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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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730・日常と小さな異変

本日も読みに来て頂き、本当にありがとうございます♪


今話より、また新しいお話です。


どうか、またゆっくりと楽しんで下さいね。



それでは、第730話です。

よろしくお願いします。

 暑かった夏が去り、秋が訪れた。


 今年の猛暑の影響か、残暑も厳しかったけれど、最近はそれも落ち着いてきた気がする。


 深まる秋。


 そんな秋晴れの空の下、僕とイルティミナさんは今回依頼された討伐クエストを達成して、王都ムーリアに通じる街道を行く竜車に乗っていた。


「ふふっ、マール♪」


 ムギュッ


 2人きりの車内では、ペットを愛でる飼い主のように、イルティミナさんは僕をいっぱい構ってくる。


 抱きしめられたり、撫でられたり、匂いを嗅がれたり、時には、その、キスされたり、首とか耳を軽く噛まれたり、舐められたり……もう色々だ。


 特にクエスト後、緊張から解放されるとそれが激しいみたい。


 僕も従順な子犬みたいに、彼女の愛撫を達観して受け入れるのが当たり前になっていた。


 ……いや、まぁ、正直、嬉しいんだけどね?


 愛されてる実感があるし。


 何より、こんな綺麗なお姉さんに愛されて嫌な人っているのかな? 


 いや、いない(断言)。


 少なくとも、僕は幸せです。


(えへへ……)


 ただ唯一の心配は、そうした僕らの物音を竜車を操縦する御者さんに聞かれないか、かな。


 一応、車内は防音なんだけど、そこまで完璧じゃないからね。 


 多少は、音が漏れるんだ。


 世間的には、イルティミナ・ウォンは孤高のイメージがあるし、もし聞かれたらそれが崩れちゃう気がする。


「んふっ、マ~ルは美味しいです♪」


 ムチュッ


(わっ?)


 耳たぶ、しゃぶられた。


 く、くすぐったいような、気持ちいいような、不思議な感触。


 思わずブルッと震える僕に、イルティミナさんは「うふふ♪」と真紅の瞳を妖しく輝かせながら、どこか楽しげに微笑んでいた。


 ガタン


 その時、竜車が突然止まった。


 うおっと?


 バランスが崩れ、僕はイルティミナさんの柔らかな胸に顔面から突っ込んでしまう。


 彼女も驚きつつ、


「マール」


 ギュッ


 僕を抱きしめ、受け止めてくれたので座席から落ちずに済んだ。


「あ、ありがと、イルティミナさん」


「いいえ」 


 よしよし、と頭を撫でられる。


 それから彼女は顔をあげ、車体の窓を少し開ける。


「どうしましたか?」


 そう御者席に向かって声をかけた。


 御者さんは馬車ギルドに所属するプロなので、こうした急停止などは珍しいのだ。


 まさか僕と彼女のやり取りが聞こえて操縦をミスしたなんてこともないだろう。


 ないよね……?


 僕が余計な心配をする中、40代ぐらいのベテランの御者さんは、


「申し訳ありません。街道の奥から王国の騎士隊がやってくるのが見えまして、すれ違うためにはこの場所に停止するしかなく、急な動きとなってしまいました」


 と、誠実に謝ってくれた。


 でも、王国の騎士隊?


 僕とイルティミナさんは驚きつつ、窓から前方を見る。


 街道は少し丘になっていて、その頂上を越えて赤い甲冑姿の騎士の乗る騎馬が5騎、こちらへとやって来ていた。


(なるほど)


