求ギルメン(世界侵略に興味ある人および企業
「貴方のおっしゃるVRを限定的に用いるゲームデザインは、規制状況下でも成立”は”するでしょう。だがそれでユーザーの満足度を解消できると?」
「確かに規制に合わせて設計はしています。ですが、先ほどクロガネ様もおっしゃいましたが、既存VRMMOゲームにおいて、プレイヤーの大半は週に数日。一回当たり数時間接続をしていたライトユーザーがメインでした。ちなみにこちらが当社の接続データとなります」
腕を振った三崎伸太の背後では、黒板ほどの大きさのVRウィンドウが展開されリーディアンオンライン時代の接続時間の統計表が表示されていく。
時間別、月別、年齢別と項目に別れ、一目で見やすくまとめられたデータ群。
平日は20時過ぎから深夜2時までの間にアクセスが集中し、土、日、祝日が全体にばらけていることを示し、学生が長期休みに入る時期にもアクセスが増えている。
だが全ユーザーから割り出した1日辺りの平均利用時間は約5時間。週ごとの平均利用日数も4.5日程度で有ることを示している。
「これらの接続時間データを元に考えれば、PCOで考えているハーフダイブをメインとしてフルダイブを一部使用するというスタイルで、満足いただけるゲームを作り上げるのは不可能では無いと考えています」
「そのデータが示すのは接続時間だけでは無くて? 性能や特殊機能等も制限された状況下で充足感や爽快感まで補えると? しかも海外では規制影響を受けないVRは絶賛稼働中。見比べられて見劣りしない物が作れるとおっしゃるのかしら」
「グラフィック性能や高速思考など一部機能で、規制無しの海外VRゲーと比べて見劣りする部分が出るのは否定しません。ゲーム世界をその五感で味わえる臨場感であったり、リアルでは不可能なことが出来る特殊機能は、今までのゲームには無かったVR技術の売りです」
「それが判っていながら貴方はこんな出来損ないの案を新しいVRMMOとして売り出すのかしら? それこそユーザーを馬鹿にしているのでは」
「まぁ旧来のゲームとは一線を画す斬新な機能をいくつも併せ持つ。それがVRですね……しかし、それだけがゲームの面白さでありません。ゲームの面白さとは極論を言ってしまえば如何に楽しめるか。その一点です。名だたるへビーユーザーであったクロガネ様ならご存じでしょう」
彼女の発言に対してミサキは持ち上げつつも挑発するかのような目を浮かべ慇懃無礼な答えを返す。
綺麗な映像やら、複雑怪奇で凝ったシステムなんぞ確かに重大な要素の1つだが所詮はそれでも引き立て役だ。
ゲーマーならんな事百も承知だろ。
とその顔はありありと語っている。
「し、しかし、それでは最大機能をフルに使い常時接続が当たり前だったヘビーユーザーにとっては……」
おかしい。おかしい。なぜだ?
