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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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348・王立魔法院

第348話になります。

よろしくお願いします。

 僕らがシュムリア王国へと帰ってから、1ヶ月が過ぎた。


 そんなある日、僕、イルティミナさん、キルトさん、ソルティスの4人は、『冒険者ギルド・月光の風』に呼び出しを受けたんだ。


「ふむ、来たの」


 ギルド5階のギルド長室前で、キルトさんと合流する。


 僕は聞いた。


「これ、何の呼び出し?」


 キルトさんは、銀髪を揺らして首を左右に動かす。


「わからぬ。まぁ、ムンパに聞けばわかるであろ」


 彼女は、そう肩を竦めた。


(そう……)


 そうして僕らは、ギルド長室の中へ。


 室内は、植物が植えられた庭園みたいな空間だ。


 水の流れる小川もあって、中央に机やソファーのある人工的な白く円形の島がある。


「いらっしゃい、みんな」


 そこに立つ真っ白な獣人さんが、僕らを見つけて柔らかく微笑んだ。


 ムンパ・ヴィーナさんだ。


「こんにちは」


 僕は、自分たちのギルド長に笑いかける。


「来たぞ、ムンパ」

「失礼します」

「……ども」


 他の3人も挨拶して、全員でそちらへと近づいていく。


 促されてソファーへと腰を下ろし、秘書さんが飲み物のグラスを僕らの前のテーブルに置いて、去っていく。


 それを見届けてから、


「今日はどうした?」


 と、キルトさんが訊ねた。


 彼女の幼馴染でもある真っ白な獣人さんは、ゆっくりと息を吐く。


 それから僕らを見て、


「実は、王国から報告が来ました」


 と告げたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



(報告?)


 僕らは、ムンパさんを見つめる。


 彼女は、その報告書らしい書簡を目前のテーブルへと置いて、


「レクリア王女からの報告です。シュムリア各地にあった古代の遺跡が、あちこちで荒らされているそうなの」


 と言った。


(……遺跡が荒らされている?)


 どういうこと?


 僕は困惑してしまう。


 そんな僕を、ムンパさんは真っ赤な瞳で見つめて、


「調査の結果、どうやらそれは『闇の子』たちの仕業らしいわ」


(!?)


 その名に、僕は目を見開いた。


 他の3人も驚いている。


 キルトさんが、


「それは確かか?」


 と確認した。


 ムンパさんは大きく頷く。


「レイドル隊長を始め、あの『シュムリア竜騎隊』が各地に出向いて確認した確定情報よ」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 あの竜騎隊の下した判断なら、間違いない気がする。


 僕は考える。


 それから、疑問を口にした。


「アイツが遺跡を荒らしたって、どういうこと?」


 って。


 ムンパさんは、真っ白なウェーブヘアを揺らして、僕を見る。


「詳しくは、わからないの。ただ、遺跡にある何らかの遺物を回収していっているようだって、報告書には書いてあったわ」


 遺物……?


 キルトさんが問う。


「それが何かはわからんのか?」

「えぇ」


 ムンパさんは頷いて、


「ただ遺跡の年代から、間違いなく、古代タナトス魔法王朝時代の物だろうって」

「…………」


『古代タナトス魔法王朝』の名前を聞いて、僕は、なんだか嫌な予感がした。


 イルティミナさんが呟く。


「あちらには、復活した『タナトス王』がいましたね。それに関連してなのでしょうか?」

「かもしれないわ」


 ムンパさんは認めた。


「レクリア王女も、そう推測しているみたい」


(……そっか)


 あの聡い王女様もそう考えているなら、きっとそれは正しい推測の気がする。


 でも、


(問題は、アイツらが、それで何をするかだ)


 その答えが見えてこない。


 みんなが沈黙する。


 そんな中、ムンパさんは、ゆっくりと僕ら4人を見回した。


 そして、


「現状は『シュムリア竜騎隊』が各地の調査を続け、同時に『闇の子』の動向も追っています。なので、みんなは、もう少し待機していて大丈夫」


 と言う。


 それから、テーブルの報告書に触れて、


「でも、いつ出動要請がかかるかもしれないわ。それに備えていて欲しいと、王女様は伝えてきたわ」


 と続けた。


 僕ら4人は、ムンパさんを見つめ返して、大きく頷いた。


(うん。神様たちの召喚を成すまでは、何が起こるかわからないから、気を抜いてはいけないんだ)


