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A面 暗黒星雲調査計画

 イートラクス星系中央情報管理惑星アーケロス。

 安定した若い恒星イートラクスと、そのたった1つの惑星であるアーケロスの名を知らぬ者は、恒星間文明には存在しない。   

 アーケロスは銀河帝国時代に恒星間ネットワークの中枢管理惑星として改造された天体であり、同時にネットワーク上で交わされる情報を解析分析蓄積する銀河最大のデータベースとしての役割も持っていたからだ。

 数千億の恒星がひしめくこの銀河において同期通信を可能とする高次元通信網である恒星間ネットワークの大切さは声高に語るまでも無いだろう。

 さらに言えばアーケロスが保有する情報は、恒星間ネットワーク以上の価値を持っている。

 旧銀河帝国が成立すると同時に集められた、数多に渡る情報は、現存する惑星、恒星文明のデータはもちろんのこととして、既に滅亡した古代恒星文明や消滅した惑星の遺伝子データ、今では禁止されている非人道的な生体実験や、周辺宙域を壊滅状態にした広域次元振動実験の詳細レポートなど、稀少な物も数多く存在する。

 さらには眉唾ながら、公式には未だ到達していないはずの、他銀河の詳細レポートや、今の科学力では物理的には不可能なはずの、高次元への侵入調査記録までが存在すると、まことしやかに噂されているほどだ。

 多少怪しげな噂を纏いながらも、アーケロスの価値は銀河帝国が滅亡した後も変わらない。

 むしろ最盛期の銀河帝国の叡智を一欠片の欠損も無く無傷で持っているからこそ、今も途方も無い価値を持っている。

 多くの恒星が破壊され、数え切れないほどの惑星が砕け、工業レベル、科学技術レベルが銀河全域で大きく後退するほどの苛烈な争いとなった旧帝国と、星系連合の前身である反乱軍による銀河大戦時には、イートラクス周辺宙域は最重要戦略拠点であるアーケロスを手に入れようと、両軍の激戦が繰り広げられたが、星系内には両軍とも足を踏み入れることが出来無かったという。

 今では製造も保有も禁止された無人AI守護艦隊が、何故か正式な所有者であるはずの帝国軍をも敵と認識し、両軍の前に知恵の番人として立ちはだかったからだ。

 この謎のAI造反には、戦乱時自閉モードが存在した、反乱軍のハッキングミス、皇族の誰かが仕組んだ等、諸説入り乱れる議論が今も交わされているが、その結論は未だに出ていない。

 ただ1つ確かなことは、戦乱が終わり銀河に平和が訪れた今でも、惑星アーケロスにはこの銀河を揺るがすほどの大きな秘密がいくつも眠っているということだけだ……













 頭上に浮かぶ超大型飛行船『蒼天』の外部スピーカから響くモノローグと共に、己を幾重にも取り囲むリングで出来た惑星アーケロスがメインステージの3Dスクリーンに大きく映し出される。



「は~い! そんなわけでここが噂の知恵の蔵! 銀河最大のデータベースにして色々と訳あり情報も持つ火薬庫。情報管理惑星アーケロスです! ここが今回のオープニング記念特別イベントの発端となります」



 モノローグが終わると共に舞台袖から飛びだしてきたのは、怪しげな黒色のローブに身を包んだ年齢不詳性別不明な怪人。

 日差しも強い夏真っ盛りだというに全身をローブで覆うその怪人の顔には、隈取りされ般若面が被さっていて、顔をうかがい知ることは出来無い。

 それと同時にナレーションらしき楽しげな女性の声が会場に響き渡る。



「銀河最大のデータベースに大規模障害が発生し、一部とはいえ秘匿領域に属する最高機密が無差別に恒星間ネットワークに放出されてしまいました! 流出した情報を巡り、銀河のあちらこちらで色々な組織が右往左往! ある人は言いました!」



 正体不明な怪人はその恰好には似つかわしくない軽いステップでクルリと回りながら、大きく手を振る。

 すると今ままで真っ黒なローブだった物が、一瞬光を放ったかと思うとぐねぐねと不自然に動いて形を変えていく。

  次の瞬間には、外套付きの純白軍服に身を包んだ女性軍人が憤懣やるせない顔でそこには立っていた。

 早変わりというよりも変身ともいうべきその変化に会場から大きな驚きの声が上がる中、女性軍人は殺意も篭もったきつい目で会場を見渡す。 



「我が星の移民船を襲ったのはあの星系国家だった! 同士達よ! 今こそ復讐の時だ!」



 女性軍人の背後に映し出される大スクリーンには、プラントを積んだ巨大移民船に攻撃を仕掛ける小型ステルス艦が映し出される。

 凛々しい顔と共に吐き捨てるように怒鳴りあげた声。

 その顔と声に見覚えがあった美月は唖然とする。



「美月。あれ戸羽さんだよね……」



「う、うん。そうだよね」



 麻紀の指摘通り、正体不明な不審人物は、ここ最近世話になっていたVR端末カフェアンネベルグ荻上町店店長の柊戸羽その人だ。

 戸羽は今日は会場には来てはいるが、本業の方のブースでコンパニオンをやることになっていると言っていたはずが、何故そんな目立つところでイベントをやることになったのか?

