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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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687・真夏の号外

少し遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。


本日より、また『少年マールの転生冒険記』の更新を再開いたします。


今年もマールの物語を読みに来て下さった皆さんに、どうか少しでも楽しんで頂けたら幸いです。


どうぞ、本年もよろしくお願いします。



それでは、2024年の初更新、第687話です。


よろしくお願いします。

 照りつける太陽が、肌をジリジリと焼いていた。


 季節は、夏真っ盛り。


 息を吸うのも暑く、ただ歩いているだけで汗が噴き出してくる。


(うん、猛暑だ……)


 自然が多いこの世界は、前世よりも気温が穏やかだけれど、人の多い王都だけは変わらぬ熱気が満ちているみたいだ。


 その暑さの中、僕とイルティミナさんは通りを歩く。


 今は、クエスト休暇中。


 昨日、クエストを達成して帰って来たばかりで、今日は2人で買い物に出ているんだ。


 キュッ


 暑いけど、手は繋ぐ。


 見れば、イルティミナさんの美しい深緑色の髪も、汗でしっとりしているみたいだった。


 でも、その姿も素敵。


 夏の美女。


 まさに、そんな感じだ。


 見ていると、僕の視線に気づいて彼女は微笑んだ。


「どうしましたか、マール?」


「あ、ううん」


「?」


「えっと、イルティミナさんってやっぱり美人だなぁ……って、ただ見惚れてただけだよ」


「まぁ……」


 照れながら言うと、彼女も少し頬を赤くした。


 ……あはは。


 また体温が上がっちゃったかな?


 でも、不思議とこういう熱さは気にならない。


 むしろ、そのおかげで暑さを忘れられるような感じもして、僕らはますます繋いでいるお互いの指に力を込めてしまった。


 その時、


(おや……?)


 僕は、通りの人だかりに気づいた。


 こんなに暑いのに、通りの一角にたくさんの人が集まっていた。


(何だろう?)


 見ていると、


「どうやら、新聞の号外ですね」


「号外?」


「はい。何でしょうね? 私たちも1部、もらってみましょうか」


「うん、そうだね」


 頷いて、僕らも人の輪に近づいた。


 なるほど。


 輪の中心で、新聞ギルドの人が号外の紙を無料でみんなに配っていた。


 結構な勢いで、紙束の数が減っていく。


 ムギュ ムギュ


 人の波に揉まれながら、


「こっちにも1つください!」


 と手を伸ばした。


 でも、なかなか届かない。


 と思ったら、僕よりも身長があって手足も長いイルティミナさんの白い手がパシッと1部を受け取った。


 お、さすがです。


 すぐに僕らは、人の輪から離脱する。


(ふぅ、ふぅ)


 これだけで汗が噴き出しちゃった。


 イルティミナさんも横で大きく息を吐いていて、目が合ったらお互いに笑ってしまった。


 それから、通りの木陰に移動する。


 うん、涼しい。


「さて、何でしょうね?」


 パサッ


 イルティミナさんが手にした号外を広げた。


 すると、


(お?)


 その紙面には、


『新たな烈火の若獅子、リカンドラ・ローグ! ついに【黒天の大洞穴】に潜む凶獣【黒鎧の魔凶馬アドン】の討伐に成功!』


 との大きな文字が躍っていた。


 僕は青い目を瞠る。


(うわぁ……これ、リカンドラさんの記事だ!)


