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孤島オンライン  作者: 西谷夏樹
航海、そして空へ
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ログアウト -6-


「ふう、今日はこのくらいにしとくかぁ~」


 ヘッドギアを外して息を吐く。テイム用の麻酔薬を大量生産していたのだが、さすがに頭が重くなってきたので早めにログアウトすることにしたのだ。


 マルボロ主導で始まったテイム計画は順調に進んでいると思う。とりあえず矢や麻酔薬に関しての用意は今夜中にはみんなが終わらせてくれるだろう。


 マウンテンコンドルのテイムは深夜組が引き受けてくれるらしいし、おそらく明日ログインする頃にはそちらのテイムも終わっているはずだ。


 明日はログインしてからそれらの進捗を確認して、必要なものを改めて精査すればいい。


「お」


 携帯端末を見ると、クラスメートの太田からメッセージが届いていた。


『太田:練習試合勝ったぜ~』


 そういえば昼休みのバスケ中にそんな話もしていたっけな。


 俺はお祝いのキャラスタンプを送りつつ、携帯端末でコスニアの情報について検索を始めた。


「コスニア、wikiっと……」


 椅子に背をもたれさせて、携帯端末の画面を上から下へとスライドさせていく。


 自分だけで集められる情報には限りがある。やはり、調べられる情報は可能な限り集めておくのがゲーム下手なりの最低限の戦略ってもんだ。まずは定番のwikiから個人ブログまで全部漁ってみて、使えそうなものがあったらメモしておこう。


 そう考えて調べ始めたのだが――


「ダメだ。全然使えそうな情報がない……」


 俺は疲れで一層重く感じられるようになった頭を抱え込んだ。


 リリースからそろそろ一週間経つだけあって、コスニアについての基本情報はそこそこ出揃ってきた感がある。Wikiは既に各所で複数乱立しているし、モンスターのテイム方法や騎乗方法、俺たちが今日触ったイカダの操作方法などは画像付きで丁寧に解説されている。


 だが、肝心の有用そうな情報が一切出てこなかったのだ。


 いやまあ、普通のPvEゲームなら単純な解説が出てくるだけでありがたいのだけど、コスニアのようなPvPメインのゲームでは普遍的な情報なんて全員が知っていて当たり前なわけで。


 俺が知りたいのは、プレイヤー間で知っている知っていないで明確に差が付くバグやそれに近い裏技的なものの情報なのだ。


 俺たち南海同盟が見つけたもので言えば、リスポーン用ベッドをフェンス土台に設置できる技が代表的だと思う。そういう便利な裏技が拡散されているなら真似したいところなのだけど、SNSを見てもあまり有用な情報は流れていなかった。


 むう……ここまで情報が見つからないとなると、有用な情報は流れていないというよりも、流されていないというのが正しいのかもしれないな。


 おそらくどこのギルドもいまは情報の独占に走っていて、他所のギルドよりも一歩抜きんでる機を窺っている。


 全世界で同時にリリースしたゲーム故の弊害と言えるかもしれない。国ごとに時間差でリリースされるゲームなら、最速リリースされた国のwikiを見れば裏技的な情報についてもすぐに全部知ることができる。しかし、全員が同時に攻略を進めている現在は誰もが情報を隠しにかかっている。


 さらに言えば、コスニアではその裏技的な情報が直接ギルドの勝敗に関わってくるから、軽い気持ちでは拡散できないのだろう。もしも壁をすり抜ける方法が見つかったとしても、それをみんなが知るようになればバグとして修正されてしまうか、悪用されて自分たちが被害に遭いかねない。


 実際、俺たちのベッド埋め込みも敵ギルドに使われたら鬱陶しすぎるし、わざわざSNSとかで拡散したいとは思わないしな。


「情報戦だなー……」


 こういうガチな部分がPvPらしさだなとは思う。隙を見せれば取って食われる弱肉強食の世界。羊のような貧弱ゲームスタイルでは強者に滅ぼされるだけだ。


「ニードルタレットの設置も最優先ではないけど、徐々に進めて行かないとなぁ……」


 明日の予定を頭の中で思い浮かべながら、俺は部屋の電気を消して眠りにつくことにした。



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