰還しましたが〜2
ぱちり。
そんな擬音が聞こえそうな勢いで、唐突に目が覚めた。
辺りは薄暗い。
私は目を開けてはいるものの、一瞬ここが何処だかわからなかった。
へんな時間に昼寝をするとこんな感じによくなる。
いったい今が何時なのか、早朝なのか夕方なのかわからなくなるのだ。
クーラーをかけていたのに背中がうっすらと湿っぽい。身体が、やっぱり疲れているのかまだどこか重たい気がする。
ぼんやりしている…頭。
さっきまでもしかしたら夢をみていたのかもしれない。思い出せないけど。
中学の頃の夏休み。
あの時も暑い日だった。
朝から夕方まで毎日続いた夏期講習。家に帰ってリビングでまどろんでいたあの感覚がなぜかいま…胸の奥でたなびいている。
ホッとするような何か物足りないようなけだるい疲労感。
充実していたとはいいがたい夏休みも、でもどこかで安心感があったのかもしれない。
安心感、か…。
小学生の頃は。
夏休みは家族でご飯食べに行ったり、ミヤと数真と三人で近くの市民プールに行ったり、たまに図書館で夏休みの自由研究の調べ物をしたり、お祭りに行ったり。
健全なコドモの夏休みはこうだよ、っていう定番の過ごし方だったな。
友達や家族と過ごす夏休みはこんな感じだろう。
中学になると夏休みは塾通いに明け暮れて…それでもひと夏に二回くらいは家族や友達とプールやお祭りには行ってた気がする。
高校生になってからは遊びに行くこと自体がめんどくさくて。
夏期講習がない日は家で数真とゲームしたり借りてきたDVDみたり…夏休みだからって普段と別に変わりなかった。
…去年までは、何もかわらなかった。
佐々木くんと、そして数真。
私の穏やかな夏に入り込み不協和音を奏でる…異分子たち。
ああ。
なんだろう。
なんで急にいろいろ起こるかなー?
このままいつまでも眠っていたい…
クーラーを効かせて布団に潜り込む私を現実へ引き戻す、暗闇から響く足音。
数真が帰ってきた。




