第95話 職人意識
お待たせ致しましたー
俺がやることはぁ。
ヒロの店に、役立つ道具を作るってことだ。
これが……作れば作るほど、楽しいんだよねぇ?
「……ザル。絞り容器。んん? ピーラー?」
チルットに戻ってから、毎日……ヒロが教えてくれた異世界の道具を、俺は再現するのにメモと材料と睨めっこしている。
即席で作った、おろしがねもだけど……異世界って、ほんと興味深い!!
知らない道具が山ほどあるってんだから!
それの再現に挑戦出来る俺は幸せ者だねぇ?
ただ、道具以上に魔導具のようなものもあるらしいけど……ヒロは今店に用意してあるものだけで、充分と言っていた。
そっちの魔導具も聞いてはみたけど……冷蔵庫以上に構造が複雑らしい。
ま、俺は一応冷蔵庫作れるけど。
「リーガとかも美味い調理法あったしぃ。釜の使い方の新しい発見だよねぇ?」
粉にするんじゃなくて……殻を剥いたものを洗って煮る、じゃなくて、『炊く』って調理法は新鮮に見えた。
ふんわりしてて……粒の食感には最初驚いたけど。パンとも違うし……濃いめの味付けしたもんと合わせて最高だった。
俺もぉ、もう少しヒロに教わったら……自分で調理してみようかなあ?
「……それにしても。スイがなあ?」
まだアヤカシの里から戻って来ていない……俺の古馴染み。
図体デカくて、無愛想だけど……顔が良いから、女には群がれる野郎。
あいつが……まさか、異世界から来たヒロに惚れるとは。自覚させた時の顔はめちゃくちゃ面白かった。
凸凹な身長差だけど……俺は似合いだと思うなあ?
ヒロは、外見だけでヒトの中身を決めつけないいい子だし。
俺が帰って行った後は……どうかはわかんないけど、ヒロもスイを好きだろうか?
そうだったら、俺全力で応援するけどぉ。
「恋……ねぇ?」
ことなかれでいたスイが……本気で惚れた相手。
羨ましいことだ。俺も恋愛にはしばらくご無沙汰ではあったけど……実は、ひとり……気になっていた。
畏れ多くて……恋と呼んで良いかわかんないけど。
「……可愛かったなあ。雪の長老様」
めちゃくちゃ年上……けど、偉ぶらない自信なさげな女と言うのも可愛い。
顔は長い髪のせいであんまり良く見えなかったけど……綺麗な青い目が気になったきっかけだ。
素顔は……どんなだろうと、俺は気になって気になって仕方がなかったのだ。
「…………誰も付き合っている奴いないって言ってたけど」
俺なんか人間だし……あっちにとっちゃガキくらいの年齢だから、相手にしてもらえなさそう。
とりあえず……頭を切り替えて、道具作りに没頭することにした!!




