698・夏の女神たち
第698話になります。
よろしくお願いします。
セントルーズ湾の海岸は、基本的に岩場だ。
そのため、海水浴などには適さず、そうした目的の観光客などもいない。
だけど、実は少ないけれど砂浜も存在していて、そこは地元民しか知らないプライベートビーチみたいになっているのだそうだ。
僕らは、宿屋の女将さんからその場所を教わって、実際に行ってみた。
…………。
「おぉおお……!」
目の前に、美しい白い砂浜があった。
あまり広くはないけれど、周囲が岩場に囲まれていて、教わらなければ絶対に見つけられなかったと思う。
ザザァン
青い海から、透明度の高い波が打ち寄せる。
空と太陽、海と砂浜――そこにあるのは、まさに理想的な夏のビーチだ。
イルティミナさん、キルトさん、ソルティス、ポーちゃんも魅入られたように、その景色を見つめていた。
僕も同じくだ。
やがて、キルトさんが頷いた。
「うむ、これは良いの」
「うん!」
「思った以上に透明度の高い海ですね」
「ちょ……細かいことはどうでもいいわ! 暑いし、早く水着に着替えて、海に入りましょ!」
「…………(コクコクコク)」
ソルティスが急かして、僕らも頷いた。
元々、海中に潜る予定だったので、旅の荷物に水着も用意してあった。
僕ら5人以外に人気はないけど、一応、岩場の陰に隠れて、そそくさと服を脱ぎ、持ってきた水着を着用した。
(よし……っと)
トランクスタイプの海パンをはいて、砂浜に戻る。
ほぼ同時に、4人の女性陣も別の岩場の陰から姿を現した。
(わぁ……)
みんなの水着姿に、つい目を奪われる。
キルトさんは、豊かな銀髪をポニーテールにして、セパレートタイプの黒い水着を身に着けていた。
うん、スタイルいいね。
鍛えられた引き締まった肉体に、けれど、胸やお尻は大きくて、大人っぽい黒の水着がその成熟した魅力をより引き立たせていた。
ドキドキ
少し鼓動が速くなってしまった。
ソルティスは薄いピンク色のセパレートタイプの水着で、フリルがついてボトムはスカートみたいだった。
紫色の長い髪を手で払う。
その仕草と美貌も相まって、健康的な夏の美少女って感じ。
白い太ももが眩しい……。
金髪幼女のポーちゃんは、紺色のワンピースタイプで……あ、うん……なんて言うか、前世のスクール水着みたいです。
でも、なんか似合ってる。
彼女は相棒を真似て、短めの金髪を手で払う仕草をしていた。
うん、可愛い。
僕は、ほっこりと幼女の水着姿を眺めてしまった。
最後は、イルティミナさん。
長身で肉感的な彼女は、清純な白いビキニタイプの水着を身に着けていた。
重そうな胸を支える水着の中央は、リボンの飾りが結ばれていて、大人っぽさと同時に可愛らしさも感じさせてくれた。
長い髪は首の後ろと毛先の方、2箇所を白いリボンでまとめられていた。
タユン
歩くたび、大きく実った胸が重そうに揺れる。
(…………)
ほ、他に男の人がいなくてよかった。
思わず吸い寄せられそうになるその光景は、できれば、自分以外の誰にも見せたくないなと、彼女の旦那として思ってしまったよ。
ちょっと狭量かな……?
その時、ふと彼女と視線が合った。
「……あ」
小さく呟き、イルティミナさんの白い美貌が薄く桃色に染まった。
うわ……。
恥ずかしがる表情がとても可愛い。
なぜだろう?
僕らはお互いの裸だって見ているのに、水着で隠した身体を見る方がなぜか恥ずかしく感じるんだ。
つられて、つい僕も赤面しちゃった。
それに気づいたイルティミナさんは、少し色っぽくはにかんだ。
……うん。
もう完全に魅了されました。
僕の負けです。
セントルーズの街に来てよかった、この依頼を受けてよかった、コロンチュードさん、ありがとう……。
天にも昇る気持ちで、そうつくづく思ったんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
3人の美女に魅了され、1人の幼女に心の穏やかさを与えられながら、僕らは砂浜に集まった。
ソルティスは、
「ちょっと……あんま、こっち見ないでよね?」
と、僕から胸を隠す。
恥ずかしそうな顔で意識されると、こっちまでドキッと意識しちゃうからやめて欲しい。
(いかんいかん)
こういう時は、彼女の相方を見てリラックス。
……うん、平和だ。
悟りを開いたような気持ちになりながら、僕は微笑む。
ポーちゃんは「?」と小鳥のように首をかしげ、ソルティスには『何、コイツ?』みたいな顔をされてしまった。
キルトさんは、白い歯を見せて笑う。
「よし、今日はクエストを忘れ、しばし水遊びで涼を味わうとしようぞ!」
『おお~っ!』
僕らも拳を突き上げ、笑顔で賛同した。
それからは、海遊びの時間だ。
僕は、イルティミナさんに「さぁ、マール」と手を繋がれ、一緒に波打ち際へと向かった。
アチチッ
焼けた白い砂が裸足の足を焼く。
慌てて、足跡を残しながら濡れた砂浜へと向かい、そのまま向かってくる波とぶつかった。
(うひゃあ!)
