表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/193

神々の戦い(廃レベル)

 彼女の役目は、如何に敵に気づかれず情報収集を続けるかに特化されている。


 恒星より僅かに届く太陽光のみをエネルギーとし、防御装甲も持たない身でただ寡黙に周囲に浮かぶ小衛星に紛れ込む偽装を纏った彼女は、敵旗艦から離れた小さな船をその電子の眼で捕らえると、主機稼働率を上げてその機体を探査し始めた。









「高性能ステルス偵察機が一機離艦……大型対艦ミサイル装備と予測ね」



 送られてきたのは一瞬だけ姿を見せた後方に8つの足を持つ細身なステルス機の映像。


 細身の機体を確認した瞬間、偵察衛星は機体が所有するエネルギー量を計測し、それがカタログスペックを大幅に上回る事を確認している。


 反物質測定値も一瞬だけだが反応しているのでフェイクでは無く、反物質フル充填済みの大型対艦ミサイルを積んでいると見て間違いないだろう。


 偵察機は母艦を発艦後すぐに迷彩機能を発揮して光学、電子両面で姿を消し、こちら側の簡易偵察衛星からは探知不能となっている。


 しかし隠密調査を主とするステルス機に不釣り合いな、大型対艦ミサイルを搭載している以上、その高性能ステルス機能を完全に発揮することは出来無いはず。


 小衛星帯外周部にちりばめた簡易探査衛星がアクティブ状態なら、遠距離は無理でも、中距離ではある程度の確率、近距離なら確実に発見、さらには撃沈もできるだろう。


 アリシティア・ディケライアはその意味を考える。


 発見されないことを至上命題とする偵察機に、なぜ発見されやすい大型ミサイルなどを搭載したか。


 それ以前に、なぜこれ見よがしに発艦後にステルス機能を稼働させたか。


 あれではこちらの姿を見てくれ、発見してくれと言わんばかりだ。


 パートナーである三崎伸太のことはよく判る。


 アリシティアに発見させる事が、三崎の作戦の一つだと確信する。


あの性格の曲がった意地の悪い男が、こんな所で設定や操作をミスるわけもない。


 昔からそうだが、三崎伸太という人間は、相手の思考を考慮し作戦を立て、さらにそれを逆手にとって嵌めることを好む。


 対人戦はもちろんとして、MOBモンスターキャラ相手の時も制作者のデザイン思考やその意図を想定して動くのだから呆れてしまう。


その三崎が手を見せたあれはメッセージであり、アリシティアにとらせたい、逆に言えばとらなければならない行動があるはず。



「……さすがシンタ。見抜いてきたか」



 VR筐体のブース内に所狭しと展開されたコンソールを縦横無尽に叩き続けながら、思考を終えたアリシティアは三崎の意図に気づき不満げな顔でむっと唸る。


 相変わらず性格が悪い。アリシティアの投げたボールをすぐさま投げ返してきたはいいが、非情に受け取りずらいギリギリの位置へと剛速球を投げ返すような物だ。


 アリシティアの浮かべた表情や声は不機嫌そのものだが、彼女をよく知る者。


 それこそパートナーである三崎伸太であれば、アリシティアが言葉の割には上機嫌であることを一目で見抜くだろう。



 その頭上でリアルボディの感覚器官を模した垂れた兎の耳のような髪が楽しげに揺れているからだ。



『ったく。あの小僧は。相変わらず敵に回すとこしゃくな奴だね。こっちの罠を即時に見抜いてきやがる』



 一方ホワイトソフトウェア開発部主任佐伯は、体育会系女傑やら、社内ラスボスなどと影で呼ばれるだけあって、宿敵の復活に対して実に不敵な弾んだ声で感想を述べる。


 なんせ佐伯からすれば、プレイヤー時代の三崎伸太は、コンビを組んでいたアリシティアやギルドメンバー達を率いて、佐伯が苦心して生み出した新ボスやらMOBモンスターの癖やらスキルをいち早く見抜いて攻略してきたトッププレイヤーのお客様にして宿敵中の宿敵。