 そのことを改めて、心に刻む。


 油断のない僕らの様子に、ムンパさんは頼もしそうに微笑んだ。


 それから僕らは、お茶を飲む。


 その時に、近況の話なんかをして、


「まぁまぁ?」


 僕とイルティミナさんが正式にお付き合いを始めたことを聞き、ムンパさんは胸の前で両手を合わせて驚き、それから「2人ともよかったわね」と穏やかに笑ってくれた。


 なんだか、ちょっと照れる。


 僕とイルティミナさんは、2人で赤くなった顔を見合わせ、小さく笑い合ってしまった。


 そうして、ギルドからのお話は終わり、僕ら4人は、冒険者ギルド『月光の風』をあとにしたのだった――。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 冒険者ギルドを出た足で、僕らは『王立魔法院』へと向かった。


 そこは『神々の召喚装置』の設計、作成が行われている国立の魔法研究所だ。


「現在の進捗を確認したいからの」


 とキルトさん。


 そこには、あのコロンチュードさんもいて、日夜、研究に勤しんでいるはずだった。


(ふむふむ)


 キルトさんの言葉に嘘はないだろうけど、きっと、がんばるコロンチュードさんの激励も兼ねているのかな、と僕は思った。 


 あのハイエルフさんに関しては、キルトさん、素直じゃないからね。


 ソルティスなんかは、


「コロンチュード様、どんな研究なさっているのかしら?」


 なんて期待に瞳を輝かせている。


 やれやれ。


 僕とイルティミナさんは顔を見合わせて、笑ってしまったよ。


 そうして僕らは、王都の東区画へとやって来た。


 湖に面した道沿いに、大きな外壁と建物が見えてくる。


 あれが『王立魔法院』だ。


(ふ~ん?)


 初めて見たけれど、ずいぶん奇妙な形の建物だった。


 すると、


「王立魔法院は、真上から見ると『六芒星』の形をした建物なのですよ」


 と、イルティミナさんが教えてくれた。


(そうなんだ?)


 なんか面白い。


 ここでは『神々の召喚装置』だけでなく、様々な魔法の研究が日夜、行われている。


(でも、こんな街中で大丈夫なのかな?)


 魔法の事故は、大規模な爆発などの破壊被害が起きることもあるそうなので、立地がちょっと心配だった。


「大丈夫よ」


 僕の心配を、ソルティスが笑った。


「魔法院の建物と、その敷地の外周には、目には見えないけど魔法障壁が2重に張られているの。例え建物が吹き飛んでも、敷地の外には被害は出ないわ」


(おぉ、そうなんだ?)


 さすが国立の研究所。


 その辺のことも、ちゃんと考えられていたんだね。


 そんな会話を交わしながら、僕ら4人は、外壁に造られた門とそこにある受付の建物に近づいた。


 門前には、警備兵さんが3人、立っている。


「失礼。少しよろしいかの」


 キルトさんが声をかけ、来訪の目的を伝えた。  


 本来は、アポイントメントが必要だ。


 けれど、こちらは『金印の魔狩人』が2人も揃っていた。


 しかも最近は、王家の命で色々と動いている。


 魔法院の上層部に連絡をしてもらったら、許可はあっさりと下りてしまった。


(……さすがだね)


 これが権力って奴か。


 半ば感心、半ば恐れおののきつつ、僕らは『王立魔法院』の門の中へと入っていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



『王立魔法院』の制服らしい白いローブの案内係の男の人に先導されて、僕らは建物内の通路を歩く。


 基本的には、何もない通路だ。


 時々、隔壁みたいな扉はあるけれど、中は見えない。


 公表できない極秘の実験や研究なども行われているので、外部の人間は、目にできないようになっているそうだ。


(なるほどね)


 案内の人も、僕らが余計な場所に行かないようにつけられているんだろう。


(そういえば……)