最初はプレイヤーの多数派を占めていたライトユーザーを擁護する発言を繰り出していたのは自分だったはずだ。
だがいつの間にやら、会話の主導権を握るこの男によって自分が少数派であるヘビーユーザーの意見を主張する側に回されてしまった。
多数派の並プレイヤーと少数派の強プレイヤー。
ゲーム内においてなら、その経験やレベル。装備の差で少数派である強ユーザーが主導権を握ることも多々あるだろう。
しかし今ミサキとクロガネが交わすのはゲーム談義で合っても、忌々しいことにリアルでのビジネスの話。
多数派と少数派。
玄人向けのコアな商品ならばともかく、VR会社が扱うのは不特定多数向けの作品が多い。
この会場にいるのは全てがVR業界関連会社やライターの類い。
彼らの目線から見てどちらを重視するべきか、なんて多くを語るまでも無い。
より多くの人に素晴らしいVR世界を知って欲しいと願うクロガネにとって、多数のユーザーの意見を代弁するのは当然の事だ。
しかしこの男は舌先三寸で会話を操る男だった。
彼女は遅ればせながら、術中に嵌まったことに気づかされる。
会場を見渡せば、ミサキの紡ぐ言葉に、無意識でも同意しているのか微かに頷いている者達も幾人も居た。
最初は彼女の意見に対して真正面から反論していたミサキは、少しずつ少しずつ意見の矛先をずらして、彼女の意見を肯定し、逆に彼女には自らの意見を反論させ、立ち位置を自然と真逆にするという姑息な手段を弄していた。
対抗策は……ある。
ミサキがやったように、自分もミサキの意見の一部を肯定しつつも、見解の差異を元に欠点を突いていけばいい。
だがそれが出来ない。
ミサキという存在を肯定することを、心が拒否するからだ。
「もちろんヘビーユーザーなお客様も、そしてライトユーザーのお客様も全てのお客様満足させますよ。我が社の理念は『お客様に楽しんで貰うゲーム』です。その為ならなんだってしますよ……俺達は」
違う。違う。
お前はそんな事を言って良い男じゃ無いはずだ。
そんな笑顔で自信ありげな勝ち気な表情を浮かべるような存在じゃ無いはずだ。
絶対な前提条件である『VR世界に仇なす者』はずなのに、その口が紡ぎ出すのはこの先を見据えた物、VR業界の復興に向けた策の数々だ。
稚拙な策もある。
技術的、金銭的に現実が難しい策もある。
楽観的すぎる策もある。
読み違えたのか?
何故だ?
どこでだ?
問答を交わしながら。自問自答をしようとし、記憶が混同する。
記憶の混同は何時ものことだ。
混乱した時系列。
他人の記憶を漁るようなあやふやな記憶を探って、ようやくこの男を敵と定めた全ての情報を抜き出す。
この男を最初に獲物と定めたのはいつだった?
仇なす者達の巣窟と見定めた網を張っていたVRカフェだ。
あれはいつだった?
雪の降った日だ。
どう対処した?
”寛大”で”優しい”自分は警告で済ませた。
何故今相対している?
この男はGMだった。自分とは関係ないゲームだったが、それでもGMだった。
自分が持ち得なかった××を…………
この感情はダメだ。
これは自分じゃ無い。
俺じゃ無い。
俺はあんな男に嫉妬していない。
妬んでいない。
嫉妬や恨みなんて負の感情なんて、俺には似合わない。
なぜなら金黒浩一は”公正”で”優秀”で”寛大””優しい”な完璧な人間だ。
その自分が派生したクロガネも同様の存在だ。
甘言によって堕落させようとする敵だ。
葬れ。
全力で葬れ。
あの男は敵だ。完全なるVR世界を欺いた敵だ。
この男を初めとして、VR世界に仇なす者を葬り去ることが、私の役目だ。
私こそがクロガネこそが救世主だ。
属性変換は終了。
これで会場内の人らには、俺やホワイトソフトウェアの面々がVRMMO業界を憂いてる事や、先行きに絶望なんぞしていないことを少しでも理解してもらえればオッケーと。
まぁこのご時世、会社が潰れて明日からプーとなりかねないんで、不安が無いといえば嘘になるが、ウチの先輩方の培ったメンタル構造は壁キャラ+バフ込みな無敵要塞クラス。
明日の生活も知れぬ程度で負けるようなら、とうに潰れてるっての。
さらに俺の場合は、会社倒産とは別口で地球売却という巫山戯た筋書きがあるんだから、もう開き直って笑うしか無い。
しかし笑えない事案もそれなりにある訳で。
今現在はこの狩……もといテイミング相手。
周囲のお客様は社長ら上司群がいくらでも刈り取ってくれるだろうが、問題は目の前で、眼光鋭い目線できっと俺を睨み付けてくる狐ッ子が、なかなかに折れてこないことだ。
立ち位置変更で揺さぶりかけたり、露骨に持ち上げてみたりと、まぁいろいろやっているが折れないなこの人。
一瞬動揺しているように見えても、すぐに立ち直ってくる。
なかなかの壁メンタルの持ち主か?
しかしそれにしちゃちょっと違和感もある。
別属性の防御持ちモンスターを相手取っているような、ダメージの低さと言えば良いんだろうか。
某神ゲーじゃ無いが、属性違うから仲間にならないとかじゃないだろうな?
