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獰猛な竜騎士と草食系悪役令嬢  作者: 待鳥園子


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018 銀竜

 団長から詳しい話を聞くと、突然勤務中のヴィルフリートの元へ捜査令状を持った数人が現れて、彼が反逆罪の容疑者だと言い出したらしい。


 身に覚えのない令状に激昂したヴィルフリートは、彼の竜に乗ってそのまま逃亡した。


 けれど、団長が言うにはその後の追跡にあまり本気さを感じさせないところから、当局もそれほど確たる証拠を握ってなさそうだったと……ただ、容疑者であるから探している程度のようだったと。


「俺は話が何かおかしいと思ったし、ここだけの話、咄嗟の判断でヴィルフリートが逃げて良かったと思って居る。身柄を確保されれば……何をされるかわかったものじゃない」


 団長が言わんとしていることが、理解出来た。


 もし、ヴィルフリートを捕らえられたとして、無実の罪だと証明して牢から出してもらうのに何日かかってしまうの……?


 私は背筋がゾッとしてしまった。ヴィルフリートの意志は、とても強いことが知っている。


 けれど、ヴィルフリートを何日も拘束して……その上で、何か変なことをしようとしたとしたら……フロレンティーナが、彼の身柄を確保しようとした可能性が高い。


「……教えていただき、どうもありがとうございます」


 ヴィルフリートの窮状を知ってそう言うしかない私は、なんだか魂が抜けたようになってしまった。


 どうして……彼が狙われたんだろう。私を助けてくれたから? 私をわかってくれようとしたから……だから?


「現在は何故あいつが反逆罪の容疑者として問われたのか、当局へと問い合わせ済みだ。もし、反逆だなんだと騒ぐのなら、確たる証拠を見せろとな……いまだに答えがないところをみると、ヴィルフリートを捕らえることが目的だったようだ」


 ヴィルフリートはレイド公爵の跡継ぎで、ウィルタリア王国に仕える竜騎士だ。大きな権力だって持っている。


 そんな人に何か出来る人というと、同等かそれ以上の権力を持っているか。


 そうよ……オーキッド公爵家。フレデリックの家は代々、裁判所で裁判官を務める家系なのだ。


「どうして……そんなことを」


 思わず、声が震えてしまった。怖い。どうして。ヴィルフリートにまで、そんなことを。


 ああ。フロレンティーナ……一体、どこまで追い掛けてくるつもりなの。


「先に言っておくが、君のせいではない。しかし、敵はなかなか手強いようだ。君も余計な何かを考えなくて良いし、ヴィルフリートも自分の身は自分で守れる。とりあえず、今日はもう休みなさい。顔が真っ青だ」


 団長はそう言って、私の肩に大きな手を載せた。



◇◆◇



 私はその夜、どうしても寝付けなくて、昨日背中を押された屋上へと上がった。


 何故か、場所に対する恐怖などはなかった。あの時に、ヴィルフリートに助けてもらえたからだと思う。


 ……もちろん。フロレンティーナのことだって、ちゃんと警戒していた。未明の時間に私が起き出して、この屋上に来るとは彼女も思っていないと思うし。


「はあ……もう、どこか遠くに行きたい……」


 高い建物の黒い影だけが邪魔する満天の星が見えて、大きく息を吸えば冷たい空気が気持ち良かった。


 もうとにかく、ヴィルフリートが現在指名手配になってしまっているというあの事実の衝撃が大きすぎた。


 ……ああ。もう私はどうして、フロレンティーナには敵わないのだろう。私が彼女より上手くやれるなら、こんなに悔しい思いはしなくても良いのに。


 その時、視界の端がキラリと光った。


 最初、飛行機かと思ったけれど、そんなものはこの世界に存在しないことを思い出す。


 白い光がどんどんこちらへと近付いて来るのを見て、私はようやくそれを銀色の竜だと認識した。


 銀竜は私の居る建物の屋根へと降りたって、私の方へと背中を見せて身を伏せた。


「あ。乗れって……こと?」


 まるで、私が乗りやすいように背中を倒してくれたので、戸惑いながらも背に乗った。そして、私が鞍の載った背中に乗り体勢を整えると、まるで私の様子を見ているかのように空へと舞い上がった。


「わあっ……!」


 もちろん、竜に乗って空を飛ぶのは、これが初めて。しかも、数え切れない星たちが瞬く夜空を、風を切って飛行していく。


 爽快で気持ち良かった。こんな時だけれど、何もかも忘れさせてくれるような、そんな体験だった。


 竜はやがて森を飛び川の近くには、野営をして焚き火の前に居るヴィルフリートが見えた。


「ヴィルフリート!」


 銀竜は彼の元へと降り立ち、高い鳴き声で鳴いた。


「……あ? ブライス。メロールに何かないか見張らせていたのに、連れて来るとは……どういうことだ?」


 白いシャツと黒い下衣しか着ていないヴィルフリートは私が降りるのを助けてくれて、メロールと呼ばれた銀竜に問いかけていた。


「そ、それは、私がたぶん……屋上に行ってどこか遠くに行きたいって、言ってしまったせいだと思います」


 多分、そうなのだ。この恐ろしい顔つきをしているものの、ヴィルフリートに甘える仕草をする銀竜は、おそらくは私の希望を聞いて応えてくれただけなのだろう。


「そう言いたくなった、ブライスの気持ちはわかる。あの女……まじで、やべえな」


 銀竜の首を労うように叩き、ヴィルフリートは苦笑いをした。


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