 耳まで真っ赤なのは怒りを誇張するためか、それとも単に恥ずかしいからだろうか。

 原因を知る由もない美月達を尻目に寸劇は進んでいく。

 今度は戸羽が出て来た反対側から同じように黒ローブの怪人が姿を現す。

 こちらは純白の狐面をつけていて、わざわざ手に大きなマイクを持っている



「さらにある人は言いました」



 どうやらこちらがナレーターをしていたようだ

 狐面の怪人が走っている最中、またも服が大きく変化していく。

 戸羽の横に来たときには怪しげローブが一転、身体のラインもあらわな銀色のボディースーツに変わっていた。

 見せつける様にゆっくりと狐面を外して見せた狐面の素顔は、会場の男連中が思わず声を失うほどの正当派の日本美人だ。



「いっっやっほぉぉぉぉ! あそこにゲートがありやがったか! オラ早漏野郎共急ぐぞ!」



 だがその美女は美貌を一瞬で台無しにするほどの邪悪な笑顔で、口悪い台詞で喜びを表してみせた。

 背後のスクリーンにその台詞と共に映るのは、船体の半分以上はある巨大なアンテナ ぼろぼろになったスクラップ寸前の古い宇宙船。

 かなりぼろぼろになってはいるが、あの船は未発見の跳躍ゲートを探索するゲートハンター用の初期装備だと気づく者も多い。

 よくよく見てみれば戸羽が着ている軍服も、PCOでNPC姫提督が身につけている専用士官服だ。



「みなで行きましょう、新天地へと!」



 清楚な修道女が。



「あーやば。あそこに捨てた失敗品見つかるかも」



 眠たげなマッドサイエンティストが。



「こことここの古代遺跡には関連ありのようね」



 冷徹な考古学者が。



「ぜっっていぶっ殺だあのクソ野郎が!」



 がさつな女傭兵が。


 それぞれにあった背景をスクリーンに映しながら、二人による早や替えショーは次々に衣装を代えながら披露されていく。

 その服はどれもがゲーム内で使われている物だが、あれはあくまでもデータ。

 VR内なら装備欄を弄れば一瞬で着替えられるのが当たり前だが、それをリアルでやられるとさすがにゲーム慣れした廃人連中も、ついつい驚きの声をあげてしまう。

 ゲーム内でも人気の高い細かい造形の服が多い戸羽に対して、もう一人の女性の方は線や肌があらわなきわどい衣装とメリハリが利いているのがいいのか、かなりの盛り上がりを見せていた。












「サカガミさん相変わらずだ。あの容姿でもてない理由があのテンションだからな。付いてくのはきつい」



「セツナの方も人がいいというかなんというか、また騙されて付き合わされたか」



「トリックスターサカガミがこのお祭り騒ぎで大人しくしてるはずないじゃん。どうせ先輩も絡んだ仕業でしょ」     



 最前列に近い位置で見ていたKUGCの古参メンバー達が他のプレイヤー達と違い、すぐに我に返れたのは、長い付き合いの所為か、それとも予想が付いていたからだろうか。

 何かやらかすメンバー達が続々とPCOには集まっているのだから、この程度は当然の事だと。

 ころころと変わる謎技術もアリシティアが絡んでいるのだろうから当然だと、素直に驚けない辺りはひねくれゲーマーが集まったギルドらしいといえばらしいだろう。



「宮野。予想通りだ。この茶番最中に、幾人にもデータファイルが転送されてきてるみたいだ。他のリアル会場やVRの方もな」 



 特別イベントが始まった最中も情報収集に余念が無かった金山がすぐに異変に気づき、共有仮想ウィンドウに簡易リストを表示して美貴達にみせる。

 機密指定NPC軍行動表。

 跳躍ポイント極秘調査記録。

 特別調査団無人惑星報告レポート等々。

 この寸劇に合わせたとおぼしきリストタイトルは、どれも秘密だといわんばかりの仰々しい怪しげなタイトルばかりだ。



「っと。あたしのところにもきてる。賞金首の居場所リストみたい」



 調べてみれば美貴のファイルフォルダにも公式からのお知らせで、賞金首所在地リストなる物が紛れ込んでいた。

 金山はネットワーク上の仲間や知人たちと共有した情報だけで、これだけ判ったのだから、全体でどのくらいの情報が流出しているのやら。



「カナやんあれかな? ゲームのオープニングイベントに合わせて、ちょっとお得な攻略情報をイベント参加者に特別ご提供とか?」



「んなもんあのゲーム外道がやるか? どうせ罠だろ罠」



「三崎先輩絡みなら考えるだけ無駄でしょ。今は様子見って一応全員に伝えといて。この茶番が終わった後に、どうせ判るなら、それまで得体の知れないお饅頭は食べない方が良いでしょ」  