問答無用で撃退するならやれそうだが、縄をかけるとなったら、あともう数手必要か。
こうやってなかなか捕獲が出来ない難敵を相手にすると、昔のアリスはチョロかったなと思わざるえない。
まぁアリスはアリスで、テイミングしてからの方が苦労したん……と、いうか今も苦労しているな。うん。
「全てのユーザーを楽しませる? 簡単に言うわね。それが出来ないからこそ今のVR業界の惨状があるのでは? 数多くの人達が知恵を出し合い、必死に護ろうとしてそれでも終わった世界の多さ……貴方にそれが何とか出来ると? 笑わせてくれますね」
立ち直ったクロガネ様が蔑んだ目つきと冷たい笑いを浮かべる。
そこにすらほのかに沸き立つ色気というか魅力がある。
所謂女王系ってやつか?
ほとほとよく出来た仮想体だと感心する。
さすがにチートアリスほどじゃ無いが、宮野先輩の仮想体ミャークラスだ。
あの男心をくすぐる絶妙な造形と動きに匹敵するだけ有って、俺の背後からも生唾を飲むような声や、気を取り直そうとする咳払いが響いた。
さすがカリスマゲーマーと呼ばれただけはある。
ふむ。この人心掌握系スキルとVRネットでの情報拡散系スキルは是非とも欲しい逸材だな。
…………んじゃ一気に口説いていきますか。
「いやー正直無理です。というかウチの会社倒産寸前ですし。実際年を越せたのが奇跡みたいな感じだったりと」
口調を一気に変換。軽く軽薄に。
会場のシリアスな雰囲気をぶち壊し、三文芝居なコメディーに。
周りのお客様も呆気にとられている中、うちの社長だけは笑いを堪えようとしているのか腹を抱えて声を押し殺していた。
一方で我が相棒ことアリスは、呆れかえった顔を浮かべつつも、俺が仕留めに掛かったのか察し親指を立てた首切りポーズをみせる。
「なっ!」
いきなりの俺の砕けた態度にさすがのクロガネ様も驚いたのか、素の表情を晒している。
「まぁ健全な状態だったとしても無理ゲーですし。なんせアリスの親父さんが残したデータ群も膨大なのはいいけど、想定しているというゲーム規模が鯖の容量だけでもリーディアンの数十倍は最低限必要らしいんで、んな業務用VR鯖を新設する余裕が有るわけ無いでしょ。ウチの会社に。ねぇ社長」
笑いを堪えすぎて咳き込み始めた社長へと、俺は水を向ける。
打ち合わせはしていないが、あの人の性格ならここで乗ってくる。
さらに俺が考えている事だって知っているのだから、それにふさわしい答えを返してくる。
「くっ! くくく! わははぁ! ……うん無理だね。無理。いやーさすがにこれだけ大規模な新作を作ろうと思ったら、僕ら”単独”じゃ潰れるね……でも面白そうだし、やってみようか。当然だけど勝ち目は考えてるんだろ三崎君?」
爆笑しつつも社長は俺が望んだ言葉をきっかりと含んだお墨付きを与えてくれる。
「おいおい白井さん本気か?」
「博打打つタイプじゃ無いからな………………乗るか?」
ホワイトソフトウェア社長白井健一郎。
うだつの上がらない風貌に反して、この人は業界において顔の広さと一目置かれている。
業界全体の風雲児と呼ばれ一手、二手先を常に読み動いてきた社長が、厳しい規制状況下でも新作VRMMO開発へのGOサインを出した意味を知る会場の一部のお客様からざわめきが上がる。
「そりゃもちろん…………さて会場にお集まりの皆様! 私がこの場をお借りして新作案を提示したのは、ちゃんと理由があります。まぁなんせ何時潰れるか判らない中堅会社の下っ端GMが新作を提案したところで、まともに聞いてもらえず箸にも棒にもかからないのは目に見えてます。だから注視が集まるこの場において強行させていただきました」
声を張り上げ、身振りを大きく、会場全体の目線を引き込んで自分のペースに。