冷たい!
でも、気持ちいい!
波飛沫が弾けて、陽の光にキラキラと反射する中、イルティミナさんの楽しそうな笑顔が輝いていた。
「うふふっ!」
僕を引っ張り、そのまま海へ。
ジャパァン
イルティミナさんの白い肌に長い髪が絡みついて凄く色っぽく、けれど、その波に揺蕩う姿はまるで人魚みたいに美しかった。
あぁ、僕の奥さんって本当に美人。
見惚れていると、
「えいっ」
「わっ?」
両手で水をかけられた。
びっくりして目を瞬くと、彼女は少女のようにおかしそうに笑っていた。
やったな!
僕も笑って、
「えいえい!」
「きゃっ」
両手でバシャバシャと水をかけると、彼女は可愛らしい悲鳴をあげた。
でも、容赦しない。
「まだまだ、許さないぞ~!」
「うふふっ、もう……ごめんなさい、マール! ……えいっ!」
「うわっ」
「油断しましたね」
「イルティミナさん、またやったな! えいえいえい!」
「うふふっ、負けませんよ」
バシャバシャ
僕らは童心に帰ったように、お互いに水をかけ合った。
何だろう?
ただそれだけなのに、物凄く楽しくて、幸せな気持ちになってしまう。
…………。
そんな僕らの一方で、キルトさんは、まるでイルカみたいに波間を泳ぎ、潜水して、銀の髪をなびかせながら水面に顔を出して息をついた。
ふと、目が合う。
彼女は笑って、僕に手を振った。
僕も笑って、振り返す。
「隙あり!」
「わぷっ」
瞬間、イルティミナさんの水を盛大に浴びて、僕はひっくり返った。
コポコポ
水中に沈み、すぐに水底の砂を蹴って、水面に顔を出す。
ザパッ
「きゃっ!?」
「ほえ?」
すぐ目の前に、ソルティスがいた。
僕の顔のすぐ前に、フリルのついたピンク色の水着に包まれた胸がある……うん、思った以上に大きくてボリューム感があった。
危なく、ぶつかる所だった。
と思ったら、
ザパァン
後方からの波が押し寄せて、僕の身体は前方へと押し出された。
ポヨン
(わっ!?)
顔面から彼女の胸に突っ込み、谷間に埋もれてしまった。
ソルティス、ポカン。
すぐにその顔が真っ赤に染まり、
「こ、この、馬鹿マール!」
バチン
涙目で思いっきり顔を叩かれた。
いやぁ、育ったねぇ……。
昔の平らさを知っている僕は、そんな現実逃避をしながら、再び海中へと沈んで、上気した顔を冷やすことになったんだ。
…………。
プハッ
海面に顔を出す。
ソルティスは「こっち来んな!」と離れて、僕へとアッカンベーをする。
やれやれ。
頬は痛かったけど、役得だった……かな?
その時、ふと見たら、砂浜にいるポーちゃんが1人で砂のお城を作っていた。
(え、上手)
多分、神聖シュムリア王城だ。
柱の上に建った湖上の美しいお城を、白い砂で完全に再現していた。
まさか、ポーちゃんにあんな特技があったとは……。
ちょっとびっくり。
ふと、遠く目が合うと、金髪の幼女はビッ……と、親指を立てた手をこちらに突き出してきた。
(あはは)
僕も、親指を立て返す。
すると、
ギュッ
「大丈夫ですか?」
そんな僕を、背後からイルティミナさんが抱きしめてくれた。
少し心配そうな顔。
結構、長く水中に沈んでしまったからかな?
僕は「うん」と笑って頷いた。
イルティミナさんは安心したように微笑んで、それから、僕の顔面を自分の大きな胸の谷間に挟むように強く抱きしめた。
(うえっ?)
柔らかくて、いい匂い。
冷たい海の中だからか、彼女の体温が余計に伝わる。
ドキドキしていると、
「ソルがごめんなさいね。ですが、私の胸なら、いくらでもこうして大丈夫ですから」
「う、うん……」
「ふふっ、いつでも言ってくださいね?」
「…………」
その瞳にあったのは、女としての対抗心と嫉妬心、それから僕への深い愛情だった。
僕、愛されてるな……。
柔らかな弾力を味わいながら、それをつくづく感じてしまったよ。
…………。
それからは、イルティミナさんと一緒に泳いだり、手を繋いだままプカプカと海面に浮かんでいたりして、海の時間を楽しんだ。
キルトさんはずっと遠泳してた。
うん、体力あるね。
ソルティスはポーちゃんを引っ張って、2人で海で泳いだり、砂浜にあがって寝ている彼女に、ポーちゃんが砂をかけて重さで動けなくしたりして遊んでいた。
やがて、時間は流れる。
夏の太陽は中天に昇って、そして、お昼の時間が訪れたんだ。
ご覧いただき、ありがとうございました。
※次回更新は、今週の金曜日を予定しています。どうぞ、よろしくお願いします。
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