386・指輪の素材
第386話になります。
よろしくお願いします。
僕の『プロポーズする』宣言に、キルトさんとソルティスは驚いた顔をした。
でも、僕も覚悟を決めていた。
イルティミナさんと正式にお付き合いをしてから、もうすぐ1年。
出会ってからは、3年ほどになろうとしている。
(だから、いいよね?)
これから先、イルティミナさんのいない人生なんて考えられないし、1人の男として、けじめをつけようと思うのだ。
こ、断られることはない……と思う。
ちょっと不安もあるけど、でも、イルティミナさんなら受けてもらえると信じている。
だから、思い切ってプロポーズするのだ。
「そうか」
キルトさんは目を丸くしながら頷いた。
ソルティスは僕を見つめながら、「ふぅん」と呟く。
それから2人は、
「ま、良いのではないかの」
「そうね。それは、マールとイルナ姉の問題だし、好きにすればいいんじゃない?」
そう言ってくれた。
「うん」
僕は、2人に認めてもらえて、ちょっと安心して笑ってしまった。
でも、すぐに表情を戻す。
「それで相談なんだけど、僕、婚約指輪を用意したいんだ。でも、市販品じゃなくて、特別なものを用意したいんだ」
「特別なもの?」
「何よ、それ?」
キョトンとする2人に、僕は説明する。
婚約指輪は、多分、一生に一度のものだ。
大切なイルティミナさんに贈るそれは、できるなら、世界に1つだけのものにしてみたい。
そして、僕は冒険者だ。
それならば、宝石などの指輪の素材を、自分で探索して手に入れてみたいと思ったんだ。
「だから、そういう素材の手に入りそうなダンジョンとか、地域とか、そういう情報を2人は知らないかな……と思って」
僕は、そう言った。
キルトさんとソルティスは、僕を見つめて、ポカンとしていた。
それから、2人で顔を見合わせる。
「……ふむ、そう来たか」
「驚いたわね」
「まぁ、似た者同士ということであろう」
「どうする?」
「そうじゃのぉ……」
ボソボソ
そこからは、こちらに聞き取れない小声で話している。
(えっと……)
僕はちょっと困惑だ。
やがて1分ほどして、キルトさんとソルティスは、こちらを向いた。
キルトさんが、豊かな銀髪を揺らして頷く。
「わかった。ちょうど良い場所があるゆえ、紹介してやろうぞ」
「感謝してよね」
ソルティスも、胸を張ってそう笑った。
本当っ!?
「ありがとう、キルトさん、ソルティス!」
僕は、頼りになる2人の言葉に、大喜びで感謝を伝えたんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
3日後、僕は1人で王都ムーリアを発つ乗合馬車に乗っていた。
キルトさんとソルティスに紹介されたのは、王都ムーリアから3日ほど北上したポトルという町――その近くにあるという『氷華洞窟』という場所だ。
そこは氷の洞窟。
そして、
「そこには大気中の魔力を蓄え、冬の時期だけに咲く『モアール』という不思議な花があっての。その花の中心が、美しい『氷の宝石』となっておるのじゃ」
と教えてくれた。
そのモアールの氷の宝石は、ずっと溶けることがない。
だからこそ、『永遠の愛』を誓う結婚指輪の素材として、高額で取引もされるんだって。
(それはいいや)
僕も、その『氷の宝石』を見つけよう。
でも、
「その氷の洞窟には、魔物が棲みついておっての。迂闊には近づけぬ」
とのこと。
特に今年は『魔界』の魔素が流入したおかげで、魔物たちも活性化していたから、誰も『氷華洞窟』には入りたがらないそうなんだ。
つまり、それぐらい危険な洞窟。
(…………)
だけど、言い換えれば、それだけの価値がある。
……うん。
僕は頷いた。
「僕、行ってみるよ」
そう宣言する。
キルトさん、ソルティスは、僕の答えに『やっぱり』という顔をした。
小さな肩を竦めて、
「そう言うと思ったわ」
とソルティス。
キルトさんも苦笑しながら、僕を見る。
「まぁ、今のそなたの実力ならば、1人でも充分に行って帰ってこれるじゃろう」
と保証してくれた。
そうして僕は、モアールの『氷の宝石』を手に入れるため、その翌日、王都ムーリアを発った。
ちなみにイルティミナさんには、僕の修行のためにキルトさんが簡単なクエストを与えたという風に、話を合わせおいてくれるそうだ。
ありがと、キルトさん、ソルティス。
それから3日後、僕は『氷華洞窟』の近くにあるポトルの町に到着したんだ。