 先ほどは予想外の展開で虚を突くことは出来たが、すでに三崎は平常を取り戻してアリス側の仕掛けを見据えた行動に出ていると、佐伯も気づいたようだ。



「そりゃそうでしょサエさん。相手シンタだもん。でもそれはこっちも織り込み済み。今はともかく外周部で時間稼ぎ。本命は前線基地周辺での直接戦闘だよ。その為の秘密兵器設置は順調。順調と」



 基地周辺で切り札の設置作業をしていた作業艦への指示コンソールをオートへと切り替え。


 外周部の眠っていた探査衛星と対小型機防御衛星への命令チャンネルを呼び出し、発見即撃破命令へと変更しつつ、マニュアルへと切り替える準備を進める。


 あれは無人AI操作では無く、三崎自身がモードを切り替えて操っているはずだと勘がつげる。


 となれば未だ未完成な部分も多い稚拙な迎撃AIでは些か荷が重い。他の作業効率は落ちるがアリシティア自身がでるしかない。


 見つけられる物なら見つけて見ろ。


 落とせる物なら落として見ろ。


 出来なかったら防衛基地に特大プレゼントを届けると、にやりと笑う小憎らしい笑顔が、脳裏には浮かぶ。


 ステルス偵察機の本分である偵察と、破壊力のある反物質ミサイルを囮にアリシティア側の防衛網を刺激する威力偵察を同時に行う。


 たった一機の偵察機で、対艦隊用防衛網を引いた敵陣地をかき回すなど実にらしい。その無茶が三崎らしい。


 アリシティアの頭上でウサ髪が音をたてながら大きく動く。


   

「強行突破上等! 叩きつぶしてあげるわよ!」



 自分が喜ぶ、楽しむツボを心得、それを躊躇無く利用するパートナーが実に小憎らしい。


 アリシティアは好戦的な笑みを浮かべて、眠りについていた衛星群を起動させた。

















「右9時、12時の方向! 銃座複数確認! 後方より熱源探知ミサイル12! 周囲の対艦衛星エネルギー量増大! すぐさま撤退を勧告します!」



 情報ウィンドウは敵情報を更新するたびに点滅を繰り返し、耳障りなアラートを流し続ける警報音が周囲に迫る脅威を声高に叫び続ける。


 戦力比は1機の俺に対して、小型機用の防衛衛星だけでも40を越えている。それらがはき出した弾幕が、小衛星を掻き分け進む俺を打ち落とそうと周囲で暴虐な花を咲かす。


 さらには対艦用衛星も絶賛充電中。こいつらが動き始めたら、こっちが生き残れる目はさらに低くなる。


 すぐさま現宙域から待避しろと、搭載AIが数十回目の提案をするが、だがそんな物は無視無視。


 敵の数がこちらの40倍? 

 

 周囲一面弾幕の雨あられ? 


 もっと強力な後衛が控えている? 

 

 それがどうした。こちとら、つい半年前までは何千人ものお客様相手の極悪GM。


 この程度の数で臆すほど柔な根性はしてねぇよ。


 致命的な攻撃を避けつつ、なんとか中心部へと切り込むための道を模索し続ける。


 

「おっしゃ赤妖精! その隙間飛び込むぞ! 抜けた瞬間後方にレーザー機銃一単射。誘爆させろ! 爆発に紛れてステルス再開! チャフばらまいて2秒稼いで次行くぞ次!」 



 ディスプレイに目を走らせ航路を決めた俺は、危険度に応じて色分けされた戦場の中から比較的に赤みが薄い小衛星と小衛星の隙間を睨み付けながら、右手のスロットルを僅かに傾け、フェイントをいれながら目指す進路へと機首を徐々に合わせる。


 視線による行き先指定と、勘に任せたおおざっぱな操作だが、俺が狙った場所へと向けてAIが推力や推進方向のベクトルを調整し航路を自動で修正していく。


 あの狭い幅ならこの船の貧祖な回転型レーザー機銃でも、こちらのケツに噛みついてくるミサイルを狙えるはず。


 フルオートならばAIが航路を自動選択して飛び、自動で攻撃、迎撃も行うが、安全性優先の設定であまり無茶は出来ない。


 マニュアルならば、操縦桿レバーと出力調整を自分の意のままに操り、どのような場所でも自由自在に飛び回り、ドッグファイトができるが、操縦ミス、判断ミスであっという間に撃沈される。


