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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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683・深層に向かって

第683話になります。

よろしくお願いします。

 森の移動中、ふと魔物の気配を感じた。


(これは……)


 強い植物の匂い……だけど、それらは動物のように森の中を移動していた。


 数は、15~20ぐらい。


 そして、それは僕ら3人へと接近していた。


 シャラン


 僕は『大地の剣』と『妖精の剣』を鞘から抜いた。


 ソルティスが驚いたように「どうしたの?」と聞いてくるので、「魔物」と短く答えた。


 すぐに察して、彼女も『竜骨杖』を構えた。


 ポーちゃんも拳を握る。


 しばらくすると、魔物の群れは3方向に分かれた。


(ふむ?)


 僕らを包囲する気だね。


 なるほど、なかなか知能はあるみたい。


 僕らは3人で背中合わせになって、どこにも死角を作らないように備えた。


 …………。


 やがて、40秒ほど。


 背の高い木々の間を駆け抜けて、奇妙な姿をした魔物たちが姿を現した。


(狼……?)


 一見、そう思えた。


 けれど、その肉体は、細く茶色い無数の枝が絡まってできていて、所々に葉っぱが生えていた。


 植物……なのかな?


 心の中で、首をかしげる。


 すると、


「あぁ、『緑樹の狼』ね」


 と、ソルティス。


 僕は「どんな魔物?」と聞く。


 彼女は肩を竦めて、


「狼っていう名前だけど、実際は、動く植物系の魔物よ。あまり強くないわ」


「ふぅん?」


「ただ植物だから、見た目の首を斬っても倒せないわよ? あの枝でできた肉体の中心に球根みたいな『核』があるから、それを破壊して」


「ん、了解」


 そのアドバイスに、僕は頷いた。


 そして、そんな会話をしている間に、狼みたいな動く植物の1体が襲いかかってきた。


 狙いは、僕か。


 その動きを見定めて、


 ヒュコン


 2つの剣を振るい、その胴体を十文字に斬り裂いた。


(お……)


 斬った肉体の奥に、なるほど、直径20センチほどの球根があって、心臓みたいに動いていた。


 ヒュン


 それを斬る。


 途端、細い枝の絡まる肉体はばらけて、そのまま地面に落下した。


 ピクピク


 かすかに動き、けれど、その動きも止まる。


 なるほど。


 確かに、動く植物だ。


 アルドリア大森林にはこんな魔物もいたんだと、僕は初めて知ったよ。


 そして、僕が1体を倒している間に、ソルティス、ポーちゃんの2人も『緑樹の狼』たちを次々に倒していた。


 パン パパン


 ポーちゃんが霞む速さでジャブを繰り出す。


 それだけで細い植物でできた肉体は吹き飛び、その内側の『核』を晒してしまう――瞬間、ポーちゃんの右ストレートがそこに炸裂した。


 パァン


 心臓みたいな『核』が吹き飛ぶ。


(さすが)


 危なげない対応だ。


 そしてソルティスは、左手で幅広の直剣を抜くと、


「ほっ!」


 バキィン


 飛びかかってきた『緑樹の狼』をフルスイングで弾き飛ばして、そこに向かって『竜骨杖』の光る魔法石を向けた。


 そこから、火の矢が射出された。


 ボシュッ


 命中。


 そして、それは一気に燃え広がり、魔物の肉体を焼いた。


 ギィィ……


 枝を軋ませ、魔物は暴れ……けれど、すぐに『核』の球根ごと燃え尽きて、真っ黒な炭の残骸になってしまった。


 同時に、炎も消える。


 魔法の火だからか、周囲には全く燃え移らなかった。


 そして、少女は杖を頭上に向けた。


 ヒュパン


 花火みたいに無数の『火の矢』が撃ち出され、花が咲くように広がって、僕らを包囲していた魔物たちに次々と命中していった。


(わぁお……)


 あっという間に、20体近い魔物が燃えていく。


 かわした魔物も2~3体いたけれど、ポーちゃんの拳があっさりと砕いてしまった。


 ……うん。


 僕の出番、ほとんどなしだ。


 ちょっと呆然。


 ソルティスは自分の肩に白い杖を預けて、


「ま、こんなもんね」


 と呟いた。


 疲れた様子もないから、大して魔力も使っていないみたいだ。


 ……これほどか。


 しばらく会っていなかったけど、ソルティス、本当に強くなっていて、何だか別人みたいだ。


(…………) 


 もし僕が戦ったら、勝てるかな?


 魔法では勝てない。


 なら、接近戦? 