 確か、この『王立魔法院』には、2体の『悪魔の死体』もあるはずだった。


 あの『闇の子』の本体となる悪魔。


 ヴェガ国から輸送された悪魔。


 それらの解剖、研究も、この建物のどこかで行われているはずなんだ。 


 …………。


 凄い場所だな、ここ。


 世界に知られていない、未知の物事がたくさん詰まった最先端の研究機関だ。


(ソルティスの気持ち、少しわかったかも)


 僕も、少しだけドキドキ、ワクワクしてしまったよ。


 そうして僕らは、10分ほど歩いた。


 途中で階段を下ったりしたので、多分、建物の地下に移動していると思う。


 そして、1つの扉の前へ到着した。


 警備兵が2人、立っている。


 案内係の人が話しかけて、書類などを見せ、また署名などをしている。


 警備兵が扉の魔法石に触れ、短い呪文を唱えた。


 ブゥウウン


 何か透明な膜が溶けていくのが見えた。


「魔法障壁だわ」


 コソッとソルティスが教えてくれる。 


 そして、案内係の「どうぞ」という声と共に扉が開いた。


「感謝する」


 キルトさんが礼を言って、僕ら4人は扉の中へと入っていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 僕らが入ると扉が締められ、すぐに魔法障壁も張り直されたみたいだ。


 そして目の前には、広大な空間が広がっていた。


(うわぁ……)


 天井までは50メード。


 反対側の壁までは、500メード以上ありそうな空間だった。


 壁は、全て真っ白。


 そこには、白いローブ姿の研究員たちが100人以上いて、今も何かの作業を行っている。


 また大型の魔導機器が何台も、室内に設置されていた。


 そして部屋の中央に、巨大な物体があった。


 一言で言うなら、地球儀だろうか?


 土台があって、その上に、直径30メードはありそうな球体が置かれている。


 球体の周囲には、三日月型の金属が3つ、何の支えもなく浮かんでいた。


 球体と三日月には、魔法陣みたいな紋様が刻まれている。


 そして、


 キィン キィイン


 澄んだ音色を響かせ、三日月は球体の周囲をゆっくりと回っていたんだ。


「おぉおおお……凄いわぁ」


 ソルティスが目を見開き、キラキラと輝かせながら、感嘆の声を漏らした。


 キルトさん、イルティミナさんも物珍しそうだ。


(あれが召喚装置かな?)


 僕も、巨大な物体に目を吸い寄せられながら、そう思った。


 そして、土台部分の近くには、研究者らしい人たちが10人近く集まっている。


 みんなで資料を見ながら、何かを話し合っていた。


 その中に1人、疲れたようにパイプ椅子に腰かけて、会話に参加していない女性の姿があった。


 そばには、小さな金髪の女の子。


(あ……)


 僕らのことには、先に女の子が気づいた。


 ツンツン


 椅子に座った、耳の長い女性の肩を、小さな指がつつく。


 顔をあげた女性の前で、僕らの方を指差した。


 女性がこちらを見る。


 眠そうな顔。


 でも、僕らを見つけて、少しだけその瞳が大きく開いた。


「おお……」


 そんな声を漏らしながら、椅子から立ち上がる。


 そのまま、女の子と2人でこちらにやって来た。


 相変わらずの猫背だ。


 そして、いつもよりも寝癖が酷いことになっていて、目の下にも隈ができている。


 研究が、色々と大変だったみたいだ。


 そして、やって来た彼女は、


「やぁ、いらっしゃい……マルマル、キルキル、イルイル、ソルソル。よく……来てくれた、ね」


 そう僕らに笑いかけた。


「…………」


 ペコッ


 隣の幼女も、軽く頭を下げてくる。


 僕らも笑って、


「こんにちは、コロンチュードさん、ポーちゃん。お疲れ様です」


 ハイエルフと神龍の義母娘おやこに、そう労いの声をかけたんだ。

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すでにご購入して下さった皆さんには、心より感謝を申し上げます。本当に、本当にありがとうございます~!



次回更新は、3日後の月曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ ハイエルフと神龍の義母娘揃っての登場は久し振りに感じますね。 しかしコロンチュードのあだ名呼びって、一週回って逆に呼びにくそうですよね(笑) [一言] 『古代タ…
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