426・魔剣の検査
皆さん、こんばんは。
およそ2週間ぶりとなりますが、『少年マールの転生冒険記』更新再開となります。
再びのマールたちの物語、どうか楽しんで頂けたなら幸いです。
それでは本日は、第426話です。
どうぞ、よろしくお願いします。
「ふ~ん? なるほどねぇ」
眼鏡をかけたソルティスが、そんなことを呟いた。
目の前には、両刃の美しい片手剣――僕の『タナトス魔法武具』の剣が机の上に固定されて、置かれている。
剣には、3本ほどのコードが繋がれていた。
「ふむふむ」
コードの先の機器の数値を、メモに書き込みながら、少女は頷いていた。
(…………)
僕は、部屋の隅の椅子に座って、それを見守っている。
ここは、ソルティスの家の研究室だ。
実は、好奇心旺盛な博識少女に、この『タナトス魔法武具』の剣を調べさせて欲しい、とお願いされてしまったのだ。
彼女曰く、
「未契約の魔法武具って、珍しいのよ!」
とのこと。
タナトス魔法武具というのは、所有者と契約を交わすことによって、その性能を発揮するんだって。
でも、
「契約しちゃうと、セキュリティ機能も動いちゃって、そのあとに調べようとしてもプロテクトに邪魔されちゃうの」
なんだとか。
よくわからないけど、じっくり調べられるのは今だけなのだそうだ。
(まぁ、いいか)
と、僕は了承した。
僕としても、この未知の剣がどういう性能なのか、どういった機能があるのか、興味があったからだ。
それに、ソルティスも喜ぶしね。
彼女なら壊すこともないだろうし、不利益はないと判断して、そのお願いを了承したんだ。
ちなみに前回の討伐クエストでは、タナトスの剣は持っていったけれど、使うことはなかった。
キルトさんに止められたんだ。
「一度も振るったことのない剣を、実戦でいきなり使うのはやめておけ。今回は、いつもの『妖精の剣』を使うが良い」
ってね。
そんなわけで、僕の『タナトスの魔法剣』は、まだ未使用なのだ。
カチャッ カシャン
眼鏡のソルティスは、一心不乱に剣の構造や、そこに刻まれた魔法文字を確認している。
魔力を流したりもしてるのか、時々、剣の魔法石も光っている。
…………。
…………。
…………。
いつまでかかるのかなぁ?
そろそろ3時間、目の前の様子をぼんやり眺めながら、僕は、小さな欠伸を噛み殺した。
◇◇◇◇◇◇◇
「ありがとね、マール」
あれから更に2時間後、彼女はようやく調査を終えたみたいで、満面の笑みだった。
ポーちゃんが、僕らにお茶を淹れてくれる。
お礼を言って、そのコップを受け取り、僕とソルティスはお茶を一口飲んで、大きく息を吐いた。
ふぅ。
ソルティスは、たくさんのメモ書きに視線を落としながら、
「おかげで、興味深いデータがたくさんとれたわ。金属内部に、どういった経路で魔力回路を通しているかとか、その限界魔力量とか、それが硬度に与える影響とか、内部の微小魔法式の基礎構造だとか、他にも色々、これまで推測だけだった数値と実際の数値とかも、じっくり比較できたわ」
そっか。
「役に立ったんなら、よかったよ」
僕は笑った。
ソルティスも機嫌が良いらしく、笑ってくれる。
「レポートを書いて、コロンチュード様にも見てもらわなくっちゃ。今度、森の家に一緒に行きましょうね、ポー」
「…………」
コクッ
ソルティスと同居する幼女は、頷いている。
そんな2人に、ちょっとほっこりする。
それから僕は、お茶を一口。
「それで僕の剣のこと、どういう機能があるとか、わかったの?」
「一応ね」
ソルティスは頷いた。
「実際に契約して、マールが正式な所有者になれば、勝手にマールも理解できると思うけど……ま、結構、強力な魔法が秘められているみたいだわ」
ニヤッ
そう意味深に笑った。
(ほほう?)
ちょっと興味深いね。
古代に造られた『タナトス魔法武具』には、ただ魔力を流すだけで、複雑な魔力分配や詠唱がなくても、強力な魔法を発動する特徴があるんだ。
例えば、キルトさんの『雷の大剣』。
魔力を流すことで、内側に秘められていた雷を外側へと放出する。
つまり、雷の魔法だ。
その制御を、より緻密にして威力をあげたのが『鬼剣・雷光斬』であり、その先の『鬼神剣・絶斬』となる。
イルティミナさんの『白翼の槍』も同じだ。
魔力を流し、投擲することで飛距離が伸び、対象にぶつかると魔力爆発を発生させる。
また魔力を『光の羽根』に変換する。
それを利用して、自分の分身のようなエネルギー存在を生みだしたり、それで攻撃できたりもするんだ。
(凄いよね?)
でも、その凄い力と同じ力を、僕の『タナトスの魔法剣』も秘めているはずなんだ。
……ちょっと楽しみだ。
美しい片手剣を見つめる僕の視線に、ソルティスは気づく。
小さく苦笑して、
「それじゃ、今度、契約して実際に性能を試してみましょ? でも、街中だと危険だから、人のいない王都の外に出かけてからね」
と言った。
ご覧いただき、ありがとうございました。
※次回更新は、明後日の水曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。




