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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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715・闇の奥には

5月11日にこっそりと小説家になろうでの活動6周年となりました。


書き始めた当初は、まさか、ここまで書き続けられるとは思っておりませんでした。

これも、読んで下さる皆さんのおかげです。


改めまして、本当にありがとうございました!


7年目となるこれからも、どうかマールやイルティミナたちの物語を楽しんで頂ければ幸いです♪



それでは本日の更新、第715話です。

どうぞ、よろしくお願いします。

 僕らは、謎の洞窟を進んでいった。


 洞窟内は暗く、ランタンと光鳥の光源があっても尚、闇深く感じられた。


 起伏も激しい。


 鍾乳石の乱立する地面は、時に上下の急坂となり、時に崖となって行く手を阻むんだ。


 その度に僕らは、ロープを丈夫そうな鍾乳石に回したり、僕が背中に『神武具の翼』を生やして1人ずつ輸送したりした。


(ふぅ……ふぅ……)


 歩くのも、かなり大変だ。


 洞窟内は湿気が強く、呼吸するのも苦しい。


 熱気もある。


 また足元が硬い岩盤でありながら、所々濡れているので滑り易いのだ。


 もちろん、凹凸のある地面だ。


 気を抜けば、簡単に足を挫いてしまいそうになる。


 イルティミナさんは、


「慎重に、ゆっくり行きましょう」


 と、僕に促す。


 僕も「うん」と頷いた。


 とても無理して急げる状況じゃない。


 最も重要なのは、この洞窟が正体不明の『人類の敵』の縄張りだということ。


 いつ、どこで襲われるかわからない。


 その緊張も常に保たねばならなかった。


 …………。


 そして、2日が過ぎた。


 洞窟の闇の中、昼夜の区別は難しい。


 けど、体内時間からそれだけの時間が流れたことがわかる。


 夜はもちろん、交代で眠りと見張りをした。


 やがて、その日の昼、


「あ……分岐だ」


 明かりに照らされる洞窟の先が、2つに分かれているのに僕らは気づいた。


 みんなの足が止まる。


 方角的には、どちらも北北東だ。


 ただし、片方は下り坂で、もう片方は、ゆっくりと右に曲がっていた。


「どっちに行く?」


 ソルティスが呟いた。


 キルトさんは「ふむ」と考え込む。


 イルティミナさん、ポーちゃんも彼女の決断を待つ感じだった。


 クンクン


 僕は、鼻を鳴らす。


 そして、


「下り坂の方から、血の臭いがするよ」


 と、教えた。


 絶え間ない血臭は、僕の鼻をずっと苛んでいた。


 みんなにはわからないらしい。


 確かに血の臭いはかすかだけれど、でも僕には、はっきりと感じられていた。


 僕の言葉に、キルトさんは頷いた。


「そちらに行こう」


「うん」


 僕も頷いた。


 みんなも異論はないみたいだ。


 緩やかな下り坂へと、僕ら5人は足を運ぶ。


 滑らないよう慎重に。


 キルトさんを先頭に、ポーちゃん、ソルティス、僕、イルティミナさんの順番で進んでいく。


 洞窟はその後、何回も分岐した。


 時には、3方向にも。


 本当に広い。


(まるで巨大な迷宮だ) 


 迷ったら、2度と地上に戻れない……そんな感覚がした。


 …………。


 それから更に1夜を挟み、翌日。


 今日も僕らは闇の中を進んだ。


 そうしてその日も数時間、洞窟を歩んでいた時だった。


「む……?」


 先頭のキルトさんが何かに気づいた。


 何だろう?


 全員の足が止まる。


 彼女は長い銀髪を揺らしながら1人で先に進み、地面にしゃがんだ。


 そこに指を伸ばす。


 その先に、何かが落ちていた。


(?)


 小さな破片だ。


 金属……いや、陶器?