 丘になっていたから、発見が遅れたんだね。


 しかも、相手は王国騎士。


 平民がその進路を妨げるのは、当然、許されない行為であり、ここは狭い街道なので、御者さんとしてもすれ違える幅のある場所で急停止するしかなかったのだ。


 カッカッカッ


 騎士たちは早足に馬を進めながら、竜車の横を抜けていく。


「…………」


「…………」


 もちろん、車内にいるのが王国を代表する冒険者とは気づいていない。


 ま、知らせる必要もないけれど。


 その姿を見送って、


「申し訳ありませんでした。それでは、再出発いたします」


「はい」


「あ、お願いします」


 御者さんの言葉に頷くと、車両を引く竜たちは力強く足を踏み出し、僕らを乗せた竜車は再び街道を進み始めた。


 そして、イルティミナさんも、


 パチッ


 と、窓をしっかり閉める。


 再び音が外に漏れないようにすると、僕を膝の上に抱きあげて、また色っぽい笑みをこぼしながら「マール♪」と綺麗な顔を近づけてきたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 そんな風に、僕らは更に3日間、街道を進んだ。


 王国の中心である王都ムーリアが近づくにつれて街道も広くなり、すれ違う馬車や竜車なども多くなっていく。


 それは、もちろんいつもの光景。


 なんだけど、


(あ、まただ)


 僕は車内の窓から、またすれ違う王国騎士を見ることになった。


 本日、2回目。


 実は、この3日間で7回目である。


 街道の安全を守るため、定期的に王国騎士隊が巡回するのはあるけれど、さすがにこの頻度はおかしかった。


「何かあったのかな?」


 僕は呟く。


 ちなみにイルティミナさんに抱きしめられ、髪に彼女の顔を押しつけられながらの状態だ。


 そして僕の言葉に、僕の奥さんも顔をあげる。


 窓の外、遠ざかっていく騎士隊の背中を視線で軽く追いかけて、


「そうですね。確かに平時に比べて、よく見かけますが……まぁ、何かに対処するためだとしても、それが彼らの任務でしょう。特に問題はありませんよ」


「うん……まぁ」


 そうだよね。


 でも、少し気になる。


 イルティミナさんは苦笑して、


「そんなに気にかかるのでしたら、王都に帰ったらキルトにでも聞いてみましょうか」


「え?」


「今のキルトは引退したことでより多くの人々と交流を持つようになり、王国の情報のほぼ全てが集められる立場になりましたからね」


「…………」


「マールが望めば、きっと調べてくれますよ」


「そっか……」


 公私混同な気もするけど、相手はキルトさんだ。


 彼女は、家族同然。


 聞くだけ聞いてみてもいいかもしれない。


 もし国家機密とかで教えてもらえないなら、それはそれだけのことだし別に構わないだろう。


 僕は笑って、頷いた。


「うん、そうだね。そうしてみるよ」


「はい」


 イルティミナさんも柔らかく微笑み、頷きを返してくれた。


 やがて数時間後、更に2度、王国騎士隊を見かけたりしながら、僕らを乗せた竜車は王都ムーリアへと到着した。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 王都名物の渋滞を抜け、大門を潜り、大通りを歩いて、やがて冒険者ギルド『月光の風』に帰り着いたのはもう夕方だった。


 夕日が西の空に傾いている。


 茜色の光を浴びながら、僕らはギルドの建物に入った。


 ザワッ


 王国のトップ冒険者である『金印の魔狩人』の帰還に、一瞬、ギルド内の意識と視線が集まり、直後、イルティミナさんの放つ孤高の気配に静寂が落ちた。


(う~ん、凄い)


 これもいつもの光景。


 だけど、毎回、僕は感心してしまう。


 特に何も喋らなくても、イルティミナさんの放つ存在感は人々を魅了し、その視線と意識を引きつける。


 それは、かつてのキルトさんと同じ。


 人々の反応は対照的だけど、根本は同じように思えた。


 きっと今のイルティミナさんは、かつての金印だった頃のキルト・アマンデスと同じぐらいギルドでの大きな存在になっているんじゃないかな?


 夫としての贔屓目抜きに、僕はそう思うんだ。


 ともあれ、イルティミナさん本人には、そうした周囲の反応にあまり感心はなさそうで、


「イルティミナ・ウォンです。今回のクエスト完了報告をお願いします」


「あ、は、はい!」


 と、緊張している受付嬢さんに声をかけていた。


 あの受付嬢さん、新人かな?


