第82話 長老オールスター
ちょっとした疑問を残しつつ、プレオープンはさらに続いていく。
他の長老様もいらっしゃってくださったのだ。しかも、雷と焔のご夫婦……今日も今日とて、喧嘩はされていたが。
「絶対『カバヤキ』だ!!」
「ヒロの更なる珍味を味わうのも乙ぞ!!」
外見は凸凹だけど……喧嘩するほどなんとやら、くらい嫌ってはいないようだ。それ以前に、長老様でご夫婦だし。
「いらっしゃいませ、御二方」
とりあえず、私は私で接客をするまでだ。
私が声をかけたら、御二方ともくるっとこちらを見てくれた。
「おう、ヒロ! 店がやっと開いたんだな!! カバヤキ食わせてくれよ!!」
「妾はこの香りのモノを頼みたい!」
「かしこまりました。焔の長老様のはすぐにお出し出来ますが……お席はお好きなところにおかけください」
「あ? そこに居んの雪のか?」
雷の長老様が気付くと、ユキトさんは思いっきりびくっと肩を震わせちゃったわ。
「ど……ど、どど、ど……も」
「出不精のお前がわざわざ? ヒロのこと知ってたのか? 詳しく聞かせてくれや」
「妾も気になるのぉ」
と、少ないカウンター席がもうほとんど埋まってしまったのだ。まあ、提供はしやすいのでこちらとしては有り難いけれど。
蒲焼き丼の準備は、あらかじめ軽く炙っておいたニョロギアの開きをタレの漬け込みと交互にして……焼けば良い。スッポンスープことギアラのスープは本当にすぐに出せるので……焔の長老様の前に骨入れの器と一緒にお出ししたわ。
会話は……ユキトさんが超絶恥ずかしがり屋さんでも、長老様同士なのでポツポツと話しているようだった。
「まずは、焔の長老様から。ギアラのスープです」
「な……なんじゃ、これは!?」
「捌いたギアラを煮込んだ……女性には嬉しいスープですよ? しばらくしたら、お肌の質感が変わると思います」
「おお! 肌をか!? ……肉にかぶりつくのかえ?」
「はい。手づかみで是非」
「うむうむ」
「……すげーいい匂い」
「雷の長老様も召し上がりますか?」
「やっぱ、くれ! カバヤキも食う!!」
「かしこまりました」
と言う感じで、メニューも一応見ていただき……持ち込みでも良かったが、皆で選んだお酒も注文していただくことになった。長老ご夫婦は、ギアラのスープの食べ方と……お酒の組み合わせをいたく気に入ってくださったようで。
「かぁ!? こんな美味いもんが……あのギアラかよ!?」
「酒とも合うのぉ? 適度な味わいに酒が進むわい!」
「あ……の。わ、私……もお酒、おかわり……を」
「かしこまりました」
まだ三名だが、プレオープンとしては良い出だしだと思う。
クレハ達もそろそろ帰ってくるだろうし……まかないも考えておかなくちゃ。
と、片隅に思い浮かべていると、入り口の扉がゆっくりと開いたのだった。
「邪魔をする。ヒロよ」
「儂も来たぞい」
「いらっしゃいませー!」
草の長老様と長老おじいちゃんだったわ。
そう言えば……里の長老様はこれで全員らしいけれど。
普通のアヤカシさんはまだ来店はないが、凄い豪華な空間かも。
カウンターは残りふた席だったので、せっかくだからとそちらに座ってもらうことにした。
次回はまた明日〜




