漫画マール1巻、発売記念SS・その4
本日は、コミック単行本1巻の発売記念ショートストーリーの4話目、最終話となります。
今回の話は、ポー視点。
いつも無口な彼女の心の声を、どうかお楽しみ下さいね。
それでは、よろしくお願いします。
「――ありがとう、ポーお姉ちゃん」
目の前の女の子は、そう笑った。
ポーは、不愛想に頷く。
ポーの名前は、ポーだ。
ポーとは、人間の10歳ほどの外見、癖のある金色の短い髪、水色の瞳をした容姿の女児だ。
そんなポーは今、シュムリア王国の王都ムーリア、その東部の貧民街に近い区画に設立された孤児院に滞在中だ。また、ここは6年前、ポーが保護された場所でもある。
現在のポーは、冒険者。
その収入の一部を世話になった孤児院に寄付するのは、この孤児院出身者の倣いだと聞いて、その教えを守るためここを訪れた。
同伴者は、相棒のソルティス、彼女の姉のイルティミナ、その夫マールの3人だ。
院長の『デラおばさん』に寄付金を渡したあと、ポーたちは、寄付金とは別に用意していたお土産の焼き菓子を皆に配っていた。
ちなみに、ポーとソルティスの手作りだ。
市販品には及ばないが、味はイルティミナの保証付きである。
全員に配ったあと、イルティミナとソルティスの姉妹は、庭にある木の根元に座って子供たちに自分たちのこれまでの冒険譚を聞かせていた。
特にイルティミナは『金印の魔狩人』。
シュムリア王国の英雄たる彼女の魔物退治の物語には、孤児院の子供たち全員が目を輝かせていた。
ポーは、口下手だ。
なので、ポーは姉妹のそばで黙ったまま、その光景を眺めていた。
(…………)
孤児院の暮らしは、厳しい。
だからこそ今、子供たちの笑顔を見たポーの心は、不思議な熱を覚えていた。
すると、
「ポーちゃん、どうかした?」
そんなポーの様子に気づいたのか、隣にいたマールが声をかけてきた。
ポーは答えた。
「6年前、ポーがいた時の子供たちも、こうして笑っていたのを思い出した」
「…………」
マールは、虚を突かれた顔だ。
この6年で、孤児院の子の顔触れは変わっていた。
6年前、ポーと共にいてくれた子供たちは皆、すでに孤児院を卒業していて1人もいない。
…………。
ポーは、本来、消える存在だった。
ポーの正体は、神龍ナーガイアの疑似人格だ。
神の眷属である神龍ナーガイアは、6年前、『闇の子』との戦闘に敗れ、脳を損傷し、その修復の間、肉体を制御するために生み出されたのが『ポー』という疑似人格だ。
なので、ナーガイア復活と同時に、ポーの人格は消える予定だった。
けれど傷ついた神龍ナーガイアは、孤児院の子に守られ、愛され、共に日々を生きた結果、ナーガイアの人格を消して、ポーの人格を残す選択をした。
だからポーは今、ポーとして生きている。
そんなポーを『ポー』と名付けたのは、6年前の孤児院の子供たちだった。
その向けられた笑顔を、ポーは今も覚えている。
そして今のポーの目の前では、同じような孤児院の子供たちが笑っていた。
マールは、ポーの顔を見つめていた。
「うん、そっか」
やがて、優しい表情で頷く。
ポーは、口下手だ。
けれど、この神界の同胞である少年は、そんな口下手なポーの言いたいことを理解してしまう。
否、ポー以上に、ポーの心を理解する。
マールの手が、優しくポーの金色の柔らかな髪を撫でた。
(……ああ)
その時、当時のポーが感じていた温かさが、なぜか懐かしく胸に去来した。
マールを見る。
マールは、ポーを見て微笑んでいた。
(……さすが、マール)
ポー以上にポーを理解するマールには、感嘆を禁じ得ない。
マールは言う。
「また、みんなで孤児院に遊びに来ようね」
「…………」
コクン
その提案に、ポーは承諾の首肯を行った。
その未来を夢想し、予想する――すると、自然と頬の筋肉が緩むのを感じた。
マールは驚いた顔をする。
だからポーは、きっとポーが今、自分でも滅多にできない微笑みを浮かべているのだと理解したのだ。
ご覧いただき、ありがとうございました。
これにて、コミック単行本1巻の発売記念ショートストーリー全4話が完結となりました。
最後までお読み下さり、皆さん、本当にありがとうございます!
次回は金曜日、本編の更新再開となります。
どうかまた、皆さんにマール達の物語をゆっくり楽しんで貰えたなら幸いです♪
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漫画となったマールとイルティミナを、皆さんにもぜひ見て貰いたいです。
どうぞ、よろしくお願いします~!




