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10 やっと帰還しましたが

――ぼふん!


ベッドへ勢いよくダイブして私は天井を仰いだ。


自分の部屋だ。


女の子の部屋にしては殺風景…いいように言えばシンプルともいえる。


ファブリックもベージュが基調で、カーテン、ベッドカバー、フローリングマットも全て無地か淡い模様入りのベージュだ。


深いブルーずくめの数真の部屋とはまるで趣きが違う地味な雰囲気だ。


疲れてるけど、数真が帰ってくる前にシャワーを浴びて髪も洗って、明日のゴミ出しの用意をする――


いつもこまめにやってるから、そんなに大変じゃないけど慌ただしい。


掃除はリビングのフローリングをさっと拭いて終わり。


一応、今月はリビングの掃除当番だからね、毎日簡単にやってはいるんだよ。


夕飯はどちらか早く帰れるほうがつくることにしている。

朝ご飯の時にどちらが作るのか話し合うのだ。


――今日は…どうするのか話せなかったから。別に私がしなくてはいけないわけじゃなかった。


気づいたら、ふたり分作ってたのだ。


習慣って、こわい。


数真は今日も部活で遅くなるんだと思ったらいつの間にかレンジで冷凍コロッケを解凍し始めてるんだからね――


私はごろん、とベッドの上で転がった。


私の髪は短い。

肩先ギリギリのストレート。

手鏡で顔を見る。


…つまんない普通の顔だ。それなりに整っているとミヤは言ってくれるが、特徴のない、地味な顔立ちだ。

なんていうか、若さ?がない気がする…


鏡の中には――他人を伺うような取り繕った微笑ばかりが上手い私が、心許ない表情で揺れている。



今日だって。


佐々木くんに告白されてうれしいはずがため息ばかりついている。


私って、卑屈だなぁ…


好きだって言われて、気が重いなんて、ぜいたく、なんだろうか?


そりゃ、嬉しかったよ?


だって、告白されたのなんて初めてだし、誰かに好意を持たれて厭なわけなんかない。


それも、『地味ながらけっこうカッコイイよね性格もいいし』と評判の佐々木くんだよ?



だから…わからないんだよ。なんで、私なんかが好きなんだろう?


まだ深沢さんとかミヤならわかる。


可愛くてほわほわした深沢さんや、ハッキリした性格で美人のアネゴ肌のミヤなら、男の子ならたいして話したことなくてもすぐに好意ぐらい持つだろう。


彼女たちには魅力があるから。


見た目ばかりじゃない。


私みたいに人の顔色ばかり伺うつまらない女とは違う、本当に情の深い優しい人たちなのだから。


わかる人にはわかるんだろう。


彼女たちの持つ優しさが本物で、私のは…ニセモノの優しさだ。



あの告白の後、駅で別れた佐々木くんはいつも通りで、いやむしろいつもより少しテンション高めだったみたいだ。


私だけが戸惑っているようだった。


わからないよ。

数真はともかく、佐々木くん――君がわからない。


なんで、私が好きなの?


誠実そうな君に、私のどこが好ましく思えたのかな?


…聞けないな―――。


しかし聞いてみたいよ…。


…う〜ん…なんか悩みがさらに増えたよな…


俺様数真の歪んだナルシシズムによる、愛という名の偏執。


本当にいい人な、佐々木くんの理由不明な…ほんわかした好意。


これは、単純に佐々木くんとくっついたら万事オッケーみたいな話じゃないぞ。

もっと性格のかわいい女なら悩みはあっさり解決したかもだけどそれを言ってもしかたないだろう。


そんなことを考えているうちに…


私は眠って、そして時間は流れていったのだった。

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