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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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741・舞踏会に向かう妻

皆さん、お久しぶりです。

本日より『少年マールの転生冒険記』、更新再開となります。


今回はマールとイルティミナの夫婦のお話です。よかったらどうかまたゆっくりと、新しい物語を楽しんで下さいね♪


それでは、第741話です。

どうぞ、よろしくお願いします。

「――では、行ってきますね、マール。すぐ帰ってきますから」


 チュッ


 そう告げて微笑むイルティミナさんは、夫である僕の頬にキスしてくれた。


 目を閉じて受け入れて、僕も「うん」と頷く。


 そこは冒険者ギルド・月光の風の門前だ。


 目の前の通りには、王家の用意してくれた馬車が停まっている。


 実は今日は、お城で舞踏会が開かれる日。


 僕の奥さんは王国が誇る『金印の魔狩人』であり、レクリア王女が後ろ盾となるほどの人物だ。


 なので、こうした催しに招かれることもあるのである。


 招待状は、僕ら夫婦に届く。


 でも、僕は不参加。


 僕が華やかな舞台が苦手……というのもあるけれど、理由としては『僕が《神狗》だから』というのが大きい。


 ご存じの通り、僕の肉体は『神の眷属』のもの。


 神々への信仰の篤いこの国では、色々な意味で価値がある存在らしい。


 そして僕の奥さん曰く、貴族の世界は『魑魅魍魎の棲まう世界』であり、不用意に参加すると貴族たちに利用され、現在の自由な生活が脅かされる可能性があるんだって。


 いや、恐ろしい……。


 なので余程のことがない限り、僕は『不参加』と決めているのだ。


 本当はイルティミナさんも舞踏会などに興味はなく、特に参加したくはないみたい。


 だけど、レクリア王女の体面を保つための義理立て、そして僕を守るために必要なこととして参加してくれている。


 で――本日もそんな日なのだ。


 僕は、大事な奥さんの手を握って、


「いってらっしゃい、イルティミナさん」


 彼女の目を見ながら微笑んだ。


 正直、離れたくない気持ちはある。


 でも、見送りは笑顔で。


 そう決めていた。


 イルティミナさんは切なそうに僕を見つめ、「はい、マール」と繋いだ指に少し力を込める。


 しばらく見つめ合う。


 ずっとこうしていたいけれど、そうもいかない。


 やがて、僕らは名残惜しそうにお互いの指を離して、イルティミナさんは馬車へと乗り込んだ。


 窓の向こうに彼女が見える。


 ガラスの向こう側で、こちらに微笑み、


 ガタン ゴトゴト


 馬車の車輪が回り出すと、その愛しい姿は、馬車と共に通りの奥へと行ってしまった。 


(…………)


 少し寂しい。


 でも、仕方のないこと。


 僕は青い空を見上げ、目を閉じると大きく息を吐いた。


 うん、切り替えよう。


 パン


 軽く頬を叩いて、心を叱咤する。


 そうして僕は、1人、すぐ後ろにある冒険者ギルドの出入り口へと歩いていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 ギルド2階には、レストランが設営されている。


 モグモグ


(うん、美味しい)


 その窓際の席で、僕は1人で食事をしていた。


 テーブルに並ぶ料理は、海鮮パスタと海草サラダのセット。デザートには、数種のカットフルーツとアイスココアの組み合わせだ。


 このレストランはたまに利用するけど、料理の味は僕好み。


 前世の記憶は定かじゃないけど、日本のファミリーレストランみたいな庶民的な美味しい料理って感じかなぁ。


 値段も安く、しかも量も多め。


 肉体労働者である冒険者には、実にありがたいレストランだ。


 イルティミナさんが帰ってくるのは、多分、夕方ぐらいの予定。


 舞踏会そのものは夜までやる(というか、夜が本番)らしい。


 けれど僕の奥さんは、とりあえず顔を出して、必要な挨拶だけしたらすぐに退席するつもりだって言ってたからね。


 それまでは、僕もここで時間を潰させてもらうつもり。


 あと4~5時間かな?


 実は、レストランの上の3階は宿泊施設で、その最奥には『キルトさんの部屋』もある。


 そっちに行こうか、迷ったんだけどね。


 だけど、彼女も忙しい人だし、長居するのも悪いかなと思ったんだ。


(…………)


 キルトさんって冒険者を引退したのに、むしろ引退したあとの方が忙しくなってる気がするのは何でだろうね?


 不思議だなぁ。


 そんなことを思いながら、パスタを口に運ぶ。


 モグモグ


 うん、魚介の旨みが沁みて美味しい。


 味を楽しみながら、ふと顔を上げる。


 レストランの壁一面がガラスとなった向こう側に、青く澄んだシュムリア湖とその湖上に輝く美しいお城が見えていた。


 神聖シュムリア王城――あそこに今、僕の大事な人がいる。


(…………)


 大丈夫かな?


 僕の奥さんはしっかり者だけど、少し心配だ。


 実は少し前、こんな出来事があったんだ。


 今日と同じように、イルティミナさんがお城に行くことがあった。


 でも、その日、帰ってきた彼女は、すぐに僕を抱きしめ、何度も僕の髪を撫でてきたんだ。


(???)