 そして俺が今設定しているセミオートならば、航路を決定後はAIが補正していくが、ある程度の操縦性もある仕様だ。



「承知! 忍法微塵がくれ参ります!」



 目の前に浮かぶ赤色な忍者妖精が鋭く答え印を結ぶと、炎を纏った梵字が浮かび上がって妖精の周囲を覆っていく。


 俺の指示に赤妖精はステルススキルの発動準備に入ったようだが、SFな宇宙戦でなぜ和風チョイスやら、梵字でスキル発動の待ち時間を表す仕様が中二が過ぎるだろうと突っ込んだら負けだろうか。


 こりゃ間違いなくアリスの趣味だな。


 手遅れな相棒のこだわりに苦笑を浮かべつつ、梵字を確認。後3つ炎が点ってスキル発動。


 そのまま飛び込むとステルス発動のタイミングが、隙間を完全に抜けたくらいでちょっと遅い。


 効果を万全に発揮するなら隙間を抜けたと同時がベスト。


 空いている左手でコンソールを弾き、機体の後部についた8脚フレキシブルスラスターの噴射角度を変更、横滑りさせ進路をちょい大回りに変更。


 その間僅か一秒ちょっと。だが俺らゲーマーにすりゃその差が命取り。しかも相手はアリスだ。


 一瞬で策を練り反射神経に物を言わせこっちの首を狩る一手を打つ。


 そんな廃神様なアリスが俺の進路変更を見逃すはずも無い。


 対小型機用衛星の銃座が作り上げた無数の十字砲火が俺の行く手に即死回廊を作り出す。


 にゃろう。ちっとは手抜けよ。


 心中で悪態をつきつつも俺は変わらぬ相棒の苛烈な攻撃に笑いながら、右手をスロットル、左手をコンソールから離し両手を自由にする。



「フル加速! 進路そのまま! オプション防御兵装緊急展開! 全指同調開始!」


 

 口頭で指示を出しながら、空になった両手の十指と機体表面に貼り付けていた浮遊シールドビット群から10機を同調させる。   



「この程度の弾幕。現役時代にお前を護ってどれだけくぐり抜けたと思ってやがる。シールドバーサーカー甘く見んな!」  











 侵入機から離れた10機のシールドビットが縦横無尽に動き、弾幕で作られた回廊に一直線の道を瞬きほどの時間だけ作り上げる。


 2組4対の大出力スラスターの青炎を後方にたなびかせ、侵入機が最大加速でその道へと飛び込んだ。


 機体が通り過ぎた瞬間に、耐久値を失ったシールドビットは砕け散り無数の破片と化す。


 わずか10機のシールドビットのみで死地を躱してみせるその様は、鮮やかの一言しか無い。


 十字砲火回廊にあえて最高速度で突っ込む事でシールド消費を最小限にする。


 無謀なプレイを難なくこなして、小衛星と小衛星の隙間へと侵入者が潜り込む。


 その後を追尾していたミサイルが単射されたレーザー機銃によって爆発をおこす。


 先頭を走っていたミサイルの爆発に追従していた他のミサイルも誘爆を起こし、監視衛星から送られてきた映像がノイズ塗れになりゆがむ。


 通常以上に荒れた探知画像は爆発と同時に、スキルを発動させチャフをばらまいた証拠だ。


 妨害環境下では索敵値は下がるが、



「さすがシンタ。くぐり抜けるよね。でも甘い甘い! こっちは盾消費が狙いだよ! 即再索敵開始! 索敵スキル『ホークアイ』も発動!」



 爆発で敵機をロストしたとAIが報告を上げる前に、アリシティアは再索敵指示を放つ。


 準備を終えて待機状態だった索敵強化スキルが発動して、対チャフ処理を施された衛星群が一瞬だけ見失った侵入機を即座に再発見する。


 高速移動状態で操作の難しいシールド展開を失敗すれば、一瞬で機体が四散する死地でありながら、正確無比にシールドを操ってみせたパートナーに、アリシティアは驚く様子も見せず、次々に先読みして対応していく。


