商会と専用ブラシ⑩
【お知らせ】
以前発売したグッズであるランダム封入の缶バッチこと、アリスのランダムボックスの第二弾の発売が決定しました。
発売開始は2月20日、前回早々に売り切れました第一弾も再版されるようです。詳しくは新紀元社様やモーニングスターブックスのXなどをご確認ください。
発売日が近くなったら、活動報告に記事も作ります。
伯爵令嬢コーネリア・シャロンの朝の身支度は、いつも軽い入浴から始まる。彼女は跡取りでは無いとはいえ、高位貴族家の長女であり見た目などにもかなり気を使っている。
少なくともそういった面で他の貴族につけ入る隙を与えたりはしないように、朝の身支度も入念に行う。
軽い入浴のあとで、使用人三人の補助を受けつつ着替えや化粧、髪を整えたりといった工程もそれなりに時間をかけて行う。
今日に関していえば、茶会や夜会といったものに参加する予定は無いためやや控えめではあるが、それでもしっかり時間をかけて身支度は完璧に整えているつもりである。
そして、本来であれば身支度を整えた後はその日のスケジュールの確認が行われる。もちろんコーネリアも自身の予定は把握しているのだが、万が一にも覚え違いなどがあってはいけない為、専属のメイドと予定の照らし合わせを行い、その後に朝食というのが日々の流れである。
しかし今日は、身支度が終わるなりアンネが手紙を持ってやってきた。これは非常によくない流れだった。一見するとアンネに関しては、臨時とはいえ現在はコーネリアの専属として付いており、専属である彼女が身支度後にやってくるのはおかしくないように見える。
手紙を持ってくるのも、たまに急ぎで確認する必要がある手紙などをスケジュール確認の前に見ることもある……と、楽観視するのであれば考えることもできるのだが、残念ながらそうはいかない。
アンネは、確かにコーネリアの専属になっているが、あくまでそれは快人に関連した件への対策の一種という意味合いが強い。
スケジュールを確認したり手紙を持ってきたりというのは、元々他に居る専属メイドの仕事であり、アンネが行う仕事では無い筈なのだ。
だが、そんなアンネが……快人関連の事態への対応で専属となっているアンネが、気の毒そうな表情で手紙を持ってくるということは、すなわち……。
「……とても、とても嫌な予感がするのですが……じゅ、重要な手紙なのですね?」
「恐らくと頭につきます。差出人を確認して、取り急ぎコーネリアお嬢様に確認していただく必要があると持ってまいりましたので……」
「そ、そうですか、場合によっては今日のスケジュールの調整が必要ですね。それで、どこからの手紙でしょうか?」
その時のコーネリアの心境は、まさに死刑執行を待つ囚人のような気分だった。少なくともアンネがこうしてきている以上、確実に快人関連の手紙はあると覚悟を決めながら、アンネの言葉を待つ。
「……まずは、セーディッチ魔法具商会からコーネリアお嬢様宛てに届いた手紙です」
「ああ、それは問題ありませんね。おそらく、明後日に控えた顔合わせ……という名目の交渉の事前挨拶の手紙でしょうね」
一通目はセーディッチ魔法具商会だが、これに関しては心当たりがある。明後日に営業部特別顧問のトロワが今後の連携強化を目的とした顔合わせという名目でやってくるので、その事前挨拶……「明後日はよろしくお願いします」といった感じの手紙だろうと予想できた。
「次に、ミヤマカイト様からの手紙です」
「……この手紙の内容次第ですね。場合によっては緊急会議ですね。え? アンネ? なぜそんな顔を……ま、まだほかにも凄い相手からの手紙が?」
「続けてこちら、竜王様、天竜ニーズベルト様、水竜エインガナ様からのお手紙です」
「ひゅっ……こ、これは、つまりそういうことですか……お、おそらく一部ですがカイト様に専用ブラシが届いたのでしょう。カイト様の手紙もそれに関するものの可能性が高いですね。そして、そのお三方から手紙が来るということは、カイト様が気に入って勧めたということですか……」
六王に幹部ふたりからの手紙という衝撃はすさまじいが、それでもまだコーネリアはある程度冷静でいられた。
「驚きはしましたが、想定の範囲内です。最近私が詰め込むように学んでいる商会経営の勉強も含め、お父様やお母様、お兄様に私と、来るであろうこの事態に対応するために準備を行ってきたのです。大変ではあるでしょうが、きっと大丈夫……」
「そして、次が……有翼族の長アメル様と有翼族の交渉担当から、コーネリアお嬢様を名指しした手紙です」
「……それは想定してない」
竜王陣営から専用ブラシに関する伺いの手紙が来るのは予想しており、準備もしてきたと力強く語っていたコーネリアではあるが、次に告げられた言葉にハトが豆鉄砲をくらったような顔になった。
「な、なぜ有翼族? 有翼族とウチに接点など……い、いえ、そもそも有翼族は里に隣接した子爵家以外との交流はほぼ行わないはず……」
「まだございます。次がこちら、戦王五将のバッカス様からコーネリアお嬢様への手紙です」
「……なんで?」
「そしてこちらが、十魔のグラトニー様からコーネリアお嬢様への手紙です」
「…………なんでぇ?」
まったくの想定の範囲外からの手紙であり、しかも相手は六王幹部な上にコーネリアを名指ししている。
「………………なんでぇぇぇぇ!?」
思わず、コーネリアが頭を抱えて叫んでしまうのも無理は無い話であった。
シリアス先輩「やりやがったな胃痛の悪魔、たぶんテトラとの一件の後もなんか被害拡大するような宣伝してやがるなこれ……」