 そう驚いた。


 リカンドラさんは、イルティミナさんの次に王国の『金印の魔狩人』になった青年だ。


 3年前、キルトさんが冒険者を引退した。


 その後任として『金印』になったのが、リカンドラ・ローグさんなんだ。


 彼は、2つの短剣で戦う人。


 僕も二刀流なので、その動きを参考にさせてもらったりしたっけ。


 ちなみにリカンドラさんの亡き兄のエルドラド・ローグさんも『金印の魔狩人』だった人で、キルトさんのライバルであり戦友だった人物なんだ。


 そんな彼の記事。


 イルティミナさんも「ほう」と呟いた。


 それから、


「あの『凶獣アドン』が討伐されたのですか。これは驚きました」


 と、感心した口ぶりだ。


 僕は首をかしげて、


「有名な魔物なの?」


「はい」


 僕の奥さんは頷いた。


 通称『凶獣アドン』……正式には『黒鎧の魔凶馬アドン』という名付きの魔物だ。


 体長は12メード。


 全身が黒い外皮に覆われた、6本足の馬型の魔物。


 その頭部には4つの魔眼と魔法器官となる角が生えていて、高レベルの複数の魔法を使いこなしてくる。


 もちろん、肉食。


 そして食事のためでなく、快楽のために生き物を殺す邪悪な知性もあった。


(…………) 


 話を聞くだけでも手強そうだ。


 実際、過去に7つの町や村が壊滅し、住民が皆殺しにあったとか。


 そして、


「20年前、その討伐に向かった当時の『金印の魔狩人』を2人、返り討ちにしています」


「……え?」


 思わず、僕は呆けてしまった。


 金印を……2人も?


 その事実を、すぐには受け入れられない。


 もし、それが本当なら、その『凶獣アドン』っていうのは本当に恐ろしい化け物じゃないか……。


 暑さも忘れ、僕は蒼白だ。


「ただ、その時に奴も深手を負いました。そして20年間、『黒天の大洞穴』という全長2万メードもの巨大な洞窟に身を潜め、休眠状態に入ったと聞いています」


「…………」


「実はキルトも、その討伐に動いたこともあったそうですよ」


「キルトさんが?」


「はい」


 イルティミナさんは頷いた。


「ただ、あまりの洞窟の広さ、複雑さにアドンを発見できず、結局は討伐を断念したという話でした」


「……そっか」


「休眠に入ったアドンですが、実は近年、傷も癒えてそろそろ活動再開するのでは……と噂になっておりました。そして、私かリカンドラに討伐が打診されるかも……と」


「…………」


 じゃあ、実際にリカンドラさんに打診が届いたのかな。


 それで彼は、討伐に動いた。


 そして……。


 …………。


 僕は、号外の新聞を見た。


 ブルッ


 この暑さだというのに、その事実を思って、僕の肌には鳥肌が立ってしまった。


(リカンドラさん、凄いや……)


 本当に尊敬する。


 イルティミナさんも「大したものですね」と感心した様子だった。


 …………。


 何かが違えば、依頼は僕らに来ていたかもしれない。


 そして、もしかしたら僕らは勝てずに『黒鎧の魔凶馬アドン』に殺されてしまう未来も有り得たのだ。


 その可能性を思うと、寒気がした。


(…………)


 そんな僕に気づいたのか、


「マール」


 僕の髪を、イルティミナさんの白い手が撫でた。


 見上げる僕に、微笑む。


「今度、リカンドラにお祝いの品でも持って会いに行きましょうか?」


「あ……うん!」


 僕は、大きく頷いた。


 そうだね。


 うん、それがいい。


 その時は、どうやって戦ったのか、どう勝ったのか、詳しい話を聞かせてもらおう。


(うん、楽しみだ)


 心躍る僕に、僕の奥さんも笑っていた。


 …………。


 そうして僕らは号外の話をしながら、買い物のため、また真夏の通りを歩いていったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 号外が出て数日。


 リカンドラさんは、しばし時の人になっていた。


 王都の人々が彼の名前を口にしない日はなく、その偉業を称えて酒盛りする人々も数多くいた。


 そこでは、


『同じ金印のイルティミナ・ウォンと、どちらが強いのか?』


 なんて話題もあるとか。


 …………。


 どっちかな?