 敵に回ったミサキシンタはこの上なく厄介だが、アリシティアにとってはある意味やりやすい。


 ミサキシンタならどんなトラップでも越えてくる。


 ミサキシンタなら致命的な攻撃を躱し最小限のダメージでいなす。


 ミサキシンタならスキルを最大活用する隙を見逃さない。


 多分でも、はずでも無い。


 かつてあった世界で、共に戦い、背を任せたあの抜け目の無い廃神ならばこの程度の攻撃を物ともしない。   


 アリシティアが抱く絶対的な信頼が、三崎に対する油断や慢心を防ぎ、手を緩めることの無い追撃を繰り出す原動力となっている。


 未だ表面部で押しとどめているが、その周囲の防衛網は、元々積極的に隠す気は無いが三崎によって大部分が曝かれている。


 当面の目標である侵入機撃墜は未だ至っておらず、与えた機体ダメージはまだ2割程度。


 状況だけ見ればアリシティアが一方的に押されているように見えるかもしれないが、アリシティア的には五分五分と思っている。そしてそれは三崎もだと確信する。 


 あの機体が持つ高い攻撃力を持つ対艦反物質ミサイルは脅威だが、三崎の一番の武器ではない。三崎がもっとも得意とし、戦闘の要と頼るのは昔から盾。


 盾を上手く使うことで三崎はリーディアンではHPの数倍、場合によっては十倍以上の生存能力を発揮し、さらには防御職にあるまじき攻撃力まで発揮したシールドマスター。


 予想通りというか当然と言うべきか、あの機体もシールドビットをオプション装備していた。そのシールドビットはすでに半分以上を削っている。


 さらに三崎の目的は表面部の防衛網の調査だけでは無い。衛星帯に隠れた基地へと続く中心部への回廊を見つけるのが目標だと予測している。


 アリシティアが最初に高速戦艦で姿を見せたことで、あの規模の艦が基地から最短最高速で進める衛星群内回廊があるはずと見抜いている。


 その回廊は今は”存在しない”が”鍵”は存在する。


 まずはその地点と、そしてその回廊を開けるための鍵を押さえに来る。


 三崎が第一目標として狙っているのはそこらだろう。


 だからこそアリシティアは、表層部の防衛網を全て動員した苛烈な過大なまでの攻撃で、一機を落としに掛かっている。


 どこが重要防衛目標でただの防衛地点か判別が難しくなるほどの徹底的な攻撃こそが、アリシティアの狙いだ。 


 …………だがミサキシンタなら、これらも全てはねのけて、回廊と鍵を見つけ出す。


 それがアリシティアには判る。判ってしまう。だからこそ楽しい。


 あの三崎すら予想していない奥の手。


 最高のパートナーであり、最大のライバルであるミサキシンタとの雌雄を決するにふさわしい舞台が出来上がるまでの時間を、心を弾ませながら準備し続ける。

















『この程度の弾幕。現役時代にお前を護ってどれだけくぐり抜けたと思ってやがる。シールドバーサーカー甘く見んな!』


 

『さすがシンタ。くぐり抜けるよね。でも甘い甘い! こっちは盾消費が狙いだよ! 即再索敵開始! 索敵スキル『ホークアイ』も発動!』



 会場全体に広がったモニターで激しい戦闘を繰り広げる一機の宇宙船と、衛星殻を纏った防御兵器群をバックに、何とも楽しそうな男女の声が響き渡る。


 一見会話しているように聞こえるが、この場を仕切るユッコの説明では、お互いに相手の声は聞こえない状態との事。


 互いに言いたい事を言い合っているだけなのに、会話として成り立つ。


 あんたらどんだけ通じ合ってるんだいうのが、この戦闘をぽかんと見入る大半のKUGCの面々の心情だ。


 会社にも内緒でいつの間にやら大作ゲームを作り上げていたという初代マスターと、音信不通状態からVR開発会社社長との予想外の肩書きを引っさげ帰還した二代目マスターの戦い。


