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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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585・王配の錫杖

第585話になります。

よろしくお願いします。

 僕が目を覚ましたのは、翌日の昼過ぎだった。


 なんと、30時間近くも眠ってしまったらしい……我ながらびっくりだ。


「それだけ疲れていたのでしょう」


 とイルティミナさん。


 一昼夜、みんなを抱えて空を飛び、9人の獣国精鋭兵と戦って、ちょっと槍でお腹を貫通されたり、背中を鉤爪で抉られたりしただけなのに……?


 なんだか不思議。


 そんな僕に、なぜかキルトさんは苦笑し、イルティミナさんはため息をこぼしていた。


 ちなみに、ソルティスは、


「アンタって、ほんと軟弱ねぇ」


 なんて言って、ウケケッ……て笑ってた。


(うぐ)


 く、悔しいけど、反論できない。


 と思ったら、


「ソルも、ついさっきまで眠ってた。気にしなくていい」


 とポーちゃん。


(え?)


 実は、彼女も昨日、負傷したエルフさんやシュムリア兵の治療に奮闘していたせいか、僕が起きる直前まで眠ってたんだって。……ふ~ん?


 ソルティスさんをジト目で見る。


 彼女はたじろいだ顔をして、それから真っ赤になって相方の幼女を睨む。


「ち、ちょっと、ポー!? なんで、そんな告げ口するの!?」

「…………」


 幼女は無言でスタスタと遠ざかる。


 そのまま部屋を出ていった。


(……あ、逃げた)


 見送ってから、僕らはその事実に気づいた。


 ハッとしたソルティスは「こ、こらぁ!」と慌ててポーちゃんを追いかけ、部屋を出ていく。


 僕とイルティミナさん、キルトさんは顔を見合わせ、それから笑ってしまった。


(うん)


 ポーちゃんもお茶目になったね。


 それが、何だか嬉しかった。


 そうして心を温かくしていると、


「マール。実は、ティターニアリス女王から『マールが目覚めたら会いに来て欲しい』と求められておっての。すまぬが、一緒に行ってもらえるか?」


 とキルトさん。


(え、ティターニアリス様が?)


 いったい何だろう?


 不思議に思いつつも、僕は「うん」と頷いた。


 それから戻ってきたソルティス、ポーちゃんも一緒に、いつもの5人でエルフの女王様との謁見に向かったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 砦の謁見の間へとやって来た。


 神殿みたいな広間の中央、そこにある池に咲く花の上に、美しいエルフの女王様はお座りになっていた。


 そばにはコロンチュードさん、アービタニアさん、2人の大長老も控えている。


 1万年を生きた女王は、静かに微笑んだ。


「神なる子らにシュムリアの友人たち、貴方方の助力によって、我らエルフは滅びの危機を乗り越えられました。このティターニアリス、深く御礼を申しあげます」


 長い金髪をこぼして、頭を下げられる。


 合わせて、大長老の2人も僕らに頭を下げていた。


 僕は慌てて、身体の前で手を振った。


「いえ、そんな。でも、僕らが少しでもエルフさんたちの助けになれたのなら、よかった。本当に嬉しいです」


 と笑った。


 ティターニアリス様とコロンチュードさん、2人のエルフのお姉さんは顔をあげ、そんな僕を見つめて微笑む。


 アービタニアさんは、少し苦々しそうな顔だ。


(あはは……)


 それから、僕は、


「それで、えっと、僕に会いたいと聞いてきたんですけど……何でしょう?」


 と聞いた。


 多分、お礼を言いたいだけではないと思うんだよね。


 ティターニアリス様の美貌を見つめていても、何か他にも言いたいことがあるみたいな気がしたんだ。


 エルフの女王様は頷いた。


「はい。実は、神なる子マール様に、1つお願いがあるのです」


(お願い?)


 僕は首をかしげた。


 イルティミナさん、キルトさん、ソルティス、ポーちゃんも不思議そうな顔だ。


 いや、よく見たら、コロンチュードさん、アービタニアさんの大長老2人も知らなかったのか、自分たちの女王様の言葉に意外そうな顔をしていた。


 ティターニアリス様は、自分の胸元を押さえる。


「もうすぐ……私は長い眠りにつきます」

「え?」


 僕は目を瞬いた。


 彼女は美しい蒼い瞳を伏せて、


「この老齢の身で、此度の戦場いくさばにてあまりにも多くの力を使い過ぎました。その反動もあり、衰えたこの身には、しばしの休養が必要なのです」

「…………」


 そうなんだ?


 みんなも驚いていて、特に、大長老の2人は痛ましげな顔だった。


 エルフは長命な種族だ。


 特にティターニアリス様は1万年以上を生きている。その彼女が『長い』と称する眠りなら、100年単位の話かもしれない。


 人の寿命では、その目覚めに間に合わないのかもしれないと思った。


 そして、エルフの女王様は、花びらの中からある物を手にして、僕の方へと差し出した。


「こちらへ、マール様」


(?)


 誘われるままに、僕は近づく。


 近づいて見てみれば、それは小さな『錫杖』みたいだった。


 でも、とっても綺麗だ。


 渡されるままに、思わず、それを両手で受け取ってしまう。


「そ、それは!」


 不意に背後からアービタニアさんの驚きの声が響いた。


 コロンチュードさんも呆けたように、口を半開きにして、いつも眠そうな目をまん丸に見開いてこちらを見つめていた。


 え、何?


