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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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708・連合国の怪現象

第708話になります。

よろしくお願いします。

「テテト連合国……?」


 思わぬ内容に、僕は、思わず聞き返してしまった。


 テテト連合国は、シュムリア王国の北に位置する20の小国が集まってできた連合の国だ。


 国土は、シュムリアの約半分。


 北国らしく雪の多い土地で、妖精鉄などの鉱物資源や木材などを輸出して、僕らの王国とも取引をしている。


 過去に1度、僕らも訪れたことがある国だった。


 僕のおうむ返しに、


「そうじゃ」


 と、キルトさんは頷いた。


 そして、彼女はイルティミナさんを黄金の瞳で見る。


「先日の会談、覚えておるか、イルナ?」


 と聞いた。


 僕らの視線は、僕の奥さんに集まった。


 イルティミナさんは頷いた。


「アルトリウムの街に連合国首長が来た時の話ですか? 忘れられる訳がありません。大事なマールと2週間も離れ離れにさせられた地獄のような時間でしたから」


「む……そ、そうか」


「はい」


 おおぅ……イルティミナさんの表情が怖い。


 目の光が消え、氷点下の眼差しだ。


 さすがのキルトさんも、思わず及び腰になっていた。


 ソルティス、ポーちゃんは「ひぇ……」と抱き合っている。


 僕は、奥さんの手を握った。


 キュッ


 それで、彼女も我に返ったようだ。


 冷たく広がっていた威圧的な気配が消えて、すぐにいつもの優しい表情になった。


「失礼を」


「ううん」


 僕は首を振った。


 キルトさんは、こちらに感謝の眼差しだ。


 僕は苦笑し、頷いた。


 そして銀髪の美女は息を吐き、


「覚えているなら、話は早い。その時、連合国首長が語っていた話があったであろう?」


「……あぁ、あれですか」


 と、僕の奥さんは応じた。


(首長さんの話?)


 僕は、首をかしげた。


 その話題は、まだ聞いたことがなかった。


 ソルティス、ポーちゃんも知らない様子で、確かめるように僕の奥さんを見ていた。


 気づいたイルティミナさんは、頷いて、


「マールは覚えていますか? あの会談に私も同行することになったのは、その首長の希望だったからだと」


「あ……」


 そう言えば、そんな話だったっけ。


 当時の外交官が勝手に承諾してしまって、外交問題になるから断れなかったんだよね。


 ちなみに、その外交官はのちに叱責、処分されたらしいけど……。


 その2週間は、僕は、ソルティス、ポーちゃんとアルドリア大森林で『癒しの霊水』を集めたんだ。


 そんなことまで思い出す。


 その僕に、イルティミナさんは言う。


「首長が私を呼んだ理由は、シュムリア王国の現役の『金印の魔狩人』である私に、テテト連合国で起きたとある事象に対する見解を求めるためでした」


「見解……?」


 いや、そもそも、とある事象って何?


