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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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748・アルン使節団の来訪

皆さん、こんはんば。

本日より『少年マールの転生冒険記』の更新再開です。


どうか、皆さんに、またゆっくりと楽しんで頂けたなら幸いです♪


それでは、本日の更新、第748話です。

どうぞ、よろしくお願いします。

 空気は少し肌寒く、秋の深まりを感じさせる季節になった。


 そんなある日、僕とイルティミナさんの夫婦は、もはや通い慣れてしまった『キルトさんの部屋』を訪問していた。


「おお、よう来たの」


「うん」


「お邪魔します」


 部屋主の銀髪美女に笑顔で迎えられ、僕ら夫婦は室内へ。


 ここに来るのも何度目かな?


 もはや第2の我が家のような部屋のリビングには、僕の奥さんの妹とその相棒の幼女の姿もあった。


「お? やっほ~、イルナ姉、マール」


「…………」


 ペコッ


 くつろいだ様子のソルティスは笑い、ポーちゃんは軽く挨拶の会釈。


 僕らも笑って、


「久しぶり」


「元気でしたか、ソル」


「当たり前よ。そっちはどう? 変わりない」


「うん」


「おかげ様で」


「そ、よかったわ」


 と、約1ヶ月ぶりの再会を喜び合った。


 そんな僕らに、キルトさんも嬉しそうな表情をしていた。


 すでに別々に活動している今、僕ら5人が同時に王都に揃うことは、あまりない。


 だからこそ、揃った時にはこうして集まり、お互いの近況を話し合うのが今では当たり前になっていた。


(……うん)


 今日も、みんなの顔が見れて嬉しい。


 キルトさんが宿泊施設のルームサービスを利用して、たくさんの料理と飲み物を届けてもらうと、いつもの食事会が始まった。


 お互い、近況を話し合う。


 モグモグ


 ん、料理も美味しい。


 ソルティスも大口で頬張りながら、


「最近は寒くなってきたから、アタシら、なるべく南の方の依頼を受けてるのよねぇ」


 と、教えてくれた。


(へぇ、そうなんだ?)


 いいなぁ。


 ちょっと羨ましい。


「僕ら、先週は北の山岳地に行ったよ。もう雪積もってて寒かった……」


「あはは、そう」


 嘆く僕に、義理の妹はなぜか楽しそうだ。


 僕の奥さんは苦笑して、


「私たちの受けるクエストは、全てギルドからの指名依頼ですからね。季節によって地域を選ぶこともできません」


 と、頬に手を当て嘆息する。


 そうなんだよね。


 彼女は、王国が誇る『金印の魔狩人』。


 他の冒険者には難しい高難易度クエストばかりを依頼されるため、僕らに選択の自由はないのだ。


 ポムポム


 優しいポーちゃんが、慰めるように僕の肩を叩く。


(ありがと、ポーちゃん)


 そして、元『金印』の美女は、


「ま、それが金印の務めじゃ」


 と、引退した気安さからか、明るく言う。


 僕ら夫婦は、苦笑だ。


 それから気を取り直して、


「そういうキルトさんは、最近、どうしてたの?」 


 と、聞いてみた。


 彼女は「ん?」とこちらを見る。


 手にした果実酒のグラスを傾けて、コクリと一口――喉を湿らせてから、


「そうじゃの。実は、ここしばらくは、アルンとの外交に力を入れておった」


「アルンとの?」


「うむ」


 豊かな銀髪を揺らして、彼女は頷く。


 ちなみに、彼女は外交官ではない。


 ただの民間人。


 だけど、元英雄で両国に顔が広く、なぜか政府に頼まれて外交官紛いのこともやっていたりするのだ。


 本当、凄い人だよね……。


 そんな凄いお姉さんは、


「ふむ……。来週には発表になるし、そなたらならば先に伝えても大丈夫か」


「? 何を?」


 僕ら4人は、皆、キョトンとなった。


 そんな僕らを見回して、


「実はの。これまで政府関係者、軍関係者しか使用できなかった『転移魔法陣』が来年、民間にも開放されることが決定したのじゃ」


 と、言った。


 え……?


 一瞬、理解できなかった。


 でも、その意味が浸透してくる。


 イルティミナさん、ソルティスの美人姉妹も驚いた表情だ。


 表情が変わらないのは、ポーちゃんのみ。


(え、待って) 


 それって、とんでもないことじゃない?


 転移魔法陣は、時間と距離を無にして移動を可能にする『超』の付く魔法技術だ。


 前世の世界にも存在しない。


 それが民間人も使える……?


