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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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651・美の素材

なんとブクマが5000件に到達しました!


ブクマして下さっている皆さん、本当にありがとうございます♪

これからも皆さんに少しでも面白かった、楽しかったと思ってもらえるように頑張りますね。


また、ブクマしなくても読んで下さっている皆さんもありがとうございます。もし気が向かれましたら、ブクマ、評価などしてやって下さいね。


(※尚、ブクマは更新時の話ですので、もし5000件より減ってしまっていたらごめんなさい……)



それでは本日の更新、第651話になります。

どうぞ、よろしくお願いします。

「美容品の素材集め?」


 頼まれ事の内容を聞いて驚く僕に、イルティミナさんは「はい」と頷いた。


 ここは、異世界。


 でも、前世日本と同じように美容に関する商品は、たくさんあった。


 イルティミナさん曰く、ウォーガン夫人や貴族のご婦人方が所望されているのは、そうした美容品の素材となる希少な魔物の角を手に入れて欲しいというものだった。


(美容のために、魔物を狩るの……?)


 僕は、少しびっくりだ。


 そんな僕の反応に、イルティミナさんは「マールは男の子ですからね」と苦笑した。


 確かに僕は、あまり美容に興味がない。


 でも、イルティミナさんが言うには、貴族の女性にとっての『美』とは、とても重要なものなのだそうだ。


 貴族の女性には、社交界がある。


 それは女同士、そして家同士の剣なき戦いの場である。


「そのような社交の場において、女性の美しさというものは己の家の権威や格などを示す大事な要素の1つなのですよ」


 ……そうなの?


 僕から見たら、貴族のご婦人方はみんな美人で、優劣なんてつけられないと思えた。


 でも、彼女たち自身は、そうじゃないみたい。


(難しいんだね、貴族の世界って……)


 考え込んでしまう僕に、イルティミナさんは僕の髪を労わるように撫でながら「ふふっ」と笑った。


 …………。


 ちなみに、どんな美容品なのか聞いてみた。


 すると、


「肌を美しくする『美容霊薬』ですね。素材が希少なので市場には出回っていませんが、使えば、10歳は肌が若返ると評判です」


 とのこと。


 美容霊薬……?


 あまり美容に詳しくない僕に、彼女は説明してくれた。


 美容霊薬とは、単純な『美容液』に魔法の力が付与された特殊な美容品なのだそうだ。


 女性のスキンケアは、大変だ。


 洗顔だけでも、肌の汚れを落とすものと化粧を落とすもの、2種類あるとか。


 洗顔のあとは、保水。


 そしてそのあと、肌に必要な成分に満ちた美容液を使う。


 これで肌に栄養を与えて美しくするのだけど、『美容霊薬』は、そこに魔法の力も作用させて更に美しさを作るんだって。


(へぇ……?)


 そうして肌を綺麗にしたら、次は、それに蓋をする。


 要するに、乳液だ。


 イルティミナさん曰く、


「美容液を使わない人でも、乳液は保湿効果があるので欠かさない方がいいですよ」


 とのことだ。


 ちなみに、化粧する場合は、この上に更に色々とするらしい。


 何種類も使って、色々と素地を作る。


 そして、ようやく化粧だ。


 加えて言うと、屋外のパーティーやお茶会などでは、これ以外にも日焼け止めなどを使う場合もあるらしい。


 …………。


 な、なんて大変なんだ……。


 世の中には綺麗な女の人がいっぱいいるけれど、みんな、これだけの努力をしていたんだね。


 素直に尊敬です。


 イルティミナさんは微笑み、僕の頬を撫でた。


「マールはまだ若く、肌も綺麗なので気にしていないでしょう。ですが、男の人でも美を追求する人はおりますし、こうした知識を知っておくのも悪くはありませんよ」


「……う、うん」


 僕は、曖昧に頷いた。


 それから、


「イルティミナさんも、そういう大変なことしてたの?」


 と聞いた。


 僕の奥さんは「いいえ」とはにかみ、


「私の場合は、全ての美容成分が入った総合美容クリームを使って、1度で肌のケアを済ませています」


「ふぅん……?」


「効果は落ちるのですが、時間は短縮できます。要は、手抜きケアですね」


 と答えた。


 手抜きケア……。


 僕は、マジマジと自分の奥さんの美貌を見つめてしまった。


 綺麗な肌。


 白磁のように美しく滑らかで、潤いと弾力があり、不思議な透明感もあった。


(これで手抜き……?)


