表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

479/825

431・瞬殺

第431話になります。

よろしくお願いします。

 3体の『森林竜』は、僕らめがけて突進してくる。


 ドスン ドスン


 足音の地響きが鳴り、その衝撃で大地が震動する。


 圧倒的な巨体の迫力とその重量によって、これまで相対した人間たちは皆、きっと逃げ出したことだろう。


(――でも)


 今、彼らの目の前にいるのは、あの鬼姫キルト・アマンデスだった。


「おぉおお!」


 金印の魔狩人は、手にした巨大な大剣を、下段から上段へと大きく振り抜いた。


 バギィイン


 青い放電が走る。


 同時に『森林竜』の頭部に生えている角が、半ばからぶち折られ、クルクルと回転しながら空中へと舞った。


『!?』


 竜の眼球に、驚愕の色が灯る。


 その凄まじい衝撃で、角を折られた森林竜は吹き飛ばされ、仰向けに地面に倒れ込んだ。


 ズズゥン


 残った2体も足を止め、呆然となる。


「マール、やれ!」


 キルトさんの指示が飛ぶ。


(うん!)


 僕は、手にした『大地の剣』を逆手に持ち替え、神気を注ぎながら、その剣先を地面にザシュッと突き刺す。


 そして、


大地の破角(アース・ホーン)!」


 ドゴォオン ドゴォン ドゴォオン


 魔力の流れた大地から、黒く捻じれた角が飛び出して、3体の『森林竜』の肉体を貫いたんだ。


(……う、わ?)


 硬い竜の外皮を、大地の角は簡単に貫いている。


 仰向けになった1体は、心臓部を貫かれ、一度、全身を大きく痙攣させて絶命した。


 もう1体も、頭部を破壊され、死んだ。


 残された1体は、右後ろ足を貫かれ、動けなくされてしまっている。


 ……なんて威力だ。


 僕は、自身の持つ『タナトス魔法武具』の威力に、恐怖を覚えてしまった。


「シィッ!」


 ドパァン


 動けなくなった森林竜の頭部に、イルティミナさんが『白翼の槍』を放ち、命中させる。


 血肉が弾けた。


 最後の森林竜も、それで絶命した。


 あっけないほどの勝利。 


 最後尾で何もしていなかったソルティスは、「ひょええ……」と呆れたように呟いた。


 ポーちゃんも、構えていた両拳を下す。


 キルトさんも、


「ふむ」


 と頷いて、『雷の大剣』を背負い直した。


 イルティミナさんが白い槍を肩へと預けて、僕へと笑いかけてくる。


「やりましたね。お見事でしたよ、マール」 

「……うん」


 僕は、戸惑ったように返事をした。


「? ……マール?」


 深緑色の長い髪を揺らして、イルティミナさんが首をかしげる。


「どうかしましたか?」

「ううん」


 僕は首を振り、


「ただ、ちょっと『大地の剣』の威力に怖くなっちゃって……」


 と答えた。


 まさか、竜種を3体同時に瞬殺できるほどの力を秘めているとは思わなかった。


 衝撃だった。


 でも、もっと衝撃だったのは、その手応えがあまりに薄かったことだ。


 命を奪った実感。


 それが、あまりに希薄だった……。


(……遠距離の魔法だったから、かな?)


 いつもなら、僕が魔物を倒す時には、自分の手にした剣を振るって、その刃で命を奪う。


 その刃から手へと、肉を断つ感触が伝わってくる。


 命を奪う重さが感じられる。


 だけど、


(この剣の魔法では、それが感じられないよ……)


 まるで自分が戦場とは違う安全な別の場所にいて、そこで引き金を引いただけみたいな感覚だった。


 僕は顔をあげる。


 目の前には、3体の竜の死体がある。


(……僕が殺したんだ)


 それを見つめながら、そう自分に強く言い聞かせた。


 そうしなければ、僕は『大地の剣』の力に酔ってしまって、命の重さを忘れてしまいそうだと思ったんだ。


 この剣は、怖い。


 自分の中の大事な『何か』まで壊してしまいそうな、そんな威力の剣だった。


「…………」


 そんな僕の横顔を、キルトさんが見つめる。


 そして、


「そなたなら大丈夫じゃ、マール。その力に魅了されず、恐れを覚えられるならば、きっと使い方は間違えぬ」


 そう力強く言ってくれた。


(キルトさん……)


 僕は、自分の信じる剣の師匠を見つめる。


 彼女は微笑んだ。


 それから、すぐに魔狩人の厳しい表情に戻って、前を向く。


「よし。このまま、群れの集まっている場所へと向かうぞ」


 そう宣言した。


 僕らは頷いた。


「行きましょう、マール」


 ギュッ


 戦場だというのに珍しく、イルティミナさんが僕の手を握ってくれた。


 温かな手だ。


 大切な何かを思い出させてくれる、そんな温もりだった。


「うん」


 僕は頷いた。


 イルティミナさんは微笑み、僕らは歩きだした。


 3つの竜の死骸をそのままに、僕ら5人の魔狩人は、再びドルア大森林の奥地へと向かうのだった。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、3日後の月曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミックファイア様よりコミック1~2巻が発売中です!
i000000

i000000

ご購入して下さった皆さんは、本当にありがとうございます♪

もし興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、ぜひご検討をよろしくお願いします。どうかその手に取って楽しんで下さいね♪

HJノベルス様より小説の書籍1~3巻、発売中です!
i000000

i000000

i000000

こちらも楽しんで頂けたら幸いです♪

『小説家になろう 勝手にランキング』に参加しています。もしよかったら、クリックして下さいね~。
『小説家になろう 勝手にランキング』
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/  初めてチームでの遠距離戦。 イルティミナの目の前もあり、結果は上々ですね! イルティミナのアフターフォローもあり、剣の力を受け入れる事が出来たようで一安心…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