 どちらともつかない、薄緑色の不思議な光沢の破片だった。


 僕らは驚く。


「人工物……?」


 そう……この洞窟内に、人の加工した物質が落ちていたのだ。


 初めての発見。


 そして、言い換えればそれは、この洞窟内に潜む正体不明の敵の手がかりでもあった。


 皆で、破片を見る。


「何じゃろうの、これは?」


「……うん」


 キルトさんと僕は、首をかしげた。


 何かの器の欠片?


 でも、それ以外にも見える。


 というか、破片が小さすぎて、元が何だったかわからない。


 イルティミナさんは「ソル、わかりますか?」と博識な妹に声をかけた。


 ポーちゃんも相棒を見る。


 指名された少女は、キルトさんから破片を受け取った。


 表裏を確かめて、


「ごめん、さすがにわかんないわ」


「そうですか」


「でも、これ、普通の材質じゃないわね。魔力を流す経路があるわ」


 魔力を……?


 僕は、目を丸くする。 


 つまり、魔力を使う道具の1部分ってことだ。


 2人のお姉さんも驚いた顔だ。


 ソルティスは、真紅の瞳を輝かせる。


 体内の魔力を、破片に流したみたいだ。


 すると、


 グニッ グニュン


(うわっ!?) 


 硬そうだった破片の表面が波立ち、気泡が生まれ、大きく動いたんだ。


 まるで生き物だ。


 イルティミナさん、キルトさんも目を見開いていた。


 ソルティスの瞳から、魔力の光が消える。


 すると、破片も元の状態に戻った。


 今の現象が嘘だったみたいに、魔力が切れた途端に沈黙していた。


「ふぅん……?」

 

 少女は、興味深い実験結果を見たように呟いた。


 僕は聞く。


「今の、何?」


「さぁ……? 魔力に反応したみたいね」


「…………」


「多分、本来は制御装置があって、これに正しい魔力が流されれば、適切な動作をするんじゃないかしら」


「適切……?」


 僕の呟きに、彼女は肩を竦めた。


 破片を見つめて、


「どう動くかはわからない。けど、魔素の変換率が相当高いわ」


「…………」


「魔力から高出力の動力を発生させる何かの部品なのは、間違いないわね。でも、これだけの魔道具を造るのは、現代技術じゃ無理よ」


「現代じゃ無理って……じゃあ」


「そ」


 少女は頷いた。


 僕ら4人を見返して、


「これ、古代タナトス魔法王朝の時代の遺物の1つね」


 と、言ったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 400年前に栄え、滅亡した古代タナトス魔法王朝の遺物。


 現代では不可能な超技術の名残り。


 それが、この洞窟にある。


 その事実を知らされて、僕らはますます混乱してしまった。


 なぜ? どうして?


 でも、答えは出てこない。


 今回のテテト連合国で起きた怪現象とも関連しているのか、それさえもわからない。


「先に行くしかないの」


 キルトさんは言った。


 僕らも頷くしかなかった。


 きっと、この先にその答えを示す何かがあると信じて歩くしかない。


 そして、また暗闇の洞窟内を進んでいく。


 …………。


 それから2時間ほど、歩いた。


 道中、先程と同じ古代の遺物の破片は、何個か見つけられた。


 でも、どれも破片ばかり。


 大きくても、5センチもないようなものばかりだ。


 表面には、紋様がある。


 形も様々で、平たい物もあれば、突起状の物もあり、滑らかな曲線を描く物もあった。


(本当、何なんだろう?)


 疑問ばかりが積み重なる。


 そして、30メードほどの斜面を下った時だった。


 ランタンと光鳥に照らされる洞窟の先の地面に、無数に輝く何かが落ちているのに気づいたんだ。


(え……?)


