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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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701・難航する依頼

第701話になります。

よろしくお願いします。

 2日目の朝が来た。


 窓からの日差しに照らされて、僕は「ん……」と目を覚ました。


 旅館の客室のベッドの上だ。


 まだ早朝の時刻。


 けれど、太陽の光は思ったよりも強くて、身体はじんわりと汗をかいていた。


(……ふぅ)


 僕は身体を起こす。


 室内は冷房が効いているけれど、窓の外はかなり気温が高そうだった。


(うん……今日も暑くなりそう)


 そう思っていると、


 ギュッ


 僕の手が誰かに握られた。


 見れば、同じベッドで眠っていた大好きなお嫁さんが、僕の手に自分の手を重ね、半分眠ったような表情で僕のことを見上げていた。


 夢を見ているように、彼女は微笑む。


「ん……マール……」


 小さな呼び声。


 僕も笑って、


「おはよう、イルティミナさん」


 そう声をかけた。


 僕の奥さんはそんな僕を見つめ、やがて、艶やかな深緑色の長い髪をシーツに広げながら、何かをねだるようにその美貌をこちらに動かした。


 かすかに突き出された紅い唇。


(…………)


 求められる嬉しさを感じながら、僕は顔を近づけた。


 チュッ


 優しく唇を重ねる。


 柔らかな弾力が伝わり、彼女がかすかに震えたのがわかった。


 ゆっくり顔を離す。


 見れば、僕の奥さんは頬をかすかに上気させながら、けれど満足そうな表情だった。


 その白い手が、僕の頬を撫でる。


 そして、


「ふふっ……おはようございます、私の可愛いマール」


 と、美しい微笑みをこぼしたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 起床後は、すぐに朝食の時間となった。


 旅館の食堂に集まって料理を食べながら、僕ら5人は本日の行動予定を話し合った。


「まずは聞き込みかの」


 と、キルトさん。


 海について詳しいのは、漁師さんだ。


 なので、求める2つの素材、『光の昆布』と『蒼白の花苔』の生えている場所を知っている人がいないか、漁港で探してみることに決まった。


 食事後、準備を整え、僕ら5人は旅館を出る。


 出た途端、


(う……暑いな)


 強い太陽の日差しが、僕らに降り注いだ。


 こんなに早い午前中の時間でも、気温は思った以上に上昇しているみたいだ。


 じんわりと汗が滲む。


 隣にいたイルティミナさんは白い手でひさしを作り、艶やかな長い髪を揺らしながら夏の青空を見上げた。


 真紅の瞳を細めて、


「今年は本当に、暑い夏ですね……」


 と、呟きをこぼした。


(……うん)


 僕は頷く。


 他の3人も同意する表情だ。


 やがてキルトさんが「さぁ、行くぞ」と皆を励ますように号令をかけた。


 僕らは頷いた。


 そして熱気に満ちた通りを、僕ら5人はセントルーズの漁港を目指して歩きだしたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 漁港へと到着した。


 煌めく海に面した港では、大勢の漁師さんたちが働いている姿があった。


 みんな日焼けしていて、逞しい。


(…………)


 軽く力こぶを作ってみるけれど、彼らみたいにはならなかった。


 僕もこれでも鍛えてるんだけど、体質なのか、どうしてもムキムキにならないんだよね……。


 イルティミナさんは『その方がいい』って言ってくれるけど。


 でも、男として、ああして鍛え上げられた肉体の漁師さんたちは格好いいな……って、素直に思った。


 それはさておき、


「先に漁業ギルドに行くぞ」


 と、キルトさん。


 依頼で聞き込みをするにしても、まずは筋を通さなければいけないそうだ。


 そんな訳で、僕らは近くの漁師さんに場所を聞いて、教えられた建物へと向かった。


 …………。


 当然、アポイントメントは取っていない。


 けれど、現役の『金印の魔狩人』と『英雄の鬼姫様』の名声と権限で、すぐにギルド長さんと会うことができた。


 権力って凄い……。


 ギルド長さんは60代ぐらいの筋骨隆々の男の人で、3年前までは現役の漁師さんだったそうだ。


 肌は日焼けして真っ黒。


 腕にある咬み傷は、昔、漁をしている時に龍魚に噛まれた跡で、まぁ、男の勲章って奴だ! って、ギルド長さんは豪快に笑っていた。


 そんな彼に、僕らは事情を話した。


 2つの素材のある場所を知らないか?


 その質問に、彼は渋い顔になる。


「光の昆布と蒼白の花苔か……昔はいい稼ぎになったんだが、今じゃもう3年ぐらい前から見かけなくなっちまってなぁ」


(そうなの?)


 思わぬ答えに、僕らは落胆した。


 話によれば、やはり乱獲と近年の気象の変化で、海の生態系が少し変わってきてるそうなのだ。


 その影響か、2つの素材は3年前からセントルーズ湾では目撃されていない。


 ギルド長さんは、一応、秘書さんや他の職員さんにも聞いてくれたけど、答えは皆同じだった。


 どうしよう……?


