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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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049・白き獣人ムンパ・ヴィーナ

第49話になります。

よろしくお願いします。

 姉妹と別れた僕は、キルトさんに案内されて、螺旋階段を登っていく。


 3階の宿泊施設、4階のギルド職員の区画を通り過ぎて、やがて辿り着いたのは、ギルドの最上階である5階だった。


(わ~、立派な扉だね?)


 扉の前には、制服姿のお姉さんが座っている。

 まるで社長室だ。


 彼女は立ち上がって、深々と頭を下げてくる。


「お待ちしておりました、キルト様、マール様」

「うむ」


(……マ、マール様?)


 ただの形式だとは思うけど、こそばゆい。

 キルトさんは、頭を下げるお姉さんに頷いて、そして、止まっている僕の背中を軽く叩いた。


「さ、行くぞ、マール」

「あ、うん」


 お姉さんの開けてくれた扉を、僕らは潜った。



 ◇◇◇◇◇◇◇



(お~、なんだこの部屋?)


 驚いた。

 その空間には、植物や花があり、小さな川もあった。


 ――まるで自然豊かな庭だ。


 その中を、人工的な通路が伸びていて、川をまたぐ橋の先に、円形の白い床がある。そこに、執務机と来客用のソファーがあった。


 その執務机に、1人の女性が座っている。


「連れてきたぞ、ムンパ」


 橋を渡りながら、キルトさんが声をかけた。

 女性は顔を上げる。


「あら、キルトちゃん、ありがとう」


 ゆったりした、柔らかな声。


 その女性は、キルトさんと同じ20~30代ぐらいの外見だった。

 足元まで届く、真っ白な雪のような色の髪は、緩くウェーブがかかっており、その髪の中から、真っ白な獣耳が垂れていた。立ち上がったドレスのような衣装のお尻からも、フサフサした白い尻尾が長く生えている。


 うん、とっても美人な、獣人のお姉さんだ。


(さ、触りたいな~)


 白い耳や尻尾に、ちょっとウズウズしてしまう。


 彼女は、紅い瞳を細めて、キルトさんの隣の僕を見つめた。


「まぁまぁ、貴方がマール君ね?」

「あ、はい」

「フフッ、はじめまして。私は、このギルドの長、ムンパ・ヴィーナです。よろしくね?」


 差し出された手は、人間だった。

 でも、手首までは、白い毛で包まれていた。


 僕は、その手を握る。


 とても温かくて、しっとりした手だ。

 ムンパさんは、優しく微笑んだ。


「急に呼びつけたりして、ごめんなさいね。――さぁ、2人とも座って」


 促されて、僕とキルトさんは、来客用のソファーに座る。

 ムンパさんは、小さなガラステーブルを挟んで、対面のソファーに座った。


 扉の前にいたギルド職員のお姉さんが、飲み物の入ったグラスを持ってきてくれて、そのまま音もなく立ち去る。


(ん、アップルティーかな?)


 冷たくて、甘くて美味しかった。


 そんなジュースを飲む僕に、ムンパさんは笑っている。

 キルトさんが、ギルド長へと声をかけた。

 

「ムンパ。マールも、長旅の直後で、疲れもある。なるべく、手短に頼むぞ?」

「あら?」


 ムンパさんは、驚いた顔をした。


「キルトちゃんが、そんな優しいこと言うなんて、珍しい。そんなにマール君こと、気に入ってるの?」

「む……?」


 キルトさん、ちょっと言葉に詰まった。


「フフッ……今のキルトちゃん、なんだか、マール君のお母さんみたいだったわ」

「……せめて、姉と言え」


 不服そうなキルトさん。

 ムンパさんは、可笑しそうにクスクスと笑っている。


(あのキルトさんが、からかわれている……)