 もし本当ならば、それは、まさに物流と人々の移動に革命が起きる出来事だ。


 僕らの反応に、キルトさんは笑う。


「――時代が動くぞ」


 そう告げる。


 その時のキルトさんの黄金の瞳は、まるで魔物との戦いを前にした昔みたいに生き生きと輝いていた。


(ひゃあぁ……)


 鳥肌が立っちゃったよ、僕。


 それからも、彼女は機密の話をしてくれた。


 まず解放されるのは、シュムリアとアルンの間だけ。


 ドル大陸にも『転移魔法陣』はいくつかあるけど、そちらはまだ民間には解放されない。


 当面は、シュムリア、アルン間で様子を見て、発生した問題やその対処法などがわかってから、やがてはそちらも民間に解放される予定だそうだ。


 現在は、シュムリア、アルンの両国間で最終調整段階。


 2国で、文官たちが忙しくしているらしい。


「それでの」


 と、キルトさん。


 そこで彼女は、1度、上機嫌に果実酒のグラスを傾ける。


 唇からグラスを離して、


「来月の初め、その話し合いと両国の友好と親善、大事の前の激励を兼ねて、アルンの使節団がシュムリア王国の王都まで来ることになった」


「アルンの使節団が?」


「うむ。転移魔法陣での試運転も兼ねての」


 ニヤッ


 グラスを掲げ、彼女は笑った。


(そっかぁ)


 知らない間に、ずいぶんと凄い話が進んでいたんだね。 


 そう頷く僕に、


「その使節団には、あのフレデリカ(・・・・・)もいるぞ」


 と、キルトさん。


(え……?)


 あっさり言われ過ぎて、僕は青い目を瞬いた。


 その名前に、イルティミナさんはかすかに片眉を動かし、ソルティスは驚いた顔をする。


 ポーちゃんだけが安定の無表情。


 その懐かしい名前は、僕の胸にも浸透する。


 ポワッ


 不思議と内側が温かくなった。


 目を輝かせる僕に、キルトさんは楽しそうに頷く。


「そうじゃ。あのアルンの女騎士フレデリカ・ダルディオスが、我らがシュムリア王国に初めて足を踏み入れるのじゃよ」



 ◇◇◇◇◇◇◇



 翌週、キルトさんが教えてくれた通り、シュムリア王国の広報から『転移魔法陣に関する発表』が行われた。


 その翌日の各新聞の一面は、全て、その内容だ。


 転移魔法陣の民間開放、その意味は王都国民にもすぐに理解され、その日からの王都は数日間、とんでもない騒ぎになっていたとか。 


 とか、と言うのは、その時、僕らは王都にいなかったから。 


 予定されていた討伐クエストのため、僕とイルティミナさんは別の土地に行っていたんだ。


 だから、その情報は、滞在先の宿屋で5日遅れで確認した。


(うはぁ……)


 新聞を読んだ僕は、記事に興奮具合の驚いた。 


 400年前の古代タナトス魔法王朝時代の超魔法技術が現代に蘇った、これは歴史の分岐点、世界の変革だ……などなど、凄い文言が並んでいる。


 宿の窓から、外を見る。


 通りに見える人々は皆、新聞を片手に騒いでいた。


 全員、興奮状態。


 今回の発表についてを、熱く語り合っているみたいだ。


 窓枠に寄りかかり、それを眺めていたイルティミナさんは、長い髪を肩からこぼしながら吐息をこぼした。


「凄い騒ぎですね」


「うん」


「王都から離れた土地でこれですから、人の多い王都はもっと凄いことになっていたかもしれません」


「うん、そうだね」


 僕は頷いて、


「ある意味、僕らはここに避難できててよかったかも」


「ふふっ、そうですね」


 僕の呟きに、彼女は苦笑しながら頷いた。


 後日、その時、王都に滞在していたソルティスから聞いた話だと、騒ぎが大きくなりすぎて怪我人が続出、王国騎士団が鎮圧に出るほどだったってさ。


 恐ろしい……。


 でも、その未来に人々は希望を見ている感じ。


 そして、『転移魔法陣』で繋がるアルン神皇国に対する友好的な空気がとても高まったとか。


 元々、アルンの皇后様は、現シュムリア国王の妹なので友好度は高かった。


 でも、今回の件で、それがもっと高まったらしい。


 そのため、今度訪問する『アルン使節団』に関しても、王都全体で歓迎ムードになっているとか。


(うん)


 国が仲良しなのは、良いことだ。


 そんなことを思いながら、僕とイルティミナさんはクエストを達成し、やがて賑わう王都に帰還した。


 そして、訪れた翌月。


 生まれた大歓迎の熱気の中、ついに『アルン使節団』が王都ムーリアに到着、その正面大門を潜って王都国民の前に現れたんだ。 



 ◇◇◇◇◇◇◇



「凄い人だかりだね……」


 その光景に、僕は思わずそう呟いてしまった。


 僕ら5人は今、シュムリア大聖堂の3階の客室にいた。


 その窓からは、大門から大聖堂まで続く大通りの左右に、たくさんの王都民が詰めかけている様子が見えていた。


 通りには、黒い竜車が10台ほど進んでいる。


 アルン使節団だ。


 車両たちの前後左右は、王国騎士団が護っている。


 王都の人々は、これから転移魔法陣で繋がる『アルン神皇国の使節団』を一目見ようと集まっていたんだ。


 中には、屋根に登って見学してる人もいる。


 たくさんの紙吹雪が舞い、


 パパン


 と、昼から花火も上がっていた。


 物凄い歓迎ムード。


 これにはきっと、アルン使節団の人たちも驚いたんじゃないかな?


