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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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414・ミューグレイ遺跡

第414話になります。

よろしくお願いします。

 馬車で10日間ぐらい移動したあとは、森の中を徒歩で移動となった。


 遺跡までは、3日ほどの予定だ。


 木々の世界を歩き、日が暮れたら野営をする。


 焚火を囲んで、携帯食料をかじりながら、


「僕は、記憶喪失でさ。目が覚めた時には、アルドリア大森林にいたんだ。そこを、クエストで来ていたイルティミナさんに助けてもらったんだよ」


 と、自分の話をしていた。


 イルティミナさん以外の3人は、「え?」と驚いた顔だ。


「マール君、記憶がないの?」

「うん」


 オルファナさんの問いに、僕は頷き、


「過去に何があったかは知ったんだけど、記憶として思い出せてはいないんだ。でも、今はイルティミナさんが一緒にいてくれてるから、もう昔のことは気にならないよ」


 僕は僕、もうマールなんだ。


 その言葉に、イルティミナさんは、嬉しそうに笑みを深くしている。


 レオルクさんは、


「そうかぁ」


 と僕を見つめた。


 それから、イルティミナさんへと視線を向け、


「しかし、それで、その拾った子供と結婚とはなぁ。あの他人に興味がない、不愛想な少女が変わったもんだ。……つーか、まさか、こんな年下が好みだったとは」


 コホン


 イルティミナさんは咳払いして、


「マールは年下ですが、それが何か?」


 と、氷点下の声で問いかける。


 レオルクさんは、青ざめる。


 ブルブル


 慌てて首を振って、


「いやいや、別にいいんだけどなっ。ちょっと意外だなぁ、と思っただけだよ」


 と弁解する。


 イルティミナさんは、「そうですか」と静かに頷いた。


(あはは……)


 2人の様子に、僕は困ったように笑ってしまった。


 オルファナさんは瞳を輝かせながら、


「きっと2人は、運命の出会いだったんですね」


 と言ってくれた。


(運命……かぁ)


 うん、確かにそうかもしれないね。


 イルティミナさんも、満更でもなさそうな顔をしている。 


 僕ら夫婦は見つめ合い、笑い合った。


 その様子に、3人も、とても穏やかに笑っていた。


 それからは、これまでに僕がイルティミナさんたちと経験してきたクエストの話をしたりして、僕ら5人は、その夜を過ごしていった。


 そして、2日後。


「あれだ」


 森を歩いていた僕らの前に、目的だった遺跡が姿を現した。


 それは、木々に埋もれた神殿のようだった。


 繊細な装飾の施された柱や壁、屋根などは、長年の雨風に一部が削られ、植物の枝が絡みつき、あるいは苔に覆われてしまっていた。


 これが、


(ミューグレイ遺跡……)


 僕らは、その緑に飲まれかけた古代の建造物を見つめる。


「6年ぶりだな」


 レオルクさんが呟いた。


 他の2人も頷く。


 イルティミナさんも、


「あの頃とまるで変わっておりませんね」


 感慨深そうに呟いた。


 森に吹く風が、見つめる僕ら5人の髪を揺らして、青い空へと抜けていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「ここからは隊列を組んでいこう」


 レオルクさんが、そう言った。


 僕らは頷く。


 僕とイルティミナさんは助っ人だ。


 冒険者ランクはイルティミナさんが上でも、このパーティーのリーダーは彼なのだ。


 その獣人さんは言う。


「先頭は、俺とジャックだ」


 真宝家であるレオルクさんの探索力、マッピング能力は先頭でこそ発揮され、そんな彼を守るのが重戦士であるジャックさん、ということだ。


 そして、


「次に、イルティミナ」


 前列、後列をサポートできる中間位置に、槍使いであるイルティミナさん。


 それから、


「最後は、オルファナとマールだ」


 回復魔法も使える魔法使いのオルファナさんが最後尾であり、僕がその護衛の役目だ。


(うん)


 リーダーの指示に、僕らは頷いた。


 そうして、僕ら5人は、ミューグレイ遺跡へと近づいていく。


 正面扉は、木々が絡まって開けられそうにない。


 けれど、側面の壁には大きな亀裂があって、そこから内部に侵入できそうだった。


 レオルクさんは、そちらに向かう。


「6年前に、遺跡の探索はしてある。だが、この6年の間に、新たに棲みついた魔物がいるかもしれない。油断せずに行こう」

「うん」

「はい」

「あぁ」

「えぇ」


 僕ら4人は頷き、亀裂から中に入った。


 …………。


 中は、薄暗いけれど、崩れた天井からの光で視界は保たれていた。


(礼拝堂……かな?)


