第66話 苦手な理由
「お……お……男……の、人!?」
ユキトさんは、ザックさん達のごろ寝を見るなり……プルプルと震え出した。前髪がさらっと横にずれて、綺麗な青い瞳が見えたけど……それに見惚れている場合じゃない。
「…………男性、苦手ですか?」
「…………す、すこ……し」
口ではだいぶ控えめに言っているけど……多分、相当苦手のようだ。極度の恥ずかしがり屋さんだし……昔何かしらのトラウマを植え付けられたとしたら。
多分だが、ザックさんやスインドさんが悪い人達じゃなくても、姿を見ただけで震え上がってしまう。勝手な想像だけど、どうだろうかと伝えてみると……ユキトさんは、ゆっくりと頷いたのだ。
「ほんまなん?」
「…………はい。ネコマタ、のお嬢さん……が、う、生まれる前……ですが。わ、私もまだ幼くて……髪、が白いのに……当時は……いじめ、られました」
「え? 綺麗な髪ですのに?」
「にゃー。白はモンスターとか魔物には少ないんよ。希少やから……まあ、そのあほんだららは、羨ましかったんとちゃう?」
「……はい。……当時の雪の、ちょ、長老に……彼らは諭され……い、今では……良き友人……では、あるのですが」
「…………それでも、少しばかり怖いと?」
「……ちょ、長老として……情け、無いことに」
「ユキトさんのせいじゃないですよ」
いじめっ子の典型的な衝動だ。
綺麗だからこそ、自分の好きなようにしたいとか。
私も……小さい頃大事にしていたものを、まあ、そう言う子達に横取りされそうになったことはある。
それを取り返すのに、怪我はしたが取り返せた。その勢いにびっくりされたが……大人の説得もあり、中学以上までは学区が同じだったので仲良くはなれた。
とは言え、その時に心に受けた『傷』が……人によってはトラウマになるのも仕方がない。
「……あ、ありがとう……ございます」
ふんわり、とユキトさんは口元を緩めてくれた。
すると、店の中の気温が一気に冷えたのだ!?
「「さっむ!?」」
「な、なんだ!?」
クレハもだけど、ザックさん達も思わず飛び起きてしまったくらい。
私も腕をさすったが……ユキトさんを見ると、思いっきりオロオロとしていた。
「ご……ご……ごめん、なさい……!」
「……にゃぁ。感情に左右されて……雪広げたんやな。まあ、一時的やけどぉ」
つまり、雪女とかの特性みたいなのかな?
ユキトさんが、ダボったい服の袖をささっと振れば……温度は元の暖かさに戻ったのだった。
「う……嬉、しくて……つ、い……雪が」
「えっと……とりあえず、二人の目覚まし代わりになったんで。大丈夫かと」
「ヒロ〜? その人誰ぇ?」
完全に目が覚めたザックさんは、ユキトさんのことを気にし出した。ユキトさん本人は、まだ『男性』にトラウマがあるから……何故か、私の後ろに隠れちゃったけど。
「えっと……昨日の長老様とは違うんですが、『雪の長老』のユキトさんです。さっき、表で会いました」
「へぇ? マジで複数の長老がいる里なんだー?」
「ど……ど、どどど、どうも……」
「え? 俺なんかした?」
「もともとこう言う話し方なんよー?」
「とりあえず。朝ご飯作りますねー? クレハ、手伝って?」
「にゃぁ」
朝から油っこいのは胃腸によろしくないので……まだまだ樹木ルリカの卵は余っているし、米の給水は実は昨日クレハの家で、簡単な鍋があったから準備はしてある。
これを使って……あと、スインドさんのところで購入した『ある物』を使い。『卵おじや』を作ることにします!
次回はまた明日〜