 同じ景色を見ていたソルティスは、


「うはぁ……壮観ね。もしかして、王都のほどんどの人がこの通りに集まってるんじゃないの?」


 と、呆れ気味だ


(うん、本当にそうかも)


 僕も頷く。


 アルン使節団は、このまま大聖堂まで来る予定だ。


 シュムリア王家は、女神シュリアンの子孫。


 そのため、アルン使節団の人たちは、まず大聖堂で女神への祈りを捧げ、その祝福を受けてから、奥にある神聖シュムリア王城に向かうのだ。


 お城では、歓迎の宴が開かれる。


 その後、20日間ほど滞在して、『転移魔法陣』運用に関する最終調整的な話し合いを行うそうだ。


 ちなみに、今夜の宴には僕らも参加する。


 だから、僕らも今、大聖堂に待機しているのだ。


 参加理由は、親善だ。


 キルトさんは顔が広く、両国に知り合いがいる。


 イルティミナさんは王国を代表する『金印の魔狩人』だ。


 ソルティスはその妹で、相棒は『神龍ポー』。


 僕自身も『神狗』であり、何度もアルン神皇国に通ったり、アルンの人々と共に戦ったりもした。


 要は、両国友好の象徴なんだって。


 実は、フレデリカさんもそう。


 彼女は、僕らが初めてアルン神皇国を訪れた6年前、とてもお世話になったアルン騎士のお姉さんだ。


 それ以来、何度も戦場を共にした。


 言うなれば、戦友。


 そして、もはや大切な異国の友人だ。


 だから、アルン神皇国側としても、シュムリア王国との友好の象徴として彼女を使節団に加えたんだ。


 ――と、キルトさんが教えてくれた。


 窓の外を見る。


 黒い外装にアルン国章が金色で描かれた竜車たちが、整然と通りを進んでる。


「…………」


 あのどれか1台の中に、フレデリカさんがいる。


 そう思うと、


 ドキドキ


 何だか胸が高鳴って、落ち着かない気分だった。


(どの車両だろう?)


 そう思いながら1台1台眺めていると、


(ん?)


 ふと、隣に立つイルティミナさんが、そんな僕の横顔をジーッと見つめていた。


 な、何?


 僕は青い目を瞬く。


 彼女は息を吐く。


 それから、キルトさんを振り返って、


「時にキルト。フレデリカは今、アルン皇女殿下の近衛騎士でしたよね。いくら友好のためとはいえ、そのような立場の者を使節団にして問題なかったのですか?」


 と、問いかけた。


(あ……)


 そういえば。


 フレデリカさんは今、アルン神皇国の皇帝陛下の娘、パディア・ラフェン・アルンシュタッド皇女殿下の専属の近衛騎士なんだ。


 つまり、皇女殿下の護衛が仕事。


 外交は、本来の役職ではない。


 高級ソファーに座って、紅茶を飲んでいたキルトさんは、


「ふむ」


 と呟き、カップをソーサーに置いた。


「今回のフレデリカの使節団参加は、実は、その皇女殿下からの希望での」


「え……?」


「皇女から、ですか?」


 その事実に、僕らは驚く。


 キルトさんは頷いて、


「うむ。皇女殿下はフレデリカとそなたらの関係を知っておる。そして、フレデリカが簡単に国外に出られぬ立場であることもの」


「…………」


「…………」


「今回は、友人との再会が叶う機会じゃった。じゃからこそ、その背を押した」


 クスッ


 キルトさんは小さく笑う。


「優しい御仁なのじゃ、パディア殿下もの」


 そう懐かしそうに呟いた。


 ……そっか。


 キルトさんは数年前、アルン皇家の客分として皇女様とも共に暮らした時期があったっけ。


 イルティミナさんも、


「そうですか」


 と、少し困ったように頷いた。


(…………)


 イルティミナさんとフレデリカさんは同い年で、共にお姉さん気質で、どこか似た者同士だった。


 言うなれば、ライバル関係……だろうか?


 イルティミナさんがシュムリア王国を代表する『金印の冒険者』になれば、フレデリカさんもアルン神皇国を代表する『アルン皇家直属の近衛騎士』となった。


 友人だけど、ただそれだけじゃない感覚。


 だからかな?


 僕の奥さんは時々、フレデリカさんのことを凄く意識するみたいだ。


 今回も、そんな感じ。


 と、ソルティスがジト目で僕を見ていた。


 ん?


「根本の元凶、自覚なし」


 彼女は呟く。


 え、何?


(どういうこと?) 


 僕はキョトンとしてしまう。


 ソルティスは肩を竦め、その後ろで真似っ子のポーちゃんも同じ仕草をしていた。


 な、何だよ、もう……?


 僕は唇を尖らせる。


 それから、再び窓の外を見た。


 大きな歓声に包まれながら、アルン使節団の黒い竜車たちは、僕らのいる大聖堂へと少しずつ進んでいた。


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


 僕ら5人は、しばし無言でそれを眺めた。


 再会まで、もう少し。


(――うん)


 僕は青い瞳を細める。


 約2年ぶりとなる懐かしい彼女と会えるのが、とても楽しみだった。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、今週の金曜日を予定しています。どうぞ、よろしくお願いします。

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