 珍しい光景だ。


 そしてムンパさんは、笑いながら、改めて僕を見た。


「さて。まずはマール君、貴方にお礼を言わせてね」

「え?」

「話は全て、キルトちゃんから聞きました。うちのイルティミナちゃんの失われた命を助けてくれたこと、そのために『命の輝石』を使ってくれたこと、ギルドの長として、とても感謝しています。本当にありがとう」


 雪色の豊かな髪をこぼして、ゆっくり、深く頭を下げた。

 僕は驚き、否定した。


「いいえ、僕はそれ以上に、イルティミナさんに助けられてきました。だから、お礼なんていらないです」

「あらあら?」

「それに、キルトさんやソルティスがいたから、こうして僕は生きてます。僕の方が、ずっと彼女たちに助けられてて、むしろ、どうやってお礼したらいいか、わからないぐらいで」


 本当、どうしたらいいんだろう?


 悩む僕に、ムンパさんは目を丸くする。


「まぁまぁ、こういう子なのね? なるほど、キルトちゃんの気持ち、ちょっとわかったわ」

「うむ。そうであろ?」


 はい?


「フフッ、いい子すぎるのよ、君。もっと悪い子にならないと、周りが苦労しちゃうわ」

「はぁ」

「でも、だからこそ、イルティミナちゃんは助かったのよね」


 頬に手を当て、ため息をつくムンパさん。

 キルトさんは苦笑して、


「ムンパ、マールの性格については、あとにしておけ。まずは本題に入れ」

「あら、そうね」


 ムンパさんは、ハッとすると、姿勢を正して僕を見た。


「マール君?」

「はい」

「話によると、マール君は今、未使用の『命の輝石』を持っているのよね? それを私に見せてもらえないかしら?」

「あ、はい。いいですよ」


 頷いて、僕は服の下から、青い魔法石のペンダントを引きずり出す。


 青い輝きが、見つめるムンパさんの美貌を照らす。

 彼女の白い手が向けられると、魔法石はフォンフォンと光を強くした。


「なるほど。本物だわ」

「であろ?」


 キルトさんは苦笑する。

 ムンパさんは、しばらく『命の輝石』を見つめ、それから、真面目な顔になって、僕を見た。


「マール君。この『命の輝石』、もしよかったら、私たちに譲ってもらえないかしら?」

「え?」

「実はね、冒険者ギルドは、王国との間にいくつか約束があるの。その1つに、遺跡などで冒険者が発見した『命の輝石』は、必ず、シュムリア王家に譲渡するという項目もあるのよ」


 へ~、そうなんだ?


「もちろん、マール君は冒険者じゃないから関係ないわ。でも正直、これを個人で所有するのも、お薦めできないの」

「…………」


 あぁ、なるほど。 

 

(もし僕が『命の輝石』を持ってるって知ったら、悪い人は、きっと盗みに来るよね?)


 この世界には、野盗だっているんだ。

 盗まれるだけならいいけど、もしかしたら、犯人に口封じで殺される可能性もある。


(イルティミナさんたちはいい人だったから、よかったけど)


 これから出会う人もそうとは、限らないんだ。


 僕は、頷いた。


「わかりました。これ、ムンパさんにあげます」

「…………」


 彼女の手のひらに、青い魔法石のペンダントを落とした。


 ムンパさんは、自分の手と僕の顔を、交互に見る。

 そして、ため息をこぼした。


「キルトちゃん……」

「これがマールじゃ。頭が痛かろう?」


 キルトさんの手は、僕の首根っこを押さえている。


「あのね、マール君? まだ対価の話もしてないのに、相手に品物を渡したら駄目なのよ?」

「???」


 対価って、


「そんなの別に、いらな――」

「マール」


 イタタッ!

 キルトさんの指が、万力みたいに首の後ろを挟む。


 ムンパさんは、苦笑する。

 そして、とても誠実な声で言った。


「私たちのギルドにできることなら、なんでもするわ。生涯、依頼を無料で受けてもいいし、毎年、10万リドまでなら支払いも続けられるわ」

「と、言われても……」

「なんでもいいのよ? キルトちゃんに、肩揉みさせるとか、パシリにするとか、彼女が良ければエッチな命令も……」


 ちょっとちょっと?


