第91話 箸休めの漬物
お待たせ致しましたー
新たな発見をした後で。
いい匂いに釣られてしまった人がひとり。
「うんめぇ!!」
ゲコガエルの唐揚げを、いきなり骨ごとバリボリと食べていかれたのだ。雷の長老様が。
今日はお酒持参と言うことで……きつい焼酎ぽい臭いが店内に充満していく。
「お気に召しましたか?」
けど、今は仕事中なので顰めっ面は出来ないわ。
「おう! カエルが食えるのは知ってたが……生より断然こっちがいいな!! 味付けもだが、火を通すと骨まで食えるのが良い!! 美味いぜ!!」
酒瓶のお酒ともよく合うようで、上機嫌で飲み食いされるわ。ここはひとつ……と、私はあるものを彼の前に差し出した。
「お酒も良いと思いますが……舌を休めるのにひとつ」
出したのは……見た目、きゅうりをスライスしたものだ。こっちでは、キューカという呼び名らしい。
長老様は、私が出したものを見て首を傾げたのだった。
「あ?」
「ただ切っただけの野菜ではありません。是非ひと口」
「ほーん?」
手づかみで口に放り込むと、パリポリと小気味良い音が響く。
そして……雷の長老様の表情も少しずつ緩んでいくのだ。
「いかがでしょう?」
「美味いな! 味は……塩か? いや、なんかそれだけじゃねぇ。ピリッと辛いのもあるし……けど、癖になんな!」
「下味などを色々加えた、『漬物』というものです」
「それも異界の知識か?」
「はい。師匠達から学んだひとつです」
お新香を含める、香の物は……濃い味付けのものを食べたあとの、舌休めには最適なものだ。きゅうりのは、唐辛子ぽいの、昆布出汁などを使ってピリ辛きゅうりぽいのを作ったのである。
長老様は気に入られたのか、ひょいぱくと口に入れていくのだった。
「面白れぇ。野菜はそのまま食うやつが多いが……こう言うのは良いな! 酒にも合う!!」
「……そう言えば、炎の方は今日は?」
「寝てる。深酒し過ぎだ」
「……また飲み過ぎですか?」
「おう。ここに来れねぇの残念がってたぜ」
どうやら、しょっちゅう喧嘩夫婦をされているわけではないらしい。
ちょっとだけ、ほっと出来たけど。
「ヒーロー!! めちゃおもろい食材手に入れたで!!」
いきなり、玄関が開き……クレハが、スインドさんも担ぎながら……なんかでかいものを引きずっていた!?
どう見ても……熊ぽいんだけどぉ!?
「……クレハ、下ろしてくれ」
スインドさんは……顔面蒼白で。
思わず、大丈夫かと私は駆け寄ったわ!!
「お? 一角グリズリーじゃねぇか? ネコマタの孫、やるじゃん」
「スインドさん!!」
長老様は口笛吹いて感心しているけど……クレハが下ろしたスインドさんの様子を見ていると、これは吐きそうだったので、慌てて厨房に桶を取りに行ったわ!!