 もしそうなら、それでこれだけの美貌を保てる僕の奥さんは、世の女の人たちに恨まれても仕方ないと思えるよ。


 いや、恨まれて欲しくないけどさ。


 でもやっぱり、凄いな……って思う。


 見つめる僕に、


「?」


 と、彼女は微笑んだ。


 僕は「ううん」と首を振る。


 それから、


「今回の依頼、引き受けるの?」


 と聞いた。


 彼女は「はい」と頷いた。


 ウォーガン夫人を始めとした貴族のご婦人方からの合同の望みだ。


 すでに裏の手回しは済んでいて、冒険者ギルドを介した正式な依頼になるのも決定済みだとか。


 て、手際がいいね……。


 それだけ、女性の美にかける思いは強いのかもしれない。


 …………。


 それから、目的の素材となる角を持った魔物についても教えてもらえた。


 名前は、『古老の青鹿』。


 とても美しく、大きな青水晶のような角を持った300年以上を生きる長命な鹿の魔物だそうだ。


 基本、人は襲わない。


 ただ、その角には大量の魔素が含まれ、回復魔法の効果があるらしい。


 そのせいで、一時は乱獲されて、絶滅の危機にあったんだって。


 そして、その『青水晶の角』を使った美容液は、当然、回復魔法の効果もあって、肌のダメージを修復する超高級で希少な『美容霊薬』となるのだそうだ。


(……そっかぁ)


 魔法の美容液。


 それは、前世の世界にも存在しない。


 うん、効果凄そう……。


 イルティミナさんも、


「私も一生に1度は使ってみたいですね」


 と笑った。


 そうなの?


「イルティミナさんは、そんなの必要ないぐらい美人なのに? これ以上、美人になったら、僕、ずっと胸がドキドキして死んじゃうかもしれないよ……」


 と、正直に伝えた。


 イルティミナさんも驚いたように目を丸くする。


 すぐに頬を緩めて、


「まぁ、マールったら」


 そう嬉しそうに言いながら、僕の頭を大きな胸の谷間に挟むようにギュッと抱きしめた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 翌日、僕らは正式に『古老の青鹿』の討伐依頼を受けた。


 昨日の今日なのに、すでに正式なクエスト依頼になっているんだから、大将軍の夫人と貴族のご婦人方の力って凄いよね?


 きっと協力しただろう貴族の旦那様たちも、もしかしたら世の男性と同じく、奥さんには弱いのかもしれない……。


(ま、それはそれとして)


 受注した以上は、責任を持ってクエストがんばろう。


 あ、そうそう。


 冒険者ギルドを訪れた時、ここで暮らしているキルトさんにも会ったんだ。


 依頼内容を伝えたら、


「何っ!? あの『青水晶の美容液』の素材集めをするのか!?」


 と驚かれた。


 あ……うん。


 どうやらキルトさんも、その美容霊薬のことを知っているみたいだ。


 事情を説明したら、なんか凄く羨ましそうな、一緒にクエストについて来たそうな雰囲気でした。


 キルトさんも35歳。


 肌の美しさについてとか、色々と気にするお年頃なのかもしれない。


(そっかぁ)


 でも、キルトさんも肌綺麗で美人なのにね。


 だけど、彼女も僕の知らないところで、色々と美しさを保つための努力をしていたのかな……?


