第69話 青い卵おじや②
お待たせ致しましたー
「大変お待たせしました!」
出来上がった、青い卵おじやを人数分の器に盛り付け。
クレハと手分けして……皆さんのいるテーブルに運んでいく。
漂う良い匂いに、ザックさんがまず飛び上がらんくらいに喜んでくれたわ。
「うっわ! 良い匂い〜!! なになにぃ?」
「簡単に言うと……お粥に近いです」
「……麦粥?」
「いいえ。下準備しておいた、米を使ったものです」
「へぇー?」
「……嗅いだことのない良い匂いだな?」
「は……は、い」
匂いだけで、美味しそうと言ってもらえて何よりだ。
皆さんの前に、器とスプーンを置くと……まあ、元が青い卵を使ったんで、色味はある意味最悪。だけど、この世界だと食材の色は多種多様だから……皆さん気にされていないようだ。
「大変熱いので、少し冷ましながらスプーンで食べてみてください」
「ほーい」
「……なるほど」
「あ……ったかい」
「あ」
多分だけど、ユキトさん……雪女だから、熱いものってダメなんじゃ!? と思ったんだけど。
彼女に振り返れば、暖を取るように器に手を添えていたのだった。あの様子だと……大丈夫みたい?
「ほふ! うっまぁ!?」
ユキトさんを気にしていたら……ザックさんが勢いよく食べていたようで。熱いって言ったのに、がっついていたわ。舌を火傷しないか……と思ったが、大丈夫なようで。
「なんて言うかなぁ? 卵のこう言う調理もだけどぉ、味が……なんか、深い? 単純な粥とも違うよぉ! ヒロ〜、これどう調理したのー?」
「……たしかに、美味い。優しい味わいだけでなく、美味い」
「にゃ〜、なんか安心する味やわぁ!」
ザックさんの称賛もだけど……スインドさんやクレハにも喜んでくれたようだ。クレハはあれだけ不思議がっていたのに、いざ食べると気に入ってくれたみたい。
「……おい、しい……!」
ユキトさんも、熱いのを気にせずにスプーンでどんどん口に入れていくのが……可愛らしく見えたわ。長老おじいちゃんとかもだけど、モンスターって皆早食いなのかな?
あっという間に、綺麗に完食してくれました。
「味のベース……要と言いますか。ただのスープじゃなく、昆布を水で戻して……その戻した水を使ったんです」
「へ? あんな乾いた板みたいなんでぇ?」
「えっと……私のいた故郷では、よくある調理法なので」
ユキトさんのいる手前……無闇に異世界知識は出せないので、少しばかり濁してみた。ユキトさんは、興味があるのか何度も首を縦に振っていたけど。
「……リアンにこのような使い方が」
「こちらだと……どう使うんでしたっけ?」
「乾燥食材だが、塩気は強いからな? 酒のつまみ程度だが……味がしないまでしゃぶるだけだ」
つまりは、塩昆布的な扱いなのかな?
そこで思い出したのが、佃煮にした昆布の出し殻のことだ。すぐに小皿に取り分け、フォークで食べてもらうと。
「「うっま!?」」
「……これ、は」
「…………酒が欲しくなる濃さと、食感だな?」
「食材にも寄りますが、余すとこなく使えるのが……私が師匠達から学んだ料理なんです」
野菜の皮とかも、美味しいスープが作れるからね? 精進出汁……だから、開店するまで仕込みを繰り返してみようかしら? 大根とかがあると一番お手軽なんだけど。
「ヒロぉおお!?」
そして、卵おじやはまだおかわりしたいと皆さんに言われたので……私も食べようとしていたところ。
長老おじいちゃんが、勢いよくやって来たので……彼の分も一緒に出すことにしたわ。