 いつもの愛撫……と少し違う。


 イルティミナさんは隠そうとしてるみたいだった。


 けど、僕にはわかる。


 この行動は、彼女がストレスを感じている時に、自分の心を落ち着けようと無意識にする仕草なんだ。


 長年、犬マールをしてるから知っている。


 なので、お城で何かあったのか問い質した。


 彼女は言いたくなさそうで、でも、僕が心配でしつこく聞いたら根負けして教えてくれた。


 舞踏会の宴の会場で、


「おい、そこのお前。平民にしては、なかなか美しいじゃないか。よし、俺様の妻になれ」


 と、声をかけられたとか。


 相手は、どこぞの伯爵貴族の子息様。


 いきなり声をかけられて、彼女もびっくりしたって。


 無礼な言葉に立腹もしたけれど、彼女は大人だ。


 そこは冷静に『自分はすでに結婚しておりますので』と丁寧にお断りしたと言う。


 ところが相手は、


「ならば、その男と別れろ。これは命令だ。お前は黙って、俺様の物になればいい」


「…………」


 これには、彼女も呆気に取られた。


 聞いた時は、僕も唖然としちゃったよ。 


 というか、周りにいた良識ある貴族の皆様方も驚いたり、呆れた様子だったんだって。


 …………。


 僕の奥さん、イルティミナ・ウォンは『金印の魔狩人』だ。


 その存在は国家を代表する戦力の象徴の1つであり、他国への特使を務めることもあるような並の貴族より上の立場であった。


 だけど、血筋は平民。


 だから本当に一部だけれど、貴族の中には『金印』の称号を軽視して、侮る人もいるんだって。


 その伯爵貴族の子息も、そんな1人だったみたい。


 そして、イルティミナさんは彼に手首を掴まれて、そのまま強引に別室に連れて行かれそうになったとか。


 彼女の実力なら、無論、簡単に振りほどける。


 でも、貴族相手に騒ぎにするのもまずい。


 なので、


「恐れ入りますが、私の結婚はレクリア王女にも認められ、祝福されたものです」


 と、伝えたそうな。


 レクリア王女は、公表されてはいないけれど『次期国王』として内定している。


 つまり、イルティミナさんは『自分のバックにはそんな人物がいるよ』、『その王女の祝福した結婚に喧嘩を売るような真似をするの?』と、暗に警告したんだ。


 困った言動をしてたけど、やはり貴族。


 さすがに王家の権威はわかっていたようで、彼は表情を苦々しくすると、


「……ちっ」


 と、舌打ちして、彼女の手首を乱暴に離すとその場を去っていったとか。


 解放されたイルティミナさんも、やれやれ……と、ため息がこぼれたらしい。


 あとでわかったんだけど、その伯爵貴族の子息は、これまでにも何度か問題を起こしていたらしくて、貴族社会の中でも鼻つまみ者だったんだって。


 彼が去ったあと、イルティミナさんは他の貴族の方々から同情の声をかけられ、その辺のことを教えられたとか。


 平民とはいえ人の奥さんを奪おうとするなんて、本当に酷い話だ。


 しかも、僕のイルティミナさんを?


 温厚なマール君も、これにはご立腹だよ!


 ちなみにそのあと、イルティミナさんは、この出来事をしっかりレクリア王女に報告している。


 後日、その伯爵貴族の当主と息子は厳重なお叱りを受けたとのことだ。


 で、僕の奥さんは、そんな人の悪意にまつわる話を僕に聞かせたくなかったらしい。


 またその件もあって以来、彼女は僕を舞踏会などには絶対に参加させないようになり、そうした貴族社会の悪意からより僕を守ろうとするようになってしまったのだった。


 モグモグ


 食事をしながらお城を眺めて、そんな先日の出来事を思い出してしまった。


 でも、彼女が僕を心配してくれるように僕も彼女が心配だ。


(今日は大丈夫かな……?)


 先日の件は相当例外的なものだと思うけれど、何事もなく帰って来てくれることを願うばかりだった。


 …………。


 …………。


 …………。


 それから4時間ほどが過ぎた。


 太陽は西に傾き、秋の空は茜色に染まっていた。


 ガラスの向こう側に広がるシュムリア湖の美しい湖面も、夕暮れの空が反射してキラキラと赤い光に輝いている。


 あれからケーキと紅茶を注文したり、アイスココアのおかわりをしながら、僕はまだレストランにいた。


(……そろそろかな?)


 時間的には、イルティミナさんが帰ってきてもおかしくない。


 コク コク


 アイスココアのグラスを両手で持ち、少しずつ飲む。


 やがて、カップは空っぽに。


 少し迷いつつ、まだかかるかもしれないと思った僕は「すみませ~ん」と店員さんに声をかけ、新しいアイスココアのおかわりを注文した。 


 届くまで、お城と湖の景色を眺めて待つ。


 やがて、後ろから足音が近づく。


 店員さんかな?


 アイスココアの美味しさを思いつつ、振り返ろうとして、


「あ、あの!」


「おくつろぎ中、すみません!」


「そ、その、マールさんですよね!?」


 と、声がかけられた。


(ほえ?)


 キョトンとしながら振り返ると、そこには、見知らぬ3人の若い女冒険者が立っていた。


 え……誰だろう?

ご覧頂き、ありがとうございました。


次回更新は今週の金曜日を予定しています。どうぞよろしくお願いします。



また10日(火)にコミカライズ12話も更新されるようですので、よかったらそちらもよろしくお願いします♪


URLはこちら

https://firecross.jp/ebook/series/525


漫画マールの更新も、どうかお待ち下さいね!

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