 僕としては、やっぱりイルティミナさんを推したい。


 けど、正直、実際どうなのかはわからない。


 だって、リカンドラさんは凶獣アドンを倒している実績があるんだから。


 ちなみに、


「イルナ姉に決まってるでしょ!」


 と、先日、クエストに出る前にソルティスは、リカンドラ派として噂する人々に怒っていたっけ。


 うんうん、姉妹愛だね。


 まぁ確かに、世間に公表されていないけど、イルティミナさんにだって『悪魔の欠片』や『タナトス魔法王』を倒してきた実績もあるのだ。


 負けているとは思わない。


 そして、当の本人は、


「どちらでも構いませんよ。私としては、私のやるべきことを淡々と果たしていくだけです」


 と、落ち着いた口調でおっしゃっていた。


 う~ん、さすが。


 大人の対応です。


 まったく気にしていないってことはないだろうけど、でも、確かにそこまで気にしてない感じかな。


 ……何でだろう?


 と思ったら、


「私は、キルトをずっと見てきましたからね。常に彼女と自分を比較してきた身としては……まぁ、そういう境地になってしまうのですよ」


「…………」


 あぁ、なんか納得。


 キルトさんと比べたら……ねぇ?


 苦笑している自分の奥さんに、僕も困ったように笑って頷いてたんだ。


 …………。


 さて、そんなある日のこと。


 まだ休暇中だった僕らの家に、冒険者ギルドの職員さんが訪ねてきた。


(はて、何だろう?)


 と、要件を伺ったら、何とそのキルトさんから『用事があるので、こちらまで来て欲しい』との呼び出しだった。


 夫婦でキョトンとしてしまった。


 支度をして、すぐに家を出る。


 ギルド3階にある『キルトさんの部屋』を訊ねて、


 コンコン


 と扉をノックすると、


「おぉ、来たか。足労をかけてすまんの」


 と、銀髪の美女が扉を開けて、僕ら2人を出迎えてくれた。


「こんにちは」


「どうも」


 と、僕らも挨拶。


 室内へと入りながら、


「それで、いったい何の用事です?」


 と、僕の奥さんが聞いた。


 僕も視線で同じ問いを投げかける。


 すると、キルトさんは、


「うむ……実は、用事があるのはわらわではなくての。この部屋の先客が、イルナに用があると言うのでわらわが顔を繋いだのじゃ」


「え……?」


「先客?」


 僕ら夫婦は、目を丸くした。


 そのまま廊下を抜け、奥のリビングへと辿り着いた。


 すると、そのソファーに2人の人物が座っていた。


(あっ!?)


 それに驚いた。


 2人のことは、よく知っている。


 1人は、銀色の髪をした『銀印の魔狩人』で、レイ・サルモンさんという女の人だ。


 そしてもう1人は、その相棒。


 また、現在、世間で1番話題になっている人物だ。


 年齢は、20代後半。


 燃えるような赤毛の髪に、同じく輝く赤い瞳をした青年で、その表情には強い生命力と勝気な性格が表れていた。


 何より、強者の圧がある。


 僕は硬直。


 そして、僕の奥さんが、


「――リカンドラ」


 その名を呼んだ。


 赤毛の青年は、片手をあげて、


「おう。久しぶりだな、イルティミナ・ウォン」


 と笑った。


 軽い口調。


 けれど、その一挙一動が武人として洗練され、静かな威圧感が滲んでいた。


 そう……。


 彼こそ、イルティミナ・ウォンと並び、シュムリア王国が誇る3人の『金印の冒険者』の1人――そして、最強の魔狩人の1人と称される人物。


 烈火の若獅子リカンドラ・ローグ。


 今、シュムリア王国で最も有名な人物が、僕らの目の前に座っていた。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、来週の月曜日を予定しています。どうぞ、よろしくお願いします。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 明けましておめでとう御座います。 今年も一年よろしくお願いしますしますm(_ _)m 黒鎧の魔凶馬アドンって話を読む限りは何だかスレイプニールの亜種みたいな感じですかね。 そう考えると確…
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