 キルトさんが「ムンパ?」と怖い笑顔を向けている。


(……でも、急に言われてもなぁ?)


 僕は、ちょっと悩んだ。

 あ、そうだ。 


「じゃあ、タナトスの魔法文字のことを教えてください」

「タナトスの魔法文字?」


 ムンパさんは、驚いた顔だ。

 僕は、大きく頷く。


「文字の意味とか、読み方とか。もともと、僕はそのために王都に来たんです」

「そう……わかったわ」


 了承したムンパさんは、キルトさんを見て、


「それは、キルトちゃんの仲間のソルティスちゃんに、お願いしましょう」

「ソルにか?」

「えぇ。ギルドには専門の『魔学者』たちもいるけれど、ソルティスちゃんも、同じぐらい詳しかったでしょ? だったら、知らないおじさんたちに教わるよりも、知ってる女の子に教わる方が、マール君もいいんじゃないかしら?」


 ……うん。

 確かに、知らない大人相手だと緊張するし、ソルティスの方がいいかも。


 僕の表情に、キルトさんも頷いた。


「わかった。そうしよう」

「えぇ。――じゃあ、マール君? 他には?」


 え?

 他に?


「まだ、対価には全然足りないもの。なんでもいいのよ?」

「…………」


 う~ん。

 それじゃあ、


「アルドリア大森林・深層部にある石の台座を、調べてもらってもいいですか?」

「石の台座?」

「はい。できれば、その台座に彫られた魔法陣の意味や、近くにある塔のこと、その中にある女神像が、どんな神様なのかも知りたいです」


 ムンパさんは、頷いた。


「キルトちゃんの報告にあった、古代タナトス魔法王朝時代の遺跡ね? わかったわ、すぐに手配します」

「わらわも、イルナから聞いただけじゃがの。――そういえば、それらの遺物を描いた、マールの絵があったの。資料として渡そう。あとは、地図も描いておったな? それも現地調査に向かうために、使えるはずじゃ」


 キルトさんの言葉に、ムンパさんは驚いたように僕を見る。


「まぁまぁ? マール君って、優秀なのね?」


 あはは~、ただの偶然です。


「わかりました。それらで判明したことは、すぐマール君に報告するわね」

「お願いします」


 僕は、頭を下げる。


 でも、『やった!』と思った。

 全部1人で調べるつもりだったけど、実は、ちょっと不安だったんだ。だけど、プロにやってもらえるなら確実だし、ずっと早い時間でわかりそうだ。


(よかった、思い切ってお願いして)


 安心する僕だったけれど、


「じゃあ、マール君、他には?」

「…………」


 ムンパさんは、期待するようにこちらを見ている。

 尻尾もパタパタと、左右に揺れている。


 ま、まだ?


(でも、他って言われても……)


 何かあるかな?

 視線をさまよわせると、ふと自分の左腕に気づいた。


(あ、そうだ!)


「じゃあ、精霊との交信方法も知りたいです!」

「精霊との交信方法?」

「はい」


 僕は頷いて、左腕に装備されている『白銀の手甲』をムンパさんに見せた。


「あら? いい装備ね」

「はい。精霊と交信できれば、これで大地の精霊魔法が使えるらしいんです」

「なるほどね」


 頷いて、けど、彼女は困った顔をした。


「そうね。でも、そのお願いを叶えるのは、ちょっと難しいかもしれないわ」

「え?」

「ん~、例えばだけど、マール君? 意識せず、まぶたを閉じてる人に、『物を見たいから、目の開け方を教えて?』って言われたら、どうする?」

「…………」

「まぶたの開き方って、どうやって伝えればいいのかしら?」


 た、確かに……。


(つまりこれは、自分で気づかないと駄目なのかな?)


