420・地下6階へ
第420話になります。
よろしくお願いします。
オルファナさんの杖が、空中に光るタナトス文字を描く。
ヒィイン
すると、そのタナトス文字は、扉に描かれた魔法陣に吸い込まれるように消えていった。
(あ……)
魔法陣にあるタナトス文字が1つ、オルファナさんの描いた文字に変化した。
「ん……」
集中した表情のオルファナさんは、次々に光るタナトス文字を空中に描いていく。
ヒィン ヒィィン
その全てが魔法陣に吸い込まれ、魔法陣のタナトス文字が幾つも変化していく。
全部で24回。
すると、魔法陣の放っていた光が、赤から青へと変わった。
ガシャン
扉の内部で、重そうな音が響く。
オルファナさんは、「ふぅぅ」と大きく息を吐いた。
「これで開錠したはず、だよ」
彼女はそう笑った。
レオルクさんは「よくやった」と彼女の頭を撫で、それから扉へと近づいた。
…………。
神妙な顔で見つめ、そして、取っ手を握る。
グッ
力を込めて、
ギギィイ……
重い金属音を響かせながら、6年前には開かなかった扉が、僕らの目の前で開いていった。
(やった!)
僕は、心の中で喝采をあげた。
開いた扉に、イルティミナさんの瞳も、感慨深そうな色を宿している。
レオルクさんたち3人の表情からも、喜びと興奮が伝わってくる。
「よし」
レオルクさんは頷いた。
僕らを振り返って、
「それじゃあ、6年前には拝めなかった最下層を拝みに行くとしようか」
◇◇◇◇◇◇◇
扉の先にあったのは、大きな会議室みたいな部屋だった。
「ほぉ……」
6年越しに見た景色に、レオルクさんたちは声を漏らす。
とはいえ、室内に目ぼしいものはない。
奥には、別の扉があった。
その会議室の中を通って、別の扉を抜けると、その先はまた通路になっていた。
左側には、大きな崩落が起きている。
どうやら、レオルクさんの予想通りに、崩落地点の反対側に出られたみたいだ。
「なるほどな」
彼は頷いた。
それから、その構造を頭の中に記憶しながら、通路を右へと進んでいく。
あ……。
「階段だ」
通路の先にあったそれに、僕は呟いた。
みんなも頷く。
この先が、ミューグレイ遺跡の最下層とされる地下6階なんだ。
「行くぞ」
パン
僕の肩を軽く叩いて、レオルクさんはそう笑うと、先頭に立って階段を下り始めた。
コツ コツ
今までより長い階段だ。
降りていく途中で、
「オルファナたちの予想では、最下層は、タナトス魔法武具の保管庫になっているんじゃないかって思っているんですよ」
と、隣を歩く魔法使いのお姉さんが教えてくれた。
(保管庫?)
それって、
「つまり、『白翼の槍』がいっぱいあるってこと?」
僕は、驚きながら訊ねた。
「槍だけじゃないかもしれないです。6年前、この遺跡で見つけた資料には、他の武具についても書かれてありましたから」
へぇ~?
「何が見つかるか、楽しみだね」
「はい」
僕らは、笑い合った。
未知の遺跡からお宝を発見する。
(うん、何か冒険者って感じがするよ)
僕は『魔狩人』だけど、オルファナさんたち『真宝家』をしている人たちの気持ちが、ちょっとわかった気がした。
コホン
(ん?)
仲良く話していた僕とオルファナさんを見て、イルティミナさんが、なぜか咳払いをした。
彼女は僕らを見て、
「ですが、そう簡単ではないかもしれませんよ」
と言った。
(え?)
「もしも地下6階が、タナトス魔法武具の保管庫であるならば、そこには『番人』もいるでしょうからね」
「あ……」
そ、そっか。
(そういう危険の可能性もあるんだね)
ちょっと気が緩んでた。
そんな僕の髪を、イルティミナさんが手を伸ばしてきて、優しく撫でた。
そして、
「まぁ、何がいたとしても、私が倒してみせます。必ず貴方のことは守りますのでご安心を、マール」
と微笑んだ。
あ……うん。
その慈愛に満ちた笑顔と眼差しに、ちょっとドキドキしてしまった。
オルファナさんも口元を押さえて、「わぁ……」と僕らを交互に見ながら、その頬を少し赤らめていた。
◇◇◇◇◇◇◇
やがて、僕ら5人は、階段を下り切った。
地下6階だ。
1本道の通路が、正面に続いている。
(…………)
なんだろう?
なんだか重苦しいような、嫌な空気だった。
レオルクさんも感じるのか、かすかに表情をしかめ、寡黙なジャックさんも、今まで以上に沈黙を重くしている。
オルファナさんも、少し不安そうな顔だ。
イルティミナさんは、いつもと様子が変わらなく見える。
けど、
(少し緊張してる……かな?)
長い付き合いであり、夫である僕は、なんとなくそうわかった。
無言のまま、僕らは、その通路を歩いていく。
コツン コツン
足音だけが反響している。
やがて、ランタンと『光鳥』の灯りの中に、通路以外のものが見えてきた。
扉だ。
通路の先には、大きな金属製の扉があったんだ。
でも、その前には『番人』も立っていた。
「あれは……」
僕は驚いた。
それは、身長5メードもある金属製の巨人だった。
腕の数は4本。
人間に比べると、腕は長くて、脚は短い。
そして、その巨人の肉体には、生身の部分もあって、何本ものコードが金属部分と生身の部分を繋いでいた。
ゴーレムだ。
そして、そのゴーレムに、僕は見覚えがあった。
ゴクン
思わず、唾を飲む。
忘れるはずもない。
かつて、『タナトス王の王墓』にて遭遇した『王墓の番人』――あの恐ろしい力を秘めた『ゴーレム生命体』が、ミューグレイ遺跡・地下6階の番人だったのだ。
ご覧いただき、ありがとうございました。
※次回更新は、明後日の金曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。