 僕が冒険者になった6年前に比べて、最近はギルド所属の冒険者も増えている。同時に、受付嬢さんも含め、ギルド職員も新しい人が増えたんだよね。


 そんな1人かもしれない。


 ギルドどころか、王国トップの冒険者を前に、かなりギクシャクしていた。


 うん、申し訳ないけど、なんか微笑ましい。


 受付嬢さんは緊張からか2回ほど書類の記入ミスを犯し、イルティミナさんに平謝りしながら、何とか完了手続きを終えてくれた。


 ちなみに手続きの間、イルティミナさんは何も言わなかった。


 無言で見てるだけ。


 受付嬢さんがミスしても、「お気になさらず」と淡々としたお言葉。


 夫である僕には、彼女が本当に気にしてないとわかる。


 でも、受付嬢さんは、逆に無言の圧力と受け取ってしまったのか、余計に緊張していくのが感じられたんだ。


 うん、誤解なんだよ?


 イルティミナさん、優しい人なんだから。


 ともあれ、何やかんやあったけれど、これでクエストは無事に完了となり、僕らはわざわざ立ち上がって頭を下げる受付嬢さんに会釈して、受付を離れていった。


 そして、距離が離れた所で、


「……私って、怖いですかね?」


 と、イルティミナさんが呟いた。


 おや……。


 受付嬢さんの反応を全く気にしていないと思ったけど、実は気にしていたのかな。


 僕は微笑み、


「可愛いと思うよ」


「…………」


「ただイルティミナさんって美人過ぎるから、相手が緊張しちゃうだけだと思う。もし気になるなら、ちょっとだけ微笑んであげると違うんじゃないかな?」


「そう、ですか」


 彼女は、自分の頬を白い指で触った。


 それから僕を見る。


(?)


 何だろう?


 視線の意味を測りかねていると、


「私のことを『可愛い』などと言ってくれるのは、マールぐらいですよ。本当に貴方だけは、私の特別な人なのですね」


 と、切なそうに微笑んだ。


 僕は目を瞬く。


 うん、そうした笑顔を他の人にも見せたら、きっと違う反応だと思うのにね……。


 でも、


(この笑顔が見れるのは、夫の特権かな?)


 なんてことも思ったり。


 いつもより近い距離に寄り添いながら、僕とイルティミナさんは多くの視線を集める中、ギルドの1階フロアを歩いていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「おぉ、よう来たの」


 受付を出た足で、僕らはギルド3階にある『キルトさんの部屋』を訪れた。


 突然の来訪だったけれど、銀髪の美女は笑顔で僕らを迎えてくれる。


 キルトさんに「さぁ、入れ」と促されて、僕らは室内に入り、いつもお邪魔しているリビングのソファーに腰を落ち着けた。


 お茶を飲みながら、お互いの近況を話す。


 僕らからは、今回のクエストの話。


 キルトさんも、現在、自分が関わっている外交関係の仕事についてを話してくれた。


 今、世界各国では『転移魔法陣』の運用を本格化させようと、その建造が急ピッチで行われているんだそうな。


 あと数年したら、貿易とか人々や荷物の運送、輸送に革命が起きるかもしれない、らしい。


(そっかぁ……)


 そうしたら、国外旅行も簡単になるかもしれない。


 アルン神皇国にいるフレデリカさんやダルディオス将軍とも、もっと気軽に何度も会えるようになるかも……?


 うん、その日が楽しみだなぁ。


 なんて口にしたら、


「そうじゃな」


 と、キルトさんは明るく笑って賛同してくれて、


「そう、ですね」


 一方で、イルティミナさんはなぜか少し複雑そうな表情で困ったように賛同してくれた。


(???)


 どうしたんだろう?