 ションボリする僕に、ムンパさんは申し訳なさそうに、


「ごめんなさいね? 一応、精霊魔法の得意なエルフの知り合いに、紹介状を書いておくからね」

「お、お願いします……」


 こっちも申し訳なくなりながら、頭を下げた。


 そして、ムンパさんは挽回しようと意気込んで、


「じゃあ、マール君、他に――」

「もうないです」


 僕は、きっぱりと言った。

 ムンパさんは「え~?」と不満そうだ。


(でも、ないったらない)


 というか、これ以上、対価を要求するのは、さすがに何か間違っている気がした。


 キルトさんが苦笑しながら、更に言い募ろうとするムンパさんへと、片手を向ける。


「ムンパ、それぐらいにしておけ」

「キルトちゃん? でも……」

「わかっておる。わらわも、これでは『命の輝石』2つ分の対価には、まるで足りぬと思っておる。しかしの――」


 キルトさんの手が、ポンポンと、僕の頭を軽く叩く。


「欲のない者に、無理に欲を求めるのは、少し酷であろう?」

「……そうね」


 白い獣耳を揺らして、ムンパさんはうなだれた。


「マールも、また何か求めることがあったなら、改めて頼むが良い」

「うん」


 僕は、頷く。

 そして、ムンパさんと目が合った。


「ごめんなさいね、マール君。でも、何かあったら、遠慮なく言ってね?」

「はい。ありがとう、ムンパさん」


 僕は笑った。

 そして、ハッと気づいた。


「あ、あの、ムンパさん? 最後に1つだけ、お願いしてもいいですか?」

「あら? フフッ、もちろんよ」


 驚き、笑ってくれるムンパさん。

 僕は言った。


「じゃあ、ムンパさんのフワフワした耳と尻尾を、触らせてください!」

「…………」


 彼女の紅い瞳が丸くなる。

 そして、キルトさんは大笑いし、ムンパさんは恥ずかしそうに苦笑して、でも、「約束だものね」と頷いてくれたのだった。


 ――うん、最高の感触でした。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 おかわりのアップルティーを頂いて、そろそろ退室するかな? と思った時だった。


「そういえばね、キルトちゃん?」

「ん?」


 キルトさんは、グラスを口から離す。

 ムンパさんは、少し神妙な顔をしていた。


「報告にあったオーガだけど、実は似たような事件が、他にもあったの」

「何?」

「最初は、3ヶ月前ね。人が魔熊マグマになるのを、猟師が目撃したの。次は、先月。教会のシスターが白牙狼はくがろうになって、信者たちを殺したって。どっちも、うちの魔狩人が討伐してる。キルトちゃんの報告は、3件目」


 えぇ、3件も!?


 キルトさんも「ほう?」と、驚いた様子である。

 ムンパさんは、垂れた獣耳を揺らしながら、ため息をこぼした。


「昨日までは、何かの間違いかもって思ってたんだけど、キルトちゃんも見たなら確定よね」

「うむ」


 僕は、聞いた。


「あの、奇妙な子供についても、報告はあります?」


 ムンパさんは、頷いた。


「あるわ。1件目は、数日前に、森の中を歩いている子供が目撃されてる。2件目も、前日に、シスターが孤児を拾ってるわ。でも事件後に、その孤児だけ姿が消えてる」

「…………」

「わかっているのは、黒髪、褐色の肌、10~12歳ぐらいの男の子。これだけね」


 特徴的に、僕が旧街道で見た子と一緒だ。


(……間違いないね?)


 やっぱり、その子が、人を魔物に変えてるんだ。


 でも、教会のシスターまで魔物になるなんて、


(――その子は、女神シュリアンの加護も破ったんだ?)


