第78話 吐露
「……す……すみません」
長老様の前で、失礼な態度を取ってしまったが……雷の長老様は、特に怒ったりされていなかった。逆に……私がへたり込みながら謝罪すると、口笛を吹いたのだ。
「いーぜ? 怖いもんを怖いと言えんのは……弱いところを知らねぇ奴とは違う。むしろ、強ぇえやつだと俺は思うぜ?」
そう言って、ぽんぽんと頭を撫でてくださったところから……痺れなどは何も感じず、ただただ温かった。
だから……つい、心のしこりが溶けていくような感じになり。
ぶわっと、涙があふれ出てしまったのだ。
「「「ヒロ!?」」」
「お? 俺なんかしたか?」
「したわ!!」
クレハが長老様の頭をガツンと殴っても……私は注意する余裕もなかった。
だって……自分を少しでも認めてくれたことが。
びっくりして……嬉しいとかの感情もきっとあるんだろうけど。
何が何だかわからずに、泣くのを止めることが出来なかった……。
だんだんと嗚咽が出て来てしまうと……ふわっと、何かに抱き寄せられた。
「落ち着け、ヒロ」
スインドさんだ。
優しい……耳通りの良い声で話しかけて。私を……抱きしめてくださった?
それだけのことなのに、雷の長老様に言っていただいた時のように……感情的にならず、こくりと頷けた。涙と嗚咽も……ちょっとずつ落ち着いていく。
完全に落ち着くと……ゆっくり深呼吸出来るようになった。
「「びっくりしたぁ〜〜!!」」
クレハとザックさんが、泣き終わった私を見て大きく息を吐いていたわ。
「にゃ〜! 急に泣くんで驚いたわ!! ヒロ、大丈夫か? 雷のんがそんな怖かったん?」
「……こ、わい……と言うか」
そこから……草の長老様や焔の長老様もいるのに。
自分が、異世界の人間だとか。
腕の不髄になったこととか。
美女神様に頼まれて……こちらの世界で、ジビエ料理の店をやってほしいこととか。
全部……話してしまったのだ。
「「「……ヒロ」」」
先に事情を知っているクレハ達は……私の行動を見守ってくれた。
長老様達は……特に、雷の方は。
私の発言に、ただただ……面白そうなモノを見る表情で黙って見ているだけだった。
「……特異な場所から、さらに特異な人間っつーわけか。この匂いも、作れるのはその技術のお陰」
やっと、言葉にされた時には……いきなり、私の髪をわしゃわしゃと撫でまくった!?
「ひゃ!?」
「気に入った! 俺の事を『畏怖』しねぇ人間については……ちぃっと驚いたが、事情が事情だ。恐れているもんを見せてしまったのは、まあすまねぇな?」
最後にぽんぽんと叩くと……にっと綺麗な歯を見せながら、笑顔になってくださったわ。
「……あ、りがとう……ございます」
「おう! 焔の旦那として、これからよろしくな!」
「え?」
旦那さん? と事情を知らない人間メンバーで焔の長老様を見ると、可愛らしく顔を両手で隠していたのだった。
次回はまた明日〜