 僕はキョトンだ。


 ソルティス、ポーちゃんも似たような表情だった。


 同行したキルトさんは知っているのか、黙ってイルティミナさんの語りを聞いている。


 僕の奥さんは、真紅の瞳を伏せた。


「優しいマールには、あまり聞かせたくない話でしたが……」


「うん……」


「実は、テテト連合国の北東方面で小さな村落が7つ、壊滅したそうなのです」


「え……壊滅?」


「はい。村は無残に破壊され、生き残った住人は1人もいないそうです。そして1番の問題は、その原因がわからないことでした」


「原因不明なの?」


「はい」


 驚く僕に、イルティミナさんは頷いた。


 ソルティス、ポーちゃんも驚いた様子だった。


 キルトさんも頷いて、


「村落の壊滅は、たった1日で起きておる。痕跡としては、地面に謎の穴が幾つか開いていたという。ただ、穴自体は2~3メードで埋まっておったそうじゃ」


「…………」


「連合国も調査をしたが、人災か、天災かもわからっておらぬ」


「うん……」


「そして首長は、魔物の仕業とも考えた。それゆえ、魔物のプロフェッショナルである『金印の魔狩人』の意見を欲したようじゃの」


「そうなんだ」


 その説明に、僕も納得した。


 自国民の謎の不幸を解決したくて、だから会談の際にイルティミナさんも呼んだんだね。


 僕は、そんな自分の奥さんを見る。


「それで……原因に心当たりはあったの?」


「いいえ」


「…………」


「正直、皆目見当もつきません。私よりも魔狩人経験の長いキルトも、同様の質問を受けましたが、明確に答えることはできませんでした」


「そっか……」


 2人でもわからなかったのか。


 銀髪の美女も、少し難しい顔をしていた。


 う~ん……原因は何だろう?


 地面の穴ってことは、地中の魔物?


 でも、そうしたことをする魔物がいるのなら、2人だってすぐに気づくよね。


 よくわからないな。


 そう思った僕は、博識美女のソルティスを見た。


 視線に気づいて、彼女は「私?」という顔をする。


 僕は頷いた。


 それに気づいて、2人のお姉さんとポーちゃんも彼女を見た。


 ソルティスは渋い表情だ。


「さすがに、それだけの情報じゃわからないわよ。地中を移動する魔物なんてたくさんいるし、それ以外の可能性だってあるんだし、いくら私だって何も答えられないわ」


「そっかぁ」


「ってか、それが何なの?」


「え?」


「テテトで大変なのはわかったわ。同情もする。けど、所詮、他国のことじゃない。それで何で休暇を潰されてまで、私らが呼び出された訳?」


「…………」


 ソルティスの言葉は、キルトさんに向けてだ。


 言われてみれば、確かに。


 僕も彼女を見た。


 イルティミナさんも「キルト?」と問いかけ、ポーちゃんの水色の瞳もキルトさんを見上げた。


「…………」


 キルトさんは、すぐに答えなかった。


 豊かな銀の髪を手でかく。


 それから腕組みをして、深くソファーに寄りかかった。


(……?)


 何か言い難そうな雰囲気。


 空気が重くなる。


 それは、キルトさんの発する気配が鉄のように硬質になったからだ。


 僕らは、黙って待つ。


 やがて、彼女は口を開いた。


「テテト連合国での怪現象は、実は現在も続いていての。先日までに更に5つの村、2つの町が壊滅し、その住人が全滅した」


「!?」


 僕らはギョッとなった。


 村ならわかる。


 でも、町が……?


 恐らく、防衛用の兵士なども配置された人類の拠点が、けれど、2つも壊滅したというの?


 さすがに、僕らも唖然となった。


 キルトさんは言う。


「テテト連合国にも『金印の魔狩人』が1人いる」


「…………」


「わらわも1度、会ったことがあるが、イルナにも負けぬ確かな実力の持ち主じゃった。そして、この怪現象に対して、その人物は連合国から調査を命じられたのじゃ」


「…………」


「じゃが、そのテテトの『金印の魔狩人』は消息不明となった」


「……は?」


 僕の口から、間抜けな声が漏れた。


 ソルティスもポカンとしている。


 イルティミナさんは「まさか……」と険しい表情で、ポーちゃんも無言のまま、かすかに目を細めた。


「恐らく、調査中に何かあったのじゃろう」


「…………」


「すでに1ヶ月近く、音信不通であり、その生存も危ぶまれる状況にあるそうじゃ」


「…………」


 いや、待ってよ……?


 イルティミナさんに匹敵する実力者が消息不明?


 それも、調査中に……?