「さらに先ほどクロガネ様よりご指摘されました、業界全体に暗雲をもたらした未曾有の危機。んな大事に若輩若造1人でどうこうできるわけも無しってのは当たり前でしょう……しかし俺は知っています。強大な相手に戦うにはどうすればいいかを」
(中村さん大磯さん。先ほどお願いした小細工の発動お願いします)
右手に注視を集めている間に左手で仮想コンソールを叩き、我が社の生きるデータベースな大磯さんに指示。
今回ご来場のお客様のデータが大磯さんの頭には織り込まれている。
どこの会社の人間で、どの部門やどのゲームに関わっていたといったパブリックな物は当然として、その人物のプライベートな情報も網羅している。
本人曰くいろいろ知っていれば、どんなドジ踏んでも、何とか対処できるからとの事だが、その情報量は圧巻の一言だ。
『ほいほい了解と。一応会社関係の人は開発した物で、雑誌ライターさんらは思い入れの篭もってた記事の物で用意しといたよ。情報がない他の人らは詰め合わせでノリのいいのを準備と。クロガネ様はもちろんアレね。あと佐伯さんが〆が物足りないからイベントを付け足したから、最後にこのコメントいって右手を上に上げろって業務指示。中村さん全確認オッケーです』
付け足したって佐伯さんアリスと会ってからの短期間に何やった。
さすが親父さんに次ぐチートキャラの開発部女傑。
送られてきたコメントは…………実にファンタジーな中二系。
親父さんやら佐伯さん、大磯さんと変態スキル持ちを引き寄せるのは、うちの社長の人徳か?
『よし展開いくぞ。カウント15秒でいく。合わせろよ』
頼りになりすぎる上司、同僚に思わず苦笑しそうになっている視界の一角に展開された他者不可視ウィンドで数値がカウントされていく。
「俺は元MMOゲーマーです。こいつはソロ無理だろやら。1パーティでこの湧き凌げって無理ゲーじゃねぇかなんぞ腐るほど経験しています。んじゃどうするか。答えは簡単仲間を集めパーティを募りクリアしていきます」
MMOの醍醐味。それは仲間と困難なクエストを協力し乗り越えていくこと。
その敵は強ければ強いほど楽しい。
会社倒産?
業界壊滅?
規制条例?
地球売却?
面白い。
まとめてぶっ潰して勝ちどきを上げてやろうじゃねぇか。
「だから俺は今回もパーティー……いえギルドメンバーを募集します」
カウントが0になった瞬間にあわせて、俺は右手の指を打ち鳴らす。
高らかに響く音響効果を伴って広がった目に見える波が周囲に広がり、その波が到達したお客様の目の前に次々と小型のウィンドウが展開されていく。
展開されたウィンドウに映るのは、お客様が思い入れを持っていたであろうVRゲーム関連PV。
自らが企画したVRゲームが表示され、懐かしげに目を細めるお客様がいる。
寝食を忘れて開発に没頭したMMOの映像を見て、中途半端に終わったことに悔しげな技術者がいる。
この新作ゲームが面白いと紹介して、大々的な反響を受けて俺の目は間違っていなかったと誇らしげな顔を浮かべたライターがいる。
そして……その世界が全てと思い、未だ褪せない愛執を抱くクロガネ様がいた。
誰もが一瞬目を奪われるPVを展開したウィンドウはPV映像が終わると、掌代の大きさの光の玉に収縮した。
「これらは規制により終わった世界。しかしまだデータは死んでいません。何よりプレイヤーの心にはまだこの世界は息づいています……・なら復活させませんか! 遙か未来に! それぞれの世界が1つの宇宙に燦然と輝く星として!」
ちと恥ずかしい台詞回しに多少照れをいれつつも、業務命令という最上位指示だと割り切って一気に言い切る。
突き出していた右腕を天に向かって振り上げた俺の動きに合わせて、お客様の目の前にあった光の玉が空へと弾き飛んでいく。
打ち上がった光球は瞬く間に小さくなって目に見えなくなったが、一瞬の間をおいて大音響が空に響き、空が真昼のように明るく染まった。
「…………そらアリスと気が合うわ。この人」