 そんな風に思った。

 いや、思ったのは、『マールの肉体』かもしれない。  


 キルトさんは、自分たちの長を見る。


「どうする、ムンパ?」

「とりあえず、王国と他の冒険者ギルドに、もう一度、報告するわ。今度は、キルトちゃんの名前も付くから、信用も違うもの。もちろん、『月光の風』でも、人を集めて調査します」


 ムンパさんは、厳しい顔でそう言った。

 それから、顔を上げ、


「それと、キルトちゃんにもう1つ、お話が」

「なんじゃ?」

「まだ非公式なんだけどね」


 そう前置きして、


「来月、シュムリア国王の生誕50周年式典があるでしょう?」

「うむ、あるの」

「そこで、発表される予定なんだけど、10年ぶりに『暗黒大陸への開拓団』が送られることになったの」


 暗黒大陸!?


(それって、ソルティスが話してくれた40年間未開の大陸だよね?)


 しかも、それまでの開拓団は、毎回、全滅してる。


「キルトちゃんにも参加するよう、打診が来てるわ」

「ほう?」

「嫌なら、断って。無理強いはしないし、絶対にさせないわ」


 ムンパさんは、ギルド長の顔で言う。


 王国の命令に逆らうって、大変なことのはずだ。それなのに、こう言い切るムンパさんは、本当にいい人だ。


 キルトさんは、難しい顔だった。

 腕組みして考えている。


「開拓団の出航は、1年後の予定だから、返事は急がなくていいわ」

「そうか」


 ちょっと安心した顔になる。

 少し気になって、僕は、聞いてみた。


「キルトさんぐらい強くても、やっぱり行くのは嫌なの?」

「ふむ。過去の開拓団にも、『金印の冒険者』たちは何名かいたが、生きて帰った者は1人もいないからの」

「…………」


 暗黒大陸って、そんな恐ろしい場所なのか。


「いや、死ぬのは構わぬ」

「え?」

「じゃが、イルナやソル、それにマールを残して死ぬのが嫌での。そなたらの将来に安心したら、行っても構わぬよ」


 キ、キルトさん……。


 強く優しい彼女は、僕の頭をポンポンと叩いた。


「そなたには期待しておるぞ。それに、あの姉妹には、マールが必要だと思うからの」

「あらあら?」


 ムンパさんは、キルトさんの評価に、驚いたように僕を見る。

 僕は、困ったように笑った。


 パンッ


 キルトさんは、区切りをつけるように膝を叩く。


「さて、話はこれで終わりかの? ならば、わらわたちは、そろそろ暇を乞うとしよう」

「あらあら、そうね。もうこんな時間? ちょっと長話になっちゃったわ」

「いつものことじゃ。じゃから、前もって、言ったのじゃがの」


 口元を押さえるムンパさんに、苦笑するキルトさん。


 僕は、慌てて、残ったアップルティーを飲み干した。


「ご馳走様でした」


 プハッ


 その姿に、2人の美女は笑い、そしてキルトさんは、僕を促して、ソファーから立ち上がる。


「今日は、来てくれてありがとう、マール君。また、いつでも遊びに来てね?」

「はい」

「キルトちゃんも、またね」

「うむ」


 ムンパさんは、その大きな白い尻尾を揺らしながら、僕らを見送る。


 出口への通路を歩きながら、僕は、ふと思った。

 隣のキルトさんに、聞いてみる。


「そういえば、開拓団に入る条件って、何かあるの?」

「ふむ? 前回は、『白印』以上の冒険者という話であったな」

「そっか」


 1年で白印か。

 そうすれば、『神魔戦争で生き残った悪魔』がいるかもしれない、暗黒大陸に行けるんだ。


 考え込む僕に、キルトさんは、嫌そうな顔をした。


「そなた、良からぬことを考えておるまいな?」

「ん、なんのこと?」


 僕は、とぼける。

 銀色の髪をかき上げて、キルトさんは、盛大なため息をこぼした。


「そなたは本当に、わらわの頭を痛ませる子じゃの、マール?」

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、3日後の月曜日0時以降になります。よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] マールは森で見た子供のことを誰にも話してないような…… 誰かに話してたかな? 見落とした可能性も……
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