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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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288/825

285・出現、蛇神人

第285話になります。

よろしくお願いします。

 僕らは今日も、『廃墟の都市』に探索に来ていた。


 ガサゴソ


「ムフフ♪ 今日は何が見つかるのかしら~♪」


 目の下に隈を作ったソルティスは、けれど、上機嫌に鼻歌を歌いながら、部屋の棚を漁っていた。


(元気だなぁ)


 僕らがいるのは、北区画にある塔の1つだった。


 3階ぐらいの高さがあって、僕らは今、その最上階に当たる階の一室を探索しているところだった。


 ガサガサ ゴソゴソ


 ソルティスの横では、金髪幼女のポーちゃんも真似をして棚を漁っている。


 羊皮紙のような資料が幾つか放り出されている。


 と、その時、


「ふむ、こちらにもおらぬな」


 別室を見ていたキルトさんが戻ってきた。


 トルーガ文明の資料を集めるのも大事だけれど、最優先なのは、あの『蛇神人』という女性を発見することだ。


 ソルティスとポーちゃん以外は、その女の人を探している。 


「そっか」

「こちらにもおりませんね」


 僕とイルティミナさんは、吐息をこぼす。


(いったい、どこにいるんだろう?)


 この『廃墟の都市』は、とても広大で王都ムーリアに近い規模がある。


 探索部隊は200人以上で探索しているけれど、もしも、その『蛇神人』だという女性が隠れていたら、見つけるのは、かなり難しいことだ。


「焦ってもしょうがないじゃない」


 僕の表情に気づいて、ソルティスが言う。


「1つずつ建物を探して、いつか見つかることを祈りましょうよ。ってか、それしかできないんだから」

「…………」


 正論だ。


 正論だけど、大量の資料を抱きかかえたウキウキ顔で言われると、素直に頷けないよ……。


 大人2人は苦笑する。


(はぁ……)


 僕はため息をこぼして、窓の外を見た。


 眼下には、ピラミッド型の建物が並んだ都市の町並みが広がっている。


 目の前は、結構広い大通りがあった。


(ん?)


 その通りを歩いている人影があった。


 3人だ。


「どうしました?」


 僕の表情に気づいたイルティミナさんが、声をかけてくる。


「あそこ、誰かいる」

「え?」


 みんながそちらを見た。


 キルトさんが「ふむ」と呟いた。


「あれは、他の冒険者じゃの」


 目を凝らせば、なるほど、確かに『拠点』で何度か見かけた冒険者さんみたいだ。


(な~んだ)


 ちょっとがっかり。


 肩を落とす僕に、キルトさんは笑い、イルティミナさんは慰めるように頭を撫でてくれる。


 通りに出てきた冒険者さんたちは、こちらに顔を向けた。


 ブンブン


 せっかくなので、手を振ってみた。


(あ……)


 気づいてくれたのか、遠くから笑って、振り返してくれた。


 なんか嬉しい。 


「そろそろ、次の建物に行くかの」

「あ、うん」


 キルトさんの言葉に、僕は頷いた。


 挨拶を返してもらえたことで、単純な僕はやる気を取り戻していた。


(よし、がんばろう)


 そう自分に気合を入れる――その時だった。


 ゴゴゴッ


「わっ?」


 地震だ。


 大地が揺れて、僕たちのいる塔も左右に動いている。


 ギッ ギッ


 石造りの建物が軋んで、天井から砂がこぼれ落ちた。


(く、崩れないよね?)


 僕らはしゃがんで、揺れに耐える。


 イルティミナさんは僕を守るように、背中側から抱きしめてくれていた。


 やがて、揺れは収まった。


(ふぅ……)


 やれやれ、一安心だ。


 この『廃墟の都市』がある岩石地帯は、ずいぶんと地震が多いみたいだ。


 今日までに何回も起きている。


「ふむ、もう大丈夫そうじゃな」

「うん」


 僕らは立ち上がった。


(冒険者さんたちは大丈夫かな?)


