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第84話 ジビエ肉のカツ達①

 長老様方がメインのプレオープンは無事に終わりを迎え。


 本格的な『小料理屋ヒロ』のオープンに備え、私はさらにジビエ料理のレパートリーを増やしてみることにしたわ。



「ヒロ〜何しとるん?」



 クレハは、お店に来るなり……私の作業を覗き見る。と言うか、朝ご飯兼まかないを待っているのだ。


 私の居住先が、このお店の二階に出来上がったので……クレハのお家からはお引越しはした。


 クレハは一応自分の家に帰ることもあるが……独り寝は寂しいからと、こっちで寝泊まりすることはある。そして……半分従業員さん兼取引先のスインドさんは、里唯一の宿屋で寝泊まりしている。


 男性だから……ハプニングが起きてはいけないからと、きちんと弁えると言うことで。たしかに、うっかりで色々起きてはいけないわ。本当に色々と。


 とりあえず……今日は朝だけど、ちょっとガッツリものを作ろうと。とあるお肉を下ごしらえしていたのだ。



「今日は、試作だけど……『カツ』を作ろうと思うの」


「カツ!? メンチカツなん!?」


「違うわ。普通……肉を細かくするんじゃなくて、切っただけのに衣をつけて揚げるの」


「……美味いん?」


「お肉はいくつか試してみるわ」



 豚肉に似た……六角ボア以外にも、オーク肉を。


 まさか、オークってモンスターが二足歩行している豚そのものって思わなかったわ!?


 解体前を……市場で見せてもらった時は、軽く卒倒しかけたのが懐かしい。とは言え……美味しいから使うものは使うけど。


 他は、牛肉系だと鹿肉に似た『ホーンバント』ってお肉。


 角が大変立派な……外見はほとんど牡鹿。癖は少しあるけど、焼肉にしてみたらほとんど鹿肉の味だったわ。これは赤身肉をカツにしてみたい。


 鶏肉感覚は……コカトリス。でかい鶏以上の尾っぽがモンスター化しているのは驚いたが……焼き鳥で試食したら絶品だった。だから、チキンカツぽいのも合うかもしれない。


 材料の下ごしらえが整ったら……順に揚げていくのだ。


 油が爆ぜる音に、クレハの尻尾が揺れるのが視界の隅に見えたわ。



「にゃ〜、いい音やわー」


「クレハ? 今日からちょっとずつお店開くから……軽く掃除してくれる? カツ多めにあげるから」


「了解やわ!!」



 と言っても、自分で箒を使って掃くんじゃなく……魔法頼りだけど。それでもお店を綺麗にしてくれるんだから……文句は言えない。


 カツが順に揚がったら……半分に切って、火の通り具合を確認。レアは寄生虫が怖いので、しっかり通っていたら……醤油で味を確認。ホーンバントをひとくち食べたが、味わいはやっぱり鹿肉。


 部位の関係か、脂身の少ないヒレ肉って感じだわ。歯応えも肉の旨味もちょうどいい。ウスターソースがあればなおいいけど……畑違い過ぎ以上に、見習いの私じゃまだ作れないわ。


 いずれ……挑戦したいけど。



 コンコン



 他のも味見しようとすると……入り口からノックが聞こえてきた。クレハが近かったので、彼女が扉を開けると。


 スインドさんが……何故か、草の長老様と一緒に来てくださったのだ。


 クレハは……草の長老様を見ると、尻尾を左右に大きく揺らしていたわ。やっぱり……表面はツンデレで、内心は恋してるのかしら?

次回はまた明日〜

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