 ソルティスは蒼白である。


「コ、コロンチュード様の依頼を果たせないなんて……」


 そう嘆く。


 泣きそうな相方を、ポーちゃんは小さな手で頭を撫でて慰めていた。


 キルトさんは、


「すまぬが、港で働いている漁師たちにも話を聞かせてもらって良いかの?」


「おう、構わんよ」


 漁師たちの長は、そう許可してくれた。


 僕らはギルド長さんにお礼を言って、漁業ギルドの建物をあとにした。


 そのまま港へ。


 港では、漁師さんの他、魚市場の店員さん、買い付けに来た宿屋や食事処の料理人さんなども集まっていて、僕らは彼らにも2つの素材についての話を聞いた。


 けれど返答は、


『あぁ……最近、見てねえな』


『昔は、たくさん手に入ったんだけどねぇ』


『ありゃ、全滅したよ』


『この辺の海じゃ、もう手に入らないんじゃねえかなぁ』


 なんて言葉ばかりだった。


 かれこれ2時間ほど聞き込みを行ったけれど、違う答えは聞けなかった。


「…………」


 ソルティス、口から魂が出ていきそうだ……。


(う~ん?)


 手に入らなくなったのは、3年前から。


 もしかしたら、コロンチュードさんはハイエルフで寿命が長く、人間とは時間感覚も違うから、3年なんて誤差みたいな感覚なのかもしれない。


 だから、3年前以前の情報を知らなくて、この依頼をしたのかも……?


 そう口にすると、


「あのコロンじゃからの、あり得るかもしれん」


 と、キルトさんは同意する。


 イルティミナさんも「そうかもしれませんね」と傷心の妹を見ながら、頷いていた。


 けど、ソルティスは、


「コ、コロンチュード様に限って、そんなこと絶対にないわよ! だって、王国の叡智の結晶と呼ばれるような方なのよ!? そんなポカしないわ!」


 なんて全力で否定した。


 ポカしない……かなぁ?


 確かに頭のいい人だし、全てを知った上で依頼している可能性もあるかもしれない。


 でも、どちらもあり得ると思えた。


 彼女の養女であるポーちゃんは、無言のまま、完全な中立の立場だ。


 ともあれ、


「彼女が知っていようといまいと、現状、依頼を果たすのが厳しい状況なのは変わりませんね」


「…………」


 姉の言葉に、妹はまた消沈だ。


 ミャア ミャア


 海鳥たちの鳴く声が、悲しく僕らの耳に響く。


(…………)


 僕は顔をあげる。


 青い夏の空の日差しは強く、セントルーズの街並を白く染めあげていた。


 熱気が肌を焼く。


 その時、ふと渓谷の坂に造られた街の頂上付近、そこに黒い影となって見える古代遺跡群が見えた。


(……うん)


 僕は皆を振り返って、


「あのさ、このまま落ち込んでてもしょうがないし、気分転換に少し観光でもしてみない?」


 と、提案してみた。


 みんなが僕を見る。


 ソルティスは恨みがましい目で僕を見て、「観光ぅ……?」と呟く。


 僕は「うん」と頷いた。


「何とか素材を手に入れる方法を考えるにしても、思い詰めてたっていい考えが浮かばないと思うしさ。どう? せっかくだし、あの遺跡でも見に行ってみない?」


「…………。そう、ね」


 ため息を1つ吐いて、彼女は頷いた。


 紫色の長い髪をかき上げて、


「悔しいけど、マールの言う通りだわ。少し頭の切り替えでもしようかしら?」


「うん、そうだよ」


 僕も笑顔で頷いた。


 キルトさんも「そうじゃな」と頷いた。


 イルティミナさんは「さすが、マール。いい案ですね」と両手を合わせ、誇らしげな笑顔だった。


 ポーちゃんは、


 ペコッ


 僕に感謝するように、小さく頭を下げた。


 僕は『ううん』と首を振る。


 そうしてソルティスも気を取り直し、僕らは気分転換にセントルーズの古代遺跡を見学することにしたんだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。


次回更新は、来週の月曜日を予定しています。どうぞ、よろしくお願いします。



こっそり新作も連載中です。


『異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!』


URL

https://book1.adouzi.eu.org/n9929iq/


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ 希望の欠片も見当たらない絶望的な現状、ソルティスの明日はどっちだ( ̄▽ ̄) とはいえ現実問題、無い物ねだりに近いモノがあるし解決方法も無い現状では捜索中断もや…
[良い点] 改めて『光の昆布』という名称が破壊力が凄いです。 [一言] なんかこう、RPGでの素材集めって感じがしますよね! でも『光』の『昆布』というのは、やっぱり…… クスッとしますね♪
2024/03/08 00:11 退会済み
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