(あり得ない)


 だって、金印の冒険者って言うのは、ある種、国を象徴するような存在なんだ。


 その実力は、人外。


 それこそ、竜種だって殺せるような特別な存在なんだ。


 それが……。


 それが……生存も危ぶまれるって。


 僕は、言葉もなかった。


 そして、今回の呼び出しの意味に気づく。


 僕の様子にキルトさんも気づいたのか、彼女は大きく頷いた。


 黄金の瞳が、僕らを見据える。


「テテト連合国から非公式に、シュムリア王国へと要請があった」


「…………」


「消息不明となったテテト連合国の『金印の魔狩人』の捜索、および、多くの人命を奪う怪現象の原因調査のため、協力を求むる……とな」


(あぁ……)


 やっぱりか。


 その恐ろしい要請に、僕は震える思いがした。


 僕の奥さんは、冷静な声で確かめる。


「王国は、それに応じたのですね?」


「うむ」


 キルトさんは頷いた。


 大きく、はっきりと。


「その怪現象は、少しずつ南下しているようでの。放置すれば、やがて、シュムリア王国でも被害が出る可能性があるとのこと。それゆえの判断じゃ」


「…………」


「また金印の消息不明は、国家の安全、安定に大きく関わる。ゆえにテテト連合国の内情を考え、王国の協力は非公式に行われなければならない」


「なるほど、それで私たちですか」


「そうじゃ」


 確かに……。


 騎士団などが動けば、大事になる。


 テテト連合国は20の小国の集まりで、けれど、仲が悪い小国同士もあって、内乱の可能性も秘めているんだ。


 それらを刺激しないためにも、解決は隠密に。


 そして、そのためには、僕らみたいな『冒険者』という立場が1番適しているんだね。


(でも……そっかぁ)


 僕は、心の中でため息だ。


 ソルティスは唇を尖らせる。


「何て言うか、私ら、便利に使われてるわね?」


「まぁの」


 キルトさんは苦笑し、認めた。


 でも、すぐに表情を改める。


「しかし、そうした存在がいればこそ、人々を守れることもある。今回もそうした一例じゃと考えよ」


「…………」


「冒険者は自由じゃ」


「…………」


「じゃが自由を与えられてきた分、今は、その対価として動くべき時じゃよ」


「……へ~い」


 ソルティスは両手を頭の後ろで組んで、投げやりに答えた。


 態度は悪い。


 でも、彼女は優しい子だ。


 テテトの人々が苦しんでいて、しかも、姉と同じ金印の冒険者が大変な状況だとすれば、やはり心の中では助けたいと思う子なのだ。


 だからこそ、不満は口にしても、断りの言葉は1つも口にしていない。


 長い付き合いだ。


 それがわかって、僕はつい笑ってしまった。


 ふと見れば、彼女の姉であるイルティミナさんも同じ表情で、目が合ったら、僕らも笑い合ってしまった。


 それは、キルトさん、ポーちゃんも一緒。


 ポーちゃんは、ポムッと相棒の肩を叩く。


 キルトさんも優しい眼差しで彼女を見つめた。


 けれど、すぐに表情を改める。


 僕らを見回して、


「繰り返すが、今日、わらわたちは王都を発ち、テテト連合国へと向かう。急ではあるが、皆、心構えをし、いかなる状況にも対応していくぞ」


 と、鉄の声で言った。


 僕らは、


「うん」


「はい」


「わかったわよ」


「承知した」


 と、それぞれに応え、頷いた。


 それに、キルトさんも満足そうに笑って、頷きを返した。


 …………。


 そして、その日の午前中、王家が秘密裏に用意してくれた竜車に乗り込んで、僕ら5人は北の大地テテト連合国を目指して、王都ムーリアを出発したのだった。

ご覧いただき、ありがとうございました。


次回更新は、来週の月曜日を予定しています。どうぞ、よろしくお願いします。



またマールのコミカライズ第7話が公開されました。


URLはこちら

https://firecross.jp/ebook/series/525


第7話では、マールとイルティミナだけでなく、ついにあの2人も漫画の世界に初登場しています。


もしよかったら、どうか楽しんで下さいね♪

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