 と、そんな感じで世間話をしつつ、


(あ、そうだ)


 僕はここ数日、王都までの街道で何度も王国騎士隊を見かけたことをキルトさんに話してみた。


 キルトさんは、驚いた顔。


「ほう、そうなのか?」


「うん。キルトさんも理由を知らないの?」 


「うむ、初耳じゃ」


「世間の表も裏も情報が集まるキルトにしては珍しいですね」


「いや、まぁ、わらわもそこまで王国の情報の全てを知っておる訳ではないのじゃぞ? 知らぬこともあるわ」


「ふぅん」


「そうですか」


 僕ら夫婦は頷きつつ、目を合わせる。


 全てを知らなくても、知らないことの方が少ないと暗に言えるだけで凄いと思うんだけどな。


 ともあれ、


「ま、マールの頼みじゃ。調べておこう」


 と、キルトさん。


 僕は「ありがとう」と笑った。


 イルティミナさんも、


「ほら、マールが望めば、やっぱり」


「あはは、うん、だね」


「? 何じゃ?」


「ううん」


「何でもありませんよ。それより、私からもよろしくお願いしますね」


「ふむ、まぁ任せよ」


 2~3日、時間をくれ、と言葉を続けて、キルトさんは請け負ってくれた。


 そして、その日はキルトさんと別れた。


 その後、僕らは自宅に帰る。


 久しぶりの我が家を満喫しながら、2人で食事をしたり、お風呂に入ったり、一緒のベッドで眠ったり、そうして冒険の疲れをゆっくりと癒した。


 翌日は、今回の依頼主の貴族様への挨拶。


 午後は散歩したり、外食したりと夫婦で王都デート。


 その翌日は、ちょうど討伐クエストに出発するというソルティス、ポーちゃんの見送りをしたりした。


 ソルティスも、今年の冬には20歳になる。


 それは、僕が出会った頃のイルティミナさんと同じ年齢だ。うん、なんか不思議。


 彼女も見た目、本当に大人っぽくなった。


 背も高くなり、あんなにぺったんこだった胸も、今は大きく実っている。


 正直、凄く美人だ。


 まぁ、でも、イルティミナさんの妹だから当然かもしれない。


「アンタは変わんないわね」


「そう?」


「ええ、チビのまんま」


「…………」


「うけけっ。じゃあ、行ってくるわね!」


 パシッ


 僕の背中を軽く叩き、彼女は悪戯っぽく笑いながら僕ら夫婦に手を振って、通りを歩いていった。


 ペコリ


 一緒にいる金髪の幼女は、こちらに一礼。


 そして相棒についていく。


(う~ん……)


 見た目は変わった。


 でも、中身は……ねぇ。 


 僕とイルティミナさんは顔を見合わせ、苦笑してしまった。


 でも、そんなソルティスに安心している自分もいる。


 僕自身の成長が遅くて外見が変わらない分、どんどんと成長して大人になっていく彼女に置いていかれるような感覚があるからだ。


「…………」


 何となく、秋晴れの空を見上げる僕だった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 その翌日、キルトさんから連絡があった。


 イルティミナさんと2人、冒険者ギルドを訪れ、彼女の部屋の扉をノックした。


「――来たか」


 と、すぐに室内に招かれた。


 先日と同じリビングのソファーに座り、ルームサービスの紅茶を用意してもらえる。


 紅茶をすする。


(うん、美味しい)


 ギルドまで歩いてきた疲れも癒される。


 そんな僕を眺めて、


「この間、頼まれた件、調べておいたぞ」


 と、キルトさん。


 早速、本題だ。


 僕は「あ、うん」とカップから口を離して姿勢を正した。


 イルティミナさんと2人、キルトさんを見つめて、その話を聞く体勢になる。


 彼女の黄金の瞳も、僕らを見つめる。


 そして、その唇が開き、


「実は王都周辺の街道で、ここ2ヶ月ほど前から『辻斬り』被害が起きていたようじゃ。先日、その被害に王国貴族も遭ったため、王国騎士隊が多数動員されたようじゃの」


 と、教えられたんだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。


次回更新は、今週の金曜日を予定しています。どうぞ、よろしくお願いします。




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