 僕はそう思った。


 たくさんの長椅子が並び、正面には、大きな男性の像とたくさんの小さな像があって、それらの一部が壊れたりしていた。


 壊れた天井や壁の窓からは、植物の枝たちが侵入している。


 レオルクさんたちは、ランタンを灯した。


(あ……)


 それを見た僕は、


「レオルクさん、僕、『光鳥』の魔法が使える。魔力にも余裕があるから、使おうか?」


 と申告する。


 正確には、消費するのは、魔力じゃなくて神気だけどね。


 レオルクさんは、驚いた顔をした。


「マールは、魔法も使えるのか?」

「うん」


 僕は頷いた。


「あと『微回復』と『炎の蝶』の魔法も使えるよ」


 そう伝える。


 彼は「マジか」と呟き、オルファナさんは「マール君、凄いんだね♪」と褒めてくれた。


(えへへ)


 僕の奥さんも、ちょっと得意げな表情だ。


 レオルクさんは頷いて、


「わかった。なら、頼めるか?」

「うん」


 僕は了承して、すぐに魔法を使った。


「光の羽ばたきたちよ、僕らの視界を守って。――ライトゥム・ヴァードゥ!」


 ピィィン


 綺麗な鳴き声と共に、魔法の光でできた鳥が3羽、羽ばたく。


(よし)


 室内もかなり明るくなったぞ。


 レオルクさんは笑った。


「これだけ明るければ、探索もやり易いな。助かるよ、マール」


 パン


 軽く肩を叩かれる。


 僕も笑顔で応えた。


 レオルクさんは、すぐに表情を引き締め、


「よし、じゃあ行くぞ」


 と歩きだした。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 礼拝堂の奥には扉があり、その廊下の先に、地下への階段があった。


「ん?」


 その手前で、レオルクさんが足を止める。


 しゃがんで、床を触った。


「埃が少ない箇所があるな。……どうやら、魔物が侵入した形跡がある」


 そんなことまでわかるんだ。


(さすが真宝家)


 感心する僕らを振り返って、


「やはり、魔物がいそうだ。この先、戦闘になることは覚悟しておこう」


 そう注意する。


(うん)


 僕らは頷き、


「その時は、お任せください」


 同行している『金印の魔狩人』は、その手に煌めく『白翼の槍』を握りながら、頼もしく告げる。


「期待してるぜ」


 レオルクさんは笑った。


 それから、僕らは、地下へと続く階段を慎重に下りていった。


 …………。


 地下1階からは、完全な暗闇だ。


 ランタンと『光鳥』の輝きが周囲を照らして、その闇を払っている。


「ルートはわかっている。このまま進むぞ」


 と、レオルクさん。


 6年前に踏破した部分の地図が、頭の中に残っているみたいだ。


 イルティミナさんから聞いた話によれば、6年前に踏破できたのは地下5階までで、その先は崩落していて進めなかったそうだ。


 なので、地下5階までは真っ直ぐ行ける。


 本番は、そこからだ。


 コツ コツ


 足音を響かせ、僕らは、地下1階の廊下を歩いていく。


 と、


「ん……?」


 レオルクさんの髪から生えた獣耳が、片方だけピクリと動いた。


 足が止まる。


 僕ら全体の歩みも止まった。


(どうしたんだろう?)


 そう思う僕の耳に、


「前方に何かいる。こちらに近づいてきている」


 と緊張したレオルクさんの声が響いた。


(え?)


 イルティミナさんが落ち着いた声で、「マール、光鳥を前へ」と言った。


 あ、うん。


 僕は、すぐに『魔法の鳥』を1羽、前方の闇へと飛ばした。 


(!)


 払われた闇の中に、蠢く3つの影がある。


 人?


 いや、違う。


 人の姿をしているけれど、身長は2メード以上あり、筋骨隆々で緑色の肌をしている。


 顔も下顎と犬歯が発達していて、人とは違う。


 何より、額からは2本の角が生えていた。


鬼人オーク


 寡黙なジャックさんの声が、地下空間の通路に反響しながら響いた。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、明後日の金曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ 嘗てのクオリナと同じようにレオルクがイルティミナとマールの関係を揶揄するかのように言う辺りは、流石は幼馴染み(?)ですね(笑) [一言] 真宝家のレオルク達と違…
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