 僕は困惑する。


 イルティミナさんたちも『どうしたんだ?』という顔だ。


 そんな僕らの姿を穏やかに見つめ、ティターニアリス様は、ゆっくりと語られた。


「それは『王配の錫杖』です」


 王配……?


 それって、確か女王様の伴侶のことだよね。


 え、その錫杖?


(ど、どど、どういうこと!?)


 なんか、とんでもない物を渡された気がして、僕は身体が固まってしまった。


 キルトさん、ソルティスは『はぁ!?』という顔をしていて、ポーちゃんは『お~?』と感心した顔だ。


 そしてイルティミナさんは、


「…………」


 感情の消えた無表情になり、静かにエルフの女王様を見つめた。


 その眼差しには強い殺気があり、放たれる冷たい闘気は、広い謁見の間を満たすようにゆっくりと広がっていく。


(イ、イルティミナさん……っ)


 ゴクン


 思わず、僕は唾を呑む。


 イルティミナさんは静かに、けれど苛烈な意志を宿して、ティターニアリス様に真意を問うような視線を送っている。


 それを受けても、エルフの女王様は落ち着いた顔だった。


「『王配の錫杖』と言っても、私の婿になって欲しい訳ではありませんよ。ご安心ください」

「……あ」


 そ、そうですか。


 僕は、ちょっと安心する。


 イルティミナさんからの冷たい闘気も薄らいで、みんなも少しだけ安堵した様子だった。


 でも、大長老2人の硬い表情は変わらなかった。


 ティターニアリス様は言う。


「ただ、その錫杖はその名の通り、本来、我が伴侶に贈られる物。すなわち、女王である私の代理としてエルフ国の支配権を認める証の品なのです」

「…………」


 え?


(女王の代理? エルフの国の支配権?)


 僕はポカンとなった。


 この手にある美しい錫杖を、マジマジと見つめてしまう。 


 イルティミナさんたちも呆けたように、僕とティターニアリス様を交互に見つめていた。


 アービタニアさんが口を開く。


「恐れながら、女王陛下! この決断には再考の必要があると思われます! いかに神なる血筋とはいえ、人間の世界の者を我らエルフの上に頂くのは難しいかと……っ」


 うんうん!


 僕もそう思う。


 珍しくアービタニアさんに同意だよ。彼の言葉に、何度も頷いてしまった。


 コロンチュードさんは、何とも言えない顔だ。


 そして、忠臣の言葉を受けたエルフの女王様は、静かに微笑まれた。


「アービタニアの言う通り、私が眠りについたあと、エルフ国のことをマール様に一任するのは難しいことでしょう。ですから、国のことは3人の大長老に任せます」


 え……?


「マール様にお願いしたいのは、その3人の大長老の行いを見守ることです」


 見守る……3人の大長老を?


 僕は思わず、コロンチュードさんとアービタニアさんを見てしまった。


 2人も僕を見ている。


 ティターニアリス様は続けた。


「3人がこの国をどのように導くのか? その是非を、神なる目と御心で見定めて欲しいのです。そして、もしそれが間違っているならば、それを叱っていただきたい」

「…………」

「その錫杖は、それを認めさせるための証です」


 …………。


 僕は手にした『王配の錫杖』を見つめ、そして、ティターニアリス様を見上げた。


 その瞳には、信頼があった。


 エルフたちのことを思う深い慈しみと愛情も感じられた。


 そのために、僕を選んでくれたこと。


 それは本当に誇らしいことで、恐れ多いことだった。


 だけど、


(その信頼に応えたい)


 そう素直に思えた。


 だから、僕は頷いた。


「わかりました。そのお役目、お引き受けます」


 錫杖を両手で掲げ、宣言する。


 長く生きたエルフの女王様は、嬉しそうに微笑み、満足したように頷いてくれた。


 その視線が、2人の大長老を見る。


「2人もわかりましたね? マール様の目と御心は、我が目と御心と思い、それに従い、エルフたちを良く導いていくのですよ」


『ははぁっ』


 コロンチュードさん、アービタニアさんは深く頭を下げた。


(……うん)


 偉そうな立場をもらったけど、あの2人と今、シュムリア王国にいるベルエラさんの3人なら、僕が叱るまでもなく大丈夫な気がした。


 もしもの時は、僕なりのアドバイスをすればいいのかな?


 きっと、そんな感じでいいだろう。


 …………。


 それにしても、『王配の錫杖』か。


 大好きなエルフさんたちのために色々と関われるなんて、ちょっとドキドキしちゃうな。


 うん、がんばろう!


 青い瞳をキラキラさせる僕に、キルトさん、イルティミナさんは何とも言えない表情で、ソルティスは『マジ……?』って顔、ポーちゃんはいつもの無表情だった。


 そんな僕を見つめて、ティターニアリス様は柔らかに微笑んだ。


「――どうか、エルフたちの未来を頼みます、マール様」

ご覧いただき、ありがとうございました。



W杯コスタリカ戦は、残念な結果になりましたね……。

ですが、まだ予選敗退が決まった訳ではありません。厳しいのは確かですが、次のスペイン戦を全力で戦い、ぜひ決勝トーナメント進出を掴んで欲しいです!

どうか皆さんも一緒にサッカー日本代表を応援しましょうね♪


がんばれ、ニッポン!



※次回更新は、今週の金曜日を予定しています。どうぞ、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ 王女の言い分は良いのですが、致命的に言葉足らずでしたね。 危うくイルティミナが殺意の波動に目覚める処でしたよ(笑) [一言] 一昼夜に渡り皆を抱えて空を飛び…
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