 それは、無数の破片だった。


 1つや2つではない。


 それこそ、床面全てを埋め尽くすような大量の破片だった。


「何よ、これ?」


 ソルティスも呆然だ。


 そして、そこには細かい破片ではなく、もっと大きな形を保つ物体もあった。


(あれは……)


 僕らは、ランタンをかざしながら近づいた。


 それが灯りの中、はっきり見える。


 僕は呟いた。


「――人形だ」


 それは、身長50センチほどの土器のような人形だった。


 胴体部分が壊れている。


 でも、埴輪みたいな顔があり、細長い腕の先には3本の指もあった。


 関節部は、球体だ。


 薄緑色の釉薬がかけられたみたいな光沢があり、割れた部位からは、謎の白濁した液体がこぼれていた。


 クン


 僕の鼻が動いた。


 そして気づく。


「血の臭い……この白い液体からだ」


「え?」


 僕の奥さんは驚いた顔だ。


 でも、間違いない。


 赤くないけれど、これは人の血液と同じ物質だ。


 少なくとも臭いからは、そう思えた。


 ソルティスは考える。


「もしマールが言うことが正しいなら、この白い液体は、人間の血液を元にして造られたのかもしれないわね」


「…………」


 人の血を加工した物質……?


(……何それ)


 そんなものが人形の中に使われてる事実に、僕は少し怖気を覚えてしまった。


 更に恐ろしいのが、その人形がここには、何百……いや、何千体も、壊れた状態で転がっている現実だ。


 いったい何があったのか?


 そして、この人形は何なのか?


 イルティミナさんは無言で、人形の残骸に白い指先で触れる。


 ヒィン


 その瞳が真紅の光に輝く。


 人形の残骸に、魔力を流したのだ。


 瞬間、


 ギチッ ギチチィッ


 壊れた人形は、バタバタと手足を動かし、暴れるように身体を捩らせた。


 指が外れる。


 同時に、人形の動きも弱まり、停止した。


「…………」


 イルティミナさんはその美貌を少しだけ険しくして、停止した人形を見つめていた。


 あの破片は、人形の物。


 つまり、この人形は、古代タナトス魔法王朝時代の遺物ということだ。


 でも、


(それが、この洞窟に、こんなにたくさん……?)


 何千体もの壊れた人形。


 それは、まるで人形の死体が散乱してるみたいだった。


 漆黒の闇に浮かびあがるその異様な光景を、僕は茫然と見つめてしまった。


 キルトさんは無言だ。


 黄金の瞳は、ジッと洞窟の奥の闇を見る。


「わからぬな」


 彼女は呟いた。


 鉄の意思を感じる声で。


「じゃが、間違いなく、怪現象の真相には近づいているのじゃろう」


「…………」


「皆、油断するな。真相を求め、我らはこのまま洞窟の奥へと進むぞ」


 ガシャッ


 自身の『雷の大剣』を手に、彼女は告げた。


 僕らも頷いた。


 全員が自分たちの武器を確かめ、いつでも使えるように備えておく。


 …………。


 ここで何があったのか、わからない。


 でも、尋常ではない何かが起きたのだろうことは予測ができた。


 それが、僕らにも起きない保証はない。


(……うん)


 何が起きても対処できるように、跳ね除けられるように、僕は大きく息を吐き、武装と心を整えた。


「よし、行くぞ」


 銀髪の鬼姫様が号令する。


 僕らは頷いた。


 バキッ パキン


 足元の人形たちを踏み砕きながら、僕らは更なる暗い闇の奥へと進んでいった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 あれから、1キロほど進んだだろうか?


 足元には、さすがに敷き詰められるほどの人形の残骸はなくなっていた。


 けれど、それでも10~20体の残骸が常にある。


 パキン


 時折、その破片を踏んで音が鳴る。


 まぁ、元々、僕らは鎧を着ているから金属音がしているし、明かりも灯しているから隠密行動ではない。


 もし敵がいたら、とっくに補足されているだろう。


(…………)


 だから、常に備える。


 奇襲されても対応できるように。


 特に先頭のキルトさん、最後尾のイルティミナさんは、かなり周囲の気配を敏感に探っているみたいだった。


 パキン


 また音がした。


 今のは、ソルティスの靴が破片を砕いた音だ。


 続く僕も、破片を踏む。


 パキッ キン


「?」


 その時、音が2重に聞こえた気がした。


 気のせい?