 でも、彼女はもう剣士としても1流で、簡単には攻略できないだろう。その間に、魔法でやられてしまうかもしれない……。


 う、う~ん。


 見れば、ソルティスはポーちゃんと「お疲れ」、「ソルも」と言葉を交わしていた。


 そして、その視線が僕を見る。


「マールもお疲れ。さ、行きましょ?」


「あ、うん」


 僕は頷いた。


 ソルティスは鼻歌でも歌いそうな雰囲気で、また森の中を歩きだした。


 まるで戦いがなかったみたいだ。


 いや……もしかしたら、本当に戦いだと思ってないのかもしれない。


 …………。


 大人になった19歳のソルティス。


 その背中は、何だか凄みさえ感じさせるぐらいに頼もしくて、その、美しくて……僕は何とも言えなくなってしまった。


(そう言えば……)


 いつだったか、キルトさん、イルティミナさんが言っていたっけ。


 才能だけなら、ソルティスは自分たちより上だ、って。


(…………)


 この先、彼女はどんどんと強くなっていくのだろう。


 もしかしたら、やがて、キルトさん、イルティミナさんと同じ『金印』の頂にも届くのかもしれない。


 僕は今、その片鱗を見た気がしたんだ。


「…………」


 僕は、頭上の空を見る。


 うん、僕ももっと精進しなきゃ……そう強く思わされたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 その日は、道中にあった森小屋で夜を明かした。


 そして、翌日。


 3時間ほど南下した僕らの目の前に、巨大な断崖が現れた。


 トグルの断崖。


 高さは、100メード。


 崩れ易い地質で上り下りは困難を極め、それが左右の地平の果てまで延々と続いていた。


 そして、断崖下の森。


 そこが、アルドリア大森林・深層部。


 一見、平和な上層部の森と変わらないけれど、深層部は生還率が1割という死の大森林だ。


 それもまた、地平の果てまで続いている。 


 ヒュオオ……


 吹く風に、僕ら3人の髪がなびいた。


 ソルティスはそれを片手で押さえて、


「ようやく来たわね」


 と呟いた。


 僕は「うん」と応え、ポーちゃんも無言で頷いた。


 少女が僕を見る。


「じゃ、頼んだわよ?」


 と、笑った。


 僕も笑って「うん」と頷き、ポケットから虹色の球体『神武具』を取り出すと、それに神気を流し込んだ。


 球体は虹色に輝き、


 パァン


 光の粒子となって砕けた。


 砕けた粒子は僕を中心に渦を巻いて、やがて、僕の背中に金属製の翼を形成した。


 シャラン


 虹色の羽根が擦れ、綺麗な音色を奏でる。


 僕は両手を広げた。


「さ、掴まって」


「ん」


「了承」


 2人は頷き、僕へと身を寄せた。


 ギュッ


 僕の首に両腕を回すようにして抱きつく。


(う……)


 思ったより、密着感が強い。


 2人からはとてもいい匂いがして、特にソルティスは甘いミルクみたいな香りがして、大人の女性らしい肉のボリューム感があった。


 ムニュッ


 せ、成長したね?


 何が、とは言いませんが、はい。 


「な、何よ?」


 精神統一する僕に、ソルティスが少し赤くなりながら怪訝そうに聞いた。


 僕は「ううん」と答えた。


 それから、


「じゃあ、行くよ」


 そう言って、


 ヴォオン


 背中の翼を虹色に光らせると、ゆっくりと空中に浮かびあがった。


 ギュウ……


 2人の体重がかかり、密着感が増す。


(ん……)

 

 彼女たちの腰に両手を回して支え、僕は滑空するように、深層部の森の上空へと移動していった。


 …………。


 しばらく、飛翔する。


(えっと……)


 確か、こっちだったよね?


 こちらの世界にはGPSなんて物はないので、自分の現在地を把握するのは難しいんだ。


 基本、感覚が頼り。


 そして、それに従って飛んでいくと、


「あ……」


 トグルの断崖の一部が崩れている箇所があった。


 あの近くだ。


 6年前の僕とイルティミナさんは、あそこから深層部を脱出したんだ。


 そして、その近くに塔がある。


 神殿の廃墟。


 そこにある女神像の両手から『癒しの霊水』が溢れているんだ。


 ヒュオオ……


 風を切りながら、そちらに向かう。


 すると、崩れた崖から離れた森の丘に、灰色の石造りの建造物があるのが見えた。 


(あそこだ)


 ちょっと懐かしいな。


 訪れるのは、3年前、イルティミナさんとの結婚式をここで挙げて以来かもしれない。


 ……えへへ。


 当時を思い出して、少し照れてしまった。


 コホン


 心の中で咳払いして、僕は気持ちを切り替える。


 そして、


「あそこに降りるね」


「えぇ、お願い」


「…………(コクッ)」


 2人に声をかけた僕は、背中の翼の片方だけ角度を変えた。


 ヒュオン


 そうして僕らは大きな弧を描くようにして、空中に虹色の残光を残しながら、あの灰色の塔に向かって降下していったんだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、今週の金曜日を予定しています。どうぞ、よろしくお願いします。




マールのコミカライズ第3話がコミックファイア様にて公開されました。


URLはこちら

https://firecross.jp/ebook/series/525


ただ今、1、2話含めて全話無料となっていますので、よかったら読んでみて下さいね♪

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ ソルティスの成長っぷりが凄い。 マールが自己を振り返る位に強くなっているし、マールが惑わされる程には肉体的な成長もしている。 ……いや、惑わされてムッツリを…
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