 三崎の思考を先に読もうとしても、それすら策略だったりする。深読みして、あげくに引っかかったでは笑えない。

 そんな事は肌に染みるほど判っている美貴が注意をすると、ギルドメンバー達も各々頷いたり何か思い出したのか嫌そうな顔を浮かべると、昔馴染み達が繰り広げる茶番劇を横目に見ながら情報収集を続けるなか、寸劇はクライマックスへと至る。









「そして誰か達が最後にこう言いました!」



 狐面の美女がこれで〆とばかりに大きく叫ぶと、マイクを空に高く放り投げる。

 クルクルと回るマイクのした、今まで交互に変化していた二人の服装が今度は同時に変化を始める。

 背の高い戸羽は男性物の落ち着いた紺色のタキシードに。

 美女の方はすらっとしたラインの蒼い色のイブニングドレスへと。

 少し離れた位置に立っていた二人はゆっくりと近づいて手を繋ぐと、大勢のプレイヤー達に向かって深々と頭を下げ、



「「太陽となるべき星を探してください。新たなる恒星を私達の元に運んでください」」



 二人が声を揃えた瞬間、会場にいるプレイヤー達全員の前に強制的に仮想ウィンドウが立ち上がり、クエスト情報が表示される。





 特別クエスト『暗黒星雲調査計画』



 恒星爆発という未曾有の危機に、居住惑星ごと緊急跳躍する事で絶滅の危機を回避したとある惑星国家があった。

 だが母なる母星はあっても、父たる太陽無くして、生命は生きられない。

 だがこの銀河のめぼしい恒星は、既にどこかの国の所有物となっており、新たなる恒星となるべき星を求める住人達の行く末は絶望に染まっていた。

 そんな彼らに希望の光がもたらされる。

 銀河最大のアーカイブから漏洩した情報が、ある跳躍ゲートポイントから至る未知の領域と、そこに広がる巨大暗黒星雲の存在を指し示す。

 未踏破領域に挑み、星を見つけろ。

 民を救い栄誉を掴め。

 強者と渡り合い巨万の富を築け。

 全てを屈服させ己の帝国を手に入れろ。

 この銀河の誰もが見たことの無い景色を求め、無数の冒険者と山師と会社艦隊が鎬を削る新たなるフロンティアに挑め。


 星々は新たなる大航海時代の幕開けを高らかに歌い出している。

星球大賞一次審査落ち記念に中途半端ですがあげましたw

時間は無いですが書いてますのでご安心を。


追記


この先はようやくゲーム本編に入るのですが、何時もの癖というかまた色々使わないゲーム設定を考えていますw

それをどう表現するかで悩んでおります。

①作品内でその都度、設定を表記

②設定は最小限に書いて、物語を進める

③ゲーム設定を乗せた別ページを作成。ゲームマニュアル風にする。


例えばギルドに関する設定の覚え書きの一部ですがこんな感じです。


PCOにおけるプレイヤーギルド設定


 情報共有グループネットワークがこのゲームにおけるギルドとなる。

 多種多様な情報がステータスやイベントフラグに関係するPCOにおいては、ギルドに所属し情報を取得する事が、攻略への基本行動となる。


 初期ギルドにおいては、所属プレイヤー数や情報共有深度、共有可能機密レベルに制限有り。

 ギルメンAがある事柄に関する低機密レベル情報を100%持っていた場合、他のギルドメンバープレイヤーも10%までの情報共有により取得可能。 

 ギルドレベルを上げることにより、所属プレイヤー可能数が増大。

 共有深度が低位機密で最大60%、解放される高位機密の共有も最大で30%にあがっていく。

 またギルドスキルとして、取り扱う情報種類を特定する事で共有レベルのブースト可能。 

 特化ギルドとしてさらにレベルを上げれば、通常は共有不可能な最高機密レベルも共有可能となる。


 レベル一例


 低位レベル   資源惑星位置情報 低レベル艦設計図 


 中位レベル   NPC輸送艦隊運行情報 戦術級兵器製造可能工廠


 高位レベル   非公式跳躍ゲート位置情報 大要塞内部図面


 最高機密レベル 古代遺跡侵入鍵情報 SSR兵器出現情報

 

 ただし高位及び最高機密レベル100%には、ゲーム全体での数量制限あり。

 時間経過による情報劣化か、他プレイヤーからの奪取可能(PvP用)

 特殊スキル、条件で100%超えの150%、200%も可能。

 その場合はユニーク兵器取得やら、超ステータス強化などシークレット要素あり 

   

 と、こんな感じの設定がつらつらといくつもPCに眠っていますw

 これをまともに書いていると長いかなとと思いつつ、ゲームを面白そうに見せるスパイスにいいかなとw

 ゲーム買ったらまずマニュアル読んで、ワクワクする古いタイプなんで、最近の電子マニュアルより地図やら呪文一覧表が付いてた紙の奴が大好きだったりしますw

 そんなわけでどんな感じがいいか、お暇でしたらご意見いただけますとありがたいです

 1~3はあくまで現時点の考えなんで、他に良い表現が思いつけばそっちでやろうかなと思っています。

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