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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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387・驚きの再会

第387話になります。

よろしくお願いします。

「へぇ、ここがポトルの町かぁ」


 乗合馬車から降りた僕は、目の前に広がる町並みを眺めて、吐息をこぼした。


 季節は冬だ。


 その吐息は、白く染まって、空へと消えていく。


 ポトルの町は、それほど大きくないけれど、清潔感のあるとても綺麗な町だった。


 町の至る所に、道に沿って水路がある。


 前もって聞いていた博識少女ソルティスの情報によると、雪深い北方地方の山々からの雪解け水が地下水となって町まで流れてくるんだって。


(つまり、この水路の水も、その山の水なのかな?)


 見れば、公共の水飲み場がある。


 近づくと、そこには岩から木製の筒が生えていて、そこから絶え間なく水が流れていた。


 どれどれ?


 興味を覚えた僕は、その水に手を伸ばした。


(!)


 物凄く冷たい!


 冷たいというか、痛いぐらいで、僕は思わず手を引いてしまっていた。


 なるほど、雪解け水かぁ。


 納得した僕は、もう一度、覚悟を決めて水を手で受け止めた。うぅ……冷たい。


 それを口に運ぶ。


 ズズッ


 ん……美味しい。


 冷たいけれど、王都ムーリアで飲む水よりもすっきりしている感じだ。


 王都の水道水は、シュムリア湖の水を飲用にろ過して使われているけれど、このポトルの町の地下水は、地盤という天然のろ過機を10年以上かけて通り、ここまで来るそうなんだ。


 つまり僕が今、口にしたのは、10年前に降った雪。


(凄いなぁ)


 ただの水の話だけど、ちょっと感動する僕だった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 そんなポトルの水を堪能しながら、僕は、町中を歩いていく。


 実は、この町では待ち合わせをしているんだ。


 キルトさんに紹介された時に、


「『氷華洞窟』のある場所は、モアールの乱獲を防ぐために一般には公開されておらぬ。ゆえに、洞窟まで行くには『案内人』が必要なのじゃ」


 と言われたんだ。


 なるほど。


 貴重な『氷の宝石』を守るため、秘匿されてるんだね。


 そんな場所の情報を、キルトさんはよく知っているなぁと思ったけれど、


「まぁ、これでも『金印』じゃからの」


 と、笑って言われてしまった。


 あはは、さすがです。 


 過去にも一度、キルトさんたちはクエストで、その『氷華洞窟』まで行ったことがあるそうなんだ。


 そして、


「案内人は、こちらで手配しておく。そなたは、ポトルでその人物と合流して『氷華洞窟』まで行くが良い」

「うん、ありがと」


 至れり尽くせりの対応に、僕は心からの感謝を告げたんだ。


 そうして僕は、町を歩く。


 水路のサラサラと流れる音が、なんだか心地いい。


 寒い地方だからか、ポトルの町を歩いている人たちはみんな厚着をしていて、防寒ローブを羽織っている人も大勢いる。


 僕も防寒ローブだ。


 吹く風で耳が冷たいので、他の人と同様にフードも被っている。


(……あ)


 町の案内板を見つけたので、その地図で待ち合わせ場所を確認する。


 キルトさんに教えられたのは、中央公園。


 その噴水近くという話だ。


 ん~、ここがこの通りだから、このまま真っ直ぐに歩いた先が中央公園かな?


 地図を確かめ、僕はまた歩きだした。


 10分もしないで、中央公園を見つけた。


 真ん中に噴水が設置された、それほど大きくはないけれど、綺麗な水路と石畳の公園だった。


(えっと……)


 僕は、視線を巡らせる。


 公園内には、何人か人が歩いているけれど、噴水近くにあるベンチに座っているのは1人だけだった。


 あの人かな?


 フードを頭まで被っていて、顔は見えない。


 僕は、そちらに近づいた。


 コツコツ


 石畳に足音が響く。


 こちらの気配に気づいたのか、案内人さんだと思われる人が顔をあげた。


 僕は、自分のフードを外しながら、


「あの、すみません。もしかして、キルトさん……キルト・アマンデスから紹介された『案内人』の方ですか?」


 と声をかけた。


 吹く風に、僕の茶色い髪が揺れる。


 フードに半ば隠されたその人は、僕の顔を見て、驚きの気配を発した。


 もしかしたら、若くて驚かれたのかな?


 僕はもう15歳で成人しているんだけど、悲しいかな、童顔のせいか、身長のせいか、いまだ未成年の子供に間違われることも多いんだ。


 だから、今回もそうなのかなと思った。


 でも、違った。


 その人は、呆けたように僕を見つめて、


「マール?」


 と呟いたんだ。


(え……?)


 今度は、僕が青い瞳を丸くして驚く。


 まだ名乗ってないのに、僕の名前を……?


(いや、それよりも、今の声……え? でも……いや、だけど……え?)


 驚きというより、混乱だ。


 だって、今の声って、僕がよく知っている、誰よりもよく知っている声だったんだ。


 呆然とする僕。


 そんな僕の前で、その案内人さんは、自分の被っているフードをゆっくりと外した。


 パサリ


 その下から現れたのは、深緑色の艶やかな髪。


 白磁の美しい肌と、整った美貌。


 そして、僕を見つめる、大きく見開かれた真紅の瞳。


 僕は呟く。


「イルティミナ……さん?」


 そう、なんとそこにいたのは、僕がプロポーズしようと思っていた張本人、イルティミナ・ウォンその人だったんだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。



書籍マール2巻が発売する3月19日まで、ついに1週間となりました!


豆腐メンタルな作者ですので、まだ7日もあるのに、すでに落ち着かない心境になっております……(ドキドキ)。


そんな2巻では、マールとイルティミナの関係も、より深くなっていきますよ♪

挿絵(By みてみん)

まっちょこ様の美麗なイラスト、巻末書き下ろしSSなども、ぜひご覧になって欲しいです!


アマゾン様を始め、各店舗様で、すでに予約が始まっていますので、もしよかったら、どうかご購入の検討をして頂ければ幸いです。

皆さん、どうか、よろしくお願いします!



※次回更新は、3日後の月曜日0時以降の予定です。どうぞ、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ キルトとソルティスに一杯食わされた形のマールですが、待ち人の持つ驚異の胸部装甲で判断出来なかったのか。 未熟者め(笑) [一言] 地味にこの世界、水道が整備され…
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