 彼らはゲームの概略やら設定を軽く聞いただけで、ゲームの難易度や、プレイスタイルなどまだまだ判らない状況だが、目の前で繰り広げられているのが、実にハイレベルなプレイの応酬だというのは誰もが感じていた。


 

「アリスさんとガチで張り合うのかよ。三崎先輩って」



 GMとしての三崎を知るが、プレイヤー時代、ひいては大学時代の三崎伸太を知らない一年が、シールドを自在に動かして致命的な攻撃を躱して駆け巡る三崎のプレイに呆然とした声を上げる。


 彼の呟きは当然と言えば当然だろう。


 アリシティア・ディケライアといえば、リーディアンでは他の追随を許さないほどの接続時間もさることながら、その化け物じみた反射神経でトップクラスのプレイヤーとして知られていた存在。


 1VS1でまともに打ち合えるプレイヤーなぞ数えるほどしかいないほどのアリシティアの攻撃を、三崎は僅かなダメージで躱し続けている。


 生身の戦いであるリーディアンと、この開発中のゲームの宇宙戦ではゲーム性や操作性は大きく違うが、それでもアリシティアとまともに張り合えるプレイヤーがいたことに驚いているようだ。



「まぁアリスに戦い方やらを教えたのシンタだからな。あいつに言わせるとアリスのやり方なら100%読めるから、あの反射速度でも何とかついてけるんだと惚気てやがったな」



 宮野忠之は後輩の独白ににやにやと笑いながら、目の前で繰り広げられる映像を右目で撮りつつ、展開した仮想コンソールを弾き次々に文章を作り上げていく。



「惚気って兄貴。それなんか違うでしょ……それより何やってるのよ?」



 あの二人に関しては、信頼関係がある意味行き着いてしまって男女間の色気やら艶色という物が皆無な事を知る宮野美貴は呆れつつ、手を動かす怪しげな兄の行動を問う。


 この兄が積極的に動くときは、大抵が碌な事が無いのを知る美貴は警戒心をあらわにするが、



「ほれこのままうちの身内だけじゃ会場が寂しいだろ。だからいくつかのVRMMO紹介サイトにプレイ動画と解説アップ中。アクセス上々だな……ついでに胴元として暗躍中。前哨戦の商品はここのパス」



 美貴の質問に忠之はいくつか仮想ウィンドウを展開してアップした動画を流しつつ、前哨戦の勝敗予想の投票ページを表示する。


 衛星群が偵察機を撃沈するか、それとも偵察機が無事に逃げおおせるか。


 勝者を予想した者にはこの会場への入場パスが発送されるとでかでかと書かれている。



「ちょっと兄貴! なんで勝手にそんなこ……ユッコさん。ひょっとして許可してます?」



 いきなり不特定多数に対してパスを発行しようとする忠之の行動を咎めようとした美貴だが、すぐ横のユッコがニコニコとしたままなのに気づき声を抑える。



「えぇ。マスターさんとアリスちゃんの目的が、なるべく”多く”の人を巻き込みたいとの事ですから。副マスターとして気を利かせました。あの二人の対戦と聞けば古いプレイヤーさんなら興味が惹かれますし、新しいプレイヤーさんでもほら今みたいについ見入るでしょ」



「げっ!? 三崎先輩あのタイミングで避けるの!」



「待って。アリスさん読んでる!? 周りこんでる! 上手い! 追い込んだ!」



「まだだ! 先輩は盾使いだぞ! ほら防いだ!」



 にこりと笑ったユッコは、最初の驚きから抜けて、徐々に感想を交えながら観戦に集中し始めたギルドの面々を指し示した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 34話(左手のやることを右手が知らないときが良いときもある。)では 〉公式VRカフェのVR筐体には一台一台別に各スキルに特化した専属AIがいて、プレイヤーの手助けをしてくれる とありま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