 そう思った時、


 ピキッ


 また、小さな音がした。


 今度こそ、聞き間違いじゃない。


 音が洞窟の複雑な形状の壁に反響して、一瞬、どこから音がしたのかわからなかった。


 でも、すぐに悟る。


 ――正面だ。


 キルトさんがバッと片手を横に伸ばして、僕らの足を止めさせた。


 真正面に『雷の大剣』を構える。


 シャリン


 僕も『大地の剣』と『妖精の剣』を鞘から抜く。


(何かがいる)


 青い瞳を細め、前方の暗闇を睨む。


 ソルティスは『竜骨杖』を構え、ポーちゃんは少女を庇える位置に立ち、その小さな2つの拳を握った。


 イルティミナさんは、後方を確かめる。


 後ろに敵はない……それを確認した上で、僕の横に並ぶようにして『白翼の槍』を構えた。


 空気が引き締まる。


 パキッ


 その中に、また音がした。


 破片を踏む音。


 間違いなく、前方の闇の奥に潜む『何か』がこちらに近づいていた。


 ついに出たのか?


 7000人ものテテト連合国の人々を消息不明にした存在が……。


 チリッ


 キルトさんの黄金の瞳に殺気が灯る。


 パキ……ッ


 破片を砕く音が不自然に止まった。


 向こうも停止したのだ。


 彼我の距離は、恐らく、50メード近い。


 向こうも僕らの存在にはとっくに気づいていて、その上で、銀髪の鬼姫の発した殺意に反応したのだ。


 確かな知性。


 そして、相手の敵意を感じ取る優秀な感度。


 そんな相手が闇の中にいる。


 ソルティスは『光鳥』を前方に飛ばそうと、杖を前に向けた。


 闇が少しずつ溶けていく。


 向こうは、動かない。


 ぼんやりと闇の中に、更に濃い人型の闇が見えた。


 1体だ。


 その姿が灯りに照らされる寸前、


 ドン


 僕の全身が重くなった。


(がっ!?)


 一瞬、何が起きたのか、わからなかった。


 それは僕だけでなく、全員が同じだった。


 ソルティスは青い顔で、それ以上、杖を前に保持していられない。


 あのイルティミナさんでさえ、歯を食い縛っている。


 何が……?


 そう混乱したのは一瞬で、すぐに正体に気づく。


 殺意の圧、だ。


 キルトさんが相手に行った強烈な『死』の圧力をぶつける行為を、逆に今、闇の奥の人影から僕らに叩きつけられたのだ。


 つまり、恐怖。


 それが重圧の正体だ。


(いや……そんな馬鹿な!?)


 これでも僕は、それなりの修羅場を潜っている。


 それなのに、こんな簡単に呪縛されるなんて自分でも信じられない。


「くっ」


 歯を食い縛る。


 それでも重圧は消えず、だから、理解する。


 相手は、僕よりもずっと格上だ。


 だからこそ、僕やソルティスは動けなくなった。


 恐らく、イルティミナさんと同格か、それ以上の相手なのだろう。


 ほんの3秒。


 それだけの時間で、そのことを悟る。


 パキッ


 闇の奥で、再び破片を踏む音がした。


 闇の奥にいる漆黒の人影に見える存在が、動き出したのだ。


「…………」


 キルトさんは黄金の瞳を険しく細めながら、『雷の大剣』を担ぐように構え直した。


 ポーちゃんは、ソルティスを庇う位置。


 イルティミナさんも、僕を庇う位置に移動する。


 ググッ


 闇色の人影が姿勢を低くする。


 それは、獣が襲いかかる直前の態勢と同じだった。


(――来る!)


 思った瞬間、


 ドンッ


 重く鋭い足音を響かせ、黒い人影は闇の中から僕ら5人に飛びかかってきたのだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。



※次回更新は今週の金曜日を予定しています。どうぞ、よろしくお願いします。

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