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第96話 長老の好物

 今日も今日とて。


『小料理屋ヒロ』は元気に営業中です!



「うんまいのぉ!」


「そうじゃの、焔の」



 焔の長老様と長老おじいちゃんがご来店だ。


 今は、長老おじいちゃんが大好物となったボア肉のメンチカツを……おふたりで食べてくれている。



「気に入ってくださって、何よりです」


「うむうむ! 卵をこのように扱うのも面白いの!! 揚げ物……言うたかえ?」


「はい。私の故郷では……一般的な調理法です」



 見習いの腕前でも、美味しく召し上がってくださるのはすごく嬉しい。


 お客さんも他に、アヤカシさんとかがちょいちょい来てくれている。クレハやスインドさんも大忙しだ。



「こ……こここ、こんにちは……」



 次の料理に取り掛かろうとしたところで、雪の長老のユキトさんが来てくださったのだ。



「あ、いらっしゃいませ!」


「せ、席……どこでも?」


「雪の! こっちに来りゃれ? 共に食そうぞ」


「は……はい」



 と言うことで、ユキトさんは焔の長老様の隣に腰掛けたので……おしぼりとお通しの野菜きんぴらを出しました。



「今日はいかがなさいましょう?」



 一応メニューは渡したが……ちょくちょく来てくださる彼女には、お決まりメニューがあるのだ。



「え……っと……、ぎ、ギアラ……のスープを」


「はい。お酒はボトルキープので?」


「お……お願い、します」


「かしこまりました」



 準備はほぼ出来ているので……スープを温め直したら、カウンターの上に置いたんだけど。



「な、なんじゃ。その料理は!」



 焔の長老様もだけど、長老おじいちゃんも初めて見るからびっくりしていた。



「ギアラを捌いて……味付けしたスープで煮込んだものです」


「……ほう? 美味いのかえ?」


「ユキトさんはお気に入りですね?」


「お……おい、しい……ので」


「お肌にもいいんですよ」


「なんと!」



 焔の長老様は興味を持ったのか、目をすごく輝かせてくれたわ。



「ユキトさん、甲羅を半分にしても?」


「は、はい。だ……大丈夫です」


「少しお借りしますね?」



 割って、器に盛り付け……長老おじいちゃんも少し食べたがっていたので、残っていた脚とスープを出した。


 食べ方を伝えると……初めてのおふたりはしゃぶるように口にすれば。



「「美味い!?」」



 と声を上げてくださいました。



「ただの汁ではない! 肉の美味さがたっぷり詰まっておるわ!」


「そうじゃな、ネコマタの。妾もこれは好きじゃな?」


「あ……頭、の中も、美味しい……です」


「「なんじゃと!?」」


「今日はユキトさんの分だけですね?」


「ヒロ! ギアラを捕まえてこればいいのか!?」


「……調理に時間は少しかかりますけど」


「「おお!!」」



 これは近いうちに取って来そうな予感がするな、と思っていると。


 いきなり、玄関が大きな音を立てて開いたのだった。


次回はまた明日〜

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