9逃走そして放課後〜2
…こういう時ってどうしたらいいんだろう。
経験値ゼロの者としては――恥ずかしがるのも驚くのもなんていうか違うような…佐々木くんに失礼なような…
なんか言わなきゃいけないんだろうけど。
佐々木くんは私を見てホッとしたようにため息をついた。
「倉橋さんが俺のこと好きになってくれたらうれしいけど、自然でいいから。
ただ、そういう気持ちが俺にもあるって知って欲しかっただけだからさ。
さすがに明日から避けられたらショックだけど?」
「う…ん、それはないよ。うれしかったし」
慌てて言うと佐々木くんはホントにうれしそうに笑った。
「そっか」
「…うん」
う―…なにこの青春!ってカンジのやりとりは!
赤面してしまう。
甘酸っぱいんだよ!
モブには分不相応なんだよ!
こういうのはもっとこう…直情型ツンデレヒロインか、天然型お人よしヒロインか、あとはもう思い付かないけどそんな腹白いタイプにお任せしたい!
私みたいな卑屈型腹黒気取りヘタレ根性ナシ…
いいとこ、せいぜいヒロインの友人その3みたいなタイプにはね、荷が重いんだよ!
佐々木くんは、『やっとコクれたー』とか呑気なことをつぶやいてくれているが。
こんな出来過ぎなシュチエーション、コワイよ。
佐々木くんは私の手を離すと、
「じゃ、一緒に帰ろっか?」
促され――こくこくと頷く私の手を再び掴むと、教室を出ていく。
意外と強引な一面をみたが、なんとなく赤面していた彼をみると穏やかな気分になったのだった。
昨日から今日と…まあ、いろいろあったな。
いきなりなことが続いた。
禍福はあざなえる縄の如し…人生万事塞翁が馬。
佐々木くんとくっついちゃえば結果オーライ、ハッピーエンドになるんだろうか?
ドロドロの禁断のバッドエンドから抜け出せる?
――そんな安易に…上手くいくか?
あの数真に知られたら?
佐々木くんと付き合うとかは置いといて、告白されたなんて、ヤツが、知ったら…
ヤツに知られたら。
…
どうしよう。