 そう思って、窓の外を見る。


 彼らは、通りにしゃがんでいた。


 通りに並んでいた柱が崩れて、彼らのそばに倒壊していたけれど、当たったりはしなかったようだ。


 ……よかった。


 遠い3人も立ち上がる。


 そんな彼らのいる通りの奥に、3色の髪をした女の人が歩いていた。


 …………。


「え?」


 思わず、間抜けな声が出た。


「どうしたの?」


 隣のソルティスが聞いてくる。


 僕は、無言で窓の外を指差した。


「……は?」


 その先を視線で追いかけ、ソルティスも間抜けな声を出した。 


 そこでようやく、キルトさん、イルティミナさんも気づいた。


「む」

「あれは」

「…………」


 ポーちゃんだけは無表情。


 遠く離れた通りにいる冒険者さんたち3人も、近づいてくる女性に気づいたみたいだ。


 驚いたように振り返る。


 武器に手をかけた。


 でも、まだ抜いていない。


 遠くて顔がはっきりとは見えないけれど、その女の人は、笑っているようだった。


「…………」


 冒険者さんたちの内、リーダーらしい1人が、その女の人に近づいていく。


 声をかけた。


 女の人は、笑いながら首をかしげた。


 無邪気な笑顔。


 右手が持ち上がった。


 それが、近づいた冒険者さんに向けられる。


 その手が巨大な蛇に代わって、長く伸び、冒険者さんの上半身を飲み込んだ。


 バクン


 そんな擬音が聞こえてきそうだった。


(……え?)


 残された下半身が、通りに倒れる。


 血だまりが広がった。


 その意味に気づいて、僕の全身の毛が逆立った。


「いかん!」


 キルトさんの鋭い声が飛んだ。


 残された2人の冒険者さんは、慌てたように武器を抜いた。


 長剣と杖だ。


 長剣を構えた冒険者さんが前に出る。


 杖を持った冒険者さんは、それを掲げて詠唱に入った。


 ザシュ ガシュ


 長剣が閃き、巨大な蛇を斬る。


 傷が入り、鮮血が散る。


 女は、反対の腕を持ち上げた。


 その指が、5つの蛇の頭部に代わって、ギュルリと5メードほど伸びた。


 それが長剣をかいくぐり、冒険者さんの四肢と首に噛みつく。


 ビクンッ


 牙に毒があったのか、全身が変色し、痙攣した。 


 ボバァン


 その頭上に放物線を描いて、残された冒険者さんの杖から飛び出した火球が、その3色の髪の女に直撃した。


 炎が弾け、そして消える。


 女のまとっていたボロ布は燃え、けれど、その裸体は無傷だった。


「――逃げて!」


 僕は叫んだ。


 その声が聞こえたように、冒険者さんは逃げようとした。


 バクン


 その上半身に、巨大な蛇が噛みついた。


 下半身だけが残される。


 それは、通りにコトリと倒れて、そこに血だまりを広げた。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 手の届かぬ塔の3階から、僕らは、その光景の全てを見ていた。


 心が麻痺したみたいだ。


 でも、すぐに内側から抑えきれない感情が溢れてくる。


 ギュッ


 拳を握り締めた。


 僕らの見つめる先で、女の両腕から伸びた蛇は、さっき僕らに手を振ってくれた彼らの血を舐めている。


「っっっ」


 感情が爆発する。


 僕は身を翻し、塔の階段へと走った。


「待て、マール!」

「マール!」


 キルトさん、イルティミナさんの声を無視して、一気に走り降りる。


 そのまま外に出て、通りへと向かった。


 ズザッ


 土煙を立てながら、僕の足が止まる。


 通りの先30メードほどの距離に、3色の髪を風になびかせる女性の姿が立っていた。


 ポーチから、白い光が溢れる。


『探査石円盤』が反応している。


 あとを追いかけてきた4人が、僕の横へとやって来た。


 そんな僕ら5人の先で、


 ペキッ パキュッ


 その女は、痙攣していた長剣の冒険者さんの手足を引き千切り、その口へと運んで食べていた。


「――――」


 感情に突き動かされ、僕は『妖精の剣』を抜き放った。


 みんなも、それぞれの武器に手をかける。


『…………』


 気づいて、女は食事の手を止めた。


 美しい顔だった。


 白い美貌には、返り血がついていた。


 ペロッ


 長い蛇の舌が、それを舐め取る。


 縦長の瞳孔をした橙色の瞳が、僕らをジッと見つめた。


 妖しく、美しく微笑んだ。


 いつの間にか、人へと戻っていた両手が、僕らに向かって持ち上げられる。


 ――こうして、僕ら5人と『蛇神人』との戦いは始まった。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、明後日の金曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] さてさて、マールはこの状況でも話し合いを選ぶのかな?
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ 楽しそうに家捜しする知的少女とその助手(笑) きっと廃墟では相当量の資料を押収せしめた事でしょうね(´ー`*) [気になる点] >ソルティス以外は、その女の人…
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