 何はともあれ、キルトさんから「がんばるのじゃぞ」と熱い激励を受けながら、僕とイルティミナさんは『冒険者ギルド・月光の風』を出発したんだ。


 …………。


 …………。


 …………。


 竜車に乗って、目的の『古老の青鹿』が生息しているという樹海を目指す。


 現在、『古老の青鹿』がシュムリア王国で生息しているのは、唯一、そこだけらしく、絶滅しないように森全体が保護区に指定されているそうだ。


 乱獲された過去もあり、その魔物は人間を警戒して滅多に姿を見せない。


 そして当然、『古老の青鹿』以外の人を襲う危険な魔物も多数生息しているので、樹海に入る時には細心の注意が必要だ。


(ただ……なぁ)


 いつもは、人に害をなす魔物を倒してきた。


 でも今回は違う。


 人の業というか、欲望というか、そのために罪のない魔物を倒すんだ――そのことに違和感というか、罪悪感みたいなものを覚えていた。


 もちろん、受注した以上はやるけどね?


 魔狩人の仕事は、魔物を殺すこと。


 その理由は様々で、やはり、武器防具の素材として、あるいは薬の素材として魔物を倒して欲しいという依頼も多々あるんだ。


 要するに、人の生活のため。


 今回の依頼も、その1つと言える。


 だけど、美容のために命を奪う……というのに、少し抵抗があるんだ。


 もちろんそれは、僕が男で、女の人ほど『美』というものへの意識が低いのもあるかもしれない。


 だって、イルティミナさんも言っていた。


 貴族の女の人の美しさとは、社交界における剣なき戦いでの武器の1つだと。


(……うん)


 割り切ろう。


 生きるために、人は他の命を食べなければいけない。


 それと同じなのだ。


 ゴトゴト


 竜車の車内で揺られながら、窓の外を眺めている隣のイルティミナさんを見上げた。


 整った美貌の横顔。


 窓から差し込む光に照らされ、神々しいぐらいだ。


「…………」


 僕は手を伸ばした。


 プニッ


 その頬に触る。


 イルティミナさんは「!? マ、マール?」と、突然の僕の行為に驚いた顔をした。


 その肌を、指で撫でる。


 うん……気持ちいい。


 滑らかでしっとり柔らかく、弾力もあって触り心地も良かった。


「凄く綺麗な肌だね」


 僕は、そう微笑んだ。


 これに、今回の『美容霊薬』を使ったらどうなるんだろう……?


 そもそも必要なのかな?


 見つめる僕に、彼女は目を丸くしている。


 美しい頬を赤らめ、


「あ、ありがとうございます。でも、急に触られたら、なんだか恥ずかしいですよ」


 と、言われてしまった。


 そっか。


 僕は「ごめんね」と謝り、でも、もう少しだけ彼女の頬を撫で続けた。


 うん、手のひらに吸いつく。


 離したくないな。


 ずっと触っていたいぐらいの素敵な肌なんだ。


「…………」


 イルティミナさんは困った顔だ。


 でも『やめて』とは言わずに、僕の手を受け入れて、ずっとされるがままでいてくれた。


 優しいなぁ。


 そして、その少し恥ずかしそうな表情が可愛らしい。


(もう少しだけ……)


 心の中で呟いて、彼女に触れ続ける。


 そんな僕ら2人を乗せて、竜車は、シュムリア王国の冬の草原の街道をゆっくりと進んでいった。

ご覧いただき、ありがとうございました。



小説と関係ないですが、サッカー日本代表がドイツに4対1で完勝しましたね。早朝に生で観ましたが、本当に嬉しくて大喜びしてしまいました♪


日本代表の皆さん、本当におめでとうございます、そして、ありがとうございます~!



※マールの次回更新は、今週の金曜日を予定しています。どうぞ、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ 〝あの〟呑兵衛で色恋を敬遠しがちなキルトが美容を気にしている……だと!? 意外だ(笑) サッカーの親善試合は意外過ぎる結果でしたね。 しかしあの深夜…
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