見上げた空には、数十以上の星々が月ほどの大きさで浮かんでいる。
その光景に俺は、佐伯さんが相棒と同ベクトルの趣味を持つ事を改めて実感する。
物理法則もあったもんじゃねぇなと思わされるほどに、近接したいくつもの惑星は圧巻の一言。
そしてそれぞれの星がかつて存在したVR世界。
クリーディアズ。
ファンタジーソウルライン。
剣聖神剛雷。
ファンタジー系のバトルを売りにした大規模MMOゲーム。
フォレストファーム。
モンスターパークリテシナ。
平和なのんびり系として根強い人気を誇った育成系ゲーム。
MadPrivate
バトルフォートレス
ディープブルーソルジャーズ
リアルな造形と数々の戦場で多くのプレイヤーを魅了したFPSゲーム。
そして、もちろんクロガネ様の世界も空にはある。
国内開発として最大規模を誇り、数多のプレイヤーが鎬を削り、目の前の人物のようにそれが自分にとって本当の世界だと思い込むまでにのめり込んだ。
カーシャス。
消え去った世界。しかしまだデータはそれぞれの会社のサーバに残っている。
問題は何時それが消されるか。
従来の形での再開が絶望的になった今、その膨大なデータを維持する意味合いが消失している。
何時消し去られるか判らない。多くの世界群。
しかしこれほどの世界データと、その背後に存在する多くのプレイヤー。
それをすてるなんてとんでもない。
「は……で、出来るわけ無いでしょ……世界観もゲームシステムも全く違う物を1つになんて……Highspeed Flight Gladiator Onlineに対抗する為にただの寄せ集めでゲームにしましたとでも言うつもり。第一こんな無謀な計画に参加する企業がある訳がないでしょ」
クロガネ様のご指摘も無理ない。
そらこのままじゃバランスも何もあったもんじゃ無い。
世界観やスキルなんかは元の世界の極力色を残したまま調整というより、新調した設定やシステムを作る必要性があるだろう。
それにもっとシビアな問題もある。
すなわち商品としての価値。ブランドイメージ。
PCO企画が大ごけして商品価値を著しく傷つける事にでもなれば、グッズ、アニメなど関連商品でかろうじて息を繋いでいる会社なんぞ目も当てられない事態になる。
実際に会場の雰囲気も先ほどと違い冷めた物だ。
俺の発言に対して熱が生まれたわけでも無い。
まぁ当然といえば当然。
ここまでの案では、弱者の寄せ集め所か、他人のふんどしで相撲を取るような企画でしか無いからな。
むしろこんな企画でほいほい乗ってくる経営者がいれば、その会社の株を俺は全力で空売りしてやろう。
「……まぁここまでで無謀って言われてもアレなんですが。それとクロガネ様の発言に1つ訂正箇所が。PCO計画にとって打倒HFGOなんぞ前座です」
俺は不貞不貞しい顔を浮かべながら息を少しだけ吸って言葉を一度切る。
腐れ外道なGM三崎伸太としての本性をご披露といこう。
「……俺の最終目標はVR規制条例撤廃。PCO計画はその為の国内VR業界再編のツール。PCOというゲームを用いた新形態産業構築に基づくリアル世界への影響力拡大を狙ってます。まぁぶっちゃけるとVRからリアルへの侵略計画です」
俺の大それた発言にクロガネ様を始め会場のお客様の目は点となっていた。
ふむ……改めて言葉にすると、我ながらなんて馬鹿らしい誇大妄想狂な発言。
これでさらにもう一つの裏の事情。
地球売却なんぞご披露しよう物なら黄色い救急車を呼ばれること請け合いだ。
実際、こいつ大丈夫かという目線があちらこちらから飛んできている。
しかし本気なんだなこれが……そこら辺も聞かされているのかどうかは知らないが、社長だけは実に楽しそうに笑っているのが印象的だった。
さすがウチの変態スキル持ちを率いるトップだと妙なところで感心していた。




