第76話 ネコマタのツンデレ?
「……この美味なるもの。お主が……作りおったのか? ヒトの子供よ」
空っぽになった器に指を向けた……焔の長老様は、私をまだジーっと見つめてきたわ。疑う……と言うよりかは、信じられないと言う感じ。
綺麗な赤い目をこれでもかと見開いているんだもの。
「は……はい。わ、私だけでなく……クレハや皆さんの協力もあってですが」
「クレハ……? おお、そこに居るネコマタの孫か? 長老からは面白いことを聞いたが……そうかそうか」
にっと笑顔になられると、器を私に差し出してきた。
「え?」
「おかわりなのじゃ!!」
「へ?」
「調子に乗りすぎやわ!? 焔の!!」
「いて!?」
クレハが焔の長老様に、上からチョップをお見舞いして……長老様は床にごっちんこ。
器の方は、クレハがぷりぷり怒りながらも奪取していたのでした。
「あちきだって、まだ食ってないんやで!? しかも、金払わんとお代わりやとぉ?!」
クレハ、あなたもお金払ってないけど。
でも、クレハがいなきゃニョロギアもだけど……蒲焼きも出来なかったものね? 一応は調理も手伝ってくれたからとやかく言いたくはないけど。
でも、軽く失神しそうな勢いで、相手を打つのは良くないわ。
「……クレハ。まだあるから落ち着いて」
「…………せやけど。こいつ、草のを無断で」
「まあまあ、元は私のだし?」
あれ? クレハって、草の長老様のこと嫌っていたんじゃないのかしら?
ちょっと顔を覗き込むと……照れているのか、ほっぺが赤い。
視線もちょーっと、草の長老様に向けられている?
(おやや? これは……まさかの??)
いわゆる……ツンデレと言うやつかもしれない?
草の長老様は……と言うと、苦笑いされている? と言うことは、もしや……表面上だけはクレハが一方的に嫌っているだけ?!
「ぶははは!? おっもしろー!」
当然、私以外にもやり取りを見ていたザックさんはゲラゲラ笑っていた。スインドさんは……笑いを堪えているのか、軽く後ろを向いて口元を押さえていたわ。大笑い……スインドさんでもするのね?
「あ、あの! 長老様大丈夫ですか!?」
呆気に取られていたけど……クレハが焔の長老様を失神させかけたことに変わりない! 急いで起こしてみると……見た目以上に軽くて、ほんのり温かかった。
顔は軽くぽやーっとしてたが、私が声をかければ……目をぱちぱちとしてくれた。
「……ん?」
「大丈夫ですか? 怪我は?」
「……おお。すまなんだ。油断しておった」
すぐ回復したのか、焔の長老様は私から離れ……着ている服のシワをぱんぱんと整えたわ。
「……すみません。クレハが」
「いや、何。妾も匂いに釣られ……我を忘れるように食ってすまなんだ。金……とやらが必要であれば、ここがネコマタの言っておった『店』と言うものか?」
「あ、はい」
強く頷けば、長老様も……にこにこ笑顔で何度も頷いてくれた。
「であれば。あのような美味を振る舞う店……妾も認めようぞ? ちょいと……面倒な輩らが、やってくるかもしれぬが」
「面倒?」
どう言うことだと思っていると……表から、草の長老様がノックをした時以上の、爆音が響いてきたわ!?
次回はまた明日〜




